まじこい的な何かを書こう   作:津谷 桐矢

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 紆余曲折あったクリスの転入も無事に終えたその日の夜、翔一はファミリーを召集した。

 急な呼び掛けにも関わらず、全員集まれた事に彼の表情は嬉しげであった。

「みんな急に呼び掛けたにも拘らず集まってくれて感謝するぜ!」

「気にしないでキャップ。大体予想出来ているから」

 京は疑問を持つことなく、今日集めた理由に確信を持って理解していた。

「京の言う通りだね。僕でも何となく分かるよキャップ」

 卓也も京に続き述べたことで、翔一はさらに笑みを浮かべる。

「お前たちの理解が早くて助かるぜ。それじゃあ早速提案だ!まゆっちとクリスをファミリーに迎え入れたい!!」

 そう宣言すると比較的好意的に翔一の提案は受け入れられた。しかし、当然難色を示す者も居る。

 

「キャップの言いたい事は判っていたけど、それとこれとは別。と言うわけで私は反対に一票」

「悪いねキャップ、僕も京に賛成だよ」

 京と卓也がこの提案に反対を示すのは予め予見していた翔一は『気にするな』の一言を送り他のファミリーに目を向ける。

「俺様は賛成だぜ。まゆっちは何だかんだで面白いしな。クリスが加われば美人力が増大する!」

 その言葉で川神姉妹の制裁を受ける事となるが、満足気な表情を浮かべていた。

 

「モモ先輩とワン子はどうなんだ?」

「私は勿論賛成よ!クリスとはお互いに好敵手と認め合ったからね。次も負けないわ!あっ、でもごめんね京」

 翔一の問い掛けに元気に答えた一子だが、京が視線に入ると彼女の気持ちを察してしゅんとなった。

「気にしないで、ワン子」

「私は勿論賛成だ。あんなに可愛い女の子を侍らす事が出来るんだ。反対する理由はないよ」

 百代は本気で二人の事をそうしようと考える。

 それとは別に、由紀江の強さを測る上でも近くに置いておきたいと言う理由もあった。

 

「これで二対二だな徹と大和はどうだ?」

「俺は賛成だ。二人の加入はプラスに為ると考えている」

 徹は翔一に即答した。そろそろ風間ファミリーも門戸を拡大し、新たな風を入れるべきだと考えていた。密封した部屋が今の状況であり、健康状態良いとは言えない環境だ。

 その淀み始めている空気を入れ替える上でも二人の加入は好機だと考えた。

「これで賛成票が三だな。大和はどうだ?」

「勿論賛成と言いたいところだが、俺は保留だな」

 大和は翔一にそう答えた。

 彼も徹と同じく好機だと言う認識を持っている。これが由紀江だけならば大和は間違いなく賛成していた。

 

「保留?珍しいな大和がそう答えるなんて」

「そうだな。あんなに後輩の尻を眺めていたくせにな」

「なっ!どう言うことなの大和!私と言うものがありながら、ありながら」

 百代は時折注がれる大和の由紀江に対する熱い眼差しを見逃しはしなかった。それに便乗した京も洞察力と大和を深く知る上で、間違いなくそうだと確信していた。

「へ、変なこと言うなよ姉さん!別にそんなんじゃないよ」

「どうだかなーまゆまゆは一年のくせにけしからん成長を見せている。胸は私と同等かな~」

 百代のは悪戯っぽく大和に言い放つと岳人と卓也も反応を見せる。

 

「本当にそんなんじゃないから姉さん!後、京は胸を押し付けるな」

 京はマーキングするかの様に大和に胸を押し当てていた。だが、今までの過剰とも思えるセクハラによって大和の精神は頑強な物へと成長を遂げていた。

「すると大和の問題はクリスか?」

 徹の問い掛けに大和は頷いた。

 そしてその訳は彼らの担任小島梅子からの要請が起因していた。

 

「おいおい、どう言うことだよ?」

「ウメ先生から俺たちがクリスの面倒を見るように言われたのは知っているだろガクト?」

 大和の言葉に岳人は頷いた。

 放課後、翔一は風と共に姿を消し、京は運悪く部活に顔を出す日になっていた。もう一人の寮生忠勝も忽然と姿を消し、対応出来るのが大和だけであった。

「ガクトたちもいつの間にか居なくなっていたから、仕方なく俺はクリスと一緒に学園を出たんだ」

 誤解を受けないよう、大和は『仕方なく』を強調して話した。

 

「へぇー俺がバイトに行っている間に面白い事してるじゃん大和!」

「う、迂闊だった……」

「はい!人はそれをデートと呼ぶと思います!」

「ガクト落ち着きなよ……」

「だから川神院を訪ねていたのね、大和」

 大和は安全に話を膨らませる事の出来る一子の言葉を選択する。

「ああ、寮に帰るだけでは味気ないと思ってな、川神の代表となる場所を教えて回ったんだ」

 川神院を始め、仲見世通りを経て金柳街を巡るコースを九十分で消化した辺り大和の計算高さが伺えるものだった。

 

「その途中で小腹も空いたし何か食べようと言うことになってな…」

「おい、これもうデートだろ」

 大和は百代の突っ込みも気にすることなく話を続ける。

「実はクリスが賭けの対象になっていた事がばれてさ」

 思いもよらぬ事態に、その時大和は焦ったのを思い出した。

「なんだ、それだけでクリスがどうしたんだ?」

「どうやらクリスは、キャップが行った行為その物に良い印象を持っていなかったんだ。そこからは正義だなんだと言い合いに為ってな、お互い無言のまま金柳街を抜けて島津寮に戻ったんだ」

 大和は今回の行動は失敗であったという評価を下していた。そしてクリスの人隣を知る上で貴重な経験であったと判断している。

 だからこそファミリーに入れたいという翔一の提案に賛否を下せないでいた。

 

「なるほどな。大和の言いたい事は、クリスは自分の正義とやらに基づいて良いか悪いかを判断する傾向がある。そう言いたいんだな」

「そうだ、徹。クリスはこの基地をどう評価するか分からない。まゆっちは此処が俺たちの思い出の詰まる良い場所だと評価してくれた。でもクリスを見ていると真逆の事を言い出しそうで不安なんだ」

 大和は京と卓也を見て言葉を述べた。

 特にこの基地とファミリーに思い入れのある二人は、下手をすると簡単にクリスと衝突しかねないと考えていた。

 

「まあ、大和の話は分かったがクリスは留学生だぜ。その辺りも考えてやらないといけないんじゃないか?」

 岳人は問い掛けると、大和は大きく頷いてその通りだという意思を示す。

「ああ、だから保留とは言ってもなるべくクリスを迎えてやりたい。京、モロどうかな?」

「うん、いいよ。たしかに知らない場所で一人は辛いからね…」

「僕も大和たちがそこまで考えているんなら反対しないよ」

 大和の言葉に反対票を投じた二人は納得し、翔一の提案を受け入れることに決めた。

「よし、取り敢えずまゆっちとクリスはファミリーに加えると言う事で決定な!但し問題があれば切り捨てるぞ」

 こうしてファミリーの新たな仲間が加わる事と為るが、問題は直ぐに訪れる事となる。

 

 

 

 

 

 二日後恒例の金曜集会を開くのに合わせ、二人を此処に参加する仲間に加わって欲しいと大和と一子を通じて誘った。

 それには由紀江とクリスも即承諾し、由紀江は大和と京が、クリスは一子と百代が連れて来る事となった。

 尚、この日翔一と徹はバイトと差し入れを行うべく、集合に遅れる事を告げていた。

 

 そして、翔一と徹は奇しくも基地の近くで一緒に為り階段を上っていると、問題が起こっている雰囲気を感じ取る事となった。

「皆お待たせ!ってなんだよ、この空気は!?」

 翔一は何が起こったのかを敢えて分からない体で室内へと入った。

 しかし、情況から一目瞭然、原因は間違いなくクリスである。加えて激昂している京を見て徹は大きな溜息を吐いた。

 普段ならこの様な場合、大和が丸く収めるが今は京を抑えるのに必死で、その次に期待の持てる卓也も京と同じく怒りを露わにしていた。

「遅かったなキャップに徹、実はよ…」

 そこで岳人が事の次第を二人に話しだす。話題はやはりこの基地だった。

「あちゃーやっぱり衝突したか…」

「おい何呑気な事言ってんだよ、キャップ」

 岳人は呑気に話す翔一に鬼気迫る様な表情で迫った。それだけ目の前の自体は悪化していると感じているのだ。

 

「おい、お前ら注目だ!」

 翔一は敢えて軽い声色で全員の注目を引き付けた。

「早速喧嘩なんて青春しているな、と思ったキャップからの提案だ。皆で旅行に行かないか?」

 唐突に旅行なんて場違いな発言をした翔一に、全員の気が削がれる。激昂している筈の京も唖然とし、大和が必死に押さえていたのが嘘の様なものになった。

「いきなり何を言うのかと思えば…おいキャップこの状況を見てよくそれが言えるな」

「だったらモモ先輩が収めればよかったでしょ?それにだ。喧嘩しないで此処まで来た事なんて有ったか?今のこの状況を築くまでに少なからず衝突は有った筈だ。その程度の事だと思えよ!行き成り此処を否定されたからと言って、京はクリスに此処がどの様な場所かを説明したのか?」

 矢継ぎ早に話し始めた翔一に全員の視線が集まる。そして、堂々と話す彼に姿に聞き入っていた。

「それにクリス!お前は突然人の物を否定できるほど偉いのか?」

 突如翔一はクリスに目を向けると、原因になった事を尋ねた。

「もし自分の好きな物を否定されて平然としていられるのか?」

 クリスには言葉を発する機会を与えず、正しく翔一の独壇場となっていた。

「そう言った事も一緒に旅行して、寝食を共にすれば打ち解けられるぜ!と言う事で風間ファミリーの親睦会を兼ねた二泊三日の箱根旅行を提案するぜ!!」

 そう言うと翔一は懐から熨斗袋を全員に見える様に掲げるのであった。

 

「一応十二名まで可能だから此処に居る全員が参加出来るぜ!一応ゴールデンウィークを予定している。これに異議ある者はいるか?」

 大きなイベントを前に全員の考えは既に旅行へと移っていた。そして、ここが締めどころと翔一は目の前の喧嘩を収めるべく一歩進み出た。

「一度くらいは衝突もあるだろう。でもこれ以降はなしだ!いいか、先ずは互いを知るべく努力して積極的に会話しろ!と言う訳で、はいクリス言う事は?」

 翔一はこの様なときだからこそリーダーシップを発揮していた。そしてそれを収めるだけの武器を手に入れる豪運も持ち合わせていた。

「す、すまなかった京…御免なさい」

 クリスは気丈な雰囲気とは打って変わり、反省した面持ちで謝罪を行った。

 対して京はクリスの言葉を素直に受け取る。

 

「うん、分かったよ」

「よーし、これで丸く収まったな!!それじゃあ早速仲直りと言う事で金曜集会を始めようぜ!!」

 翔一は土産と為る寿司の余り物を大量に持ってきた。そして徹は例によってお店のケーキを買って持って来たのだった。

「わー御馳走よ!目の前に御馳走があるわ!!」

「寿司にケーキにと二人はよくやったな」

 一子と百代は目を輝かせテーブルに並べられる料理に見入っていた。

「流石、キャップってところだな」

「だね。僕もよく分からないけど怒りが何処かに飛んで行ったよ、ガクト」

 二人も皿を並べ、コップを用意したりと忙しなく様意に参加していた。

「ねえ、大和このまま、あーんってして欲しいな?」

「元気になったら早く席に座ってくれ京」

 いつもの大和に戻ってしまった事に京はもっと引き延ばせばと後悔していたが、これ以上は迷惑を掛けられない。そんな時に翔一が介入してくれた事は流石皆のリーダーだと言う思いであった。

 

「す、凄いやり取りでしたね。松風」

(おう。オイラも思わずブルっちまったぜ、まゆっち。)

「なあまゆっち、手に持っているそれはなんなんだ?」

 クリスは隣に座る由紀江が面白い事をしているのに気が付き尋ねた。

「はい、此方はですね、クリスさん…」

(よう、オイラは松風って言うんだ。宜しくな、クリ吉!オイラに手を出すと火傷す・る・ぜ!)

「ああ、松風が申し訳ありません!これ松風!クリスさんに対してなんて事を言うのです」

 その掛け合に手の空いていた者は逞しい由紀江に感心していた。

 

「それじゃあ、新たな仲間を歓迎し、乾杯!!」

 翔一の音頭で金曜集会は幕を開け新たな船出に出る風間ファミリーであった。

 




 御一読頂きまして有難うございました。

 と言うわけでキャップが旅行を提案したことで事なきを得た展開と致しました。
 無理矢理な展開と思われる方申し訳ありません。

 十二名まで参加可能と致しましたが、ファミリー以外の参加は致しません。

 次回は伊予が徹に再会する?かもしれません。
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