死ねない死にたがりとステュクスの娘   作:侵蝕トンネルと聖杯ダンジョン

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三度目の再会は花の海で

苦節多分数千年。長すぎて覚えてないけど、僕はようやく死を迎える事ができたらしい。

なぜ分かるのかって?ここが冥界で、その冥界に死のタイタンの権能を継いだキャストリスが居るからに決まっているだろう。ここに僕も居るってことは僕も遂に死んだってことなのさ。ひゃっほう!

年甲斐も無くはしゃいでたらキャストリスに怒られたよ。

 

「少し落ち着いてください」

「ごめんなさい」

 

解放されて舞い上がっちゃったんだ。許してほしい。

 

「……あの後、どうなったのですか?」

「あの後?」

「私達が撤退する中、暗黒の潮とニカドリーを抑える為に殿として残った後の事です」

「あー、確か、造物どもを蹴散らしたニカドリーにボコボコにされて、そのままクレムノスに連れていかれて閉じ込められてた。ニカドリーのせいで逃げられなかったんだ」

 

実際は磔にされてたんだが、そんなことをキャストリスに言う必要はない。

 

「死ねたら別の場所で目覚めるから抜け出せたかも知れないけど、できない状態だったしなぁ。長かったよ全く」

「ニカドリーが倒されたから抜け出せたのですか?」

「多分ね。いきなり解き放たれてビックリしたよ」

 

城壁に槍で磔にされてたんだけど、身体を刺してた槍やら剣やらが消えてさ。転がり落ちたよ。何も考えないようにしてたからすぐに受け身なんか取れなかったし。

 

「その後はクレムノスから出る為に歩き回ってた。そしたら暗黒の潮も出てくるし、なんか他の所でも戦いが始まるしでもう滅茶苦茶だった」

「フレイムスティーラー……」

「一際大きな衝撃の後しばらく静かになったから終わったのかと思って休んでたら、今度はクレムノスが暗黒の潮と正面衝突始めてね。解放されてから死ぬまでずっと大変だった」

「モーディス様とは会わなかったのですか?」

「会った会った。死んでからだったけど」

 

クレムノスで死んだ後、次に目覚めたのは全く知らない土地だった。廃れた古城に流れる黒い川、隣にはやたらピカピカ光ってる不死友。彼は僕の姿を見て珍しく驚いたような顔をしていたね。

 

『お前は……ゼフィテロス……か……?』

『久しぶりモーディス。元気してた?てか、なんでそんなモッサリした喋り方してんの?最近の流行り?』

『やかましい…………』

『黙んないでよ。ここ何処か分かる?クレムノスで死んで目が覚めたらここに居たんだけど』

『お前も……クレムノスに……居たのか……』

『そうそう、ニカドリーに攫われてそのままずっと磔になってた。最近解放されてね』

『そうか……ここはステュクス……生と死の境だ……』

『マジ?じゃあここスティコシアなの?』

『……そうだ……』

『じゃあこの川ステュクス?』

『……そうだと……言っている……』

『ひゃっほーい!』

『バカが……!』

 

ステュクスに飛び込もうとした僕をモーディスが引き止めた。

 

『なに?まだ『ステュクスに飛び込む』は試してなかったからしてみたいんだけど』

『そんなことせずとも……ステュクスの中から生きて戻った者が……此処に居る……無駄だ……』

『やってみなきゃ分かんないだろ』

『……ハァ……やりたければ好きにしろ……苦しむだけだろうが……俺はクレムノスに戻る……』

『おう、またなー』

『……HKS(阿呆が)……』

 

モーディスと別れて、ステュクスに飛び込もうとしたらまた暗黒の潮の造物に邪魔されたり、変な虫に付き纏われたり色々あったけど、最終的にステュクスに飛び込むことができて、気付いたらここにいたって感じ。

 

「そうだったのですね……」

「何はともあれ、またキャスと会えて嬉しいよ」

「私もゼフィに会いたいと思ってました。もう会えないと思っていましたので……。ただ、少し気になる事が……」

「ん?」

 

キャストリスが僕をじーっと見つめながら、周りを一周二周する。何かおかしい所でもあったのか?服がボロボロなのは許してほしい。身なりを整える暇なんてなかったんだ。

 

「やはり……」

「どうかした?ハグでもしたい?」

「遠慮しておきます。体温(ぬくもり)はもう他の方からお借りしましたので」

「え、キャスとハグしても死なないヤツ居たの!?」

「えぇ、まぁ。実は既に死んでいたっていうオチでしたが」

「ジョークにしては黒すぎる!」

「そして、私が救うことのできた唯一の命でもあります」

「感動した!」

 

すげぇ、僕が磔にされてる間にキャスが滅茶苦茶成長してる……いいなぁ、僕もその場に居たかった。

 

「キャスの話も聞かせてほしい。あれからどんな素敵な物語があったのかを、詩とかで」

「少し静かにしてください。集中したいので」

「あ、すみません」

 

キャス……成長したなぁ。それだけ色んなことを経験したんだろうなぁ。しかし、キャストリスがここまで夢中になる人物……どんなヤツなんだろう、会ってみたいな。無理だろうけど。

 

「ゼフィ。あれ程喜んでいたところ言い難いのですが……」

「ん?なに?」

「あなた、まだ死んでいないようです」

「は?」

 

は?

死んでない?僕が?死ねてない??

 

「いや、いやいやいや、だってここ冥界で……」

「正確には、生きながらに死んでいて、死んでいないけど生きてもいない。そんな状態です」

「んんん?」

「私が冥界の門を開いた事と、ゼフィの体質が引き起こした不測の事態でしょうか。ステュクスの中で死に、次の目覚めの場所が冥界になってしまったのでしょう」

「はぁ……じゃあ結局、また死に損ねたのか」

「本来、冥界に生者が居るべきでは無いので送り返すべきなのですが、ゼフィの場合それも無理です。死してここに来た事に変わりは無いので……状況はかなり複雑なようですね」

「でもキャスが居るだろ。なら僕は構わないよ」

 

オンパロスに未練があるワケでも無いしね。

友人はまだ戦っているだろうけど、みんななら大丈夫でしょ。

 

「そうですか。では……新世界の訪れまで、お話でもしましょうか」

「いいね。クレムノスに囚われてる間、キャスがどんなことを経験したのか気になってたんだ」

「ずっとボーッとしてたゼフィと違って、私は色々な事をしてきたので長くなりますよ」

「ホント変わったな……。良いよ、時間はたっぷりあるだろうから、いっぱい語ってよ」

「分かりました。……こうして二人で並んで座って、なんだか懐かしいですね」

「だね」

 

新世界、ね。やっぱファイノンが頑張んのかな。

アグライアの考えてる事はイマイチ分からんが、踏ん張ってほしいモンだ。ファイノンはやればできる子だからな。




ゼフィテロス:キャスは最も親しい友人

キャストリス:ゼフィは特別な友人


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