ビビるくらい男尊女卑の世界で俺がハーレム築き上げるまでの物語 作:rikka
「引っ越しだ。絶対に引っ越す。これは決定事項だ、いいね?」
「はい、旦那様の仰せの通りに」
「私も同意する」
「……ズゥ様の決定に不満はない」
帰ってきたらアイスが足骨折してるしイヌは頭を強く打って意識不明になっているし……マジで目を疑ったわ。
頼んでいたパラディンによれば、大量の
約束通りイヌ達の命を守ってくれたから感謝しているが、まさかここまで本格的な厄介事になるとは流石に思ってなかったわ。
「というか、本当にいいのか? あのパラディンも今回のお前達の負傷に気を揉んでいて、投げ文の連中を探し出して審問官の前に引き出してもいいって言ってるんだが」
イヌは意識こそ戻ってもう歩けはするが、念のためにまだ休んでもらっている。
いつもの寝所に食料を持ち込んで、栄養補給をしながら話を進める。
「……復讐したい気持ちはやはりあります。ですが……」
アイスが重々しく口を開く。
こんな状況に追いやられた原因に思う所はあるが、復讐には乗り気でないようだ。
「ホーリーネーションの女だから分かるのです。この国の女性にとって、怒りという物は残された最後の娯楽なのです」
傷が残っていたアイスは、恐らくこの中で最もこの国に振り回されただろう女だろう。
ついで、知識を持つが故に苦労したスウィフも。
「怒りを貯め込み、男の目を盗んで不満を女同士で共有し、その中で叩ける自分よりも下の弱者となる女を見つけて――あるいは作って怒りをぶつける」
「……そのために生きていると?」
「目に映る物のほとんどが敵なのです。恐れる者という意味でも」
ぐぬぬぬぬ。
これだからオクラン教は!
女の世界での負の連鎖が凄まじい事になっとるやないかい!!
「復讐しても彼女達の怒りを更に燃やすだけだと?」
「いえ。少なくとも我々へ向く矛先は減るでしょう。ただ……それで我々が告発した女が審問官に連れていかれた後を考えると……」
「我らに影響が?」
「その可能性もあります。……一番あり得るのは、彼女達が他の女達から吊し上げられる存在になるだけで済む事でしょうが」
それはそれで見たくねぇよ!!
だが、そうなると……やっぱり俺達はホーリーネーションの外に行くべきなのか?
……いや、でもそうなると最低でも
傭兵のムゥから色々外の話は聞いたけど、ダスト盗賊団みたいなちゃんと武装した野盗は結構いるみたいだし、肉食の獣――群れで襲ってくる人食い蜘蛛から数匹で駆け寄っては長い首を振り下ろして殴ってくるビークシングとかいう恐ろしい奴まで色々と教えてくれた。
「……旦那様」
寝たままのイヌ――体を起こそうとするのを手で制すると、枕に頭を預け直して口を開く。
「当面の間、我々は警備隊の援護なしで
「わっつ!!?」
驚いて思わず叫ぶが、他の二人も小さく頷いている。
恐らく俺が戻ってくるまでの間に話し合っていたのだろう。
「警備隊に同行して強く実感したのですが、この世界で好きに生きるためには武力が必要です」
「せめて獣や盗賊に対処できるだけの腕がなければ、町の行き来すら危うい」
「そしてアタシたちの庇護者であるズゥ様を守れなければ、あるいは更に酷い事になり得る」
…………。
武力に関しては、正直俺も色々考えていた。
今回の遠征で手に入れたクロスボウは、威力にやや難があるがかなり頑丈で、弾さえあれば長く使える事は分かった。
だから全員に剣ではなくクロスボウを持たせて弾幕を張れば、安全に戦う事が出来るのではないかと。
(問題は、技術を嫌うホーリーネーションではクロスボウも弾も入手できない事か)
となると、今はやはり剣に頼らなくてはならなくなる。
なる……が……。
「ならば、俺も剣を――」
「いえ。ご主人様に万が一があっては困ります。どうか、ここは我らに」
アイスが真っ先にそう言ってくる。
……いや、でもそうか。
確かに俺に万が一があったら、残ったイヌ達が路頭に迷いかねん。
「怪我が回復次第、すぐに行くのか?」
「そのつもりです。休んでいた期間が長いので、すぐにでも」
「トカゲの皮を持って帰って防具屋辺りに売りつけに行けば、怠惰認定からは外されると思う」
……そうか、体調不良による休息すら彼女達には恐怖の対象なのか。
…………。
……決意は固そうだな。
「わかった。出来るだけブリスターヒルから離れず、なにかあったら助けを呼べる範囲でなら許可する」
「ハッ」
「全員、包帯や添え木はしっかりと持っていけ。キャンプベッドも後で買い足しておく」
「ありがとうございます」
「……怪我しないで……ってのは無理だろうが、ちゃんとヤバくなったら逃げるように。稼ぎとかも気にしなくていい」
その間は俺が鉄鉱石掘って飯代を稼ごう。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
そうしておよそ一週間。
とにかく打たれ強さが欲しいという彼女達は、
時にはどうしようもなくその場に倒れてしまう事もあるが、蜥蜴は基本的に草食動物だ。
捕食される事はないため死んだふりでもやり過ごせる可能性は高い。
今の所、後に残るような怪我はせずに順調に経験を積み重ねている。
前回の突撃では、ようやく一匹に止めを刺せたと喜んでいた。
(……だからこそ、彼女達の装備を少しでもいい物に更新したいんだが……)
出来るだけの装備は買い与えた。
まず胴体をしっかり守れる革製のタートルネックシャツを守って生存率を底上げし、交易商人が好んで使っている革鎧でその上から固めさせている。
それに逃げやすいように足を守る靴も買った。
残念ながら武器に関しては、彼女達が振り回せるような軽い物がないためにボロ剣のままだが、少なくともかなり生き延びやすくなったハズだ。
(それでも品質はバラバラでピンキリだ。もっとちゃんとした……それこそ傑作と言えるような装備を着させてやりたいんだが……)
職人の腕はマチマチであり、良い品が店頭に並ぶかどうかは運次第と言える。
「やっぱり、作った方が早いかなぁ」
すっかり仕事の合間に軽食を挟む時のテーブル代わりとなった研究台についてアレコレ試してみるが、やはりこれでは作業するには小さすぎる。
もうワンサイズ大きな建物を購入しなければ、俺の望む研究台は完成しないだろう。
(それに研究だけではなく、実際に物造りのための設備が欲しい)
実際に作ってみて練習しなければ技術は上達しないが、色んな物が足りていないこの世界で明確に何かを作る事が出来れば、大きなアドバンテージになる。
間違いなく、今いる三人――もっと増やすつもりだが女達を養うのに何の不安も無くなるだろう。
(……生産設備はスタックでいい。大きな建物は全部店や警備部隊の詰所に使われているけど、小屋を一つでも確保できればある程度のことは出来るだろう)
問題は研究台だ。
試行錯誤を繰り返すための作業台なら、当然それなりの広さがいる。
俺が知る中でそれが出来るのは……。
「イヌ達がどこまで強くなるかだけど……」
一か所しかない。
ホーリーネーションという国から追い出された、あるいは逃げ出した者達の町。
このクロスボウを買ったあの町。
ホーリーネーションと亜人――灰色の堅い皮膚と角を持つ戦士の国、シェク王国との緩衝地域。
「やっぱりハブに拠点を構える必要があるかぁ」
シノビ盗賊団とも繋ぎを持つ必要があるし、イヌ達が鍛えている間にこっちも金を稼いでおかないとだな。
『イヌ達の日常』
突撃して全滅! を繰り返してる。
時折出てくる『死にかけ』状態キャラの血液量やパラメーターにハラハラしながら、ギリギリ生きてる意識不明者に『早く! 早く起きてその子を助けて!!』と祈っているいつものアレ
本気でヤバイ時はズゥが全力で走って回収に来る。