基本的に俺、鈴木隼という男は甘い。
何をバカな、有り得ない。と思われるかもしれんが、『あるもの』に関してはホントに甘いのだ。それは人から言われた事もあるし、自身もここ数ヶ月で自認せざるを得ないとわかった。
『あるもの』とは……つまり『ガキ』。それも『可愛いガキ』だ。
ああ、それもそうだな、と思った奴。俺の事よく分かってるな。
ああ、ロリコンだもんな、と思った奴。くびり殺す。
その相手を挙げるとすれば、筆頭は文句なくフェイトだろう。
あいつは中々ガキらしい我が侭を言わない。どこか行きたい、遊びたい、お話したいetc……そんな自分の意思をはっきりとは口にはしないクセに態度や顔に出るもんだから、俺もついつい余計に構っちまう。そして、そうして俺が相手してやると何とも嬉しそうな顔するもんだからこっちも嬉しくなり、さらに重ねて可愛がるという良循環。
一時期、それが原因かどうかは知らんがアリシアやライトからの『こっちも構えー!』というオーラが凄かったのを覚えている。
さて、そんな俺なんだが知っての通り今現在は八神家居候中。可愛いフェイトもアリシアもライトもいない。いるのは性根が変態なフランとウチのよりちょっとマシなヴィータ、そしてはやてだ。
それはつまり八神家にはガキらしいガキの可愛さを持ったやつがいないということ。
変態は論外として、こっちのヴィータも最近じゃ生意気になってきたし、はやてもフランに変な影響を受けたのか可愛さがなくなってきた。いや、この中じゃまだはやてはいいんだが、それでもテスタロッサ3姉妹と比べるとどうにも年不相応なものがある。
で、だからどうした?、とお思いだろう。ああ、俺もそう思った。だから別に、どうという事もないと思っていた。
だが、しかし。どうやら俺はガキらしいガキに飢えていたらしい事が分かったのだ。
鈴木ユーリ。
こいつの登場で俺は改めて自認した。
俺は可愛いガキには甘い。しかも飢えていたらしい分、フェイト以上に甘くしてしまった。
ユーリが外に出て来てこの半日を振り返ってみる。
飯を食う時やテレビを見る時、ユーリは必ず俺の膝の上に座った。そして、それに俺は『うざったい』とは思いつつもされるがままにしていた。
どこかに移動する時、ユーリは必ず俺の手を握ってついてきた。それに対しても俺は『傍にいろっていったしな……』と思いつつされるがままにしていた。
そして極めつけ。
ユーリを連れ出した最優先目的は俺の護衛。その為にはまずあいつ自身も力の使い方をマスターしなきゃならん。とすれば最初にやらなければならないのはシグナムたちと模擬戦なり訓練なりだろう。当然だ、俺の命が掛かってるんだから。張りぼてじゃなく、きちんと盾として機能してもらわにゃ話にならんのだから。………だっていうのに、そんな事分かりきっていたはずなのに。この半日、俺はユーリにそれを強制しなかった。好きなように過ごさせた。はやてたちと遊ばせたり、話しさせたりと、普通の日常を過ごさせた。
きっと道徳的にはそれは正解なんだろう。
外の世界を知らず、孤独にずっと過ごしていたんだ。初めての自由、初めてのダチとの交流、初めての日常、それらを満喫する権利はあるし、俺もそうさせてやりたかったという気持ちは確かにある。
が、何事にも優先順位ってもんがある。
この場合、というか俺的にいつもの場合まず自身の命などなどが優先で、ユーリの日常なぞ後回しにしてしかるべきはずのものだ。
しかるべきはずなのに……。
「おい、なに急に黙りこくったかと思うと今度は苦悩に満ちた顔してんだよ」
その声で思考の渦から抜け出し、声の発生源である隣のヴィータを見れば怪訝な顔をしていた。
「……いやよ、俺ってこんなに反吐が出るほど甘ちゃんだったっけと思ってな」
「はあ?甘ちゃんって……ああ、ユーリの事か。それに関しちゃ否定出来ないんじゃないか?」
「……やっぱり?」
「だろ。その証拠に今も連れてこなかったんだからな」
今現在、星々輝く冬の夜空の下、今晩も頑張って魔力蒐集に精を出している最中。しかしユーリはいない。護衛役として連れ出したんだから、蒐集中の俺の傍にはいて然るべきなのに。
その理由は、俺が連れて来なかったから。もちろんユーリは付いて行くと言ってくれたのだが……。
『今晩、はやてと鍋の用意するんだろ?だったら別に来なくていいぜ。鍋だけじゃなく、ついでに簡単な料理でも教えて貰えよ』
なんて慈愛に満ちた言葉を俺の口は勝手に吐き出していたのだ。今思い返せばゲロが出そうになるわ。
「ああ、マジでバカだろ俺。なんの為にユーリを苦労して連れ出したっての」
「バカなのは元からだろ?まっ、お前らしいようなお前らしくないようなって感じだけど、あたしは嫌じゃねーぜ?」
「そりゃどーも」
「でもはやてにはその甘さ向けんなよ!全力で嫌われろ!……あ、それじゃはやてが悲しむな……よし、程よく好かれて嫌われろ!」
「意味分からん」
どっちにしろ、俺は俺自身が嫌になりそう。いつだったか、フェイトが怪我した時に俺がバイトばっくれてまで介護した事を思い出す。あの時と同じ心情だ。
「ふむ、どうしたそんなに落ち込んで?あい分かった。どれ、その傷心、我が身体で慰めてやろう」
相も変わらず変態全開、いきなり服を脱ぎ出そうとしたフランに俺はグーパンを見舞う。
「あんっ」
「いや、なんでヨがるんだよ。その反応は相変わらずおかしいだろ」
痛みに恍惚の表情を浮かべるフランに呆れた目を向ける俺とドン引きなヴィータ。
ていうかお前いたの?ていうか何でいるの?
「おいヴィータ、何でフラン連れて来たんだよ。今日の蒐集はザフィーラとじゃなかったのかよ」
「そのはずだったんだけど、ザフィーラがいつの間にか消えてたんだよ」
「消えた?」
「ああ、消えた。で、フランに聞けば、『ザフィーラは体調を崩したようだ。よって、我が共に蒐集に向かってやろう』だと」
「「……………………」」
気持ち悪く身体をくねらせ何かの余韻に浸るフランを余所に、俺とヴィータは顔を合わせて深い溜息を一つ。きっと俺たちが今胸中で思っている事は一緒だろう。
((ザフィーラ、南無……))
まあ頑丈な奴だから、フランの多少の拷問でも耐えられるだろう。死んじゃねーはずだ。
「ハァ、まあ変態のお陰でダウナーな気持ちが吹き飛んだのは幸いだな。さっさと蒐集して帰ろうか」
「それに今日は鍋パーティだろ?はやての鍋はギガうまだから楽しみなんだよな~」
そう、今日は鍋パーティ。なんでもはやてのダチとその家族を呼んで八神家で盛大にやるらしい。俺も今朝聞かされた。
それについて別に異論はない。むしろ賛成だ。俺もはやても未だ未来は明るくないが、だからといって今を楽しまないのはバカだ。過去も未来も知ったことかと現在を楽しむ。それでいい。それがいい。
「ギガうまなのは認めるし楽しみだけどよぉ、はやてのダチとその家族も来るんだろ?ヴィータ、お前見た目に反して結構人見知りなのに大丈夫なのかよ?」
「う、うるせー!べ、別にどうってことねーよ!」
「あはは、強がんなよ。まあいい機会だ、お前もダチ増やしとけ」
「はやてさえいりゃ別にダチなんて……って、おい頭撫でんな!」
ああ、やっぱこっちのヴィータはまだ可愛いな。ホント、うちのとトレード出来ねーかな。
「はぁ、はぁ、はぁ………むっ!おいヴィータ、貴様、主とそんな接近してどういう………はっ!まさか、そのまま結合する心算か!我を前に良い魂胆だな!」
「はあ?なに抜かしてんだよ?」
「ヌくとな!?その未成熟な身体、そんなチッパイで主が満足するわけなかろうが!それとも股か!?腋か!?髪の毛かァ!?」
「意味分かンねー事言ってんなよ!」
フランは今晩も全力全開で変態だった。とびっきりの変態だった。それに一抹の慣れを感じてる俺は泣いたほうがいいのか、疲れたほうがいいのか。さらに言うならば、今のフランの変態加減に違和感を覚えた事に悲しい。
「おいフラン、今日はどうした?えらく噛み付くじゃねーか」
そう、今日はどうにも変態加減にトゲがある。ヴィータにここまで当たりが強いのもそうだし、ザフィーラを折檻して蒐集を横取りしたのもそうだ。今までそんな事は一度もない。
「……ふん、それは我とて噛み噛みにもなる」
珍しくムスっとした表情で腕組みをするフラン。怒っている、とまでは言わないが不機嫌なのは確かなようだ。
「我の気持ちは知っておろう。にも関わらず今日一日ユーリとべったり過ごし、そして今もヴィータとぬっちょり過ごして我を蔑ろにする。確かに我は主限定ドMであるが、それにだって限度がある。ことそこに他の雌が絡むと尚更よ!」
不機嫌だが、しかしその瞳には切ない色が浮かんでいる。つまるところ、こいつは嫉妬してるって事か?深度は違うがライトやアリシアが見せたあの『構えー!』というオーラと同じ感じ?
(……あー、なんかむず痒い。こいつが正直なのは知ってるが、こうも隠さないのはどうにもなぁ)
正直なのは良い事だ。俺だって正直に生きてる。しかしこういう方向の正直は悪い、とまでは言わないけどある種の攻撃性があるからタチが悪い。それ自体が凶器であり、そして女とその凶器は相性が良すぎだ。
(ああ、もうっ、ホントに……)
こいつは当たり前だがはやて似で、さらにガキだからどうしても最後の最後は甘くなっちまう。もちろん、いつもの変態ならそうはならないんだが、今はただ見た目相応に膨れっ面している可愛いガキだ。
(ハァ…)
俺はポリポリと頭を掻くと、その手をそのままポンと附せられたフランの頭に乗っけた。
「悪かったっつうのも変だけど。ただ、まあ確かに蔑ろにしてた、のか?お前はムカつくガキで変態で相手すると疲れるガキだけどよ、でも同じくらい可愛いガキだ。あれだ、嫌よ嫌よも好きの内的な?だから、そんな膨れんなよ」
さらりとした髪を撫でる。その際ふわりといい香りが鼻を擽る。
我ながららしくない行動だ。ガシガシと乱暴に撫でてやる事は多々あるが、こうやって優しく撫でてやるなんてあまりない。特にフラン相手になんて……いや、待て。そういや昨日同じ事したじゃねーか。撫でて、同じような言葉掛けてやって……。
(そしてどうなった?)
見事に暴走した。目を覆いたくなるほどに、変態に。
という事は今回は………
「──────────────ふぁッ!!」
………なんか盛大に仰け反った。
「お、おい、どうした?!」
いきなりビクビクと小刻みに震え出したフランに、慌てるヴィータ。しかしフランの次の行動はヴィータの予想の斜め上をいった事だろう。勿論、俺もだ。
「って、おおおい!?夜空の下、いきなり何脱ぎ出してんだよ!?」
徐にフランの奴がスカートの下から手を突っ込んで白いパンツを脱ぎ出したのだった。頬を上気させながらそれを両手で持つと、雑巾絞りの要領でギュッと捻りを加える。途端、パンツから夥しい量の水(?)が搾り出された。
「ふぅ、ふぅ………参った。2日連続で主が頭に触れて、しかも『好き』なんて甘言を吐くものだから、今まで溜まりに溜まっていたモノが一気にキてしまったではないか。こんな事になるなら替えの下着を持ってきておくのだった」
言ってる間にも足からポタポタと液体が眼下へと流れ落ちていっている。
ヴィータはその光景を訳が分からんという顔で見つめ、俺は赤くなった顔を手で覆った。流石にコレは直視出来ない。
「この痴女が………」
可愛いガキの姿は、すでにそこには皆無だ。間違うことなき変態だ。
「何を言う。これはただの愛だ。主に対する溢れんばかりの愛が、堤防を破壊して溢れてきただけ。…………んっ、言ってる間に第2波が」
……………………誰でもいい。こいつをどうにかしてくれ。
このガキは精神的にも身体的にも完璧にガチで病気レベルだ。ヤンデレつうかヤンヤンだ。今度フィっつぁんに診て貰うか?それとも最初からリっつぁんのトコに保護してもらうか?
取り合えず、今は何の手の施しようもないので無視の方向で行く。
「………行くぞ、ヴィータ。フランのカスは放っとこう。さっさと蒐集して帰って鍋しようぜ」
「あ、ああ」
「はぁ、今日は潰れるまで飲もう………」
空中で器用に悶えているフランを置いて、俺はヴィータと共に蒐集活動に入ろうとした。波が引けば多少は落ち着いてくれる事を祈りながら。
「フランの奴、一体どうしたんだよ?」
「まだ知らなくていい。お前は純情で綺麗な心のままでいてくれ」
コピーのヴィータの方は結構毒されて来てっからな、オリジナル程綺麗じゃないんだよな。まあ汚した本人が言うのもなんだけど。
ともあれ俺はヴィータの背中を押して腐ったミカンから距離を取ろうとした……のだが。
「動くな!!」
しかし、どうやらそれは叶わないようだ。突然、語気を荒げた力強い声が響き渡ったの為一時停止。
何かと思いそちらに目を向ければ、そこには見慣れない服を着た男が一人。
街中で会えば十中八九素通りするであろう特徴の無い顔で、RPG風に言えば『村人A』という役どころだろう。だが、ここは現実で、目の前の男は決して『村人A』なんかではなかった。何故ならば顔こそ没個性だが、右手に持っているモノは何とも個性的で、着ている服も前衛的で、何より男は俺たちと同様宙に浮いているのだから。
「ま、魔導師!?」
「もっと正確に言うなら管理局だ!」
マジっすか!?何でだよ!?昨日まで音沙汰なかったじゃん!なのに何でユーリ連れてきてない今日に限って!?タイミング悪!!
「しかも、なんか囲まれてね?」
「なんかもなにも、見りゃ分かんだろ!」
いつの間にか俺たち3人を中心に、およそ10人もの管理局員が輪を作って浮かんでいた。しかも、これまたいつの間にか結界まで展開されている始末。
俺は人知れずフードを深く被り直した。うちのモンはいないが、どこで見られてるか分かったモンじゃねーからな。
「人が悦んでる間に囲うとは、管理局員は無粋極まりないな」
つい先ほどまで悶えていたフランも、流石にこの状況では馬鹿をやる余裕はなくなったようだ。俺とヴィータの傍に近寄り忌々しそうに周りを見やる。
「でも、チャラいよコイツら。返り討ちだ」
「確かに雑魚だな。魔力を搾り取るだけ搾り取り、ボロ雑巾のように捨ててくれようぞ」
こいつら頼もしい~。流石は騎士様だぜ。
普通、人が相手ってだけで気後れするもんだ。しかも、正面に10人居るんじゃなくて囲まれてる状況ってのは、普通の喧嘩ならかなりヤバ気な状況なんだけどな。
「はやてが待ってんだ、さっさと潰すぞ」
「我を輪姦しようなど片腹痛いわ。闇に消えよ、蛆虫共」
ヴィータとフランが各々デバイスを出し臨戦態勢を取ったと同時に、しかし、何故か囲んでいた管理局員全員が距離を取り始めた。だが、それは警戒して間合いを取ったとかではなく、どう見ても役目は終わったといった感じだ。
「?なんで………」
敵を囲んでいたこの有利な状況で何故退くのか、疑問符が頭の中を駆け巡ったが、それも一瞬だった。
「上だ!」
「上?…………い゛ぃ!?」
ヴィータの声に従い空を見上げた瞬間、俺は驚きと共にこれでもかと目をおっ広げてその光景を見た。
そこにいたのは一人のガキ。そいつも局員なんだろうが、他の局員と違い村人Aといった様相ではない。あきらかにワンオーダーっぽいデバイスと黒いバリアジャケットを身にまとっている。いわゆる高ランク魔導師というやつだろう。その証拠にガキの周りには────────────────剣、剣、剣、剣、剣、剣、剣、剣、剣、剣、剣、剣、剣、剣、剣、剣、剣、剣、剣、剣。
目視で50は下らないであろう、水色の魔力で作られた剣群がそこにはあった。
「な、なななななな、なんですかありゃあああああああ!?おい、馬鹿ヴィータ、変態王、お前ら何で気づかなかったんだよ!?」
「うっせえ!お前だって気づいてなかっただろうが!」
「先ほどの蛆虫共がジャマーでもかけておったのだろう。これぞ、ジャマーで邪魔」
余裕ぶっこいているフランを縛り上げたいが、生憎と俺には余裕がない。今脳裏に思い浮かんでいるのは、過去、プレシアやフェイトのファランクスシフトを受けた時の痛みだった。
あの剣郡は間違いなくあの時と同等の痛みを伴うだろう攻撃だろう。
どうにか出来ないかと焦る俺に、無情にも鉄槌はおろされた。
「スティンガーブレイド・エクスキューションシフト!!」
(やっぱりシフト系かああああああああああ!?)
数多の剣先が一斉に俺たちの方を向いた。かと思うと、一呼吸の間に弾丸のように向かってくる剣の嵐。もう数秒で確実に着弾するだろう剣郡を前に俺は考える。
あの物量を迎え撃つのは無理。俺にそんな魔法は使えない。
同じく回避もあの量では無理。俺はそんなに器用に飛べない。
だったら残るは盾で防ぐしかないが、生憎とあれだけのモンを防げるほど強固な魔法壁は俺には作れない。
(ならば………!!)
俺は両隣にいたヴィータとフランの首根っこを掴み、引き寄せて二人を前に付き出した。
「ヴォルケンバリアーーーー!!」
「おいいいいいいい!?!?」
「あんっ」
二人の抗議の声(一人は違うが)を無視し、来るべき衝撃に俺は目を瞑った。
刹那、着弾。そして轟音。
瞼で伏せられた向こう側が白く染まっているのが分かる。魔法には爆発の効果も付加されているのか、煙独特の臭いが鼻に衝く。
轟音に煙の臭い、光が収まったのは時間にして着弾から10秒くらいだったろうか。短いようで長く、腋汗を掻くには十分な時間だった。
(お、終わったか?)
恐る恐る目を開くと、眼前には俺の手によって突き出されたヴィータとフランがおり、二人は力を合わせて大きなシールドを張っていた。冷や汗は掻いているようだが身体には怪我はないようで、どうやら完璧に凌ぎきったようだ。
よしよし。
「ナイス!!」
「ナイスじゃねーよ!なんて事すんだ!」
「相変わらず主は無茶をする。ただ不満があるとするならば、掴むならば次は首根っこではなく胸を所望する。無論、今からでも遅くはないぞ?」
いや、だってこれが俺が傷つかない最良の選択だったんだしさ。ほら、こいつらは傷ついてもプログラムなんだし、治りも早いじゃんか。その点、俺は貧弱ゥな人間ですから。箸持っただけで指が折れちゃう~。(フランはガン無視)
「文句は後で聞くから、今は目の前の喧嘩に集中しようぜ」
あの剣を放った魔導師は、こちらを悔しそうな顔で睨みつけていた。どうやら俺らが無傷だった事にご立腹のようだ。
(まあそれ言うならこっちもそうだけどな)
この俺に攻撃したって事ァ、俺に喧嘩を売ったてのも同義だ。
うちのモンが管理局側に付いて一体何を吹き込んだのか分からんが、問答無用で攻撃してきたって事は少なくとも話し合いで解決する気はサラサラ無ぇって事だろ?
いいねぇ、シンプルで。状況的には変わらず面倒臭いが、それでも向かってくる奴をボコりゃいいってんならそれは大歓迎だ。
「おう、ヴィータ、フラン。上等ぶっこいたあの局員、どうするべきかね~?許してあげちゃう?それとも………」
「当然、潰す!」
「我の主に攻撃した糞にも劣る物体は、この世に在るべきではない!」
目をギラギラと獰猛に輝かせ、意気揚々とデバイスを構える二人の何と頼もしい事か。
こりゃ負けちゃらんねーな。
俺も両の拳を打ちつけ、闘志を剥き出しにする。
本当なら局の本体やうちの悪魔共が来る前に撤退するのがいいんだろうが、生憎と喧嘩売られて逃げるほど男廃れてねーし、人間も出来ちゃいねーんだよ。
それにいつまでも怯えて逃げてばっかじゃ、この先なんも進展しねーしよ。こりゃいよいよ持って一本芯入れて、覚悟決めるしかねーだろ。
これから先の喧嘩は、本当の本当に本腰入れていってやる……………姿は隠し通すけどね。
「さて。じゃあ、おっ始め──────あん?」
腕をぶんぶん回しながら局員に向かおうとしたら、件の局員は敵を目の前になぜかぶつぶつと呟いており、さらにあまつさえあらぬ方向に顔を向けた。
どこまでも余裕ぶっこいたその様子に、俺のボルテージも右肩上がり。
その小癪な横っ面に拳叩き込んでやる!年にしてまだ12、3くらいでガキに分類されるが、俺に喧嘩売った奴に例外はない。ガキでも女でも最低1発はブン殴る!
俺は舌打ちをして飛び掛ろうと身体に力を入れた瞬間、ふいに右手の裾に抵抗を感じた。見ればフランがくいくいと引っ張っている。
「ンだよ、一体?」
「主よ、ちと厄介な事になりそうだぞ」
「あん?」
フランは忌々しそうな顔であらぬ方向を見ており、ヴィータもフランと同じ方向を見ていた。そして、それは上空にいる局員が見ている方角と同じだった事に気づく。
俺は嫌な予感と共に、少し強張った顔で皆と同じ方に顔を傾けた。
果たして。
(………あー、まあ予想通りってか、当然ってか、やっぱりってか、ほらねってか)
俺の目に飛び込んで来たのは、一つのビルの屋上に風に曝されながら佇む私服姿の少女3人。そして俺の脳が処理した結果、該当する人物が同じく3人。
一緒に遊園地に行ったり、プールに行ったり、紅葉狩りに行ったりした、カラオケ行ったりと、もしかしたら一番仲が良いかも知れない少女………高町なのは。
高町なのはのコピー体にして家族、そして元祖変態イカれ少女………鈴木理。
俺の家の隣人にしてクローン人間、弱天然だが超絶無双の可愛さを誇る少女………フェイト・テスタロッサ。
魔法少女トリオが、そこにはいた。
(やっぱ来やがったか。けど、3人だけってのは変だな。他のやつらは………)
軽く辺りを見渡してみれば、その少女3人の他にアルフもすぐに発見した。が、この場に来たのはその計4人だけのようで、残りのメンツは見当たらない。
総戦力で叩き潰しに来ると思っていたが、これは一体どういうこった?それにすずかやアリサの姿も見えない。
訝しむ俺を余所に3人の魔法少女はそれぞれデバイスを起動させ、その身にバリアジャケットを纏った。
(ん、あれ?レイハの奴、カートリッジ機構付いてね?)
前まで付いてなかったよな?カートリッジってそんな早く付けれるモンなわけ?管理局の技術は世界一ィィィイイイなわけ?
(まあ、どうせプレシアとリニスちゃんが改造手伝ったんだろうけど)
プレシアのクソ野郎はホント面倒な事してくれやがるな。今度あいつの入浴シーン盗撮してツイッターにアップしてやろうか。リニスちゃんは全力で許すけど。
(そもそも、高々デバイス強化したくれぇで俺が負けるわけねーだろ。なのはも大人しくしてりゃあいいものを、若さに任せて出てくるから俺に殴られるハメになるんだよ。まあスズメバチに刺されたとでも思って諦めてもら………………およ?)
なのはのプリティフェイスを殴るのは可哀想なので、代わりにその頭に特大の拳骨を落とすくらいにしてやろうかどうしようかと悩んでいたら、ふとある事に気付いた。
なのはも、理も、フェイトも、現れてからずっと俺の事をガン見しているのだ。
(え?なに、どして俺、注目されてる?)
俺を闇の書の主と勘違いし、敵視している……というわけではなさそうだ。何故なら、その視線には1つも敵意などといった要素がないからだ。
なのはからは『呆れ』というか『何やってるの?』的な視線を。
理からは同じく少しの『呆れ』と『怒気』を。
フェイトからは『悲しみ』と『嬉しさ』を。
総じて全員から何故か温かい感じの感情を。
(……どゆこと?)
混乱とまではいかないが、どこか釈然としない気持ちが募っていく。普通、敵にそんな視線や感情は向けんだろ。少なくとも嬉しさはない。理やシグナムならバトルジャンキーだから『獲物を見つけた嬉しさ』という意味で分かるけど。
そんな俺の気持ちとは裏腹にこの状況は加速度的にどんどんと流れていく。
出る事も入る事も叶わない筈の結界を突き破り、轟音と共にまた一人新たな乱入者が現れたのだ。
「シグナム!」
騎士甲冑を身に纏い、右手にレヴァンティンを持って颯爽と現れたのはシグナム。
このタイミングの良さ、そして真打登場とばかりの乱入の仕方は、絶対に狙ってやったとしか思えないほどカッコよかった。てか、絶対外から見てただろ。
《どうやら間に合ったようだな》
《丁度始める所だよ。それより、他のやつらは?》
《シャマルは結界内の他の場所で待機している。ザフィーラは動ける状態ではなかったから置いてきた》
《やれやれ、まったく使えない犬だ》
《フラン、お前がそれを言うな》
俺にも聞こえるように念話で会話をしてくれている3人だが、生憎と俺は口も回線もミッフィにしている。だって、シグナムが派手に登場して来たのに、フェイトたちの視線は全くぶれずに尚俺ガン見なんだもん。
何故かまた脇汗が出てきたぞ。
《そんなことより、此度は早く終わらせるぞ。家で主はやてが楽しみに待っておられる》
ああ、そうだ、鍋やるんだ。客も来るみたいだし、確かにさっさと終わらせたいもんだ。そして一杯やりたいよ。
「どうやら役者は揃ったようですね」
こちらの士気の高まりを読み取ったのか、それとも単純に空気を呼んだのか、理のやつが屋上から飛び立ち俺たちの所までやってきた。それに続いてフェイトとなのは、それにアルフも理の横に並ぶ。また、シグナムも俺たちの横へ。
俺、ヴィータ、フラン、シグナム。
理、フェイト、なのは、アルフ。
相対する俺たち。
あの黒ずくめのガキや周りの局員は結界の展開に専念するのか手を出さないようだ。つまり数の上では互角。後は、誰が誰の相手をするかだが───────。
「さて」
と、理が呟いたと思ったら、突然ほぼノーモーションでブラストファイアーを撃ち放った。いきなりもいきなりなその砲撃に誰も対処する事は叶わなかったが、幸か不幸か魔法はフランの顔のすぐ横僅か数センチを通り抜けて行く。
だが完全に当たらなかった訳ではないようで、フランの耳辺りの髪がチリチリと縮れていた。
「おや、王ともあろう者がそんな呆けた顔をしてどうしたのです?まさか今の魔法が見えなかったのでしょうか?だったら申し訳ありません。次は手加減して差し上げます。もっとも、今のも充分手加減していたのですがね」
反応できず呆然と佇むフランを見て、サドっ気全開の表情で(パっと見は相変わらず無表情なんだが)のたまう理。そして、そんな理を見て我に返り、こめかみに特大のバッテンマークを浮かび上がらせたフラン。
「雑種ゥゥゥウウウッ!」
「ふっ、無駄に吠えないで下さい。底が知れますよ?」
ああ、分かった。こいつら仲悪ぃんだ。
「下等な分際でよくも我の高貴な髪を傷つけてくれたな!主にのみ捧げる我が身体の一部を!」
「寝言は涅槃で言って頂きたいものですね。主があなた如きの身体で満足するとでもお思いですか?今度、主と私の営みを披露し、格の違いでも見せてあげましょう。それで現実を知り、一人でマスでも掻いているのですね」
ああ、また分かった。こいつら変態同士で同属嫌悪してんだ。
「ハッ!愛も、忠誠も、サドっ気も、変態性も、キャラクター性も、何もかもが中途半端な貴様が我との『格の違い』?……片腹いたいわ!ああ、そうだ!格が違うのだ、我と貴様とではな!」
「ふぅ。まったく、なに世迷いごとを。中途半端は一体どちらでしょう?後から出てきたのをいいことに、私の属性に少し上塗りしてあたかも『自分が上ですよ』的な態度を取るとは。厚顔無恥も甚だしい。あなた、いっぺん死んだほうがいいですよ。私が直々にそのお手伝いをして差し上げましょう」
うん、どっちもどっちだからな?どっちもいっぺん死んだ方がいいからな?
「我が貴様より上なのは当然だろうが。勘違いも妄想も大概にしておけよ?貴様のような痛々しい奴は地獄の餓鬼とでもまぐわっておれ。それが身分相応というやつだ」
「……カチ~ン」
あちゃあ、理の奴、あの顔は相当キてんな。フランの奴も今にも爆発しそうだ。
「もうよいわ。これ以上貴様の声を聞いておると耳に障る。二度とその口が開けぬよう、永劫の闇へと突き落とす!」
「やれやれ、厨二病的なクドイ言い回しをしますね。教えてあげましょう、こういう時はですね、シンプルにこう言うんですよ──────────ぶち殺す!」
そして二人は激しくぶつかり合い、それぞれの魔力光の軌跡を残しながら遠くに飛んでいった。
「な、なんなんだアイツ?フランと互角に言い合ってたぞ……」
「凄まじいな………」
ヴィータもシグナムも理のキャラに慄いているようだ。
まあ無理もない。アイツのぶっ飛びようは天井知らずだからな。でも安心しろ、すぐ慣れる。だって、フェイトもアルフもなのはも今のあいつ等のやり取りを微笑ましく見てたし…………いやまあ、それもそれでどうかと思うけど。
「と、兎に角!おい、えっと確か……高町にゃのは!」
「にゃ、にゃのはって誰?!高町なのはだよ!」
「ど、どっちでもいい!来い、お前の相手はあたしだ!」
理とフランの後を追うかのように、ヴィータも場所を変える為に飛んでいった。
先の二人の喧嘩の空気に充てられたのか、ヴィータも中々どうしてヤル気満々だ。続くなのはも表情を引き締めて追っていった。
残るはフェイトとアルフだが。
「テスタロッサ、お前の相手は私が務めよう」
「………」
シグナムからのご指名を受けたフェイトだが、しかし返答はなし。というかシグナムなぞ眼中にないとばかりに俺を見ている。それも睨むとかそんな負の感情は微塵もなく、俺の勘違いでなければそこには嬉しさしかない。
(いつだったかデパートに買い物に言った時、迷子になったコイツを俺が迷子センターに迎えにいった時に見せた表情と同じ気が?)
なんか今にも抱き付いてきそうな感じ。尻尾があったらブンブンしてる感じ。
「おい、テスタロッサ、聞いているのか?……おい!」
「え!?あ、はい?あの、なにか?」
マジでシグナムの声が耳に入ってなかったのか、数度の呼びかけでようやく応えた。
「お前の相手は私が務めると言っている!」
「え、あ、えっと………ああ、そう言えばこの前の決着がまだでしたね」
「今日は時間も無い、最初から全力で行かせて貰う。だが、それ故に怪我をさせずに終わらせる自信がない………出来れば魔力だけ頂いて無傷で帰してやりたいのだが……それが出来そうにないこの身の未熟、許してくれるか?」
「はぁ……あ、いえ、は、はい、構いません。最後に勝つのは、私ですから」
「その意気や良し。………私の目を見て話すという礼儀を弁えてもらえれば尚良いのだがな」
「あ、ご、ごめんなさい」
シグナムとフェイト、敵同士でありながら相手を称え、その上で自分の力を信じる強い心。
まるで戦国時代の一騎打ちのような空気を醸し出す両者は、静かに眼下のビルへと降りていった。……ただしフェイトは俺の事をずっとガン見していたが。
あいつらの視線が気にはなるが、まあなんであれ、ようやく各々が各々の喧嘩場所へと向かった。そしてこの場に残ったのは俺とアルフ。
(ラッキー、一番やり易い奴が相手だ!)
アルフも確かに強いだろうが、あの3人と比べれば一番弱いのは明白。それに、アルフは基本接近戦主体なんで俺も非常に助かる。単純な魔法戦は厳しいが、ステゴロだったら相手が誰だろうと負ける気はサラサラねーし。
(さて、最後は俺達だな。オラ、かかってこいや!)
正体を隠している手前、声を出すわけには行かず身振り手振りで俺はアルフを挑発した。
しかし、どういうわけかアルフは一向にかかってこない。こいつの性格上、挑発の一つでもされたら速攻で殴りかかってくるはずなのに。それどころか何故か笑顔を浮かべ、キュートなお尻に付いてる尻尾を嬉しそうにフリフリと動かしてる。
(だからなんなんだ、一体?)
理やフェイトやなのはと同様に、コイツも俺に対する反応が変だ。どう考えても敵を前にする反応じゃない。
胸中で困惑しながらも、取りあえず一発殴ってやればまともな感じになってくれるだろうと、まるで『映らないテレビは叩けば直る』という昭和的な考えで俺は拳を握り、さあ行くぞと身構えた瞬間…………
「ところでさ」
って、おい!いやいやいやいや!どうしてそこで普通に会話パートに入ろうとしてんのよ、この子!もう喧嘩パートだろ?なんでそんな雑談空気を作り出すわけ?
訳が分からん。訳が分からんが、そういう時は『考えるより、まず殴れ』と相場は決まってる。
俺は今一度拳を固め直した。
さあ、いざ……………!
「あんたが居ない間にザフィーラに彼女が出来たんだよ」
「ぬぅわあにいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!」
嘘だろ!?マジかよ!?ザフィーラに彼女だとおおおおお!?!?
「ふざけんなよ、あンの野郎ぉぉぉぉおおおお!この俺を差し置いて彼女を作っただァ!?いい度胸してんじゃねーかクソ駄犬がァ!じゃあアレか?今ここに来てないのは、その女としっぽりしてるって事かああああああ?!ぶっ殺してやるクソッ垂れめ!何故だ!何故あいつに彼女が出来て俺に出来ん!そりゃ確かにあいつは背が高く、逞しい身体で、精悍なツラしてて、健康的な浅黒い肌で、仲間思いで、二次元に対して以外では寡黙な性格で、大人な雰囲気を醸し出してて…………………………あれ?………………………………俺の勝ってる要素が無ぇじゃねーかああああああああああああああ!?!?」
よくよく思えばザフィーラって超イケメンじゃね!?…………………殺さなきゃ。
「あ、相手は美人なのか?!ボン・キュ・ボンの綺麗なセクシー系お姉さんか?!それとも可愛さと可憐さが同居した撫子系お姉さんか!?」
もしそうだったら、俺は………俺は!
「私」
「俺は!あいつが死ぬまで!殴るのを!止めない!!」
何故だああああああああああああああああ!!!!!
「なんでだアルフ!俺はお前を信じてたのに!人間じゃないお前なら、人間の女にはモテない俺を受け入れてくれ、いずれはあんな事やこんな事をする関係になれるんじゃって希望を持ってたのに!!」
「へ?あの、なにを─────」
「お前は気さくな奴だからすぐボディタッチとかして来るし、ノリが良いから話してて面白いし、表情がコロコロと変わって飽きないし、なにより美人だし、ボインでくびれとお尻がキュートだし、八重歯が素敵過ぎるし……………だから勘違いするんだよ!てか、男なら抱き付かれた時点で誰だって勘違いするんだよ!?それは違うんだって思っても勘違いすんだよ!でも、やっぱり最後はこうやって馬鹿を見るんだな、モテない男って奴はよォ!結局か!?結局イケメンなのか?!世界や種族が違えど行き着く所はそこなのか!?俺だって……俺だってなあ……もうホントに泣いちゃうぞ!ブサメン代表して泣いちゃうぞ!うわ~~~~~~~ん!」
衝動に任せ思いの丈と涙をぶち撒ける俺。
もう何がなんだか分からない。何だかトンでもない事を言ってるような気もするし、死ぬほど恥ずかしい事を言ってるような気もするが、そんな事よりザフィーラに彼女が出来た事がショック過ぎる!!!
…………俺、明日からどうやって生きていこう。やっぱり風俗で新品の筆を下ろしてもらうか。ああ、いや、それよかもうフランでもいいや。あいつなら100%の確率で受け入れてくれるだろう。犯罪?ああ、そうだね、きっと捕まっちゃうね。知ったことか。
「ス、ススストーーーーーッップ!ちょっと、な、なにマジ泣きしてんだい!?てか目が虚ろだよ!?う、嘘!嘘だから!」
…………え?うそ?
「ザフィーラに彼女は?」
「いないよ!」
「アルフに彼氏は?」
「私はまだ誰の物でもないよ!」
…………………………………………。
「な、なんだ嘘かよ。あ~、びっくらこいた!マジでショック死するかと思った」
ガチで焦ったぜ。てか、マジで危うい思考になってた。犯罪者直行だった。冗談抜きで次回から『囚人と写本の仲間達の面会な日々』になっちまう所だったぞ。
こりゃ理やフランの事を変態変態と言えた身分じゃねーな……………まあそれも重ね重ね今更ってやつか。
「び、びっくりしたのはこっちだって!まさか大泣きする程の反応が返ってくるなんて。それに…………う゛う゛ぅぅぅ~~」
アルフは顔を真っ赤に染め、耳は力なく垂れ、両手で頭を抱え込んでいた。
「ハァ……一応の最終確認のカマ掛けの心算で言った冗談だったのに、とんだしっぺ返しだよ」
「何が冗談だよ、シャレになってねえっつうの。お前のそのトンでも発言で俺は危うく性犯罪者に──────」
あれ?ちょい待ち。なんか変じゃない?変ってか、ヤバくない?
だってさ、俺、さっきから………
「俺、もしかして普通に声出して喋っちゃったりしちゃってる?」
「は?いや、あれだけ叫んでたくせに今更何言ってんだい?」
しまったあああああああああああああ!!!????
正体隠す為に頑張って黙ってたのに、ついアルフの嘘情報に流されちまった!ヤ、ヤベェ…………こりゃ完全にバレちまっ──────ん?でも待てよ、何か変じゃね?普通、正体不明の奴にザフィーラの事を話すか?いや、そんな意味不な事する理由はねーよな。それにアルフの奴、さっき『最終確認』とか言ってなかった?
これってさ、つまり…………。
「まっ、声を確認するまでもなく分かってはいたんだどね。えっと、取りあえず気を取り直して………コホン───ここは久しぶりと言った方がいいのかい?ねっ、は・や・ぶ・さ♪」
いつからバレてたんだーーーーーーーーーーーーーーー!?!?!?!?!?