「オル」
「はい!」
「今日から研修のような何かをするけど大丈夫?」
「はい!」
今日もオルは元気だ。
私が日記に書いたように、今日からオルの教育をはじめる。
私が一番やって欲しいのは私がいつも疎かにしている庭の整備など。
それをやってもらう前にタイムスケジュールを伝えておこう。
ちなみに私は洗濯しながら教えている。
「まずタイムスケジュール、お嬢様達は吸血鬼で夜行性、だから寝る時間も普通とは少し違う」
「なるほど」
私はめちゃくちゃに素早く洗濯物を干しながら時間を伝えていく。
「寝るのは6時、起きるのは15時頃よ」
私は仕事が多いので7時から13時の間に寝るようにしている。
ちなみに慣れるの大変だった。
「それまでは何するんです?」
「お嬢様達が起きるのは日が落ちてきた17時よ。早ければ私たちと同じ15時に起きることもある。だから起きてすぐの15時頃から朝食という名の晩飯を作る」
「大変そうだ…」
そう言いながらオルがメモ片手に苦い顔をした。
そのままタイムスケジュールを伝え終えたところで洗濯が終わった。
「じゃあ次に庭の整備教えていくよ」
「はい!」
返事がいい。
いいことだ。
次は水やりなどを実践しながら教えていく。
「まず水やりを…」
私はバケツの水を上にぶん投げ、翼は使わずジャンプした。
翼は使わずというか使い方がよく分からないんだけどね。
バシャッッ
「水を蹴って行う。」
「え????????」
オルは水を蹴るのではなく、おずおずとしながらホースを持ってきて水の出口を狭くして水やりをした。
偉い。
私もそうしてた時期があったよ。
でも、この庭は馬鹿みたいに広い。
「オル、この広さをそれだけでやるの?」
「あっ…終わらない…」
「そう、じゃあどうする?」
「能力使います!」
え、能力?そんなのあったの?
「そ、そうね、ちなみにどんな能力なの?」
「拡散収束する程度の能力です!」
「あらすごい」
なんだ、めっちゃ便利じゃん。
「てりゃ!」
オルがバケツの水を蹴り上げ、妖精の羽をぱたぱたと動かして上に飛んだ。
そのまま手を前に出し、「かくさぁん!!」と叫んだ。
なんか人の名前叫ぶ時みたいだった。
すると一気に水が全体に行き渡り、上手いこと水を撒いた。
「完璧だね」
「ふふん」
オルは得意げな顔をしながら地上に舞い戻った。
一ヶ月もすれば私より庭の整備は上手くなりそうだ。
「他にもまだたくさんあるけど今日のところはこのくらいにしておくね、他のが沢山あるから」
「わかりました!」
「先に学びたいならついてきてくれて構わないよ」
そう伝え、私は早く寝たいがためだけに仕事を急いで進めた。
「メイド長ってすごいんですね」
「いや、普通の家が大きくなっただけみたいな感じだから普通だと思うよ」
「普通は家で書類選考なんてしないんですよ」
「そう?」
「そうですよ」
そういえばメイドが書類の処理するってどういうことだ。
絶対私のする仕事じゃないと、今頃気付いた。
夜、オルは太陽の妖精らしいので、動きが鈍くなった。
私はオルが寝落ちしてしまったのを発見して、とりあえずオルの部屋に運んで寝かせておいた。
軽く日記?に色々書いてから、オルみたいな能力とやらが私にもあるかもしれないと思って、庭で能力を試してみた。
何をするのかは分からない、だから色々試した。
「…何も起きない」
結局何も起きなかったことを日記に書き記した。
「っわ、増えた」
隣にあった花が増えた。
「いだっ、」
何もしてないのに、ワープして壁にぶつかった。
と思ったらオルの部屋にワープした。
「っ??」
今度は外に出た。木々が一気に増える様子が窺える。
どうしよう、本当によろしくない、自分に能力があったらしい。
あの木々を減らすのはできないし、焦ってるせいか、色々な所に瞬間移動している。
「と、とまっ…」
夜でよかった、そう思った。
このままじゃ迷惑をかける、私が過労死した頃を思い浮かべよう、そしたら能力を使おうなんて思うはずもない。
私は部下にも上司にも沢山の書類を押し付けられ4日会社泊まり、部下のミスは私にミスがあったと濡れ衣を着せられ家に帰った瞬間眠りについて死んだ。
あの会社はブラックだったから…───。
ピタッと、能力が止まった。
木々が元に戻った。
私は空中に投げ出された。
翼なんてしっかり動かせた試しがない。
飛べないのに。
私が今いるのは空だ。
「「『私には、もうできない』」」
誰かと共鳴した気がした。
私は何も考えず、受け身も取らず自然に身を委ねて落下した。
落下する私の目に光は宿っていなかった。
転生一ヶ月と2日 天気快晴
今日はオルの教育をした。オルはスポンジのように教えたことを吸収していき、今日教えたほとんどのことをこなせた。
私これいらなくなりそう。悲しいな。
このままいても邪魔になるのではないだろうか。
そういえばオルに能力があるらしい。
私にもあったりするのかもしれない、なんて思って庭で試してみたが何も起きなかった。
まぁ私が能力なんて持ってたら暴走して終わりだろうし、これでいい。
このなんたら録に書かれていたことも大嘘ということになるだろう、ちょっと嬉しい。
厨二みたいでちょっとうざったかったし。
ちょっとよかったなんて思っー・
豆知識【能力暴走の原因と対処の理由】
能力は使ってみたいという意思があったから使えた、それが少し楽しいと思ってしまったため暴走した。
その楽しさを忘れる為に過去の嫌な記憶を引き出し、何もできないと自分に思い込ませて暴走を止めた。