まじこい的な何かを書こう   作:津谷 桐矢

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 四ヶ月も投稿せず申し訳ありませんでした。


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「あー羨ましいなー」

 その様に話す島津岳人は目の前に映る光景がどれほど憧れる光景なのかを知らしめるに十分な物であった。

「分かる、分かるぜーガクト」

「わからんな、三次元の何が…」

 その言葉に対し、クラスメイトの福本育郎と大串スグルはそう言葉を述べた。

「まったくだな。年増の何が良いのか、俺には分からん」

 そう言うのは唯一クラスの異なる井上準であった。スグルに一部同意しているのだが、根本的に方向性が間違っている。

「みんなそんなに見ていたら迷惑になるよ」

「放っておけ、モロ。どうせ制裁されるのが目に見えているのだから」

 それを止めさせようとする師岡卓也と放置を決め込んだ直江大和である。

「敢えて放置する大和素敵、結婚して!」

 椎名京は何かにつけて大和へと迫るが、それすらも無視を決め込み大和は注文した料理を食べるのであった。

 

 さて彼等、特に岳人と福本が何を見ているかと言えば、三年生が卒業し熾烈な学食競争も緩和した三月の事。一、二年生がゆったりとした気持ちで昼食を取る光景がこの時期見られる川神学園。しかし、そんな中で少しの羨望、嫉妬等余り良いとは言えない感情が七割を占める視線を集める存在がある。

「お、美味しい?」

「美味しいよ、弓子」

「いーなー徹じゃあそれ私にもくれ!」

 右に矢場弓子、左に川神百代を侍らせる様に食事をとる川神徹の光景であった。

「姉ちゃんはそこに飯が有るだろ」

「百代、これは徹君に作った料理なのよ」

 周囲から距離を開けている彼等は負の視線もなんのその、動じることなく昼食を摂っている。周囲では彼等の声が聞こえない。だからこそ弓子は気を張らず自然に会話している。

 

「くっ、前は貰えたのに…」

 百代は二人の言葉によって敢え無く諦めた。加えてあのデート以降、二人に連帯感が生まれたと感じた瞬間であった。

 徹と弓子は残念がる百代を気にすることなく食事を続ける。

「この煮物、凄い俺好みだ」

「ホント、良かったわ」

 何度か徹の好みを聞きながら試行錯誤をして作った彼女の料理は文句一つ付ける事のない物であった。

 

「いーな、いーな、いーなー」

 そして、駄々を捏ね始める百代に大きな溜息を吐く徹は一度弓子を見た。すると彼女も徹が何を言いたいのかが分かった様に頷いた。仕方がないと奇しくも思いが一致したわけは、だんだんと大きく為る百代の声は周囲に迷惑となる可能性があったからだ。

「しょうがないから分けてやるよ」

 徹はそう言って絶賛した煮物を箸で摘まむとカレーうどんが入っていた丼に置こうとした。

 その瞬間、百代の身体能力が最大限度まで発揮される。徹が丼に置こうとしたその僅かな間に彼女は口に煮物を取り込んだのである。傍から見れば姉弟で食べさせる様な構図だが、美男美女の光景に周囲が盛り上がる。黄色い声と汚い声が入り混じる。

「うーん!美味しいー!!ユーミンの料理の腕は本当に最っ高だな!」

 百代は自身のしたことを全く気にする事はなかったが、周囲の盛り上がり方は尋常ではなかった。

 

「かー見ましたか!あーん、ですよ!!あーん。幾ら姉弟でも羨ましい!!」

 岳人が相当悔しがり。

「くそぅ、シャッターチャンスを逃したー!!」

 育郎は百代の口を空ける瞬間というとある催しで稼げる決定的瞬間を逃した事を悔しがる。

「二次元であればフラグが…」

 スグルは三次元から想像を膨らませ。

「あれが幼女であればな~『お兄ちゃんが食べさせてあげるよ』なんてな展開が!」

 準は妄想に耽る。

 特殊な物言いもさることながら特に女子生徒の黄色い声が学食内に木霊していた。

「はは、ホントやることが凄いよね。モモ先輩…」

 ムッツリが定着しつつある卓也は羨ましい気持ちを隠してコメントし。

「まああれが姉さんだしな。俺はやらないからな京」

 大和はこの後に起こるであろう行動を牽制する。

「ちぇ」

その予防線は絶大な効果を大和に齎し、京は軽く悔しがるのであった。

 望み薄すだと判断した京はそう言って可愛らしく拗ねるのである。こうして楽しい食事?の時間は過ぎるのであった。

 

 

 

 

 

 放課後、徹は主に岳人に制裁を入れてからバイト先へと移動した。

「こんにちは」

「はい。こんにちは、待っていたよ。それじゃあ今日もよろしく頼むよ」

 洋菓子店店主であり川神学園のOB川秦照雄が元気に徹を迎える。お店の制服に着替えると早速店内へと向かう。彼のバイト先での役割はイートインも出来る洋菓子店のウェイターである。

 その徹が現れるだけで常連客が増え、売り上げがさらに増えると言う逸話まである。そんな彼が出れば近くに呼ぼうと注文をしようとする争いが勃発する。

 午後は学生とマダム達が半々で客として訪れる。その中で真っ先に徹を呼ぶことに成功した人物がいた。

「いらっしゃいませ。麗子さん、と咲さんお久しぶりです」

「いやーホント眼福だね。徹ちゃんのその姿!」

「ようっ!久しぶりだな。ごしゅ、うちの旦那の仕事が一段落したしさ、大和ももう直ぐ休みになるだろうからってことでな。それにしてもその格好決まってるな!流石麗子さんが褒めるだけあるぜ」

 同い年の子が居るにも拘らず、凡そ一回り以上年の差が有る様な二人がそう言葉は異なるが徹を褒める。

 島津岳人の母にして大和たちが暮らす寮母もこなす麗子と大和の母咲である。

「お褒め頂き光栄です。本日は此方がお勧めと為りますが」

 そう言って徹は接客に徹する。身内に近い二人であろうとお金を頂く事をしている以上私情を挟みお店に迷惑はかけられないと気持ちを正して二人へ営業を行う。

「じゃあ、それを貰おうかね」

「そうですね。私も同じの貰うよ」

 二人が注文した物は店内でも一、二を争う高価格設定のケーキである。加えてセットであればさらに値の張る品物となる。

「畏まりました。それでは暫くお待ち下さい」

 徹は伝票に書き込むと二人に頭を下げてその場を去り注文へと向かうのであった。

 

 こうしている間にも徹を呼ぼうと言う熾烈な駆け引きが行われる。時間にすれば僅かであるがイケメンの清涼感を僅かにでも与りたいとするマダムと同い年のイケメンと近くで接したいと言う女子生徒は我慢強い。

 この日徹は五時間の労働を行った。

「お疲れさまでした!」

 徹は先に上がる為先輩方にそう挨拶を行い、店を後にする。

「うー寒い!」

 季節は三月、日中は春の陽気も感じられる暖かさも日が落ちればそうはいかない。彼はマフラーを口元までして帰宅の途へ着くのだが必ず通らなければいけない道で女性の悲鳴が聞こえたのである。

 

 

 

 

 

 この日、大和田伊予はストーブリーグから始まる補強に熱狂し、待ちに待ったキャンプを終え、漸く始まった七浜ベイスターズのオープン戦を観戦した帰りであった。熱狂的な応援仲間と別れ帰宅している中、後ろを付ける足音が聞えて来る。彼女はオープン戦とはいえ勝利によって得た久方ぶりの興奮も一気に冷めてしまう。

 彼女が一歩足を踏み出せば後ろの人物も一歩足を踏み出す。歩幅が異なるのか差が縮まる様な感覚に思えた。彼女は川神へ引っ越してきたばかりである。加えて川神学園へ入学を控えた時期であった。その様な彼女に別ルートで家に帰ると言う選択肢は存在しない。何とか急いで家に帰る事だけを頭に入れて早足となっていた。。

 だが、それも遂に限界に達する。奇しくも場所は多馬大橋、通称変態橋とも呼ばれる場所であった。

 伊予はつい後ろを振り返ってしまった。

「お嬢ちゃん、こんな夜遅くに一人で歩くなんてなんて危ないよ…」

 伊予は思わず危ないのはお前だと言いたかったが恐怖が彼女の行動を制限し、悲鳴を上げる事が精一杯であった。

 夜であっても照明は確りと明るく照らし、交通量もある国道だ。しかし、人通りが極端に減る為にそう簡単に彼女の悲鳴は届かないと後ろにいた変態が彼女に詰め寄ろうとする。

「へへへっ、そんな可愛い声を出してもこの時間は声が届かないよ」

 にじり寄る男、距離を開ける伊予。そんな攻防が二、三度続いたのち男は彼女へと襲いかかろうとした。

「イヤー!!」

 この瞬間、伊予の脳裏にはベイスの優勝からどん底までの天国と地獄が走馬灯のように甦る。特に優勝のシーズンは映像でしかお目にかかる事が無かった彼女はこの目で優勝を見たかったと思うのである。

「はい、そこまで」

「ぐぇ…」

 戦力も整い今年こそチャンピオンフラッグを!と思ったところでそんな声が聞え、襲い掛かろうとした男の気持ちの悪い声が聞えた。そして瞑っていた目を開けるとそこには白馬の王子の如く徹の姿が彼女の目に飛び込んできた。

 

 その後橋の近くにある交番へ男を突き出し、事の経緯を話した後二人は帰宅を始める。

「あ、あの!本当に有難う御座いました!!」

 伊予は意を決したように徹にお礼の言葉を述べる。今迄恐怖と安堵の感情、そして警察への事情説明等によって落ちついて徹に言葉を掛ける事すら出来ないでいたのだ。

「いや、気にしなくても良いよ。それより大丈夫だったよね?」

 徹はそう言葉を返した。それは謙遜でも何でもない本当にたいした事ではないと彼の中で思っての事である。

 そう言う理由は彼が川神徹だからである。距離にして一㎞は離れていた距離を伊予の悲鳴を耳にして僅か数秒で変態の後ろへと移動していたのである。そしてタイミングを測り、彼が襲い掛かろうとしたところで仕留めたのだ。

「は、はい!それはもう本当に、居たって大丈夫です!!」

 隣を歩く伊予はそう元気いっぱいに徹に言葉を返した。

「そっか、良かったよ。この時期になるとこの橋周辺にはああいった輩が出没し始めるからね」

 徹はまるで冬眠から目覚めた様な、と付け加えて彼女の笑いを誘った。

「そうでしたか。私こっちに引っ越してきたばかりで」

 徹の説明に笑った伊予だがこの橋の曰くを知り少し先程の恐怖が甦る。

「そっか、それじゃあ知らないのも無理はないよね。俺は川神徹よろしく」

「わ、私は大和田伊代です!」

 交番でも警官相手に名を名乗ってはいたがこうして自己紹介する事はここまで無かった。

 

「あの、川神って川神学園と関係が有りますか?」

 伊予はスッと入ってきた徹の名前に引っ掛かる箇所が有りそう尋ねた。

「ああ、俺のじいちゃんがその学園の学長をしているよ」

「わ、私は来月からそこへ入学するんですよ」

 やっぱりと感じた伊予は何処かシンパシーをその時感じ自身の事を話し始めた。

「へーじゃあ俺後輩になるのか。俺は伊予ちゃんの一っこ上になるよ」

 そう話したことで余計に伊予は徹の事を頼もしく感じるのである。そして帰り道上二人は川神学園がどの様な場所か等を徹が説明しながら進むのであった。

 

「あっ、私の家あそこです」

 歩いた時間は十分ほど、伊予は住宅街のとある場所を指差してそう言った。

「そうか、それじゃあここでお別れだな」

「本当に有難う御座いました。川神先輩」

 伊予は何時しか徹をそう呼んで、深々と頭を下げた。

「後輩を助けられて良かったよ。それじゃあ又、学校で会おうぜ」

「はい!それじゃあおやすみなさい!!」

「お休み」

 二人はそう言って別れたのである。

 伊予はこの日の事を日記へと確りと書き込んでいる。ベイスの試合が有る日は主にそれに関係した事を書き込んでいたがこの日ばかりは徹の事が主体となって綴られていた。

 

 

 

 

 

「ただいまー」

 徹は家に帰ると随分と遅くなってしまったと感じ声を抑え気味に発した。

「お帰り徹。随分と遅かったじゃないか」

「ホントね。どうしたのよ。徹?」

 川神姉妹は風呂上がりの様相で徹の帰宅を迎えた。岳人や福本等男子生徒が見たら涙ものの光景である。

「んっ、ああ人助けだよ。じいちゃんは?」

「儂ならばここじゃよ」

 徹の言葉にすかさず反応する鉄心は流石壁を越えた者である。

「今日の帰り道にさ…」

 そこで徹は帰宅までの出来事を鉄心に加え百代たちやルーを加えた者に話す。来月から生徒になる事が判っている以上学園関係者の二人に確りと話さねばと彼は考えたからだ。

 

「なるほどのぅ。そんなことになっておったか、良く未然に防いだのう」

「本当だネ。良くやったヨ。徹!」

 鉄心とルーはそう言って彼を褒める。

「流石私の弟だな」

「ホントね。凄いわー」

 姉妹も我が事の様に徹を褒める。

 

「しかし、徹だからこそ未然に防ぐ事が出来ましたガ、もしそうでなければどうなっていたカ…」

 ルーは直ぐに頭を切り替えて対策を練り始める。

「そうじゃのう。こうした事は奇跡に近いのぅ。見回りを強化せねばならん」

 教員の宇佐美巨人を通じて親不孝通りと呼ばれる場所には見回りを出して貰っているが、此の度あの橋もその対象に加えなければと鉄心は考えた。とは言え、これは学校における業務では無く宇佐美代行センターへの仕事依頼である。学園の予算も決められている中でそう簡単には行かないのも事実である。

 この事を指摘するルーであったが、他に妙案もなく宇佐美へと依頼し、警察への要請を行う事で決着したのである。

 

 

 

 

 

 偶然とは恐ろしい物である。

 見られていないと思っていても何処かで誰かが見ている物なのだ。

 

 矢場弓子は自身の鍛錬も欠かさない武士娘である。この日、勉強も家事も終わった彼女はランニングへと出ていた。気分転換も含め順調に設定した道を進んでいた。その時、ふと視線に入りこんできた一組の男女、その後ろ姿である。

「えっ、ウソ……」

 彼女の目に映り込んだのは仲睦まじく歩く徹の姿であった。

 




 時間を空けると話が上手く合っているのかが 分からなくなりました。
 次は早く上げられる様に頑張ります!

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