まじこい的な何かを書こう   作:津谷 桐矢

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 戦闘描写、武器の特徴など大甘にお読みいただけると幸いです。


021

 一子とクリスのワッペンが重なり合った。この瞬間クラスがわっと湧いた。

『決闘の成立だ!!』

 誰からともなく発せられたこの言葉は全校へと広がりを見せた。

「うむ、確認した。それではこれより校庭で決闘を行う。皆外へ出るぞ!」

 梅子の言葉でクラスは団体で校庭へと向かった。加えて校内放送で一子とクリスが決闘を行う事を宣伝し、授業そっちのけで観戦が行われる事となった。

 

「この決闘、儂が責任を持って見届けよう」

 本来なら授業に戻れと言わねばならない立場の鉄心が率先して行う当たり、これが川神学園であると喧伝する様なものである。そして、一年生もその空気に早速慣れる様にほとんどが校庭に出て観戦しようとしていた。そこには商魂逞しい文系部のお店すら姿を見せているほどだ。

 

「よう徹。新入生はどんな子だ?」

 百代は後ろに弓子を連れて徹達風間ファミリーの下へやって来た。そして、徹は言葉ではなく指を指して百代に応えた。

「び・じ・ん、キター!!なんだよ、金髪で色白で!大当たりじゃないかよ!!」

「そのガクトの様な反応どうにかしろよ」

「うるさいなー良いんだよ私は。それで、強いのか?」

 姉弟のスキンシップを含めて行う百代は一子との対戦を踏まえてクリスの事を尋ねた。

「どうだろうか、戦い慣れているのは一子だと思っている。ただ、あの武器がな…」

 今迄一子には色々な武器を使用して鍛錬を行ってもいた徹だが、レイピアと言う物は記憶になかった。そこで、どうなるのか彼にも予測が付かなかった。

「まあ世界中から川神院へと対戦者が訪れるんだ。見た事の無い武器、戦い方なんてあって当然だ。それをどうにかするのが私たちの立場だよ。臨機応変に対処できなければ師範代なんて夢のまた夢だ」

「そうだな。家族として言えば勝って欲しいが、最悪引き分けでも俺は良いと思うよ」

 そう話している頃、当事者も準備が整い今か今かと周囲のボルテージも上がり始めていた。

 

 

 

 

 

「それでは準備は良いかの?」

 鉄心が両者に問うと、元気のいい声が返って来て準備万端を窺わせた。

「それじゃあ覚悟しなさいクリス!」

「その言葉確りとかえしてやろう!」

 両社は一定の距離で武器を構え、それを確認した鉄心は始まりの合図を掛ける。

『それでは時間無制限!始めーい!!』

 

 その声の瞬間両者は様子を見ることなく距離を詰めて自分の間合で攻撃を始める。

 最初に攻撃を行ったのはリーチのある武器を使用する一子だった。

「先手貰ったわ!!」

「甘い!当たらなければどうってことは無い!」

 薙刀はその大きさ故に小回りが効かない。その為一動作が大きく、次の攻撃を行うにも隙が生まれ易かった。

 クリスはその隙を逃すことなくレイピアを突き出す。

「おっと、やるわね、クリス。初めて見る武器に驚かされるわ!」

 一子は接近し過ぎるのは不利と悟ったのか一度距離を取った。

「ふん、貴様もやるではないか!その様に威勢の良い相手は久しぶりだ。私の気持ちも最高潮に高まっている!!」

 クリスはそう言うと一子に向かって駆けだし、連撃を行う。威力は低い物の、突くという行為は恐怖を与える。

 加えて、攻撃間隔が短いため一子は防戦一方と為る。

 必死に薙刀を使い、相手の攻撃を受け流し、時には避けるという行動を見せる。それは周囲にクリス優勢を見せつけるものだった。

 

「おいおい、一子の奴随分と押されているじゃないか」

「そうだねガクト。大丈夫かな…」

 ファミリーでも素人の岳人と卓也は目の前の事を踏まえて話し合っていた。

「どうなの姉さん?」

 大和はプロに聞くのが近道と、徹から標的を大和に変えた百代に尋ねた。

「うーん。あの金髪の子もやるが、一子が僅かに有利だな」

「そうだね。ワン子はクリスの攻撃を確りと見て対処しているよ」

 京はその持前の目の良さで二人の戦いを正確に評価していた。それには正解だと言わんばかりに百代が笑みを作る。

「ああ、流石は京!」

「あれー私には夫が、夫がーー」

 まるで襲われる妻を演じる様な口調で京は百代に抱きしめられている。しかし、飛び火しかねない二人の絡みに大和は無視を決め込み決闘観戦に集中することにした。

 

「どうした、何時までも防御に回っていれば私は倒せないぞ!」

 未だに勢いが衰える事が無く攻撃を続けるクリスは挑発する様に一子に言い放つ。

「うるさいわね。それだけ攻撃しても当たらなければどうってことは無いわ!」

 一子は百代と一子の言う通り冷静にクリスの攻撃を、動きを目で追っていた。そして、それはある種のパターンを以って攻撃を行っている事に一子は気が付く。

「な、何を!!」

 そして、パターンの初めに一瞬硬直するその僅かな隙を一子は突く事に決めた。

 挑発が挑発によって返され、気持ちの昂っていたクリスは一子の言葉に反応してしまった。

 そこで今まで以上に体を硬直させ、一子に反撃する隙を与えたのだ。

「ほう…」

 誰が漏らしたのか、武道に関わりのあり実力を伴う者は一子の判断を評価した。自分自身が戦ってもそこで転じると思ったからだ。

 

「なっ!?」

 意表を突かれたクリスは、今迄大振りで攻撃していた一子からは想像の出来ない細やかな動きと、攻撃速度に圧倒され出した。さりとてクリスは持ち前の戦闘能力で彼女の攻撃を避ける。レイピアは防御には向かず、体捌きで只管に一子の攻撃を避け続ける。

 二人の素晴らしい戦い振りは川神学園の生徒を熱狂させ、あのSクラスも彼女たちの戦いに目を釘付けにされていたのだ。

 

「ほらほら、まだまだ行くわよ、クリス!でりゃゃゃあー!!」

 一子はさらにもう一段速度を上げる。これは徹と戦う時と同じ、自分自身の中で最高速度のものだった。これは彼女の奥義とも呼べるもので、最後の詰めの部分で行うものだった。

「くっ、まだだ、まだ自分は…ぅわっ!!」

 防戦一方となったクリスは声を絞り出す様に呟きながら限界まで体を動かし、王劇に転じる隙を窺うも、一子のさらなる加速でその望みも潰えた。次の瞬間、レイピアを持っていた腕を薙刀で叩かれると力が抜けて手から離れてしまった。

「これで私の勝ちね」

 最後はクリスの目の前に切っ先を向けた一子がそう宣言を行った。しかし、勝負はどちらかが敗北を認めるか気絶しなければ決着とは言えない。

「ああ、認めよう。私の負けだ…」

 悔しさの中にも晴れやかな気持ちに為るクリスは笑顔で敗北を認めた。

「勝者川神一子!!」

 鉄心の言葉で学園は更なる歓声に包まれた。

 

「うぉぉぉー一子殿が勝ったー!!」

 2-Sでは九鬼英雄が雄叫びを上げる様に一子の勝利を喜んでいた。

「ふ、フン中々やるではないか山猿ども…」

「駄目ですよーFも同じ川神学園の生徒です。少なくとその様に呼んでは」

 心は英雄の前で一子を含む2-Fを山猿と呼んでしまい、従順なメイド忍足あずみによってクナイを首元に当てられていた。

「ひっ!?す、すまなかったのじゃぁ…」

「泣くくらいなら言わなければよかったのにねー」

 小雪の辛辣な言葉は恐怖している心には届く事がなかった。

 

 

 

 

 

 一子は構えていた薙刀を降ろすとクリスに近付いた。

「中々やるわね、クリス。私の事は一子って呼んでね」

「分かった一子。今回は負けたが次回は必ず勝つ事を宣言しよう!」

「ええ、その時もまた私が勝つようにまた努力するわ!」

 二人はそう言うと生徒の見る前で堅く握手を交わした。

 

「おお、何か一子が青春してるな」

 翔一はその光景を羨ましそうに見ていた。

「ええ、一子ってあんなに強かったの?」

「ふ、普段は相当力を抑えているのかな」

 岳人と卓也はそのあまりにも次元の異なる戦いを見て正直引いていた。

「姉さんも此処まで想像出来た?」

「まさか、何時も徹と鍛錬しているのは知っていたが、一子が此処まで戦えるようになっているなんて思いもしなかったぞ」

 この百代の言葉はルーと鉄心も同じであった。慢心することなく必死に戦う姿勢もまた評価に繋がり、三人を現状で満足させる事となった。

 

「たしか徹君が教えているんだったかしら?」

「そうだよ。一子は俺の弟子の様なもんだな」

 徹と弓子はファミリーとは少し距離を取って決闘を眺めていた。一緒に居られるなら一緒に居たいという初々しい心理が二人を動かしていたが、話題は専ら一子のことであった。

「どうかしら。弟子の勝利は?」

「嬉しいさ。一子はな、武術の才能は無かったんだ。でも持ち前の明るさと努力をし続けるという並はずれた才能が、此処までに押し上げた。現状では文句の付け処ろが無いよ」

 徹は満足そうに弓子に答えた。それでも川神院の高僧と戦えば良くて五回に一回勝てるかどうかと言うところ。しかし、勝ったという事が一子には大きいと徹は考えている。外部の力が拮抗していそうな相手と、初見の戦闘スタイルの相手に勝利を収める。これで、自信を付け、更なる高みへと一子が登れる事を徹は確信していた。

「本当に嬉しそうね」

 弓子はこれ以上何も言わない徹の腕を抱きしめて、体を寄せ未だに歓喜の輪の中に居る一子とクリスを見続けるのであった。

 




 御一読頂きまして有難うございます。

 一子勝利という結果となりました。
 くり、犬と言う二人の掛け合いも考えましたが、徹に鍛えられている一子を想いますとこうした方が良いかと判断致しました。
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