セカイのごはん   作:千里のみち

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現在は上手なメンバーも迷走した時期があると思います。
中学生時代、まだ3人と別れていた頃の志歩のお話です。



ライブ帰りのタワーパフェ

 

角度を調整した電灯が照らす廊下を押されながら進む。

ライブが終わってもなお冷めやらぬ空気の中、グッズを手に出口へ向かう人の群ればかりが見えるけど、そろそろ出口のはずだ。

やっとのことでライブハウスの外に出ると、少しだけ涼しい風が吹いていた。

 

太陽は雲に隠れていて、日差しを浴びずに済んだのは幸いだろう。

もし出ていたら正面から睨んでいたかもしれない。

 

 

(私は本当に、あの演奏を超えられるの?)

 

 

目指す場所を思えばいずれ越えなければならないと思っても、心はすぐに追いつかない。

今までもそうだったけど、高い壁というものは決まって不意に現れるものだった。

 

 

 

 ――― ◇ ―――

 

 

 

2か月ほど前のことになる。

私が気になっているバンドの一つが、近々関東でライブを行うという情報を手に入れた。最近活動の幅を広げているグループ。普段は各地を転々としてライブをしているから見に行けないと悶々としていたから、直接見ることができるのは見逃せないチャンスだった。

 

万が一にも見逃さないように予約サイトに張り付いて、どうにかチケットを入手。

その頃の学校では既に二人との距離ができていて、クラスメイトともあまり話すことはない。そのせいだろうか、チケットに書かれた日が待ち遠しくてたまらなかった。

 

 

 

そして、とうとうその日がやってきた。

予約がとれたライブの開始は午前だったから、朝早くから支度して家を出た。

 

(うわ、凄い行列……。初めてくる場所だから早めの電車に乗ったけど、正解だったかな)

 

時間に余裕を持って向かったものの、会場には人の山ができていた。そういえば、予約サイトを見た時も程なくして完売していたはず。

それでも無事にライブハウスへ入れて、前の方の場所を確保することができた。

途中で列の進みも遅く感じられて、間に合うのか少し焦ったのは秘密だ。

 

ドリンクを片手に音が止み、遂にライブが始まる。

私がとった場所はスタンディングだから、電車さながらの込み具合だ。後ろの方には指定席があるから座って見れるけど、せっかくなら顔が見える場所で見たい。

 

(でも、全く知らない場所でライブに行くのは久しぶりかも)

 

行きつけの所では、助っ人としてステージに立つことも多い。参加者も顔なじみの人がいるから始まる前からどんな演奏なのか分かってしまう。こうして新鮮な気分で聴くのは久しぶりだった。

 

前口上はそこそこに、1曲目がの合図が光る。

メンバーも観客も次の瞬間の爆発に備え、ボーカルが深く息を吸い込んだ。

 

 

 

――衝撃。圧巻。驚嘆。

ジェットコースターに巻き込まれたように、体の自由が利かない。

それでも意識は冴えていて、もっと、もっと、と音を追い続ける。

 

生で聞くのは初めてだったけど、こうして目の前にすればはっきり分かる。

演奏も、歌も、演出も、たった数歳しか違わないのに遥かに上だった。

グッズ片手に歓声を上げる周囲とは裏腹に、私はただ、言葉も出ないまま立ち尽くしていた。

 

 

熱に浮かされたような、あるいは夢のような時間だった。

気づけばライブは終わって、周りの人がぞろぞろと動き出している。中学生の私は、人波に飲み込まれて押し出された。

 

風では冷やしきれないほどに体が熱を帯びている。耳の奥にはギターの音がいつまでも残っていた。

特にあの三曲目の入り。思い出すたびに胸の奥が熱くなりそうだった。

 

 

(あと数年で同じ年になる。それまでに、私はあの演奏と同じ場所に立てるの?)

 

 

感動はあるけれど、それ以上に不安がこみあげる。

彼女たちは来年には高校を卒業する。その頃には更に実力をつけているだろうし、彼女たちですら上回る実力を持つグループはいくつもある。

そんな世界に自分が追い付いて、追い抜いている姿を想像できない。

 

 

「今日のソロパート、鳥肌だったわ。あの子かっこよすぎ~」

 

「ホント、前よりずっと上手くなってたよね」

 

 

ライブハウスの前では観客たちが興奮冷めやらぬ様子で語り合っている。

それだけじゃないあの部分はもっと、と思わず吐き出しそうになった言葉を飲み込んだ。

 

 

(ダメだ、熱くなりすぎてる)

 

 

心を震わせた演奏も、見せつけられた圧倒的な差も、頭から離れない。オーバーヒート寸前の頭を冷やそうと残ったドリンクを飲み干す。

ずっと握りしめたせいか、すっかり温くなっている。ため息とともに、空になった紙コップをごみ箱へ捨てた。

 

 

 

 ――― ◇ ―――

 

 

 

駅へ向かう足取りは重い。

この後は楽器の手入れ用クリーナーを買う予定だったけど、ライブのことを振り返るほどそんな気分じゃなくなる。

 

 

『みんな、ミクのきょくやらない?』

 

『えっと、こうやってたたくのかな』

 

『じゅんびおっけー、それじゃはじめよ!』

 

 

一歌、穂波、咲希。4人で演奏していたあの頃が懐かしい。

あの頃は何も考えず、ただ演奏するだけで楽しかった。

 

今はもう、みんなバラバラだ。

卒業までは同じ学校にいるけれど……もう、4人で集まることはないのだろう。

私もその状況を選んだ一人だ。あの時の決断が間違っているとは思わない。

 

来年になったら私も高校生になる。その時になって振り返ったらまた違う答えを出すのだろうか。

いや、昔だけじゃない。今のこともそうだ。

 

 

1年後の私はどうなっているんだろう?

ついさっきまで目の当たりにしていた演奏に届いているのか。

 

 

(これからずっと練習して、どこかのバンドに入って、それで……)

 

 

バンドの一員としてステージに立つ自分を想像してみる。

周りの顔は見えない。ただライトがやけに眩しくて、抱えているペースが小さく見える。そこにいるのは間違いなく自分なのに、まるで自分じゃないみたいだ。

 

勧誘されても合わなければ断って、助っ人として呼ばれる日々。上手くなっている実感はあるし、周りからもそれは認められている。

でもそれは『中学生としては』という前提ありきのもの。あの演奏を超えるためには、今の自分じゃ到底届かない。

 

 

(……あ。もう、駅を通り過ぎてたんだ)

 

 

ため息とともに全身の力が抜ける。

気がつけば駅を過ぎて繁華街に入っていたらしい。しかもかなり離れている。

面倒だけど戻ろう。重い足を引きずりながら踵を返した。

 

 

 

 

(この店、エレキギターの品揃えが良かったな)

 

 

この辺りは普段来ることが無かったけど、大規模なライブが開かれるだけのことはある。

駅までの道沿いにはもちろん、繁華街にもいくつもの店が顔を出していた。ざっと見ただけでもギターにドラム、クラリネットにサックスとジャンルも幅広い。

今まで足を運ばなかったのがもったいないくらいの品ぞろえで、駅に向かうつもりだったのに思わず寄ってしまった。

 

もしかしたら、探していた手入れ道具があるかもしれない。

これまでの店では扱っていなかったり、品切れだったりしたけど、できればメーカーにもこだわりたい。

 

 

(道具だけ手に入れても、追いつけるわけじゃないのに)

 

 

ふと、そんなことを考えてしまって嫌になる。

考える度にどろどろとしたものが浮かび上がって消えない。

時計を確認すると、もう午後1時を回っていた。

 

 

(……はぁ。いい加減お腹も空いたし、どこか寄ろうかな)

 

 

ライブに間に合わせるために、朝から食べたのはおにぎり2個だけ。会場で買ったドリンクも足しにはならなかった。

できれば甘いものも一緒に食べられるところがいいんだけど。

 

外で待つのは嫌だし、あまり混んでいない店を探す。

ファーストフード系はいくつかあるけど、どこもライブ帰りの客で賑わっていた。

あの中に入ったらまた同じことを思い出しそうなので止めておく。

 

 

(あの店、あんまり混んでないみたい。今ならチャンスかも)

 

 

少し歩いたところで、一軒のカフェを見つけた。

シブヤでも見かけたことがある店だ。確かレストラン風のメニューもあるはず。

店内が空いているのを確認して扉を開けると、軽快なベルの音が響いた。

 

 

 

 ――― ◇ ―――

 

 

 

「ご注文がお決まりになりましたら、お声がけください」

 

 

決まり切ったフレーズを残して、店員さんは他のテーブルへ向かう。

立てかけてあるメニュー表を開くと、定番のランチが並んでいた。

 

 

(ハンバーグ、スパゲッティ、サンドイッチ……ラーメンはないけどいいか)

 

 

そのまま甘味メニューに目を移すと、杏仁豆腐やアイスの写真がある。

特別なキャンペーンもなさそうだ。

 

 

(あれ、まだページがある。なにこれ?)

 

 

最後のページで目に留まったのは『当店限定!』の文字。

その下には1ページ丸々を使った、巨大なパフェの写真があった。

クリームにアイス、果物がたっぷりと盛りつけられて、見ているだけでもその大きさが伝わる。

 

 

(挑戦者求む!『ミックスフルーツパフェ・タワーサイズ』。30分以内に完食で無料、か)

 

 

もちろん食べられなかった時の料金も書いてある。

昼食代を考えても余裕のある金額だった。

 

 

(いやいや、何を考えてんの?)

 

 

ここには昼ご飯を食べに来たのであって、大食いチャレンジのために来たわけじゃない。無難にパスタとプチ・モンブランにして、その後いつもの店に寄る。それでいいはずだ。

そう思って閉じようとしたとき、下に添えられた煽り文が目に入った。

 

 

『あなたはこの壁を越えられるか、越えられないか!今ならフェニーくんのレア特典付き』

 

 

片方の天秤に私の理性が乗り、もう片方にフェニーくんのぬいぐるみが乗せられ、天秤がぐらつく。

確かに特典は気になる。だからと言って、この量を食べるのは厳しいだろう。

ほんの1分前は知らなかったはずのパフェを前に考えあぐねていた時、近くのテーブルから声が聞こえた。

 

 

「あ、この写真の人って、今日のボーカルの人じゃないか?」

 

「ホントだ!あのパフェ完食したってマジ? もっと早く来てたら会えたかも~!」

 

 

顔を上げると、壁に貼られた何枚もの記念写真が目に入る。

どうやらパフェを完食した人は記念写真を撮ってもらえるらしい。その中の1枚、ひときわ目立つ場所にあのバンドメンバーの写真があった。完食して得意げな笑みを浮かべている。

 

バキン、と天秤が吹き飛ぶ音がした。

 

ベルを鳴らす。

ご注文は、とやってきた店員さんに答える。

 

 

「『ミックスフルーツパフェ・タワーサイズ』で」

 

 

浮かべていた笑顔が、一瞬で崩れ去った。

 

 

 

 

「お待たせしました。こちら『ミックスフルーツパフェ・タワーサイズ』になります」

 

 

『本当に、大丈夫ですか?』

 

 

――震える声で確認してきた店員さんを説き伏せて運ばれてきたのは、隣の席からでも見えそうなサイズのパフェだった。

 

一回り大きい縦長のグラスの中には、バニラアイスやスポンジケーキが詰め込まれている。その上に色とりどりのジェラートやホイップクリームが乗り、イチゴやキウイなどのフルーツが彩る。隙間にはウエハースが差し込まれ、極めつけにかかったチョコシロップ。

複数人での想定なのか、何本か透明なスプーンが付いていた。

 

 

(……こんなに大きかったの?写真で見た時はもっと小さく見えたのに)

 

 

高さは30cmを上回る。食べ物というより授業に出てくる城のようだ。

隣のテーブルの二人組はあまりの光景に目を疑って、斜め向かいの人はパフェの写真を撮ろうと構えてるし。

道理で、店員さんが何度も確認したわけだ。たった一人でこれを頼んでいたら私だって驚くに違いない。

 

 

「……よろしいですか、お客様?」

 

 

声をかけてきたのは、注文を取ってくれた店員のお姉さん。

心配そうな顔が隠しきれていなくて、むしろ私の方が落ち着いてくる。

 

 

(……はあ。何を動揺しているんだ、私は)

 

 

自分で決めた以上、今更取り消すつもりはない。パフェ用に用意された大きめのスプーンを構えて準備する。

 

 

「……はい、大丈夫です」

 

「それでは、制限時間は30分です。3、2、1……スタート!」

 

 

ストップウォッチの音と同時に、戦いのゴングが鳴り響いた。

 

 

 

 ――― ◇ ―――

 

 

 

どこかで聞いたところによると、パフェを食べるときは全体を見て、溶けそうな部分を把握することが重要らしい。

アイスは温度で溶けやすいし、トッピングも崩れかねないから注意して取り分けるのだとか。

本当に参考になるか分からないけど、まず最初は崩れそうな外側のジェラートやフルーツに取り掛かった。

 

 

(このリンゴ、思ったより甘くない。お腹も空いてたし、今のところは余裕かも)

 

 

崩さないように慎重に、でも素早くすくって食べる。

最初見た時には分からなかったけど、リンゴやブルーベリーも隠れていたらしい。

固めのジェラートと手を組んで私の舌に広がる。

 

 

(思ったよりフルーツが甘くないけど、他のメニューに使ってる?それともわざとなのかな?)

 

 

そうだとしたら助かる。この後に待っているのはバニラアイスやホイップだし。

ウエハースの乾いた感触でリセットしつつ、時々お皿にこぼれそうな部分を移す。

負けてたまるもんか。乾きを埋めるようにクリームへとスプーンを伸ばした。

 

 

 

何かがおかしくなったのは、開始から10分が経過した頃だった。

 

 

(あれ……? さっきから全然減ってない?)

 

 

スプーンを持つ手が一瞬止まる。

同時に、さっきまであった空腹感がすっと引いているのに気づいた。

 

上層のフルーツはかなり食べたはずだ。

けれどグラス全体を見れば、パフェはまだ半分以上も残っている。

早く次を食べようと、スプーンを伸ばして山盛りのホイップクリームを頬張った。

 

 

(うわ、甘い)

 

 

見た目のふわっとした軽さに反して、口の中にのしかかるような重さ。

パフェを食べるときに甘いものは後回しにしない方がいい、というアドバイスを今になって思いだした。

固まっている物から先に食べていたから、クリームやグラス内のアイスがたくさん残っている。

 

 

(……あと、何口ぶんあるの?)

 

 

僅かに流れる冷や汗。

それを振り払うように、残るクリームにスプーンを突き立てた。

 

 

 

 

(ぐっ……苦しい。まずいかも)

 

 

開始から20分が経過し、私の体は金縛りにあったように重たくなっていた。

スプーンを動かすのすら、気力でなんとかしている状態。

 

過ぎたるは及ばざるがごとし。

最初こそ楽しめていた甘さだけど、多過ぎれば苦しくなる。

アイスはみっちりと引き締まって重厚で、スポンジケーキはアイスやクリームが染みてべったり。残りは3割あるかないかだけど、もはやスプーンで口に運ぶのも作業だ。

 

 

(ほんとに、あと10分で食べられるの?)

 

 

スプーンを握りしめると食い込んで痛くなる。

時間はあと少しだけど、最初の勢いは見る影もない。

このまま無理すれば気持ち悪くなってしまうかもしれないし、かといって休めば時間切れ。

 

 

(もう……いいかな。ここでやめても、いいかな)

 

 

お財布には余裕がある。ステージじゃないし、誰から罰せられるわけでもない。

手から力が抜けそうになる。店員さんに声をかけてしまおうと顔を上げた時だった。

 

 

(……)

 

 

目が合った。

壁の写真の中、挑戦者たちの一角。

あのライブで私を圧倒した、ボーカルの彼女がいた。

 

写真の中なのに、まっすぐにこちらを見据える視線。

 

 

『私はここから先へ行く。あんたたちはどうだ!?』

 

 

あの時の歌詞と共に、彼女の音が記憶の奥から甦る。

胸の奥にずっと残っていた悔しさが、再び熱を帯びた。

 

 

(……そうだ。ステージがどうということじゃない。途中で苦しいからって、投げ出すなんて嫌だ)

 

 

あの時、ただ圧倒されたんじゃない。

私のやってきたことが遠く及ばない悔しさ。それでも超えたいという衝動。

 

言い訳なんかしたくない。壁の前で、立ち止まりたくない。

まして、この一杯を前にして逃げるなら、私の求める音楽には届かない。そんな気がした。

 

スプーンを強く握り直す。書道の教室で集中した時のように、軽く深呼吸。お腹の苦しさは相変わらずだけど、少しだけ楽になった。

時計を見ると残り8分。

グラスをのぞくと、熱で溶けかけたアイスが柔らかく光っていた。

 

 

 

グラスの中はフルーツが少なめで、見えなかったところにゼリーが入っていた。

柔らかめなのは幸いだった。こんにゃくのように弾力があったら何度も噛まないといけないし、タイムロスになる。

味はブドウで、酸っぱくないからパフェの終盤にはありがたい。

 

取っては食べ、食べては取る。ただ無心で体を稼働させる。

何秒残っているか見る余裕すらない。ラーメン食べ歩きの時でさえ、こんなスピードじゃなかっただろう。

もはや苦しさを認識する前に体が動く。無限に続く階段を、一歩ずつ登っていくような感覚だった。

 

 

 

 

「あ、なくなった!」

 

 

聞こえたのは誰の声だったろう。

はっとしてグラスをのぞくとテーブルの色が見える。空っぽになっていた。

 

店員さんがゆっくりと、大きく頷く。

 

 

「はい!残り時間、2分17秒。挑戦、成功です!」

 

 

挑戦成功。

その言葉を聞いた瞬間、張り詰めていた空気が一気に抜ける。

同時に、店内に割れんばかりの拍手が鳴り響いた。

 

 

(えっ?一体、何が起こってるの?)

 

 

いつの間にか周りに大勢の人が集まって歓声を上げていた。

どういうことだろう。こんなに人はいなかった気がする。

 

 

「このメニューを一人で注文して、完食される方は本当に少ないんですよ。皆さんも途中から応援されていたんです」

 

 

私の疑問に気づいたのが、店員さんが教えてくれる。

そうか、私はずっと集中していて、周りの気配にも気づかなかった。

 

 

(……え?じゃあギブアップしかけたところも、大急ぎでパフェを食べるところも、全部見られてたってこと?)

 

一気に顔が熱くなる。穴があったら入りたい気分だった。

 

 

 

 ――― ◇ ―――

 

 

 

その後のことといえば、あっという間だった。

まずメニュー表に書いてあったフェニー君の特典をゲット。パフェの感触が落ち着いてから、完食の証として記念撮影。

一人で達成した証として、特別な場所に飾ってもらった。隣では私を焚きつけたあの瞳が爛々と輝いている。

 

 

(うぷ、今頃になってお腹が重い……)

 

 

そして今、私は自分の部屋で横になっている

店を出た後は、あの気持ちを忘れないうちに練習しようと思って帰宅したけど、食べ過ぎの反動は想像以上で。

お腹が落ち着くまでゆっくり過ごす羽目になった。部屋に戻るところをお姉ちゃんに見られなかったのは幸いだった。

 

 

(私も負けていられない。少しでも早く追いついて、その先へ行く)

 

 

カーテン越しに見えた空に、一つの星がほんのりと輝いたような気がした。

 

 




おまけ

「ありがとう、志歩ちゃん。このスティック、どこで探しても見つからなかったの」

「こんな穴場があるなんて……。いつの間に知ってたの?」

「前にライブを見に行った帰りにちょっとね。今はだいぶ知名度も上がっているから、来る人も増えてるけど」

「アタシも参考になったし、また来てみたいな~。そうだ、この辺りで行ってみたいカフェがあるんだ!あの店なんだけど」

「……!」

「何でも、あの店限定でとんでもない大きさのパフェが頼めるんだって。4人で食べたらちょうどいいかもしれないでしょ?記念に行ってみたいの!」

「確かにお腹もすいてるし、丁度いいかも。私は賛成かな」

「リンゴも入ってるみたいだし、私も食べてみたいな。あれ、志歩ちゃん?」

「えっ?あっ、うん。私も食べたい、かな。そのパフェを」

「?よし、じゃあ早速行ってみよ~!」

「(言えない。あのパフェを一人で完食したなんて絶対言えない……)」

壁に飾られた写真が見つかるまで、残り3分。

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