まじこい的な何かを書こう   作:津谷 桐矢

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 徹は春休み最後の二日間を矢場弓子との旅行に充てるべく、鉄心に事情を説明し丸く収まった事を報告した。

「なるほどのぅ。あい分かった収まっている事であれば何も言う事はない。存分に遊んできなさい」

「ああ、有難うじいちゃんそうするよ。それじゃあ今日もバイト在るから」

 そう言って徹は鉄心の前から去って行った。

 

 この話しは百代が奥義を使用し情報を手に入れてしまった。その事から当然仲間内に漏れてしまう。

 百代は島津寮へと赴いて徹の話しを大和と京に話した。

「へぇーそんな事が在ったのか」

「着実に進展しているよね、あの二人」

 翔一はバイトへ由紀江はふらりと外出し、忠勝は家業に精を出しと不在であったのだ。

「全くだよ。まあそう二人が楽しむのは姉として親友としても良いんだけどなーどうにもうらやまけしからん!!」

 結局百代は二人が遊びに行くのが羨ましくて仕方なかったのだった。

「いやいや。仕方がないよ、モモ先輩」

「そうだよ、姉さん。聞けば謝罪を込めたものなんだろ?だったら俺たちが如何こう出来る訳ないだろ」

「だけどなーあいつら、二人だけで春休みを満喫するんだぞ。私たちも何か思い出作りがしたいじゃないかー」

 百代は不貞腐れる様な可愛らしい声で大和に反論した。しかし、既に四月に入り残す休みも四日と迫る中、何を計画しようとも近場で遊ぶだけになってしまうのは目に見えている。

「まあ毎日こうやって遊んだりすることで今回は我慢しなよ、姉さん」

「若しくは頑張ってお金を稼いでね、モモ先輩」

「しょうがないなにゃーそれじゃあ私は…大和で遊ぶニャン!!」

 突然猛獣が大和へ襲いだした。馬乗りになり、大和をガッチリと抑え込んでいた。

「くっ、姉さんまたか…」

「大和ー覚悟しろよー」

「へ、へるぷ!み、京…」

 一瞬大和は京に助けを呼ぼうと振りむいたが、その瞳は百代と一緒に参加する意思を含んでいた。

「ごめんね、大和」

「ごめんじゃない!」

「さあ、いざ行かん!!」

 百代の掛け声にセクハラと言う名の狂乱が幕を開ける。

「ヤメテェー!ヤドンとカリンの前でだけはー!!」

 虚しくも彼ら以外居ない島津寮では助けが来る事は無かった。

 

 

 

 

 

 大和がセクハラ被害に遭ってから二日後、徹と弓子は迎の車に乗って『九鬼リゾート』へ移動していた。送迎を担当しているのは以前居合わせた二人のメイド、李静初とステイシー・コナーであった。静初はクラウディオの信頼厚い部下として、ステイシーはヒュームの部下として二人の接待を任されていた。

「いやーまさかヒュームさんにあんな事をさせるなんて凄いな、徹!」

 ステイシーは徹がヒュームの蹴りを傷付かず受け止め、加えて足首を手で握っていた光景と土下座をしている処を思い出していた。

「こ、こらステイシー幾らなんでも気を抜き過ぎです。申し訳御座いません」

 上司を色濃く反映しているからか、二人の態度は極端であった。

「別に構いませんよ。こうして送り届けてもらうだけでも悪いのに…」

 徹と弓子は初めて乗るリムジンに圧倒されていた。内装も豪華と呼べる為に緊張は拭えない。そんな中、ステイシーの言葉使いと態度は二人にとって歓迎できるものであった。

「だろーワタシはさ、緊張しているだろう二人を想ってだな…」

「ですが、限度と言う物が在ります。私たちは九鬼家の人間です。今回は貴方の上司の不手際によって引き起こされた事は間違いないのですよ」

 今回静初とステイシーは九鬼財閥総帥九鬼帝から直々に命令を受けていた。とは言っても重苦しい雰囲気ではないが、中身は非常に重たい。それはクラウディオから懇切丁寧に教えを受け、二人は重要性を理解していた。

「ファック!そう言えばそうだった。ごめんなー二人とも…」

 少しバツの悪い表情で謝るが言葉使いは改善される事は無かった。

「まあ、二人ともそれぐらいで。それに何度も言いますが堅苦しいと折角の旅行が楽しめませんから、お互い力を抜いて行きましょう。どうせ、何が起こっても大丈夫な戦力が此処には居るんですから」

 徹自身とメイド二人を計算に入れればどの様な事態に陥ろうとも問題ない事は明白だと認識していた。

 

 車は川神市を出て一路北関東へと移動した。凡そ二時間半を掛けて着いた先は豪華な施設群の集まりだった。

「さっ、到着しました。これより先へは私たちは入れませんので此処で失礼させていただきます」

 静初はそう言って深々と二人にお辞儀をした。それにつれてステイシーも同様に行った。

「ローック!帰りも迎えに来るから存分に楽しんでこいよ!」

「はい、有難う御座いました」

「有難う御座いました」

 徹と弓子は引き返して行く車を見送った。

「それじゃあ、行こうか」

「うん」

 二人は荷物を持って入り口へと向かう。

 

「いらっしゃいませ」

 最初はフロントへ二人は向かった。

「ええっと、予約をしている川神徹と申しますが…」

 そう名乗ると直ぐにフロント係のホテルマンが検索する。しかし、その表情が驚きに変わるのはあっと言う間であった。

「申し訳御座いません。川神様、ただいま総支配人をお呼びいたしますので、どうぞお待ち下さい!」

 春休みも終わりを迎える中であろうとも此処九鬼の施設は満員御礼と為っている。当然宿泊客も多い中でその様な対応をされれば一斉に注目を浴びてしまうのは言うまでもない。

「分かりました。ですので、もう少し小声でお願いいたします」

 徹はそう言って嗜めた。

 

 暫くすると総支配人と呼ばれる男が小走りでやって来た。

「お待たせして申し訳御座いません。(わたくし)九鬼リゾートの総支配人をしております権田と申します。恐れ入りますがチケットをご確認させて頂けますか?」

「川神です。此方が頂いたチケットです」

 そう言って懐から差し出すと直ぐに確認作業に入った。受け取る時、神妙そうな表情であったのを徹は見ていた。

「確認致しました。お二人には当施設に居る間、此方をお持ち下さい」

 そう言って渡されたのはクリアケースに入ったパスポートであった。

「此方は先程当施設を全て無料で使用出来るパスになっております。九鬼揚羽様のコードを確認いたしましたのでそちらをお渡しいたしました。再発行は出来かねますので御滞在中は決して失くさぬ様ご注意ください。それではお部屋へ御案内致します」

 そう説明を受けた後、名前を記入した徹たちは部屋へと案内された。そこは二十階建ての最上階であった。

 

「うわっ、凄い!」

「ほんとうね。遠くまで一望できるわ」

 二人は荷物を置くと早速眺めを楽しむべく窓際へと進んだ。此処は過疎化が進んだ場所を一括して買い上げて再開発した場所であった。インフラも整備し、九鬼はこのエリアを新たな経済圏の中心にする計画を立てていた。その為、現状ホテル以外に高い建物が存在せず遥か遠くまでの景色を楽しむ事が出来る。

「料金表見なかったけど、ここって幾らぐらいするんだろうな…」

「そう言えば私も見なかったわ。…でも気に為らない位に稼いでくれるんでしょ?」

 弓子は少し考え、顔を赤らめながら冗談交じりにそう話し掛けた。

 徹は一瞬彼女が何を行っているのか解らなかったが、瞬時にその意図を導き出す。

「そうだな。立派に川神院で地位を築いてそうなる様に努力するよ。という答えでいいか弓子?」

 徹は隣に立つ弓子の肩を抱き、体を自分の方へと寄せる。

「う、うん…」

 二人は景色を眺めながら自然と唇を重ねた。

 

「今日はどうするの?」

 弓子はキスをした後、室内で寛ぎながら尋ねた。

「食事はレストランで食べるとして、温泉に行ってみようか?」

「そ、そうね…温泉…ね」

 水着の着用が義務付けられているが、混浴温泉が九鬼リゾートの魅力の一つであった。これを多くの家族連れやカップルが目的として訪れているのだ。

「ん、どうした弓子?」

「えっ、何でもないわよ。ただ水とお湯の違いと言うだけで妙に恥ずかしく為る物ね…」

 プールならば問題無く水着姿で姿をさらせるが、それがお湯に変わるだけで変な恥ずかしさが彼女を襲った。

「恥ずかしいなら止めて、プールでもいいよ」

「えっ!?温泉でいいわよ。こんな機会滅多に無いのだから、行きましょ徹君」

 弓子は徹の腕を掴むと強引に向かおうと動き出した。

 弓子も徹と言う彼氏が出来る前までは恋に恋する少女であった。妄想の中で色々と考えていたシチュエーションに近しい状況が現実の物となっているこの機会を逃す選択肢は存在しない。

 

 

 

 

 

「ふぅー気持ちいいなー」

 徹は弓子よりも先に温泉に浸かっていた。更衣室で水着に着替える前に体を洗いこうして直ぐに疲れるシステムは画期的だと彼は思いながら恋人の到着を待っていた。事前の情報の通り此処は家族やカップルが多く、仲睦まじい姿が至る所で巻き起こっている。

「お、お待たせ徹君…」

 そう言って近付いて来た弓子はメガネを外し、降ろしていた髪を纏め上げていた。また違ったスタイルの弓子を目にして徹は思わず呟く。

「うん、綺麗だ」

「えっ、ちょっと何を行っているのよ。恥ずかしいじゃない…」

 そう言いながら彼女は徹の隣へとやって来た。

「だって、見た事の無い弓子を見る事が出来たんだ、仕方がないだろ?」

「何を行っているのよ。メガネを外して髪を上げただけじゃない」

 そうは言うが徹の褒め言葉が嬉しかったのか、弓子の顔は喜びで一杯だった。

「そんな事無いぜ。姉ちゃんが弓子の事話してたぜ。男子生徒に人気だって」

 百代は確かに徹にそう話していたが、『美少女たる私に次いで』と言う言葉を忘れては居なかった。但し、そこを省いた徹の話しに余計顔を赤くした弓子であった。

 

「そ、そんな事知らないわよ。そもそもどうやって百代はその話を知り得たのよ…」

「どうしてなんだろうな。でもいいじゃん、人気が無いよりは人気が在った方がさ。俺も自慢できるよ、弓子の彼氏だって」

 気障ったらしく言ってのける徹には、イケメンと言うスキルが備わっているのか不快に感じる事は無かった。これが岳人であれば非難轟々である事は間違いない。

 そう話していると周囲に多くの家族連れがいる事に気が付いた。大人たちの目は何処か懐かしむ様な、羨ましがるような、ウットリする様な?多くの瞳が徹と弓子に集まっていたのだ。

「徹君。確かカップルで入れる小さな温泉が有るんじゃ無かったかしら?」

 弓子はこれ以上ない恥ずかしさを覚えていた。まさか、自分がこの様な言葉を掛けて貰えるとは想像だにしていなかった。そこで少しでもその恥ずかしさを紛らわすべく、来る時に見た場所を思い出し彼にそう告げた。

「そうだな。そっちに移ろうか、ほら手を出して」

「う、うん…」

 何気ない優しさを発揮する徹に周囲からはウットリとする溜め息が漏れた。水着を装着してはいるが徹はトランクスタイプの物だ。上半身から鍛え上げられた肉体美がこれでもかと披露されている。一部で男もそれに引き寄せられているが、遠くで眺めている程度であった事は幸運であった。

 たっぷりとカップル専用個別の温泉へと移動した二人は十分に満喫してこの場を後にした。

 そして遠くに見える夜景を楽しみながら料理を楽しみ一日目を終えるのであった。

 

 

 

 

 

「ちくしょー!!」

 島津岳人は余りの悔しさに血の涙を流していた。

「うわっ、汚いなーガクト」

 近くにいた卓也はその煽りを受けまいと少し距離を開けた。

「別にいいだろガクト。付き合っている二人が旅行に行くくらい」

「き、キャップにだけは言われたくねー」

 事の起こりは春休み終了二日前のことであった。徹と弓子が仲良く出掛けた後、風間ファミリーは徹を除き全員が集まる事になった。これは由紀江を仮に入れてみようという試みからである。ところが肝心の徹がいない事に気が付いた岳人が百代と一子に尋ねたことから始まった。百代としても実弟のことで騒がしくすることもないと大和たち以外には話していなかった。

「でもさ、調べてみたら凄い所だよ。ほら見てよこれ…」

 卓也は即座に二人が向かった場所を検索し、みんなにどんな場所かを示した。

「何れはこう言ったところでデートしたいね大和?」

「へぇー九鬼はこんなこともやっているのか…」

 しかし今回の大和は、京の言葉に一切反応する事は無かった。

「ああ、その反応の無さ。虚しい…」

 口で『ヨヨヨ』と言いながら尚も大和の反応を見たが、効果が無いのか即座に元に戻った。

 

(やべーやべーよ、まゆっち!この人たち濃いぜー濃すぎるぜー!!)

「こ、これ松風。濃いだとか言ってはいけませんよ」

 由紀江は丁寧に両手でストラップを乗せて厳しい事を言い放った。彼女は九十九神が宿った松風が言った事と弁明するが、誰もがそれを信じる事は無い。つまり、松風は由紀江の本心を代弁しているに過ぎないという考えであった。

「まあ、私たち風間ファミリーは確かに濃いメンツが揃っているよな」

「モモ先輩の言う通りだぜ。そうでなきゃ面白くない!」

「ちょっと、それって僕も入っているの!?」

 川神兄弟、翔一に岳人、大和と京と言った卓也からすれば確かに濃いメンバーが揃っている。しかし、卓也はその存在感からまさか、濃いという分類に入る事は無いと思っていた。

「何を言ってんだ、モロ。パソコンに、電車にとお前の知識は凄いもんだろ」

 意外にも岳人がそう言って彼を褒めたがその後の一言が厳しかった。

「加えて、髪の毛に異常な興奮を持つなんてドン引きだよね…」

 そう言ったのが京であった。それにみんなが笑い声を上げる。

「ちょっと、京までなんて事を言うのさ!?」

「は、ハレンチだわー」

「まゆまゆも気を付けないとな。その綺麗な髪をモロロが狙っているかもしれないぞ?」

 驚かす様に百代は由紀江の後ろから抱きついてそう警告を発した。

「ふぇ!?」

(一番暗そうなモロロボーイがヤバいとか、まゆっちピーンチ!!)

 松風の言葉が全員の笑いを誘ったのは言うまでもない。

「ええっ、まゆっちまで!?」

「そうだよ、モロ。お前にはもう一つ濃いメンツに為る要素が有ったじゃないか!」

「えっ、ちょっと嫌な予感しかしないんだけどキャップ…」

 そう言って思わず岳人へと視線をやると、だらしない顔付でこう述べる。

「はーい、卓代ちゃんはいりまーす!!」

「ええ、やっぱり!?あれは女装じゃないんだってば!!」

 話しが二転、三転しながらも会話が続くこの光景に由紀江は憧れを抱いていた。

「あ、やっぱりこう言う光景っていいなー」

 思わず自然な笑みと共に溢した言葉がみんなの脳裏に焼き付いたのは言うまでもなかった。

 




 御一読いただき有難う御座いました。

 早々にまゆっちが風間ファミリーへの仲間入りを果たす事となりそうです。青春とキャップが呼んだクリ吉と京の基地に対する意見の相違場面、まゆっちは既存メンバーの八つ当たりの様な気がしてならなかったのでこの段階で参入予定と致しました。
 尚京と卓也の排他的な考え方は徹がいる事で幾分緩和しております。
 何れその描写を書こうと考えておりますが何時になる事やら……
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