死ねない死にたがりとステュクスの娘   作:侵蝕トンネルと聖杯ダンジョン

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ここから先は幻覚に異物を混ぜていきます。
もう色々と不穏すぎるので思い出くらいポカポカしていてほしい。ホヨバースは責任とって腕相撲大会のシナリオを書くべき。

サフェルとキャストリスの関係が「親友」なのめちゃくちゃ良くないですか?


思い出話〜腕相撲大会〜

誰が最初にやると言い出したか腕相撲大会。

もはやオクヘイマの伝統行事になりつつあるこの腕相撲大会、近年はモーディスが連続優勝している。

ヤツを超えるべく僕とファイノンは共に並んで腕立て伏せ三百回三セットを毎日行い、筋肉を磨いた。それはもうピカピカになるまで。大地獣の隣で、槌を振るハートヌスの隣で、生命の花園でキメラたちに囲まれながら、僕とファイノンは腕立て伏せに励んでいる。今この瞬間も。

 

「うおおおおおお!」

「はぁあああああ!」

「二人ともよくやるなー、『ボクたち』には難しいや」

「あたしからすればいつものバカ達がバカやってるなーって感じだけどね」

「もうフェルちゃんたら、口が悪いぞ」

「トリアン姉さんだって丁寧な口調じゃないじゃん」

「あ、それもそうか。あっははー」

「うおおおおおおお!」

「ハァアアアアアア!」

「いい加減うるさい。あんた達がどれだけバカやってようが構わないけどさ、ピュエロスでやんないでくれる?」

「うぐおおおおおおおお!」

「ハァアアアアアアアア!」

「やめろっての!」

 

腕立て伏せを頑張る僕とファイノンの脇腹にサフェルの鋭い蹴りが炸裂、僕たちは堪らずダウンした。

 

「お、ごぉっ、ほっ……死ぬ時より苦じい……いっそ殺じでぐれ」

「うぐぅ……す、すまない、つい熱が入ってしまったよ……止めてくれてありがとう」

「二人して大袈裟すぎ。んで、時間と場所を考えなって」

「汗を流しに来たはずだったんだけどね……」

「まぁまぁフェルちゃん、二人ともそんだけ気合い入れて今度の腕相撲大会に挑もうとしてるってことだよ」

「なおさらバカじゃん」

「ハハ、返す言葉も無いな。これ以上ここにいるとアグライアにも小言を言われそうだ、僕たちはそろそろ行くとするよ。ほら行くぞ、ゼフィテロス」

「おんぶ……」

「はいはい。じゃあ二人とも、また」

「うん。バイバイファイちゃん、ゼフィちゃん。今回こそモスちゃんに勝てるよう、頑張ってね!」

「ばいばーい」

 

ファイノンの肩に担いでもらってバルネアを後にしたよ。サフェルのヤツ、僕の事だけ思いっきり蹴りやがった。ファイノンはそこそこだったのに僕だけ全力で。死んでも死ねないだけで痛いモンは痛いんだぞ。

 

「もう下ろしてもいいか?」

「おう、ありがとうねぇ」

「どういたしまして。で、どうだい?僕はモーディスに勝てそうか?」

「ハッキリ言って分からん。ヤツの鍛錬は日頃からお前の数倍ある。僕で換算するなら一足してから百倍はあるだろう。これだけ腕立て伏せをしても地力をひっくり返せるかは五分五分って所じゃないか?」

「五割もあるなら十分さ。更に腕立て伏せをして差を埋めるまでだ」

「よし、頑張るぞー!」

「おう!」

 

待ってろよメデイモス!絶対腕相撲で負かしてやるからな!

そう意気込んだ僕たちはその場で腕立て伏せを始め、アグライアから遣わされたラフトラに交通の邪魔になるからすぐにやめなさいと怒られた。

 

 

 


 

大会当日。トリビーの元気な実況、トリノンの冷静な解説の下始まった腕相撲大会。何の因果か、僕の初戦の相手はモーディスだった。

 

「揃って無駄な足掻きを続けていたようだが、俺の勝利は揺るがない」

「言ったなコイツめ、秒殺して泣かしてやるよ」

 

お互いに一言ずつ交わし合い、右腕をステージの平らな岩の上に置き握り合う。後はトリアンが握りあった僕とモーディスの手の上にその小さな手を乗せ、開戦の火蓋が切って落とされるのを待つのみ。

 

「それじゃあ握って〜……力抜いてね〜……レディー、ゴー!」

「フン!」

「ハァ!」

 

合図と同時に力を込め、全体重を右腕に乗せて振り切る!勝った!バキゴキと変な音がした気がするがきっと気のせいだろ!どれ、無様に負けたメデイモスくんでも見てあげようか──

 

「ハァん!?!?」

「ふん、他愛ない」

「あ、あーっと、これは大変……」

「肘の関節が逆に曲がってる……肩も外れてる……」

「きゅ、救護班!すぐにヒアンシーちゃんを呼んできてー!」

 

僕はここでドクターストップとなったよ。

 

「次は誰だ」

「僕だ」

 

次いで現れたのは救世主ファイノン。頼む、僕の仇を取ってくれ。

 

「メデイモス、今回の大会は僕が勝たせてもらうよ」

「軟弱なお前に俺が負けるなど有り得ん」

「はい握って〜力抜いて〜……レディー、ゴー!」

「「ハァ!!」」

 

合図した瞬間、二人の闘気がぶつかり合う。

拮抗。互いに微塵も動かない。身体が力によって震えている。

 

(コイツ……!前よりも数段腕を上げている!)

(負けてたまるか……!)

「す、すごい……!」

「完全に互角」

「ファイちゃんもモスちゃんも、どっちも頑張れー!」

「モスちゃんが少しリードちてる!頑張れー!」

(この……腕ごとへし折ってやる!)

「おお!ファイちゃんも持ち直してきた!頑張れファイちゃん!」

「ぐぬおおおおおお!!」

 

再び拮抗。永遠に続くかと思われた膠着状態は、まさかの展開で終わりを迎えた。

 

ビキッ、ビキッ、ミシッ……。ステージの岩が二人の力によって粉々になってしまったのだ。勢いのままに、二人は地面に倒れ込んだ。

 

「あ、あー!どっちが勝ったの!?」

「こ、これは……!」

「俺の……勝ちだ」

 

勝者はメデイモス。

腕を倒されていたのは、ファイノンだった。体格の差、体勢の差、僅かな差が勝敗を分けた。

 

「勝者モスちゃーん!」

 

トリビーのコールと共に観客、主にクレムノス人たちから特大の歓声が上がった。

 

「ふぅ……また負けてしまったな」

「だが、前よりも遥かに力を増していた」

「次は勝つさ」

「次も負けん」

 

固い握手を交わし、ファイノンは下がっていく。

粉々になった岩の代わりに、木製のテーブルと椅子が運ばれてきた。

優勝を決める戦い、モーディスの対戦相手が観衆を割って姿を現す。コツ、コツとヒールの音を響かせながら、キャストリスがテーブルの前に立った。

 

「私です。よろしくお願いします、モーディス様」

「……一体なぜ腕相撲大会に申し込んだ?」

「その、サフェル様が勝手に申し込みを……」

 

さっきまでの歓声や熱気は消え、お通夜のような雰囲気が会場を包んでいた。

 

「はぁ……俺は戦場で死ぬことは厭わん。だがな、こんな催しで死ぬなど意味が分からん」

「……申し訳ありません……」

「じゃ、じゃあモスちゃんは棄権で優勝はキャスちゃんで──」

「待った!!」

 

沈黙の漂う会場に、虚無のまま終わろうとしていた大会に待ったをかける者が居た。

そう、ヒアンシーに肩を入れてもらって関節を戻してもらった僕だよ。滅茶苦茶痛かった。

 

「なぁメデイモス、お前が勝てないと判断したキャスに僕が勝てば、それはお前に勝ったと言ってもいいよな?」

「は。好きにするといい」

「言質取ったり!やろう、キャス!」

 

少しでも盛り上げようとテーブルの上に勢いよく腕を乗せる。滅茶苦茶痛い。

 

「ゼフィ、前から言ってますよね。死は遊びでは無いと……口を酸っぱくして言っていますよね」

「分かってる。だけどね、男には引けない時があるんだ。今がそうだ!」

「はぁ……あまり気は進みませんが、仕方ありませんね」

 

キャストリスが席に着き、僕と腕相撲の姿勢に入る。最も手を握るのはスタートしてから。通常みたいに握りっぱだと始まる前に死んじゃうからね。

 

「じゃあこれはエキシビションマッチってやつかな?二人とも、準備はいい?」

「オーケー」

「大丈夫です。はぁ、気軽に死に触れるのは良くないと……」

「だけどキャスだって人肌恋しくなった時は僕を──」

「だ、だめ!」

 

スタートの合図を待たずにキャストリスが僕の手に触れ、油断していた僕はそのまま腕を倒されて死んだよ。

 

「これは……えっと、どうなんの?」

「勝者キャスちゃんでいいんじゃないかちら?」

「阿呆のせいで締まらんな」

「あはは……」

「じゃ、じゃあ優勝はキャスちゃーん!おめでとー!」

「おめでとーキャスちゃーん!」

「おめでとうキャスちゃん」

「おめでとう、キャストリスさん」

「ふん……」

 

後にトリアンから聞いた話によると、拍手が飛び交う中、顔を真っ赤にしたキャストリスが表彰台に立ったらしい。

まさかキャスにも腕相撲で負けるとは思わなかったな、本格的に鍛える必要がありそうかな?鍛錬とかあんましたくないんだけど。

 




ゼフィテロス「実はキャスと旅を始めてから結構死んでる」

キャストリス「言っていいことと駄目なことがあると思います」

ファイノン「流石に腕相撲でキャストリスさんには勝てそうに無いな」

モーディス「そもそも勝負にすらならん」

トリビー「みんなよく頑張ったね!『あたちたち』からすればみんな優勝だよ!」

トリアン「ゼフィちゃんはともかく、ファイちゃんは特訓の成果がしっかり出てたな!」

トリノン「ゼフィテロス、肩と肘があんなになってもすぐに動けるなんて回復力すごいんだね……」
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