フリーターと写本の仲間たちのリリックな日々   作:スピーク

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投稿遅くなり申し訳ありません。


王様が王様してます。あとは平常運転。


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『機動外殻』とは。

もとはとある世界で工事現場でなどの作業のさい、人間の補佐として使われる自動機械である。それを紫天の書の製作者が対魔導師として造り上げ書に組み込んだもの。

数は3機。

 

大地を踏み砕き、行く手を阻む者を蹂躙する『城塞のグラナート』。

高出力のビーム兵器で数多の障害を藻屑と化す『海塵のトゥルケーゼ』。

絶対の制空権を誇る天空の覇者『黒影のアメティスタ』。

 

どれも高ランク魔導師十数人分に匹敵する戦力である。的確にコアを砕かない限り、真正面から戦って勝てる相手ではない。

もとより設計時の基本コンセプトが単機による一定範囲の制圧なのだ。自動修復と頑強な装甲を前に一人二人が相手取れるものではない。

 

───であるからして。

 

「うわ~ん!また消し飛んじゃいました~!?」

 

たった一撃で半身を粒子レベルで吹き飛ばし、アメティスタを地に落として『天空の覇者(笑)』にする魔導師は規格外もいいところである。しかも手加減をして。

 

「たわけ!制御が甘すぎると何度言えば分かる!砂粒を指先で1cm弾くほどの加減で撃てと言うとろうが!」

 

そんな規格外であるユーリはその凶悪なまでの攻撃力とは打って変わり、言動はべそを掻いた幼子のそれ。

 

「うぅっ……で、でも最初の頃よりは成長しましたよね!?」

「『人を一撃で100回くらい殺せる』から『人を一撃で90回くらい殺せる』になったのは成長とは言わん。誤差の範囲だ」

 

こやつに力の加減を覚えさせる為、自動修復を持つ機動外殻は打って付けの相手と踏んで連れて来たは良いが、実践すること早20分余り。

成果はご覧の有様。

確かに最初よりは成長した。初めの一撃などコアごと全身消滅させるところであったからな。我が咄嗟にシールドを張って機動外殻を護ってやらねば早々に訓練が出来なくなってしまうところであったわ。

 

「目指す『一撃で運が良ければギリギリ死なない』には程遠いな」

 

目標としては低いが、それでもこやつのスペックを考えたら先は長い。

 

「あの、やっぱりフランが書を使ってエグザミアを制御してくれればこんな訓練なんて必要ないんじゃ……」

「甘えるな。己が力を人に制御してもらい発揮しようなど愚の骨頂ぞ。全力も手加減も自分で思いのままに御してこそ力であろう」

「じゃ、じゃあせめて非殺傷設定の魔法で訓練を……」

「それもならん。生かすも殺すも己が加減一つで成してこそ。裁量をシステムに任せようなど片腹痛い」

 

無論、それらがどれほど難しいのかは我も分かっている心算だ。こやつの力は強大過ぎる。50%、いや30%の出力もあれば我の全力モードである『トリニティブラッド』にも勝てるだろう。

それほどの力を制御するのがどれほど大変か。医者がルーペを使わず繊細な手術を成功させる方がまだ難易度としては低いのではなかろうか。

 

それでも。

 

「これから先も主の傍にいたいのなら頑張る事だな。いつ暴走するかも分からん奴を傍に置いておける程、主の周りは優しくはないぞ?」

 

我の言葉で出発前のシグナムたちを思い出したのか、見る見るうちに顔が青くなっていくユーリ。

それを見て思わず笑みが零れる。少々脅しすぎたか。……というか魔導師として極致にいる存在のユーリを心底恐怖させるあやつらはどんだけだ。

まぁしかし。

 

「ふっ、まぁそう心配するな。奴らも今すぐお前をどうこうしようなど考えてはいまいよ」

 

何だかんだと言ってあやつらは優しい。甘い。ある一つのラインを踏み越さない限り、笑って受け流せる度量があるように見える。

ただし。逆説。

その"ライン"を踏み越した場合、慈悲も躊躇いもないのがあやつらだ。

 

「しかし覚えておけ。心に留めておけ。仮にお前が暴走し誤って主を傷付けようものなら、奴らは容赦せぬだろう」

 

それが。

"主"があやつらの中の不変で不動のライン。侵してはならない聖域。

 

もっとも、それはあやつらのみならず、我も、そして……

 

「私は絶対隼を傷つけません!それだけは絶対です!何があろうとも、それだけは!」

 

で、あるか。で、あろうともよ。

 

「分かっておるわ。そして、万一もそうならぬようこうやって我が見てやっておるのだ」

「フラン……ありがとうございます!」

 

……ふん。

 

「感謝の言葉などいらぬ。貴様は紫天の盟主。癪だが名目上は我ら断章の上におり、主と同格でもある。なれば相応のモノを身に着けよ。いや、そもそももとよりこれは主の為だ。貴様の為ではない」

 

などと言ってみるが、我ながらどうもしっくり来ない。後半はともかく前半の言葉が特に我らしくない。しかし、その原因には何となく心当たりがある。

それは我のオリジナルである断章たちの盟主を敬う思い。力を取り込んだ際、どうやらそれまでも僅かばかり付随されたようだった。

 

「フラン、違いますよ」

「む?」

「フランと私に上も下もありません。ただ『隼の傍にいたい』と思ってる者同士です」

「………」

 

本来ならそのような言葉など戯言だと一蹴しているだろう。主と一緒にいて良いのは我だけだと怒鳴っているだろう。

それが出来ないのはここに主や他の者がおらず、こやつと二人っきりだからか。

 

(……ちっ、面倒な感情を押し付けおって)

 

このようなもの、我のキャラではないわ。

 

「ふん、無駄話はそろそろ仕舞いだ。ほれ、修復が終わったようだぞ」

「あ、本当ですね。よーし、今度こそ!」

「さっさと加減を覚える事だな。でなければ戻るのは我らが一番最後になるぞ?」

 

グラナートの方に誰が行ったかは知らぬが、トゥルケーゼの方はいの一番にライトの奴が向かっていた。そして驚くことに我らがアメティスタと相対する前に決着がついたようだった。強大な魔力の高まりのあと何か大きなものが爆発するような破砕音がここまで届いたのだ。おそらく我のジャガーノートクラスの高ランク魔法を撃ってすぐに決着つけたのだろうと予想するが。

 

(……しかし解せんな。あの戦闘好きが遊びもせず一撃で終わらすなど)

 

先の魔力の高まりから今まで、ライトの奴の魔力は感じない。であれば早々に終わらせたという事だ。返り討ちにあった可能性もなくはないが、それは限りなく低い。同じ断章としてライトのスペックは知っている。いや、鈴木家で暮らしていた分、我の知っているそれよりもさらに強くなっていよう。オートマタ如きではどう頑張っても倒せはせぬだろう。

 

(まぁ良い。早く終わらせた所で結局は小烏待ちになるのだ。奴が出てくるまでこちらはゆるりとやっておってもよかろう)

 

頑張って手加減を覚えようとする悪戦苦闘するユーリ。その姿を見て思うのは呆れと……少しばかりの扶翼の気持ち。

 

「そぉ~っと、そぉ~っと……ハート以外ブレイクマトリクスぅ~、とりゃ~!……って、ああ!?今度はコア以外無くなっちゃいましたー!?」

 

ハート以外ブレイクさせれば、それはそうなるだろう。

やれやれ。

 

「励むが良い」

 

その言葉は誰に聞かれる事もなく、ユーリの泣き声と共に夜空へと解けて消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「てえええええい!!」

 

空気の澄んだ夜空の下、一人の女性の怒号ともとれる声が響き渡っています。そして、その顔は必死とも呼べるべき形相です。

 

「はぁ、はぁ、くっ……のぉお!!」

 

氷点下を下回っていそうな気温なのに、彼女の顔には珠の様な汗が浮かび上がっていて、口から吐き出される白い吐息はとても荒い。

 

「まだ……まだぁあ!!」

 

普段の彼女は、とある一人の男性への態度を除いては知的でクール。冷静沈着という言葉がぴったり当てはまります。よって今の彼女を彼女の子供たちが見たら何事かと目を剥いてしまうでしょう。

かく言う私も、彼女がそうなっている原因を知っているから苦笑を浮かべるに留まれていますが、知らなかったらきっと仰天する事でしょう。

 

「もう、少しぃ……!」

 

猛る女性。私のマスター。プレシア・テスタロッサ。

そんな彼女が相対しているのが、闇の書から召還された機動外殻という全長数十mを越えるオートマタ。

 

「これなら、どう!」

 

今、この場にいない人が声だけ聞けば『プレシアが機動外殻と戦っていて苦戦を強いられている』と思う事でしょう。さらにプレシアの実力を知る人が聞けば『機動外殻とはよほど強いのだな』と勘ぐるでしょう。

 

では、現場で立ち会っている私から事実を述べておきます。──上記の事柄は何一つ合っていません。

 

機動外殻は確かに強いです。並みの魔導師では1対1ではまず歯が立たないでしょう。私もきっと無理です。ですが相手はプレシア。やろうと思えば一撃の下、瞬く間に撃破出来ます。鈴木家の人外魔境集団の影に隠れがちですが、彼女の実力とは本来それほどの物なんです。

 

ならば何故、汗を掻いて荒い息を吐き苦戦を強いられているかのように聞こえるのかというと答えは簡単。

 

わざわざプレシアは鞭による近接攻撃を仕掛けているからです。しかも時には無駄に走ったり、時には無駄に飛び回ったりと、無駄に忙しなく。

 

本来、プレシアの戦い方は中距離や遠距離からの一方的な魔法攻撃。あるいは私が前衛で時間を稼ぎ、後ろからプレシアが一撃必殺の魔法を撃ち込む形です。

間違ってもこんな無駄のある無駄に洗練されてない無駄な動きの戦い方ではありません。

 

では今は何故こんな効率の悪い戦い方をしているのか?……これも答えは簡単。

 

「はぁはぁ……有酸素運動もたまにはいいわね」

 

カロリーの消費、脂肪燃焼……つまりダイエット。

 

(……プレシアぁ)

 

圧倒的、健気!

隼に体重の事を言われたのが余程堪えたんですね。

けれど、そう考えるとプレシアも変わりましたね。前までなら体型もそれに付随する他人からの評価もさほど気になんてしないタチでしたのに。……いえ、今でも他人は気にしてませんね。気にしてるのは、きっとたった一人からの評価だけ。

だから、こうやって頑張ってるんですよね。

 

(ふふ、プレシアもれっきとした女性だったというわけですね)

 

近所の奥さんから化粧の仕方を学んだり、雑誌から流行のファッションを学んだり、こっそりとエステに通ったり、いわゆる女磨きというものをするようになりました。かつての研究一筋だったプレシアからは考えられない行動。

しかも、それがただ一人の男性の事を想っての行いだというのだから、これを健気と言わずして何と言いましょう。

マスターには幸せになって欲しいです。今でも昔に比べたら十分幸せなのでしょうが、もっと、もっと。

 

(あ、そう考えると今のプレシアはいわゆる『幸せ太り』というやつ?)

 

だったらこれから先も危ないですね。正直、私の目から見ても今のプレシア、確かに前より少しふっくらと──

 

「私は太ってないわよ」

「わひゃう!?」

 

いつの間にか背後にいたプレシアに声を掛けられ変な声が出てしまった私。

振り向くとそこには顔から汗をしとしとと滴らせてほのかに頬を赤く染めた彼女が、ジト目で私を睨んでいました。

 

「べ、別に体型の事は考えていませんよ?」

「嘘おっしゃい。目というものはね、口以上に雄弁に物を語る器官なのよ。特にあなたは」

 

そ知らぬ顔で通そうという目論見はどうやらバレバレのようでした。私、そんなに分かりやすいのでしょうか?いえ、きっとこの場合プレシアの勘がいいんでしょうね。女の勘というやつでしょうか?前まではこんな事もなかったのに……隼のおかげでプレシアが女性らしくなっていく事は嬉しいですが、こういう弊害も増えていきそうで怖いです。

 

「えっと、それより機動外殻の相手をしなくていいのですか?」

「今は小休止よ。またすぐに再開するわ」

 

地上の機動外殻を見るとプレシアの召喚魔法で呼び出された大きな鎖で縫い付けられ、ガシャガシャと僅かに駆動音を響かせながらも完全に固定されていました。

今ならどう料理するも自由自在の有様ですね。

 

「まだダイエット運動続けるんですか?」

 

一応聞いてみると。

 

「ダイエット運動?何を言ってるのよあなたは。私は別に太ってないのだからダイエットの必要もないわよ。むしろ標準よりやせ気味だからもっと食べたほうがいいはずよ。でも言ったように最近運動してなかったからこれはいい機会なのであって決してダイエットとかいう行いではないわ。もう一度言うわよ。私は太ってない。分かった?分かったら返事なさいコロスワヨ」

「は、はい、もちろんプレシアは太ってなんかいないです!」

 

肯定しなければ酷い目に遭う。

過去、時の庭園でプレシアから受けた責め苦、それに伴う怒気やら殺気のような威圧感を今の彼女から感じます。

 

「ええ、そうよ。私は太ってない。あのロクデナシ馬鹿男の思い違い。私はただ健康的に運動したいだけなのよ」

 

ついさっきまで、トルクやパワーが車の数百台分はあるであろう機動外殻と綱引きをしていたはずですが、あれも『健康的な運動』の範疇なのでしょうか?

 

「あなたも見てばかりじゃなく、一緒に運動しない?あ、別に他意はないわよ?私もあなたも太ってはいないんだから。でも、まぁもし万が一億が一、体型が変わりそうな時の予行演習も必要でしょ?」

 

台詞の後半部分の言い訳がましい必死さは聞こえなかったとして。

誘っていただけるのは嬉しいですし、使い魔として付き従う気持ちもありますが……。

 

「いえ、今回は遠慮しておきます」

「そう?」

 

私にそこまでのガッツはありません。

それに。

 

「ここ半年で気づいたんですが、体質なのか、私っていくら食べても体型は全然変わらないみたいなんです」

 

その時、私は思いました。

目は口ほどに物を言う、けれどやっぱり口には勝てないんじゃないかって。特に浅慮な事をつい言ってしまうこのお口には。

 

「………………………………………………………………………そう」

 

かつての時の庭園で感じたあの威圧感、それが優しいそよ風だったんだと感じる程のプレッシャーがプレシアから噴出されました。

気のせいでしょうか、彼女の背後に『ゴゴゴゴッッ』という文字が浮かんでいるのは。

気のせいでしょうか、彼女の瞳から赤い涙が流れているように見えるのは。

気のせいでしょうか、彼女の口元が歪んでノコギリで鉄板を無理やり切ろうとするような嫌な歯軋り音が聞こえるのは。

 

……気のせいだったらいいなぁ。

 

「あ、いえ、あ、あの、その」

 

特に運動もしていないのに体中から汗が吹き出てくる感じがして、さらに背筋がゾクゾクとします。

改めて、私は地雷を踏み抜いてしまったんだなぁと思いました。

 

「……それじゃあ私は一人でまた行って来るわね。ただリニス、次からは言葉には気をつけなさい?」

 

しかしプレシアは地雷の爆風を受けて尚、私には一言だけの忠告ですませ、平静を装ってまた機動外殻の方へ。『……確か自動修復機能がついてるんだったわよね』、そう呟きながら眼下へと降りていきました。

ほどなく、轟音と破壊音が夜空に響き渡りました。もちろん、コアを破壊しないように攻撃箇所は調整しているようです。

 

(……機動外殻さん、ごめんなさい)

 

ダイエットマシーンのみならず、私の不用意な発言でストレス解消のサンドバックにも成り果てた機動外殻には謝ることしか出来ない私。

 

加えて。

 

(……プレシア、ごめんなさい)

 

そのやり方もダイエットにはなるでしょうけれど、それ以上に筋肉が上量して結果的に体重は増えてしまうと思いますよ。

なんて、必死に頑張ってるあなたに言い出せない弱い私を許してください。

 

最後に。

 

(……プレシア、もう一つごめんなさい)

 

プレシアには幸せになってほしい。これは紛れも無い本音ですが……私、隼×ザフィーラも見てみたいんですっ!ザフィーラ(写本)×隼×ザフィーラ(夜天)でも可!むしろ応です!

 

この可能性を捨てきれない罪深い私を許してください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スプライト、ゴー!!」

 

主からのお任せコールを貰ったボクは一直線にロボットの元へとフライアウェイ!

 

見たところロボットたちはそれぞれが別方向に向かってる。たぶん、ボク達の張った結界の外に出る気だ。きっと外で街を破壊するんだろうなぁ。結界の中でいくら壊しても直っちゃうし。

 

「だけどそうはボクが卸さなーい!」

 

外に出られたら遊べなくなっちゃう。

前、主から遊ぶ時は異世界か結界内だけだって言われたからね。

 

「今日は思う存分遊んじゃうもんねー!」

 

さっきフランから念話があって、どうもあのロボットには『じどーしゅーふく』なる機能があって、コアを壊さなきゃ足とか手とか壊してもすぐに直っちゃうらしい。

それはつまり、ずっと遊んでいられるということ!ずっとボクのターン!夜天ソウル発動!

 

「やったね!最近、遊び相手はフェイトとかシグナムばっかりだったから飽きてたんだよねー」

 

しかもフェイトはすぐに遊び疲れちゃうし、シグナムは殺気ビンビンで斬ってくるから楽しくないし。

だから今晩はボクの心行くまでいっぱい楽しもう!

どうせはやてが帰ってこなきゃ先に進まないし、進んだ先も主が独占しちゃうだろうし。遊べるのはきっと今だけ。

そう考えると、他の2つのロボットに誰が行ったのか知らないけど、たぶんその人たちも時間かけて遊ぶだろうなぁ。よし、ならやっぱりボクもそうし──

 

「いや……いやいやいや、待て待て待てよ?」

 

──瞬間、ボクの天才的頭脳にピシャーンと閃き来たる。

 

他の人たちも遊ぶ。するとロボットの破壊に時間が掛かる。

けれど。

ボクは遊ばずロボットを倒す。すると一番早く主のところに戻れる。

つまり。

一番乗りで颯爽と主の下へボク到着。すると主がそれを褒めてくれる。

 

『流石はライトだな。俺が一番信頼し、信じていて、頼りにしている、最高に愛しい子だ。さあ、俺の、俺だけのライト。こっちにおいで、ご褒美をあげよう』

 

結果。

頭を超わしゃわしゃ撫でられる。

 

「じゅるり、にへへへ~……ハッ!?いかんいかん」

 

ソロバンもびっくりな高度な演算によって導き出された未来を想像して涎が。

 

「こうしちゃいられない!そうと決まれば遊ぶなんて却下だ!」

 

何して遊ぼうかと考えていた頭を切り替える。テキトーに飛行していたギアを切り替える。

誰よりも早くロボットを壊し、誰よりも早く主の下へ!そしてこの頭にわしゃわしゃを!!

 

「届け、うんようの速さまでー!!!」

 

ボクが出せる最高速度でロボットへと爆翔。爆接近。

目標は一番近いやつ!

手にはバルニフィカスがすでに大剣状態。さらにそこから刀身をぐぐぐ~んと伸ばし、真一文字に構える。

ロボットがボクの接近に気づき身体を向けようとしてくるが遅いトロイ鈍間!

 

目標はロボットのど真ん中。なぜなら、弱点は中心にあると相場は決まってるから!

 

「バルニフィカス───一文字斬り!どっせぇぇええい!!」

 

ロボットの横を翔け抜けざまに一刀両断。まるで木綿豆腐……あれ?絹だっけ?汲み出し?揚げ出し?まぁいいや。とにかく柔っこいシャマル特製豆腐を斬るようにズバッと真っ二つ!

 

けれどしかしまだまだボクのターンは終了していない!なぜなら、弱点は頭部にもある可能性がある事を思い出したから!!

 

急停止してロボットの下に急下降。バルニフィカスを右脇に構え直して剣先も下げる。

そして。

 

「やっさいもっさい!もってけダブルだぁ!ちょっせぇぇええい!!」

 

弧を描くように斬り上げながらボク自身も急上昇。人で言うところの股下から頭にかけて、今度は縦に一刀両断。

 

ロボットは、さっきの一刀と合わせて綺麗に十字に分断された。

切り口からバチバチとスパーク音が聞こえ、ほどなく4つに分かれたロボットは大きな音を立てて崩れ落ち──。

 

「ヒートゥ……エンド!」

 

大・爆・発!直る気配は……なし!

 

「くぅ~、やっぱりボク最強!イエイ!」

 

まっ、ボクがちょ~っと本気を出せばこんなもんだよね!主のもとから飛び立ってまだ数分しか経ってないよ。

さてさて、それじゃあさっさと戻って主に撫で撫でしてもらっちゃお!他の所は……うん、どうやらまだ遊んでるみたいだ。つまりボクの一番乗りは間違いな~し!!

 

「それじゃも~どろ!」

 

身体を反転させ、目指すは主のいる方角へ。魔力はまだまだ十分残ってるから、ここに来た時と同じ……いや、それ以上の超速で主の下へ。

ボクは今日、光を超える!!

 

「スプライト、マッハゴーゴーゴー……はっ!?」

 

───その時、ボクの身体に電流奔る!!ざわざわ!?

 

(……もし、仮にボクが怪我をして戻った場合、主はどう反応してくれるだろう?)

 

ボクは今まで怪我らしい怪我をしたことがなかった。普段の生活では言うに及ばず、皆との喧嘩の時でさえかすり傷くらいしか出来たことがない。それは我ながらすごいことだと思う。まぁ、最強だから当然なんだけど。

でも。

ここで思い出してほしい、ボク。以前、アリシアが主と一緒に折り紙をして遊んでいた時の事を。

あの時、アリシアは紙で指を切っちゃって泣き出した。ボクはドジだなぁなんて思ったけど、そこで主が慌てた様子でアリシアを抱きかかえてソファに座らせ、指の傷口を舐めて絆創膏を張り、泣き止むまで膝の上でひたすら頭やら背中やらを撫でていた。

その時、ボクは思ったはずだ。───なにあれ天国だ、と。

 

つまり、ここでボクが怪我をして帰ったらあの時のアリシアにしていた事をボクにも?いや、指を切る程度じゃなくてもっと大怪我をしたら?

 

『そんな、俺の最強のライトが怪我なんて……。大丈夫か?痛むか?よし、すぐに治してやるからこの膝の上においで。……ん?舐めて欲しい?撫でて欲しい?ああ、もちろんだとも。お菓子も欲しい?たんと召し上がれ。そうだ、夜も心配だから今日は一緒に寝ようか。ああ、子守唄&腕枕つきだ』

 

なんて事になる可能性、極めて高し!

 

「ボクって……天才?」

 

天才とは99%の才能と1%の努力と1000%の主愛!By天才・ライト!

改めてこうしちゃいられない!早く怪我しなくちゃ!!

 

「バルニフィカスで首切る?いや、お腹あたりかな?……だめだめ!あんまり大怪我過ぎると病院に連れてかれちゃう!病院やだ~。うーん、程よい怪我はどうすれば……」

 

ふと、ロボットの残骸が目に入った。

 

……あれだ!

 

「あれを頭に……いや、頭は撫でてもらうから額だ!額に落としてタンコブをつくろう!」

 

そうと決まれば即実行。

ボクは壊れたロボットへと近づいて手ごろなのがないか探してみると、ちょうどボクの頭くらいの大きさの残骸が落ちていた。まるで「ようこそ。私はあなたの額にジャストフィットですよ」と言わんばかりだ。

天が味方してる!

ボクはバルニフィカスを傍に置き、代わりに残骸を持った。

 

「よいしょっと!むっ、お、おお……なかなかの重さだ。でもこれなら!」

 

言ったようにボクは今まであまり怪我をしてこなかった。それはつまり頑丈だということだ。なら多少重めの方がいいはず!

シグナムとかはやれ「紙装甲」だ、やれ「回避特化」だって言ってるけど、そんなわけがない!

 

「よし、いっくぞ~!」

 

自分の類い稀なる頑丈さを少しでも軟くするために騎士甲冑は全部脱ぎ脱ぎ!さらに魔力強化を残骸を持ち上げるこの腕以外カット!

さあ、時は来た!いざ、主が迎える天国へ!!

 

「とぅおりゃああああああ!!」

 

ありったけの力を込めて真上へと放り投げる。残骸はおよそ5メートルの高さで僅かに滞空、そして重力に従って落ちてきた。

ボクは額で迎え撃つべく位置を調整。天を仰ぎ見る。

 

「さあ、バッチこ~~~~~~~」

 

───着弾。同時に

 

「~~~~~~い゛ぎ!?!?!?!?!?!?」

 

額からバキンって音がして、そして首からメギャって音がして、さらに多大なる衝撃も襲った。一瞬、目の前がチカチカと明滅したと思ったら、何故か急速に意識が遠のいていっているのを感じる。

 

「はにゃ、ひにゃ」

 

身体が自分のものではないような。あるいは地震でも起きているのかと思うほど、足元が定まらず身体に力が入らず右にふらふら。左にふらふら。

 

あ、これダメだ。倒れる。……そう思ったとき、たぶんボクはもう倒れてて。

 

「ふやぁ~~……がくり」

 

意識もなくなった。

 

《………AHO》

 

最後にそんなバルニフィカスの呟きが聞こえたような、聞こえなかったような。

 

無念。ばたんきゅ~。

 

 

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