誰もが望む幸せの道   作:ウサウサギ

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 今回、更新が早かったのはテンションがリミッター解除された後にフルドライブしたせいです。

 主に感想にとても励まされたので、全力全開でいきました!

 今回は最初からわかるとおり、コロナ視点からの話の始まりです。それでは、本編をどうぞ!


第四話 小さな幸せ

 私、コロナ・ティミルは今、奇跡を目にしています。

 

 この強化合宿には、友達のヴィヴィオに誘われて、何か学ぶところがあればいいな、楽しい思い出にできたらいいな、程度の思いで来ていました。

 

 初日の午前は自由時間。ヴィヴィオはルーちゃんと二人でお話中。アリシアちゃんはプレシアさんとフェイトさんと三人で家族会議中。ちょうど私は手持ち無沙汰で、都市の中では味わえない、自然の中の空気を目的に、合宿所の近くにある森の中に入ったことが、奇跡を目にするきっかけでした。

 

 自然の空気を思いのまま堪能する中、森の少し空けた場所に、ひとりの男の子がいることに気がつきました。

 

 最初はどうして寝転んでいるんだろうとか、あの子は確か噂の……とか、目的はなんだろう、という疑問が次々と浮かび上がってきて、気づけば私は茂みの中に隠れて、彼を観察していました。

 

 仰向けに寝転んでいても、素顔は見えません。微妙に長い前髪が、彼――――確か、高野くん――――の目を隠しているからです。ミッドチルダでは珍しい黒い髪。転入初日に事故に遭ったことは学院内で一二を争うほど有名で、一週間で退院してきたことも同様です。

 

 それから噂が一人歩きして、付いたあだ名が「不死身の高野」とかなんとか。確かに、学校では誰かと喋る雰囲気とかはなくて、ちょっと大人しそうな人だったけど、流石に私も今のお化け扱いはひどいと思います。

 

 クラスは別で交流の機会もなかったけど、私の目からはやっぱり悪い人には見えません。

 

 あ、そういえば彼も、私と同じ一人組なのかな? 周りに誰も居なさそうだし、きっとそうだろう。なら、この機会に少し、彼と話をしてみてもいいかもしれない。たまに図書室で見かけるし、もしかすれば新しい話し相手になってくれるかもしれない。

 

 意を決して、彼に話しかけてみようと茂みから出ようとした、まさにその時――――

 

「シールドピアス」

 

 突如、彼の声が聞こえたかと思ったら、今度は雷鳴のような轟音が、私の耳に痛いほど響いてきた。思わず、両手で両耳を抑えてしまうほどに、その音はひどかった。

 

 何が起きたのか、私がその音のした方向を見てみると……そこには、惨状が広がっていました。木々が半ばからへし折れて……たった一本だというのに、その光景は本当に痛々しく見えたのは、どうしてなのか。その答えは出そうにありません。

 

「知ってるよ」

 

 再び、彼の声。見てみると、彼は天に指をさして、その指で円を描いていた。最初は何をしているのかな、と思った。私の目は、そのときから徐々に、見開かれることになります。

 

 彼の周りには、輝く鱗粉のようなもの――――強いて言うなら妖精――――が集い、それはまるで彼のことを祝福するように、彼の周囲で踊り始めた。

 

「きれい……」

 

 その幻想的な光景に、私は魅入っていました。時さえ忘れる程に。周りの音が、聞こえなくなるほどに。

 

 私が気を取り戻したのは、そんな妖精の踊りが停止したときでした。

 

「あっ……」

 

 名残惜しい。もっと見ていたい。そんな気持ちが湧き上がってきたけど、時間は無情にも待ってはくれない。

 

「――――誰かを守りし盾にして、全てを砕く矛である。」

 

 先ほどの感動の余韻に浸ることを、時間も、彼も、許してはくれなかった。

 

「――――君の名前はまだ無いが、それは何事も成しうる、可能性の示唆だ。」

 

 突如、彼の前方に、水晶で出来たような柱――――いや、あれはきっと何かの足――――が現れた。それ単品だけでも、この森の中ではひときわ輝いていて……私の目はその物体に、私の耳は彼の唄に、釘付けになった。

 

「――――担い手は私にして、その言霊は絶対命令。」

 

 唄が進むと、その物体も進化していく。両足のパーツの上に、人でいうところの腰のようなパーツが取り付けられ、完成したら一体どんな姿になるのか、私は非常に気になってしまう。

 

「――――傀儡(くぐつ)に命を与えましょう。」

 

 腰の次は、やっぱり胴体。しかし驚いたことは、その胴体が半透明で、中身に心臓らしきものが見えることだった。これだとまるで、大きな人みたい。

 

「――――君の体は私の魔法。君の魂は私の意思だ。」

 

 そして次は……予想外。胴体の両肩から先の部分に光り輝く鱗粉が集まってきていて、一体どこから、と疑問に思ってたどってみると、彼の周りにいた妖精たちが、その数を減らしていた。

 

 そして、集まった妖精たちは、全員で協力して、一つになって……その大きな人の両肩から先、両腕となって誕生した。

 

「――――私は全てを与えましょう。あなたは全てを捧げましょう。」

 

 そして最後に、胴体の上に丸い何かが形成されたかと思うと、それは物質――――巨人の頭――――となって、そこには大きさ約三メートル半の水晶のゴーレムが完成する。

 

「――――さぁ、来たれ。これぞ名も無き障壁の真髄だ。」

 

 いや、完成ではなかった。その巨人の一つ目に精霊たちが集まって、光が灯り、巨人に初めて命と魂が宿り、そして完成……もとい、誕生した。

 

『――――――――!!』

 

「きゃあっ!?」

 

 暴風が私を襲う。私は咄嗟に両腕を、自分の顔を守るようにして交差させると同時に、目を閉じた。巨人の豪腕を思いっきり振るったときの余波はあまりに大きく、周りの大気や木々さえ震撼させて、赤ちゃんの鳴き声のように響き渡った。その音と衝撃のまえに、私の小さな悲鳴は簡単にさらわれてしまう。

 

「…………」

 

 森の中に静寂が戻る。それを合図に目を開けて、前の光景を見た瞬間、私は言葉を失う。

 

 彼は寝転んだまま、巨人の方を見て何かを呟いている。ここからでは、その声は小さくて、はっきりと聞こえない。誕生した巨人は、最初の元気はどこにいったのか、まるで時が止まったように、腕を振り切った状態で停止している。

 

 一連の流れは、まるで劇団の芝居の一部分のようだった。彼が唱(うた)い、精霊たちが彼に呼応し、その二者の協力によって新たな生命――――巨人――――が生まれる。誰もいない森の中という状況(シチュエーション)もあって、それはとても神秘的な物語に見えてしまう。もしかすれば、彼は神話などをモチーフにして、劇の練習をしていたのかもしれない。

 

「……あっ」

 

 不意に、自分の口から声が漏れる。誕生した巨人が、光の粒子となって、空気中に溶けていく。それはあまりに唐突で、しかもあっさりとした閉幕(エンディング)の合図。まだ見惚れていたかったのに、そんな私の意思とは関係なく、終わりが近づいていく。

 

 最後の最後まで、私は絶対に目を離さなかった。瞬きすることすら惜しんで、ジッとその一部始終を、目に焼き付けるように。

 

 ――――そして巨人は完全に空気中に溶けていき、残ったのは、彼独り。

 

 これはまさに、奇跡、それを描いた物語の劇だった。生命の誕生という奇跡、そしてその儚さを題材に、人間、精霊、巨人が織り成す、たった一夜にして、一生の物語。

 

 しかし、その結末は、あまりに悲しい。精霊と巨人は消えていき、人間は孤独にも、世界に残される。たった独り、残された彼は今、何を思っているのだろうか。

 

『そこの茂みの中に一人、見入っている御方がいますよ』

 

 不意に、少し機械的な音声が聞こえてくる。それはきっと、彼のデバイスの声。精霊や巨人などの神秘とは真逆の位置に立つ、科学技術の結晶体。

 

 どうやら、彼は独りではなかったようだ。最後の最後、頼れる仲間(パートナー)がすぐ近くにいたらしい。劇の結末に私は「ほっ」と安堵の息を吐く。

 

「……へぇ。なら、出てきなよ。別に、怒ったりしてないから」

 

 私は彼の声を聞いて、考える。それは劇の続きへの招待状か、それとも劇の創設者として私に送った招待状なのか。

 

 しかし、どちらにしても、私の答えは決まっていた。

 

 演じきる自信はないけれど、劇への招待ならば全力で役をこなし、創設者としての招待状であれば、彼と一度、話をする。

 

 私は決意して、茂みの中から歩み出る。出来るだけ優雅に、先ほどの劇の創設者に失礼に当たらないように、細心の注意を払う。

 

「これはまた……」

 

 彼の目は前髪に隠れて見えないが、この時ばかりは分かってしまった。彼は今、目を見開いて驚いている。きっと、私のような小さな観客だとは思わなかったのだろう。

 

「それで、お嬢さん。どう思いました?」

 

 瞬時に私は、これは劇の創設者としての招待状だと把握し、また先ほどの劇の感想を聞かれているのだと理解した。

 

「とても、感動的でした」

 

 言いたいことは、たくさんあった。でも、長々とそれを言うのも失礼だろうと思い、私はそれを短く伝える言葉を選んだ。

 

「それは光栄の極み」

 

 言葉の後に、彼は恭しくお辞儀する。その芝居がかった動作は、自然な風に目についた。違和感を覚えない。それはきっと、彼の役者としての気質故の特権だろう。

 

「……そう言えば、自己紹介がまだだったね」

 

 言われて、初めて気がついた。同時に、作中に出てきた彼と、現実の彼を重ね合わせすぎていた自分がいたことにも気づき、そんな自分を私は恥じた。

 

「俺は広嗣・T・テスタロッサ。一応、アリシア姉さんとフェイト姉さんの弟だね。よろしく」

 

「あ、えっと……私は、コロナ・ティミル、です」

 

 緊張のせいで、私の言葉はたどたどしくなる。やってしまった、と後悔の念をすぐに抱いた。

 

「ははは、そんなに緊張しなくていいのに。いや、もしかして、俺が怖いのかな?」

 

「っ!」

 

 それは絶対にない。あれほど感動的な劇を演じることのできる人を、怖いと思うはずがない。私は全力で首を横に振る。あまりに勢いがつきすぎて、後ろでまとめている二房(ふたふさ)の髪が元気よく跳ねた。

 

「そんな全力否定しなくてもいいのに。――――まぁ、嬉しいけど」

 

 改めて彼を見てみると、自分の頬をポリポリと掻いて、私から少しだけ顔を背けていた。これは、あまりに大人びていた彼の素顔、なのだろうか。意外と子どもっぽい一面もあるんだなぁと、思う。

 

「あ、笑うことはないだろ」

 

 私は気づくと顔を綻ばせていた。彼の言い方から、それほど嫌がってはないようにみえる。決定的証拠は、彼の口元の綻びだ。

 

「すみません。でも、ちょっと微笑ましくて」

 

「君は俺の母さんか」

 

 ふふっ、と今度こそ私の口から笑い声が漏れた。彼もそれに釣られるようにして口角を上げる。その状況から、きっと私も、彼も、この穏やかな時間を楽しんでいると、私は確信する。

 

 ……もうちょっと、踏み込んでみても、いいよね。

 

「いつも、図書館にいますけど……もしかして、本が好き、ですか?」

 

 踏み込みすぎたかと、私は少し言葉に詰まったが、彼は気にした風もなく、静かに頷いた。

 

「えっと……おすすめの本とか、ありますか?」

 

 私の質問に、彼は「あー……」と返答に詰まる。しかし、それも当然だ。急におすすめの本はありますか、と聞かれて、すぐに答えを返せる人はほとんどいないと思う。

 

 しばらく俯き、唸り声を上げて、彼は真剣に考える。そんな彼の様子を見て、私はより一層嬉しさを感じた。

 

「……『運命の夜』、かな」

 

「『運命の夜』……聞いたことがないです」

 

 でも、興味は尽きない。あの劇の創設者の気に入る作品が、一体どのような内容なのか。今からすぐに、本を探して、読んでみたいほどだ。

 

「正義感溢れる主人公が、彼を含める七人の魔術師と、万能の願望機を巡るバトルロイヤルを行う話。俺はその、主人公の真っ直ぐなところとか、葛藤とか、決断とか、そういうのに見入ったかな。それと、彼の掲げる理想も、どこか否定しきれなくて、自問自答もした。図書室の異世界文学のところにあるから、今度みてみるといいよ」

 

 いつの間にか、彼は顔を上げていた。私は「ありがとうございます。合宿から帰ったらすぐに、見てみますね」と返事をする。

 

「なら、今度は俺から。ティミルさんは、どんな本が好きなのかな?」

 

「えっ……」

 

 まさか、私も同じことを聞かれるとは思っていなかった。でも、質問に答えないといけない、という思いからすぐに頭を働かせて考える。

 

「……歴史書、とかですね」

 

 そして私は言ってすぐに後悔した。パッ、と思いついたものが歴史書しかなかったとしても、それをチョイスするべきではなかった。これでは、変な子に見られても文句は言えない。

 

「へぇ……もしかして、古代ベルカとか、アルハザードの実存時代とかに興味があるのかな?」

 

 でも、そんな私の不安は杞憂に終わる。彼もまた、歴史には心得があるようだった。

 

「……はい! 特に、その時代に考案された魔法とかに興味があって――――」

 

 そこからは、歯止めがきかなくなって、私から一方的に、たくさん、たくさんお話してしまったけど……彼はむしろ嬉しそうに、聞きに徹して、相槌を打ったり、議論に付き合ってくれた。時には私が間違えているのを指摘されたり、彼が間違えているのを私が指摘したり。

 

 自分が興味を持っていることを思いっきり、誰かに話せることがここまで気持ちいいとは、私は思ってもみなかった。自分と同じ目線に立てる人。そんな相手を発見できて、とても嬉しかった。それが私だけでなく、彼もまた幸せそうだから、より一層、嬉しさが増して、話したいことが増えていく。

 

 私たちの今日の午前の時間は、そんな小さな幸せを享受しているうちに、過ぎてしまっていた。

 

 こんなに楽しい時間は、本当に久しぶり。

 

 日が真上に登ったとき、私は名残惜しかったけど、彼と一緒に帰路につく。わいわいと、賑やかに。合宿所に到着するまで、私たちはいっぱいお話して、親交を深めることができた。

 

 まだまだ、これからもっと、彼とお話したい。おもいは強く、私の心に根付いたのでした。

 

 




 次回予告:次回は「阿鼻叫喚の陸戦試合!」となっております! 主に誰もかれもがとんでもないことやらかして、もはや試合じゃなくなるという悲惨な出来事になります。具体的にいえば、vivid3巻のブレイカーの撃ち合いなんて目じゃないぜ! ぐらいです。

 さて、次回予告も終わったことなのでいいますね。ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます! 今回は、何とか文章を劣化させずに、自分なりに少しだけレベルアップさせて、かけたのではないかと思っております。

 ちなみに、皆様からの目で見るとどうでしょうか? もしよろしければ、感想やメッセージのどちらでもいいので、ご意見をお聞かせ願えればと思います(評価でも大歓迎)。

 現在のウサウサギのテンションはリアルタイムでMAXを天元突破しました。書き終えたあとの心地は本当に最高です!

 ちなみに、今回の文字数は5483文字です。またも大体予告通りの文字数です。内心安堵中のウサウサギが此処にあり(キリッ)。

 さてさて、それでは夜も遅いので(午前2時前)。あとがきもここまでにしたいと思います。

 感想、コメント、ご指摘、ご質問、評価、お気に入り登録などなど、随時募集しておりますので、遠慮も容赦もなくグサッ! としていただければと思います!(ただ、筋道のない誹謗中傷はご勘弁を)

 それでは、また感想か次話でお会いしましょう! 
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