死ねない死にたがりとステュクスの娘 作:侵蝕トンネルと聖杯ダンジョン
黄金戦争以降新たな黄金裔は生まれなかったっていうのも鵜呑みにして黄金裔全員長寿説を推進していきます。
せめて黄金裔全員の年齢を出して欲しい。明確に判明してるのトリビーだけじゃん……。大雑把にキャストリスがこれくらいかなーくらいしか分かんないじゃん……。
光歴3950年。黄金戦争とやらで世間は騒がしくなる一方。
僕とキャストリスの二人旅が始まってからどれくらい?数えてないけど多分1000年行くか行かないかくらい。
「キャストリスは覚えてる?」
旅の休憩がてら火を起こし、焚き火を囲みながらキャストリスとの雑談の種に聞いてみる。
「大体1000年程かと、あまり細かくは覚えてませんが……すみません、ゼフィテロス様」
「気にしなくていいよ。それにしても、もう長いこと旅をしてきたんだなぁ」
「はい。タナトスの行方の手がかりについてはさっぱりですが……やはり、あのお方の言う預言……『神託』を信じてみても……」
「んー、それなー……なんか眉唾じゃん。正気か?って感じ」
ト……トリ……べー?なんだっけ、
新手の詐欺か、宗教勧誘かな?
「キャストリスには分からないかもしれないが、ああいう手口を使う悪いヤツってのは多いんだ」
「ですが、あのお方は嘘を言っているようには見えませんでした」
「何も知らない無邪気な子供を利用してるだけかもしれないでしょ」
「そうでしょうか……」
「ま、ワケ分からん事言う人には着いて行かないに越したことはないよ」
まぁあの子、多分ただの子供じゃないだろうけど。タイタン辺りに呪いでも貰ってるんだろ。
なんて話してたら僕たちの前に三角の扉が開き、その向こう側から金髪の麗人が現れた。その後ろにはこの前のちっちゃな赤髪の子。
「では、論理的に説き伏せるとしましょうか」
「ごめんね、あなたにはどうちても一緒に来てほちくて……」
どうやら助っ人を連れてきたらしい。
「ボスの登場かな?」
「これはカイザーの指示でもあります」
ボスはそっちだったか。
明らかにヤバそうな連中だったから関わらないようにしてたのに、そっちから来るのか……。
「そんで、なんの用で?」
「隣りの彼女、キャストリスを火を追う旅に招集したいのです」
「それはこの前後ろの子に聞いたよ。トリベーって言ったっけ?そっちのアンタはそもそも名前すら知らないけど」
「ううん、『あたちたち』はトリビー。自己紹介が遅くなってごめんなさい」
「……私の名はアグライア。オクヘイマの
「永遠の聖都……」
キャストリスが呟いた通り、オクヘイマはオンパロスの主要都市であり、ケファレを信仰する最も平和な聖都。そういえば最近、そのオクヘイマで色々あったらしい。ケファレが夜を無くして死んだとか、その際どデカい神託を遺したとか。あんま興味無いんで覚えてないけど。
そういえばこの神託が原因で戦争が起きたんだっけ?長生きしすぎると時間感覚が曖昧、適当になってダメだね。
「火を追う旅だっけ?タイタンを下してその火種を回収して……どうすんの?」
「ケファレの『創世の神託』に従い、神々の火種を集めて、オンパロスに再創期をもたらすの。そのためにも、彼女には力を貸ちてほちい」
「それは
「少ち前って、会いに来たのはもう100年くらい前じゃなかったかちら……」
「僕とキャストリスにとっては少し前だよ」
「私にとって100年前はかなり前ですが……」
キャストリスさん、余計な口を挟まないでね。今高度な心理戦の最中だから。
「僕が聞きたいのは、その再創期とやらの先にあるものだ」
「それは……」
「黄金のように輝く素晴らしい世界があります」
ふぅん。黄金のように輝く世界、ね。
「それって黄金期みたいな?」
「似たようなものと捉えていただいて構いません。それよりもすごいものですが」
「それってもしかして、人が死ぬ事の無い世界とか?」
「約束しましょう」
はーん。
「なら僕はお断りだね」
「なっ──!」
「何故過去に黄金期なんて物があって、それが終わりを迎えたか、考えたことは無いのか?」
俗に言う災厄の三タイタン、「
中でも黄金期末期に最初に生まれたタナトス。何故、死という終わりが存在しない黄金期に、タナトスが誕生したのか。
それは、終わりの無い世界は生きていないのと同じだと考えるヤツが居たからだろう。実際はどうかなんて知らないけど、体験談としての実感がある。
コレはキャストリスにとって、極めて重要かつ出来れば自分自身で気付いてほしい事だからここではこれ以上話さないけど。
「……あなたも黄金裔なら、分かるはず──」
「僕は黄金裔じゃない」
「──は?」
麗人の言葉を遮って、僕は言う。僕は黄金裔では無い。
「実際に見せるのが一番手っ取り早い。キャストリス、ごめん。後の説明任せる」
「はぁ……ゼフィテロス様、あなたは気軽に死に触れすぎです。遊びでは無いのは分かっていますが……」
キャストリスのお小言を聞き流し、僕は葬送の刃を手に取ってその刃を自分の首にかけた。
彼が突然大鎌を手に取り、臨戦態勢を取る私とは裏腹に、彼は自らの首にその刃をかけ、振り下ろした。
当然、首が落ち、切り口からは鮮血が舞う。黄金のものはなく、赤黒い人の血が。
「な───!!」
「きゃあああ!!」
師の絶叫と共に、屍となった彼の身体が崩れ落ちるように地に伏した。
「一体何を考えて──!」
「ゼフィテロス様は特殊な方です。人間の身でありながら、死に拒まれています」
死に、拒まれる?
「よく、見ていてください」
彼女に言われるまま、感覚を彼の死体に戻す。
すると、彼の姿が朧気になっていくのが感じ取れる。
程なくして、彼の死体は姿を消した。
「これは……」
「今頃、ゼフィテロス様は何処かで目を覚まし、こちらへ戻ってくるでしょう」
「彼は、一体何者なのですか?」
「……私にも分かりません。彼は自身の死を求めて旅をしています」
「死を……」
「どうちて、あの人は死を求めているの?」
「……きっと、彼にしか分からない事なのでしょう。死ぬ事の無い、死ねない世界のことを、私は分かりませんので……」
……死にたくても、死ねない身体……世界。
もし、私が不死の存在になったとして。死のない世界に何を感じるのでしょうか──。
「……キャストリス、改めてお聞きします。火を追う旅の招集を受けては頂けませんか?」
「私は…………」
一昨日立ち寄った小さな集落で目覚めた僕は全速力でキャストリス達のいる場所に向かっているよ。
死んで目覚めるのはもうほぼ諦めたからいいんだけど、死んだその場じゃなくてちょっと離れたところで目覚めるのマジでなんなんだ?たまにそこそこ近い時はあるけど、それでも結局急いで戻んなきゃいけないのは変わんないし。
今回のはまだ近い方だ、酷い時は都市国家の端から端まで行かなきゃいけない時もあったし。
……半日ほど全速力で走ったら戻ってこれたよ。やっぱクソだね。
あのあの麗人とちっちゃい子はまだ居るな。これで僕が黄金裔では無い事と、意味の分からない呪いを受けている事を分かってくれただろう。
「ゼー……ハー……ゼー……ハー……」
「お帰りなさい、ゼフィテロス様」
「た、ただ、いま、キャ……ゴホッ……」
「お水と拭き物です、お使いください」
「あり、がと」
キャストリスから水と布巾を受け取った。汗を拭い、水を飲んで爽快気分!
「いつも思うのですが、そんなに急いで戻ってこなくても……」
「んー……ま、僕がやりたいようにやってるだけだから気にしないで」
なるべく早く戻らないと、キャストリスを長く一人にさせちゃうし。
ま、今回は僕が居ない方が話がスムーズだったようだけど。
「ふぅ……んで、どうだった?」
「あなたが黄金裔では無いということは分かりました。ですが、それと同時に分からない事があります。その不死性が黄金裔の
「それは僕にもよく分からない……ただ、この呪いを僕に授けやがったヤツらはタイタンより上の存在だと思ってる」
「タイタンより……上?どういう事かちら」
「タイタンをも超える存在がオンパロスに居るとでも言うのですか?」
「いいや、オンパロスじゃない。もっと上……物理的にも、概念的にも」
「……まさか、天外の存在だとでも?」
「あ、ありえないわ!」
「て言ってもな、一度見てんだからしょうがないだろ。腕が何本もあって顔に目がいっぱい付いてるヤツ、やたらウネウネした顔の無いヤツ、姿は見えないのに確かにそこに存在してた何か……思い出したくもない」
今でも覚えている。初めて死んだ時、僕は黒い空を漂った。何も無かったソコにそいつらが現れ、それぞれが僕に手を伸ばし、僕の身体を握って潰した。
すると目が覚めて、死ぬ前に戻ってたってワケさ。
「最初は夢か幻覚かと思ったけど、その後また死ぬ機会があってね。僕は確かに死んだのに、また目が覚めた。アレが夢じゃないと確信したよ」
「……分かりますか、我が師トリスビアス」
「……いいえ、今まで様々な文献を読んできたけれど、私も初めて聞いた。少なくとも、その特徴と当てはまるタイタンはいないわ」
お、トリビーの雰囲気が変わった。そっちが本来の彼女なのかな。
「まさか本当に……この事を人々に言いふらしたりしていませんよね?」
「言えるワケ無いだろこんな事。キャストリスが信用したアンタたちだから喋ったんだ」
キャストリス、あまり驚いたような顔はしていないな。
代わりにアグライアとトリビーの方が驚いてる。
「……ゼフィテロス、と言いましたか。気付いていたのですね」
「当たり前だろ、何年キャストリスと一緒に居たと思ってる」
1000年の付き合いだぞ。分からない事の方が少ない。多分。
「あなたの考えている通り、キャストリスは私達の火を追う旅の招集を受けてくれました」
「キャストリスがそれを受ける利点はあるのか?」
「私達は全てのタイタンの火種を収集します。その中には当然、タナトスも含まれます」
「タナトスの行方、知ってるのか?」
「今は分かりませんが、必ず突き止めます」
アグライアの目が強く僕の目を射抜く。強い目だ。人が持つ、強い意思の現れる目。
「キャストリスはそれでいい?」
「はい。トリビー様とアグライア様の言う、火を追う旅に同行する事が、タナトスに謁見する最善の方法だと判断しました」
「オーケー、キャストリスが納得してるんなら、僕からは何も言わない。僕共々よろしくお願いしますね」
「……あなたも来るんですか?」
怪訝かつ嫌そうな顔を隠そうともせずにアグライアが言った。
「少しは本心隠そうとしろよ。キャストリスがそっち行くんだし、元々僕もタナトスを探してたんだ、別にいいだろ。当然アンタらに協力はする」
「……使える手はいくらあっても構いません。あなた達をオクヘイマへ招待いたします。これからは道を同じくする友として、よろしくお願いいたします。キャス、不死人」
「は?」
なにキャストリスのこと愛称で呼んでんの?1000年一緒にいる僕だってまだ呼んだこと無いのに!
いやね、キャストリスの敬語……最低限様呼びが取れたら僕も「キャス」呼びするつもりだったのに一向に変わる気配ないんだもん。
「よろしくお願いいたします、アグライア様、トリビー様」
「やったね、これで一歩前進!これからよろちく、キャスちゃんに、ゼフィちゃん!」
「むっ……」
「ん?キャスちゃん、どうかちた?」
「いえ、何も……」
トリビーまでキャストリスを愛称で……。
まぁトリビーなら良いか。
「あぁ、よろしくトリビー、アグライア。ところでぇアグライア……不死人ってナニ。そんな不名誉な呼び方今すぐ辞めてもらいたいんだが」
「あなたみたいな人にはこのような呼び方が相応しいかと思いまして」
「僕、お前の事嫌いだわ」
「奇遇ですね、私もです」
「ケンカちないでー!ほら、オクヘイマに帰るよ。ここからだとかなり距離があるから、特別に百界門を開いてあげる」
僕達の前に、三角の扉が開いた。どうやら、この先がオクヘイマに繋がっているらしい。
「便利だね」
「あまり乱用はできないち、『あたちたち』はそんなに上手に百界門を作れないんだ。一番上手な門職人はね、トリアンって言うんだよ」
「へー」
「向こうに着いたら案内してあげるね。もち迷ったら、『あたちたち』になんでも聞いて!」
アグライア、トリビーの順番で百界門の向こうへ。
キャストリスは門の前で足を止めた。
「どうかした?」
「……いえ、なんでもありません。行きましょう、──ゼフィ」
「────ああ。行こうか、キャス」
ゼフィテロス「再創期の先にある黄金のように輝く世界とやらはどうでもいい」
キャストリス「ゼフィが気軽に死を選ばないよう、強く言い聞かせます」
アグライア:3.3ストーリーで光歴3900年には半神になってそうだったので半神です。
やっぱり数百年じゃなくて1000年半神やってるじゃん。
ゼフィテロスの事は嫌い。尊敬する師の名前をわざと間違えたり話を遮ったり態度が最悪だったり目の前で自殺とかされたりで印象は最悪。こき使う予定。
まだ政界に介入してないので腹の中を隠すのが上手くないという設定です。
アグライアは光歴何年に何したみたいな情報少なすぎて困る。ので不透明な内に好き勝手しました。ごめんなさい。それもこれも全てスケールのデカすぎる世界観を作った焼鳥が悪い。
トリビー:キャストリスに会いに来た回数は全部で三回。一回目は分裂した後。二回目は光歴3870年。どちらもゼフィテロスに門前払いされて、三回目が今回。自分よりもレズバの強いライアちゃんを助っ人に呼んだ。意外と若い。