その変化は顕著だった。
白い袴のような服は赤に染まり、同時に顔には揺らめく炎のような模様が浮かぶ。また表情から口調さえ、どうにも冷めたもの変わった。
「あと少しで自壊する……望んでいた事だけど、でも正直怖かった。そんな時、キミが現れた。最初は意味が分からなかったけれど、でもそれ以上に楽しかった。嬉しかった。こんな私にも、終わりの前の束の間の幸せというものを神様が与えてくれたんだと思った」
どうやら人格……内面も変わったらしく、先ほどまであった気弱さのようなものがなくなっている。
「後一月足らずだったのに……このまま、あとそれだけ過ごせば私は幸せのまま壊れることが出来たのに。笑って終われたのに」
ガキの背に広がる魔力で出来た赤い羽根が鳴動するように動き、その姿を変えていく。漠然としただけの朧のような羽の形から、どこまでも禍々しく、そして攻撃的な巨大な翼へと。
「始めにいいましたよね。私に近づかないでくださいと。自分でも何をするかわからない。いえ、私は、私に近づくもの有象無象関係なく壊すことしか出来ない」
淡々と、どこか他人事のように喋るガキ。それを俺は見つめることしか出来ない。
「私はずっと一人だった。でもキミが来てそれは変わった……いえ、変えられてしまった。だから私はもう一度戻る。一人でも大丈夫なように。迷いなく、一人でいられる強さを」
ゆっくりと、まるで孤高の天を行くように漫然と近づいてくる。それは余裕なのか、それとも別の何かなのか。
背後の翼が形を変える。全てを破壊するような、巨大な手へと。その鉤爪のような手が振りかぶられる先は、もちろん俺。
「嬉しさや楽しさに……憧れに目を開けてしまった。憧れるから悲しくなる、そう知っていたのに。だからもう一度閉じる。そして私はまた──無力になる」
禍々しい魔力が眼前に迫る。
ああ、こりゃやべえと分かる。うちのやつらと喧嘩した時、時々感じるホンキの殺意だ。俺の魔導師としての力量なんて高が知れてる。こんなもん食らやあ、たぶん一発でお陀仏だ。シールドなんて張れないし、回避ももう遅い。ああ、こりゃ死んだな。
「さようなら……楽しい夢でした」
────まっ、当たれば、の話だけどよ?
「───え?」
それはガキから出た言葉。思わずといった調子の、驚きよりも呆然といったふうな呟き。
まあ、それはそうだろう。
なにせ攻撃が当たらなかったんだから。もちろん、俺はシールドも回避もしていない。そんな事せずとも当たらないのは知っている。
「な、なんでエグザミアの活動が……」
驚愕の表情で何かを確認するように自分の手を見つめるガキ。対する俺は、さて、といった感じで一歩ずつ近づく。
「ったく、この迷子の子猫ちゃんが。調子コイてんじゃねーぞコラ」
「え?え?な、なんで隼……あれ!?」
禍々しさや冷たさが消え、もとに戻ったガキ。服装もいつのまにか以前のものになっており、どうやらガキ自身もそれに気づいた様子。ただ自分の意思でそうなったんじゃないと分かっているのでかなり戸惑っている。
もちろん、これも俺の仕業だ。まあ、ともあれ、だ。
「なーんか偉そうにペラペラとくっちゃべってやがるなぁと思ったら、最後は俺に真正面から殴りかかるとか。本来ならぶっ殺してやるとこだが、まあ短くない付き合いだ。一発で勘弁してやる」
今度は俺が拳を握り、それにハァと息を吹きかける。
訳の分かっていないガキだったが、どうやらこの俺の仕草には見当がついたようだ。さっと頭を守るように手を持っていこうとするが、もう遅い。
「このバカチンが!!」
「うきゃん!?!?」
ああ、何とも短いシリアスだった。
10
「う゛う゛ぅぅぅ~、痛いです!隼、本気で殴りましたね!」
「当たり前だ、このスカタン。むしろこの俺に喧嘩売ろうとしてその程度で済んでんだ、有り難く思え。おら、ありがとうって言えよ」
「理不尽すぎます!?」
殴られた頭を押さえ、涙目で俺を恨みがましく見上げてくるガキ。
紫天の盟主だかなんだか知らねーが、誰であろうと俺に楯突こうとする奴は許さん。
「まあ取りあえず目ぇ覚めただろ。たく、いきなり暴走しやがって。てか今更だが何で封印されてんのに力使えんだよ」
「そ、それは封印の内部にさらに自分の領域を作ったから……て、そうです!そんな事より、今、私の永遠結晶に干渉しましたよね!?い、一体どうやって……」
涙は引き、しかし今度は驚きや困惑を湛えた瞳で見つめてくるガキ。
どうやら漸く交渉に入れそうだ。
「だから言っただろ、お前の力を借りに来たって。その為の策だってこちとらいろいろ用意してんだよ。もちろん、悪いようにはしねえ。その辺も全部きちっと話してやっから、取りあえず椅子くらいだせ」
立ち話するにはちょっと長くなりそうだし。実体じゃないとは言え精神的に疲れるのはごめんだ。
ガキは何か言いたそうにしながらも、結局諦めたのか渋々といった感じで俺の前にソファを作り出す。
俺は先ほど打ち付けた所を撫でながら、ドカリと座って一息。
「ふぅ、さて、じゃあまずは何から説明を───」
「よいしょ」
「…………おい」
「なんですか?」
なんですか、じゃねーよ。お前、何俺のひざの上に当たり前のように座ってくるわけ?この体制で説明し、交渉しろと?緊張感もクソもあったもんじゃねーだろ。
確かにたまにこうやってガキを膝の上に乗せて現実世界の土産話をしてやっていたが、今は場面考えようぜ。さっきチラ見したクールキャラとのギャップ激しいな、おい。
俺は呆れを隠さず、ガキをジト目で睨む。するとガキも少し間を置いてハッと気づいたようだ。
「つ、ついっ」
少し頬を赤くしながら俺の膝の上からおり対面にもう一つソファを出すとそこに座った。
話し易くはなったが、結局緊張感はなくなったな。まあいいや。
「さて、取りあえずお前も聞きたい事があるだろうが、まずは俺の話を聞け。その後、お前からの質問を受け付ける。OK?」
「は、はい」
「じゃ、まずは俺自身の事から」
手を前に翳し、意識を集中。俺のデバイス、夜天の写本を出した。
「これは夜天の写本。アルハザードのクソ野郎が夜天の魔導書を複製した代モンだ。で、俺はその主ってわけ。一応、シグナムたち騎士もオリジナルとは別にいるし、マテリアルズっつう奴も3人ほどいる」
「え!マテリアルズって……ディアーチェたちもいるんですか!?」
ディアーチェ?……ああ、フランの事か。そう言うって事は、やっぱオリジナルにもフランたちがいるという事か。でなけりゃコイツからディアーチェの名が出てくるわけねーし。
また疑問が増えたが、今は置いとこう。
「まず俺が話すっつったろ。今は黙って聞いてろ。───んで、そんな奴らと平和に暮らしてたんだが、ちっとばかし面倒な事になっちまってな。何故かオリジナルの夜天の書の主を助けるハメになって、うちの騎士たちと俺は全面衝突。戦力差もあいまって俺の命は風前の灯。いや、そりゃもう本当ガチで。で、どうにかその差を縮めなきゃと思って行き着いたのがお前、紫天の盟主ってわけ」
ガキを見ると疑問と驚きで出ている表情が面白い事になってる。俺としてはまったくもって面白くないけれど。
「けど、聞けばお前引き篭もってるらしいってんで、その打開策としてフランから……ああ、ディアーチェの事な、そいつからコレを託された。いや、託されたっつうか、実質もう俺のモンでもあるらしいが」
夜天の写本の横に今度は紫天の書を出す。それを見てガキはくりくりとした瞳をこれでもかと広げる。
「さっきお前の暴走を抑えられたのもこいつがあったから。まあ、つまりだから俺は今ここにいるってわけ」
話は終わりとばかりに俺は写本の紫天の書を目の前から消す。
かなりざっくばらんな説明だったが、まああまり長々と詳しく話しても分からんだろうし、俺も弁は立つほうじゃない。重点だけ分かってもらえりゃ、あとはガキの解釈に任せる。
「わ、訳が分かりませんっ……」
「だろうな。まあ、そう深く考えるなや。とりま分かりたい事だけ聞いてこい」
ひらひらと気だるく手を振る俺。そんな態度にガキは一度苦笑すると、緊張した面持ちで口を開く。
「あの、ディアーチェやシュテル、レヴィは外にいるんですか?」
「ああ、いるぜ。つってもその3人は写本の断章だから、たぶんお前の知ってる3人じゃない」
「……そう、ですか」
たぶん、というか絶対違う。違って欲しい。あんなのがオリジナルにもいるとか考えたくない。いや、いるにはいるんだろうが、あの性格とか勘弁して欲しい。ライトは許すがフランと理は絶対勘弁。
「隼の今の状況はそんなに危機的なんですか?全面衝突といっても相手は隼の騎士たちですよね、そんなに大事にはならないんじゃ……」
次にガキから出た疑問は至極真っ当でもあり、どこまでも見当外れなものでもあった。
俺は厳かにガキへと返答する。
「甘い。まったくもって甘い。うちの奴らはな、例え相手が主だろうがなんだろうが殺すと決めたら関係なく殺しに来る奴らだ。しかもその強さがオリジナルの比じゃないほどパない。更に加えてお隣さんの魔導師一家や管理局も加わってんだよ。よって俺に死が約束されてるのが現状だ」
「は、はぁ…」
曖昧に頷くガキ。まあしょうがない。あいつらを知らないんだから俺の説明も要領を得ないのだろう。それでも、この俺の真剣な表情を見て一応の納得はしてもらえたようだ。
「………それで、隼は私の封印を解き外に連れ出そうというんですね」
「イエ~ス。で、返答は如何に?」
まっ、聞かなくても分かりきった事だけど。
なにせフランから100%のお墨付きもあるし、なによりこの俺がわざわざ出向いてやってんだ。そりゃ全力で『はい、喜んで』と言ってくれるだろう。
「行きません」
「よし、それじゃあヒッキー止めて社会復帰といきますか…………ん?」
コイツ、今なんと?
「私は、ここを出るつもりはありません」
表情はどこか弱弱しいものの、断固とした口調で断言するガキ。
あれ?100%の保障はどこにいった?
「おい、そりゃどういうこった?お前、100%の確率をガン無視してんじゃねーよ。いいからさっさと来───」
「もう嫌なんです!!」
引きずってでも連れ出そうかと腰を浮かせて手を伸ばそうとした俺に、ガキは強い意志をもって拒絶した。
その瞳には、また涙が浮かんでいる。
「私は、破壊者です。誰彼構わず壊してしまう。そんなの、もう本当に嫌なんです!」
その言葉は先ほども合わせて今日まで、何度も聞いてきた台詞。最初は意味が分からなくて首を傾げていたが、今ではその意味も理解している。が、だからこそ意味が分からず俺はまた首を傾げた。
「いや、だからそれはもう大丈夫だって。夜天と紫天でお前を制御出来るってさっき証明したばっかじゃん」
こいつは自分の力で他者を傷つけたくなくて、自壊を選ぶ程自己犠牲の精神に溢れている、とんでもなく優しい奴だ。だが、それは心配無用だとさっき実演した。制御出来る事を証明した。なら、何を恐れる事がある?
「隼、この世に絶対なんてないんです。確かにさっきはエグザミアの暴走が止まりました。きちんと制御されてました。……でも、だからってそれが今後ずっと出来るという保障はありません。99%大丈夫でも、残りの1%を引けば全てを無にしてしまうこの力は在ってはいけないんです」
悲痛な面持ちで気持ちを語るガキ。慎重とも言えるし臆病とも言えるそれは、きっと尊い考えなんだろう。
そして、そんな尊さとは真逆の存在に位置する捻くれた俺は胸中で大きなため息を一つ。
(ああ、やっぱ優しい奴ってガンコだな。なんでそう面倒臭ぇ考え方するかね……)
そんな事言い出したらキリねーじゃん。もちっとガキらしく素直に考えられねーのかねえ。99%大丈夫ならそりゃもう100%と一緒だな、くらいの気持ちでいいんだよ。
「あのよ、確かにお前の力の危険性は知ってるし不安なのも分かるが、ちっとばっか考えすぎ。案ずるより生むが易しって奴だ。それともなに、お前、俺の言葉信じられねーわけ?」
「こ、この力は本当に危険なんですよ!それにこれは信じる、信じないの問題じゃ……」
ああ、コイツはまた間違った考えでぐだぐだ後ろ向きに前進しやがって。
「ボケ。これは信じる、信じないの問題なんだよ。俺は大丈夫だっつってんのにお前は心配だっつうって事は、お前は俺は信じてねーってことだ」
「ち、違います!隼を信じないなんてそんな……」
「違わねーよ」
「ちが、あ、うう……」
こっちの強引な言葉に何か言い返そうとするもどう言っていいのか分からない様子のガキ。自分の優しさが仇になってんなぁ。
「も、もし仮にエグザミアを制御し続けられたとしても、隼は私を戦わせるんですよね?なら結局変わらないです!どんな理由であれ、もう誰かを傷つけたくありません!」
どうやら制御云々については反論を諦め、今度は別の方向からぐだぐだと攻めるようだ。だが、若干墓穴を掘ってるような気がしないでもないので、俺は嫌らしくそこを突く。
「あのな、お前の力が人を傷つけるのは自分で制御出来ないからであって、俺が書を使ってエグザミアだっけ、それを制御してお前自身も力の使い方をマスターすりゃ解決する事だろ」
「あ、あぅ、そ、それは……」
言いよどむガキに俺は好機と畳み掛ける。嫌らしく、こいつの優しさをさらに突っつく形で。
「それに、どんな理由であれだと?じゃあ例えそれが『傷つきそうな俺を護る』って理由でもか?」
「あ、そ、それは……」
「お前、結構薄情な奴だったんだなぁ。つまり俺に死ねって言ってんだ?……お前の事誤解してたんだな。俺、ちょっと悲しいわ。ショック~」
トドメとばかりにわざとらしく顔を伏せ、悲痛に暮れた演技をする俺。ついでに泣きまねもしてみようかな~。
なんて考えながらチラっとガキの様子を覗き見ると。
「ち、違っ、そんな、隼は大切な………………うう、ふぇっ」
あ、やっべ。やりすぎた。こっちは俺と違ってガチ泣きしそうだ。
よし、ちょっと優しさを出す方向に転換しよう。
俺は席を立ち、ガキの隣に腰を降ろす。その際ガキはびくりと体を震わせ、怯えたような表情を向ける。そして俺が怖いのか、それとも自分が何かしてしまうのが怖いのか、俺から離れるように僅かに距離を置いた。
「……たく。おら、泣いてんじゃねーよ。別にイジメに来たわけじゃねーんだから」
涙を拭い、頭を撫でる。
「俺はお前を制御出来る。そして、お前が言う誰彼構わず無為な破壊ってやつもさせねえ」
これは交渉だ。普通なら全てを俺の意のままになる結果が最善だが、このガキ相手じゃそれは無理だ。ならば、ある程度譲歩も必要。
「俺がお前の力に望む事はただ一つ……『俺を護る』」
本来なら『俺の邪魔するやつら全員ぶっ殺せ』と言いたいが、それが絶対無理と分かった以上これで妥協するしかない。
「まも、る……」
「そうだ。俺に向かってくる脅威をお前は払ってくれるだけでいい。自分から攻撃しろ、なんて言わねえ。迎撃しろ、とも言わねえ。ただ防げばいい。その力を純粋な盾として貸してくれや」
これが妥協出来る最低限度のライン。
俺だけの守護者。
「俺はお前に誰も破壊させねえ。テメエ自身も破壊させねえ。絶対だ」
「はや、ぶさ……」
「そして、お前の本当の望みも叶えてやる」
「私の、望み……?」
交渉なのだから、こちらの要件だけ呑ませるわけにはいかない。何よりもコイツが『このまま』ってのが俺は"気に入らねえ"。
「俺と過ごしたこの数ヶ月、お前は何をしてきて何を感じた。そして何をしたいと思った?」
こいつは優しい。優しくて、臆病だ。………だから自壊という選択を選ぶ。どちらか一方が欠けていれば、そんな選択は選ばなかっただろう。
こいつが非道だったなら、あるいは勇敢だったならば、こうはならない。だからこうさせないために、俺が欠けてる分をくれてやる。
「わたしは……わたしは……」
考えている……いや、迷っているんだる。言っていいのかどうか。期待を、願いを口にして、それが無碍にされたらと思っているんだろう。
そういう考えがまたムカつく。ガキのくせにと思う。だから最後に言ってやる。
「時と場合によるが、今回はそうだから言っとく。俺は、聞き分けの良いガキは嫌いなんだよ」
ようは我が侭言えってこった。
「………」
時折、怯えるように俺の顔を見てくる。目が合うと俯き、ほどなくまた俺を見る。
1分か、2分か。
決して短くはない沈黙が続いたが、意を決して、と言うには弱弱しい声色でガキは言った。
「………隼と、もっとお話したいです」
「おう、しようぜ」
俺は自信を持って即答。
弱弱しくも、気持ちの篭った声。秘められた思いは零れ出す。
「……富士山、登ってみたいです」
「おう、来年行くか」
溢れ出す。
「…キャンプ行って、お魚釣りしてみたいです。おっきな青い海、見てみたいです。スキーとかもしてみたいです」
「おう、皆で行って騒ごうぜ」
堰を切った思いは、もう止まらない。
「クリスマス、一緒にお祝いしたいです。隼からプレゼント欲しいし、隼にプレゼントあげたいですっ」
「おう、やるし、くれ」
その思いと同調するかのように、ガキの顔はもう涙と鼻水でぐしゃぐしゃだった。恥も外聞ないとはこの事だが、それがまたガキらしくて愛らしい。
俺は涙も鼻水も拭いてやらない。それがガキの思いの大きさの表れだから、拭くわけにはいかない。ただその代わり、優しく頭を撫でてやる。
「壊したくない!壊れたくない!もう独りは嫌です!───隼とずっとずっとずっと一緒にいたいっ!」
俺は冗談が好きだし、嘘も付く。正直なのは自分の心に対してのみ。自分至上主義だ。
だから───。
「俺が俺自身に誓って言ってやる。───お前は俺の傍にずっといろ。この先ずっとだ。俺の人生にはお前が必要なんだよ」
ガキの思いに感化されたのか、我ながら大げさな言い方をしているような気がする。いや、むしろ壊滅的に言葉が足りない気がしないでもない。
だけど、まあ率直に言った方がいいだろうし、言ってる内容も事実ではあるので問題はないはず。だから、この勢いのまま言葉を重ねる。
「ああ、もちろん、必要っつうのはエグザミアや砕け得ぬ闇の力だけじゃねーぜ?お前自身だ。俺は、お前自身が欲しいんだよ」
これも、まあ事実だ。
ガキがガキらしく出来てねえのは気に入らねー。こんな場所に閉じ込められてるとか、マジ腹立つし。だから、きっとこのガキに力がなくても、俺はこいつをここから出す選択をしただろう。
「お前がさっき言った通り、ここで楽しい夢は終わりだ。こっからはそれ以上に楽しい現実へとしゃれ込もうじゃねーか。俺と一緒にずっと、よ?」
「はやぶさぁ……っ!」
浮かべている表情が嬉しいのか、悲しいのか判断付かないほど涙と鼻水が凄まじい事になってるガキ。
ただ、これだけは分かる。
「うわあああぁぁぁぁぁっ!!」
その泣き声は歓喜のそれだという事。そして、交渉成功により俺の命がかなり延命されたという事だ。
まあ、なにはともあれ。
これからよろしくな──ユーリ。
今回短め。
主要キャラ最後の一人、ユーリ登場です。ただあまり戦闘はさせない予定。