球詠 「野球って楽しいよね!」   作:てこの原理こそ最強

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オリキャラ登場させます。ただ完全に姿を表すのはもう少し後です


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「出してきたよ〜入部届」

 

「「「ありがと〜」」」

 

「これで正式に野球部員だね」

 

「うん!」

 

「だね」

 

入学式を終えた次の日。芳乃が入部届を4人分まとめて職員室に提出し改めて正式に野球部としての活動がスタートした

 

「2人とも練習着だ〜。詠深ちゃんのは中学のやつ?」

 

「そうだよ」

 

「いいな〜。この肌触り〜」

 

「こらこら芳乃」

 

「だってかわいいんだもん」

 

体操着の息吹とは違い経験者の詠深と珠姫は練習着を身につけており、そんな2人に芳乃が抱きついた

 

「私達も早く練習着買わないとね息吹ちゃん」

 

「そ、そうね」

 

「それにしても来ないね〜」

 

「誰が?」

 

「先輩達」

 

「先輩?」

 

「うん。野球部がなくならないように2人だけ籍を置いておいてくれてるみたい」

 

「そうなんだ」

 

「野球部の勧誘とかなかったわよね。もう野球する気ないのかしら」

 

「ん〜、そうは思えないけどな〜」

 

息吹は先輩達2人に野球する気はないような考えを持っているのに対し今日も綺麗なグラウンドを見た詠深にはそうは思えなかった

 

先輩のことは一旦置いといて詠深と珠姫、芳乃と息吹のペアで肩慣らし程度のキャッチボールを行なっていると突然詠深が走り出した

 

「詠深ちゃん?」

 

詠深が走り出した先には知らない生徒が2人こちらを見ていた

 

「先輩!先輩ですよね!お待ちしてました!」

 

「違うから」

 

「え...」

 

「私達は関係ないから」

 

「ごめんなさいね」

 

「あ...」

 

その2人が野球部の先輩だと思って駆け寄った詠深だったが関係ないと遠ざかって行ってしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「藤井先生?」

 

「新しい顧問の先生だよ〜」

 

「へー、決まったんだ」

 

「あれ?誰かいる」

 

次の日の放課後も4人揃ってグラウンドに入ると今日は先に2人知らない子が来ていた

 

「ホントだ。ユニフォーム着てる」

 

「今度こそ先輩かな」

 

「あ」

 

「ん?」

 

「こんにちは。先輩ですか?」

 

「ちわーっす」

 

「こんにちは。2人とも1年よ」

 

「先輩かと思った」

 

詠深達が先輩だと思っていた2人は詠深達と同じ1年生だった

 

「2人はどこ中だったの?」

 

「私達は2人とも南相模よ」

 

「へーお隣さんじゃない。私達光陽台相模よ」

 

「おー近いな」

 

「南相模...(確か県大会出場。そこそこ強かったはず!)ポジションは!?それと名前!」

 

「「えっ!?」」

 

芳乃が脳内データをロードしてグイグイと来るものだから2人はたじろいでしまう

 

「藤田 菫。ポジションはセカンドよ」

 

「川崎 稜。ショートだ」

 

「二遊間か〜」

 

「それは頼もしいわね」

 

「そうだね」

 

「ぴやっ!」

 

「ひゃっ!」

 

「うんうん。2人とも下半身すごくいいよ。鍛えられてる〜」

 

「え...」

 

「なに...」

 

「こら芳乃!」

 

2人のポジションが二遊間だと聞いた瞬間芳乃のボディチェックが入りまたも困惑してしまった菫と稜

 

「へー、双子なの」

 

「「うん!」」

 

「初めて見た」

 

「芳乃ちゃんはマネージャーだからこれで5人か」

 

「廃部にならないように籍を置いてくれてた先輩が2人いるし、まだ1年生来るかもしれないしもっと増えるかもね」

 

「そうだね」

 

「おーい!誰かー!」

 

新しい仲間も増え全員でストレッチをしていると稜が1人グラウンドに入り手を振って呼びかけていた

 

「誰でもいいからノック打ってー!」

 

「こら稜!勝手に入ったら怒られるわよ!」

 

「あーあ。せっかくグラウンド綺麗にしてくれてたのに」

 

「一連の不祥事には暴力沙汰も含まれてたんだよね?もし先輩が来たらお尻バットぐらいは覚悟しといた方がいいのかな...」

 

「ひっ!」

 

「でも停部までくらってるんだからそこまでのはないと思うけどな」

 

「だ、だよね〜」

 

「まぁ腕立てとかスクワット100回とかはあるかもね」

 

「ひぃ〜」

 

「なー!早く早くー!」

 

「ったく、しょうがないわねー」

 

「菫ちゃんも結局行くんだ」

 

「こういうのって、どうせ連帯責任でしょ」

 

「じゃあ私が打ってあげるよ!」

 

「もう、芳乃までー」

 

「芳乃ちゃんノック打てるんだ」

 

「えへへ〜」

 

「遊びでやってたし多少はね」

 

「そうなんだ」

 

結局全員グラウンドに入り芳乃がバッターボックスに、菫と稜がそれぞれセカンドとショートに、一塁には息吹が入った

 

「っしゃー!来ーい!」

 

「行くよー!」

 

カンッ

 

パシッ

 

「よっ!へへーん!」

 

「ちょっ!もっと優しく投げてよ!」

 

芳乃が打った球を稜が横っ飛びで捕球。そして一塁に送球するが初心者である息吹はこれを弾いてしまった

 

「へー、上手いね」

 

「お、見直したか?」

 

「は?何言ってるの?あの子のノックのことよ」

 

「はぁ!?」

 

「次!セカンド菫ちゃん!」

 

「来なさい!」

 

カンッ

 

パシッ

 

「ふぅ。今度は捕れたわ」

 

「さすが経験者」

 

「だよね〜。2人ともいい動きしてる」

 

「菫のプレーは上品すぎんだよ。つまんねー」

 

「でもアウトを取ったのは私よ」

 

「んー」

 

「わざわざ横っ飛びしなくても捕れるでしょ?目立ちたがりなんだから」

 

「なんだとー!?大体エラーしたのはあの子だろ!?」

 

「悪かったわね捕れなくて...」

 

「あの子は初心者よ?あんな雑な送球捕れるわけないでしょ」

 

「悪かったわね!初心者で!」

 

「いい加減チームプレーを理解なさい」

 

「球際が強くて何が悪い!個人あってのチームだろ!」

 

「あの2人はチームメイトだったんだよね...?」

 

「ほら、よく言うケンカするほどなんとやらじゃない...?」

 

「ちょっと、そこ擦りむいてるじゃない」

 

「大丈夫だよこれくら」

 

「ダメよ。まったく、余計な動きが多いから」

 

「おいまだ途中...」

 

「ほらね?」

 

「ホントだ」

 

プレー中ずっと言い争っている菫と稜を見て心配した詠深だったが最後の会話を聞いて取り越し苦労だったことに気づいた

 

「あ」

 

「ん?」

 

2人がグラウンドから出たところで詠深がネット外で見ている昨日の先輩らしき2人を見つけた

 

「やっぱりそうだったんですね」

 

「あ...」

 

「野球部が廃部にならないように籍を置いておいてくれた先輩。それとちゃんとグラウンドを整備してくれていた」

 

「違うから」

 

「私達正式に野球部に入部したんです!これからよろしくお願いします!」

 

「だから違うって言ってるでしょ!」

 

詠深からの挨拶をその先輩のうち1人が大声で一蹴した

 

「私達は別だから。あなた達のお遊びに付き合うつもりはない」

 

「何ー!?」

 

「まぁまぁ」

 

先輩の言い草に手が出そうになった稜を珠姫が抑える

 

「ちょっと怜。言い過ぎよ」

 

「...」

 

「ごめんね。私は2年の藤原 理沙。こっちは岡田 怜」

 

「岡田 怜選手...荻島ガールズにいた走攻守揃った名センター!チェック済みです!」

 

「ここの野球部って以前は強かったの」

 

「一度全国にも行きましたよね」

 

「えぇ。でもここ数年結果が出せなくて。練習やしごき、上下関係もどんどん厳しくなっていって。それがある時度を超えてしまって...」

 

理沙が過去にあった出来事を語り出す

 

「それが原因で対外試合禁止、活動自粛。それで停部に...その後みんな部を辞めたり転校したりで最後には私達2人だけになっちゃったの」

 

「最後に報われてよかったよ。停部中私達はクラブチームに参加させてもらってた。大学とかでやり直すためにもこれからもそうするつもりだから、今後は新入生で新しい部を作っていけばいいよ」

 

「うん」

 

2人の言うことに新入生の全員言葉が出なかった

 

「行こう理沙」

 

「えぇ」

 

「先輩!」

 

「ん?」

 

「私の球打ってみませんか?」

 

「「え?」」

 

「部活存続のお礼も兼ねて。でもちゃんと真剣勝負ですよ!ね?珠ちゃん!」

 

「え!?う、うん...」

 

「...。わかった。そういうことなら」

 

立ち去ろうとする2人を呼び止めた挙句さらに勝負を挑む詠深。どんな意図があるのか珠姫にも他のみんなにわからなかった

 

「初めての対戦相手がレギュラークラスの相手か」

 

「通用すると思うよ。詠深ちゃんの球ならね」

 

「お待たせ」

 

「じゃあ始めましょう。みんなは適当にポジション入ってね」

 

「「「はーい」」」

 

「理沙先輩もお願いします」

 

「わかったわ」

 

こうして詠深・珠姫バッテリーvs怜の勝負が始まった

 

「外野に強い打球が飛んだら私の勝ち。それ以外はそっちの勝ちでいいよ」

 

「サービスいいですね」

 

あまりにも相手に条件のいいルールを提示する怜。ただその顔つきはこのバッテリーをナメているとかそういうことは一切なかった

 

(強い打者とはこれまでも何度も対戦してきた。この人も同じ。まずはしっかり抑えて詠深ちゃんに自信をつけさせたい)

 

珠姫はサインを出し詠深は頷きボールを放る

 

「ストラーイク!」

 

(ストレートに反応なし)

 

(まったく無関心な顔。真っ直ぐはしょぼい、そう言われてるみたい。なら...)

 

(あの球!)

 

「なっ!」

 

2球目に放った例の魔球。練習と同じような弾道で珠姫のミットに収まり、からぶった怜は驚きの表情を出していた

 

「ストライクツー!」

 

「よっし!」

 

「なんだ今の!」

 

「あんな球見たことないわ!」

 

怜に限らず後で守っている菫や稜も驚いていた

 

(ただのカーブじゃない。でも弾道は見えた。次は打てる!)

 

追い込まれた怜。待つのはさっきと同じ球。そして3球目。バッテリーが選んだのは外角低めへのストレートだった

 

(際どい!)

 

「ボ、ボール...」

 

(振ってくれないか〜...)

 

(手が出なかった。彼女も迷うほどの際どいところ。球審によっては入っててもおかしくない。さっきのボールを意識しすぎたか...)

 

「先輩!」

 

「ん?」

 

「この勝負。負けた方がなんでも言うこと聞くってのはどうですか?」

 

「は?」

 

1ボール2ストライク。カウント的にバッテリーが圧倒的有利。そうなってから賭け提示。ぶっちゃけ...

 

((((せこー...))))

 

「いいよ」

 

「やったー!」

 

「でも、そう簡単にはいかないよ」

 

「はい!」

 

「ったく、何があんなに楽しんだか」

 

「中学の時、あの球を捕ってくれるキャッチャーがいなかったんです。だから今投げられるのが楽しくて仕方ないんですよ」

 

「そ...」

 

楽しそう。その言葉が怜の心に引っかかった。自分達もかつてそうだった。でも去年はそんなこと微塵も感じなかった

 

(なんで私は...)

 

怜は後悔していた。お遊びなんて言ってしまったことを後悔していた。自分達が受けてきた所業や停部中まるで見せ物のような扱いを受けてきた身としては入学早々楽しそうに野球をしている詠深達が羨ましかったのだ

 

(後輩がせっかくくれたチャンスなんだ。勝って言うんだ。一緒に野球がしたいって!)

 

お互いにとって満を持しての4球目。怜の狙いはもちろんあの球。詠深が投げたのはそれだった

 

カーン!

 

「センター!」

 

「ちょっ!なんでよりによって私のとこに飛んでくるのよ!」

 

怜が打った打球はなぜかセンターの守りについていた息吹の元へ。息吹はこれを懸命に追うが途中で足をもつれさせ転んでしまった

 

「あー...」

 

「詠深ちゃん...」

 

完璧に打たれた。そう感じた詠深はマウンドで天を仰いだ

 

「ナイスファイト」

 

「見直したぞ!」

 

「あ、ありがと。転けただけだけどね」

 

「あーあ、打たれちゃったなー」

 

(やっぱりすごい。でも怜さんの真骨頂は守備。今の打球だって...)

 

「捕ってた、私なら。そっちの勝ちだよ」

 

「え...」

 

「いい球だった。悪かったよ、さっきはお遊びなんて言って」

 

怜の勝利条件は外野にいい当たり、つまりヒット性の当たりを打つというもの。さっきのは打球は落ちたもののセンターを守っていたのは初心者の息吹。もし自分だったらアウトにできたと考え自分の負けを認めたのだった

 

「そんな。じゃあ怜先輩、お願い聞いてもらいますか?」

 

「うん。甘んじて受けるよ」

 

「はい。一緒に野球やりましょう!」

 

「あ...」

 

あんなひどいことを言ってしまった怜としては今後野球部に関わらないでぐらいのことは覚悟していた。だから詠深の言ったことに咄嗟に反応できなかった

 

「ずっと待ってたんです先輩達のこと。入学式の日、ここでキャッチボールをしたその日から。だからお願いします!できたらキャプテンもやってもらいたいなって」

 

「怜」

 

「あぁ。うん、いいよ。その代わり結構厳しく行くから覚悟するように」

 

「やった!」

 

「そうこなくっちゃ!」

 

「これで新生野球部がスタートだね!」

 

全員から安堵の声。これで2年生の2人も加わった

 

「ごめんね珠ちゃん」

 

「何が?」

 

「あの球、打たれちゃった...」

 

「あー」

 

「私のあの球、ホントは大したことないんじゃないかな...」

 

「そ、そんなことないって!さっきはセンターフライだったでしょ!」

 

「ふぇぇ...」

 

「誰か打ちたい人いない!?」

 

「はいはーい!」

 

「私もやるわ!」

 

「私もやらせてもらおうかしら」

 

あの球を打たれたことで自信を失っている詠深。しかしその後の稜と菫は三振。理沙もセカンドゴロに打ち取った

 

「よしっ!」

 

「ほらね。怜さんがすごいんだって」

 

「あなた達、入学式にさっきのボール練習してたでしょ?」

 

「はい」

 

「それを見て怜ったら気になって気になって。ずっと見てたのよ」

 

「言わなくていいよ...」

 

「そうなですか?」

 

「はぁ。少し研究させてもらったよ。あんな球、今まで見たことなかったから」

 

「初見で打たれたわけじゃなかったんだ!」

 

「ほら、言った通りでしょ。通用するんだって」

 

怜が初見で打ったわけではなかったことと他の3人を打ち取ったこと、さらに珠姫の説得が効き詠深は自信を取り戻した

 

「また投げてくれよさっきの!」

 

「私にもお願い!次は打つんだから!」

 

「先に私が打つんだ!」

 

「いいえ私よ!」

 

「あのー、野球部の皆さんですよね?」

 

「はい」

 

「えっと...」

 

全員が盛り上がっているところへスーツを着てメガネをかけた女性がやってきた

 

「あ!もしかして顧問の!」

 

「はい、藤井です」

 

「顧問の先生も来た!」

 

「みなさんこんにちは。自主的に練習されているなんて関心ですね。私感動しました」

 

「よかったー。優しそう」

 

「これからは私も協力しますね。みなさん、一緒に頑張りましょ」

 

『はい!』

 

新たに怜と理沙、そして顧問の藤井先生も加わり新生野球部はさらに形となってきたーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、グラウンドの外の木陰から野球部の様子を見ている2人がいた

 

「さっきの球打てる?」

 

「初見じゃ難しいかも」

 

「もし対戦したらどれくらいでいけそ?」

 

「シングル、ツーベースでいいなら3球あれば。ホームラン狙うとしたらもう5球くらいあればいけるかな」

 

「そっか。なら大したことないか」

 

「そっちはどうするの?」

 

「そんなの全部カットしてストレート叩けば終わりでしょ」

 

「ふ〜ん。確かにそうかもね」

 

何やら不穏な会話をしている様子だ...

 

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