三日も経てば、若返りの薬は効果時間を失い、いつも通りの日常に戻っていった。
トントン。
そこに執務室の扉をノックする誰かが。どうぞと答えると、サンドレコナーが入ってきた。
「失礼する」
「やぁ、サンドレコナー。何か用事があったかい?」
サンドレコナーは、普段は内勤オペレーターたちと一緒に後方支援の仕事を任せることが多かった。それは、彼が今まで宝石商の取り引き支配人だったことからか、手先が器用で要領が良く、裏方の仕事がより早く片付くからだ。
「イウニとセネトが放つ術攻撃についてだ。ここに書類でまとめて置いた」
とサンドレコナーは私のデスクに二枚の紙を置いた。
「もしかして、これのために二人のおままごとに付き合ってあげていたの?」
私は書類を読むのもそこそこに、その黄色い目を見上げた。サンドレコナーは一度瞬きをした。
「二人の鉱石に顕著な源石回路を感知はしていた。あのような技を何度も放たれていては、鉱石病感染症に関与する可能性もあるだろうと思っていてな」
「なるほど」
サンドレコナーはそのアーツのおかげで、宝石を隅々まで調べることが可能であった。
私は書類に視線を落とすと、サンドレコナーが話し続けた。
「二人の術攻撃である鉱石は、確かに宝石のようである。大した違いはなかったが、イウニの方からはわずかに暴力性を感じられる」
「暴力性?」
私はサンドレコナーの目をもう一度見る。サンドレコナーは落ち着いていた。
「力が強いということだ。今はマホガニーを通してでしか放つことは出来ないだろうが、一人であの技を使わせると暴走する可能性も高い」とサンドレコナーは話す。「マホガニーは賢い子どもだったな。もしかするとマホガニーは、あのイウニの力を無意識的に制御しているのかもしれない。悪魔で可能性の話だが」
「そっか……充分に気をつけて置くよ」
そして私はもう一枚の紙を捲る。次の紙にはセネトのことが書かれてあった。
「セネトはわずかに、防護の力が強いようだ。あの戦いの時に放っていた見えない壁のように、薄い防護の膜を張って自らの術攻撃の耐久性を高めている」
確かに手元の書類にはそのようなことが書かれてあった。
「セネトがツルギを通して術攻撃を放つのも理由があるのか」
と私が言うとサンドレコナーは静かに頷いた。
「そのようだな。ツルギのアーツは浮上なのだろう? それにあの子どもが持つナイフから、鋭さをイメージし易いのだろう」
「セネトはツルギを通して力を増しているんだね……」
今まで謎に満ちていたイウニとセネトの術攻撃が少しでも分かって、私は安堵していた。
イウニとセネトは、マホガニーとツルギと共に行動させて正解だったのだ、と。
「安堵するのはまだ早いだろう」心の中を見透かしたようにサンドレコナーが言う。「あの子どもらは感染者だ。それ相応の対処は必要なのだろう?」
「ああ、そうだね……」
私は目を伏せた。イウニとセネトには薬を飲んでは貰っているが、あのロドスにあったようなアーツ抑制リングまでは用意が出来ていない。そして、ラズハにはまだ眠ったままのアーミヤがいる。一刻も早くロドスを取り返せねばならないことは明白だった。
「ありがとう、サンドレコナー。イウニとセネトの体調にも気をつけるようにするよ」
「それと、二人のあの鉱石状の術攻撃には磁力のようなものが備わっているようだ」
「磁力?」
私がサンドレコナーを見やると、なんとも言えない顔をしていた。
「磁石に似たものと思うが、あれは磁石ではない。なんの物質かまでは明確には分からなかったが、何か別の物体と引き合ったり弾き合ったりする可能性がある」
「へぇ……」正直、サンドレコナーがそこまで宝石や鉱石を調べられるとは思ってもいなかったので、私は関心した。「分かった。そこも覚えて置くよ」
と私が言うと、サンドレコナーは頷きを返して執務室を出ようとした。
「……ところでドクター」
急に足を止めてこちらを振り向くサンドレコナー。
「なんだい、サンドレコナー」
「遊園地について詳しいか?」
「ん……?」