まじこい的な何かを書こう   作:津谷 桐矢

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 箱根旅行が始まる!


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 風間ファミリーは連休に突入すると箱根へ旅行を楽しむ為に訪れていた。旅館の在る最寄り駅に到着すると一行はバス停へと移動する。そんな中一子はクリスに声を掛けた。

「クリス、旅館まで先に到着した方が勝ちよ!」

「良いだろう。徹に鍛えられているのは一子だけじゃないと分からせてくれる!!」

 クリスは負けん気の強い顔で一子の挑戦を受け入れた。

「言うじゃない! 一日の……何とかよ!! それじゃあヨーイ、ドン!!」

 一子が合図を出すとタイミング良く二人は旅館への一本道を駆けて行った。

「それじゃあ残った者はバスに移動するぞ」

 大和の言葉に、残された者は大人しくバスに乗車して一路旅館へと移動するのであった。

 

「おお、到着したぜ!!」

 翔一は旅館にバスが到着したところでハッと目を覚ました。今迄徹が運んでいたが、動き始めると今迄寝ていたとは思えない行動力を見せた。

「今迄寝てただけだろキャップ…」

「良いんだよ、ガクト! さて……ワン子とクリスはどうした?」

 翔一はこの場に居ない二人に気が付いて周囲に尋ねた。。

「此処まで走って来るそうだ。もう直ぐ来るさ」

「そうか、サンキューモモ先輩」

 百代が説明し、暫く待っていると二人が猛烈な速さで旅館の入口へと駆けこんで来た。間違いなく二人はファミリーが居る場所をゴールと定めていた。

 

「一子は俺が、クリスは……姉ちゃん頼んだ」

 徹は皆の前に出ると百代に声を掛け、受け入れの準備を始めた。

「任せろ徹。クリスは責任を持って受け止めよう」

 百代は笑みを浮かべると手をワキワキさせた。

「間違いなく姉さんは公式にセクハラ出来ると喜んでいるな」

「間違いないね。モモ先輩の表情が語り掛けているよ」

 大和と卓也の言葉に岳人が反応を見せる。

「あー羨ましい!モモ先輩が実に羨ましい!!」

 岳人の言葉が虚しく木霊する中、翔一が二人に大声を掛ける。

 

「ワン子は徹! クリスはモモ先輩がゴールだ! 思いっきり飛び込め!!」

 その言葉が加速の合図になった。二人はグッと有らん限りに力を込めて地面を蹴りだす。

「ええ、まだあの二人加速するの!?」

「流石、一子さんとクリスさんですね。無駄の無い動きをしています」

(あの位で驚くなんてまだまだだぜ、モロボーイ)

 由紀江が二人の評価を卓也に説明していると、二人はほぼ同時に飛び込んだ。

「勝ったわ!」

「勝ったぞ!」

 二人の声が重なる中、翔一の「ゴール」と言う言葉が響いた。

「モロどっちだ?」

 大和は卓也に尋ねた。こうなる場合を想定して、卓也に撮影を依頼していた。

 

「えーっと、ちょっと待ってね……あれっ、大和ちょっといいかな?」

 卓也は映像を確認を始めた。ところが予想外の映像に大和に声を掛けた。

「どうしたモロ」

「うん。二人のゴールが凄い僅差なんだ。ほら見てよ」

 そう言って大和に見易い様に画面を向けた。それを大和を始め、京と岳人も覗き見る。

 そこにはたしかに判断し辛い映像が映っていた。

「これは……」

 流石の大和もこの映像からは判断が着かなかった。

「難しいのなら引き分けでいいだろ。文句無しで勝ち名乗りを上げたいのなら目に見える結果を示せばいい」

 二人の師匠的な徹がそう言った事でこの勝負は決着した。

 

「うー徹がそう言うのなら仕方が無いわ」

「同感だ。自分は徹の言葉に従おう。だが、次は負けないぞ一子!!」

「私もよ、クリス!!」

 二人が互いを称え合う中、風間ファミリーは翔一を中心に集合する。

「これで皆揃ったな。それではこれからの予定を大和から発表して貰う!」

 翔一の言葉で大和が一歩前に出て話し始める。

「これからチェックインして、部屋に案内されたら自由時間だ。明日は河原で遊んだりして最終日は土産物を購入するのに時間を使う。大まかに振り分けたが、基本的に自由だから」

 大和の説明で一行は男女別々の部屋へと案内された。

 その際京が渋り大和を困らせる一幕もあったが、問題なく終わり豪勢な食事を堪能し残るは露天風呂となった。

 

 

 

 

 

「大和、俺様女風呂を覗きたいぞ!」

 岳人は男子部屋で堂々と宣言した。無駄に凛々しい顔立ちで言う辺り意気込みが高い。

「俺も止めろとは言わない。覗きたければ覗け!」

「へぇー大和もやる気なんだね」

「そう言うモロはどうなんだ?」

「お前等そんなことして何が楽しいの?」

 翔一は三人の話に興味を示さず、呑気にテレビを眺めていた。

 三人は早速情報を洗い出し、如何に成功させるかを考え始めた。

「ただいまー」

「おう、お帰り徹!」

 徹を暇にしていた翔一が笑顔で出迎えた。

 

 しかし、徹の事は岳人達も帰るのを待っていた。百代と遜色の無い戦力を使わない手はなかった。

「なあなあ徹。俺様女風呂を覗きたい」

 今度は鼻息荒く徹に訴え掛けた。

「ちょうど、ガクトが女風呂を覗くと言い出しさ、女子大生の集団が此処に宿泊している事が分かったんだよ」

「いや、駄目だろガクト、モロ。犯罪だぞ」

 徹は呆れたように二人に言い放つが、その時大和も参加表明している事を見逃さなかった。

「なんだよ。そんな硬い事言うなよ」

 岳人はノリの悪い、という気持ちで徹に話し掛けた。

「あのな、女風呂を覗いたとして姉ちゃん達が居た場合を想像してみろよ」

 風間ファミリーの戦力は総じて女子が圧倒している。間違いなく岳人達は返り討ちに遭うのが分かっている。

 

「わかってる。だがな男にはやらなければいけない時があるんだ!」

「分かった。俺は参加しないが、止める事はしない。ガクトの言うその時と言う物を成し遂げてくれ。骨は拾ってやるからな」

 徹は最後に大和を見て風呂に入るべく準備を整えた。

「それじゃあ俺は風呂に行くぜ。キャップはどうする?」

「待ってました。俺も着いて行くぜ、徹!」

 結局全員で露天風呂へと移動すると、百代達も風呂に入るところだった。

 そして徹は百代の顔がお見通しだと言う表情なのを見逃さなかった。

 

 

 

 

 

「おおーいい景色だな!」

 夕陽が射す露天風呂は山中ということも在り、下に見える街並みが綺麗に映っていた。

 翔一は一番乗りで風呂場へと出ると隠すことなく堂々としていた。

「キャップの言う通りだな。たしかに絶景だ」

「大和、そんな景色よりも俺様の鍛え上げられた体を見ろ!!」

「ちょっ、こんな所で変な事しないでよ。ガクト!」

「全くだ。ほら、さっさと体洗って温泉に浸かろう」

 徹の音頭に皆は素直に従い行動を始める。

 

 

 無駄に時間を掛けている男子とは対称的に、女風呂では速やかに体を洗い温泉に浸かっていた。

「うーん、この壁が邪魔だね…」

「何を言っているの京?」

 壁を睨み付ける京に気になった一子が尋ねた。すると手で壁を叩き、厚みを確認し出す。

「大和の裸体を見たいの」

 当たり前でしょ。とでも言うように、京は答えた。

「何を言っているんだ、京は?」

「クリスの言う通りよ。もし大和以外が目に入ったらどうするのよ」

 ところが一子の指摘に対し、京は全く考慮していなかった。

 

「おおう、それは考えていなかった…でもモロがガクトに襲われている光景が見られるかもしれない……」

 京にはそちらの興味が在り、主に卓也と岳人のカップリングが有力だった。

「想像したら自分は気分が悪くなった…」

「私もよ、クリス。京、変な事言わないで!」

 二人はその光景を思い浮かべ、モロに想像してしまった。この辺りは京の教育の賜物である。

「はぁー仕方が無い。それでは声だけでも聞く事にしよう。京のイヤーは地獄イヤー」

 京は壁に耳を当て、男風呂の盗聴を開始した。

 

 

 

 

 

「キャップはマシンガンだな、連射性に長けていそうだ」

 ガクトは温泉に浸かっていると、突如翔一に話し始めた。

「そうか。ならガクトはバズーカだよな」

 翔一は平然とこの手の話に参加した。

「だろ、訓練は最高レベルまで高まっている。後は実戦で使用するなんだけどな…」

「ちょっと下品だよ、二人とも。げーひーん!」

 卓也はこの手の話に抵抗感を示し、翔一と岳人の非難を始めた。ところが大和と徹もこの話に乗り始める。

「大和はマグナム弾使用の拳銃だな」

「徹のは機銃だな。弾数、威力共に申し分ない」

「ああ、二人まで参加しちゃったよ…」

 風間ファミリーの良心とストッパーの二人が参加すれば止まる事は無かった。

 

「モロ水鉄砲は革製ホルスター入りだな」

「ちょっと、行き成り僕の事言わないでよ、ガクト!」

 しかし、その意味を考えている翔一がぶっちゃける。

「なんだ、もしかしてモロ……剥けて無いのか」

 翔一は隠すことなく言ってのけた。

「うわっ、キャップそこはもう少し穏やかに言えよ」

「じゃあなんて言えば良いんだよ、徹!」

 一子とクリスは京の行動に続き、生々しい話を聞いてしまった。特に免疫の弱い一子とクリスは顔を真っ赤にして百代たちの下へ戻ってきた。

 

 百代と由紀江は温泉に浸かり、絶賛百代からのセクハラに耐え忍んでいた。

「いやーまゆまゆは良い体しているなー」

「はわわー」

(止めてくれーまゆっちは純情少女なんだ。こんな事をされたら穢れちまうぜー)

「おかしいな。松風は更衣室で待機じゃなかったのかなー」

 お構いなしに百代は撫で回し続ける。

「ま、松風は声を直接脳内に送る事が出来るんです」

 由紀江はセクハラを受けながらも冷静に設定を説明した。

「ほうそう言う設定なのか、でも今はそんな事は関係ない!」

「あれー」

 こう言うやり取りの中、顔を真っ赤にした一子とクリスが温泉に浸かった。

 

「おっ、どうした一子にクリス。随分と顔が真っ赤だが?」

 二人に気が付いた百代が声を掛けるも反応を見せず、代わりに京が尋ねる。

「ねえモモ先輩、マグナム弾を使用する拳銃って何?」

「んっ?たしかグリズリーも簡単に倒せるやつじゃなかったかな」

 京と百代の言葉に体をビクつかせ、顔が湯に浸りかねないほど深く沈む二人を見て、百代は京の喩が何を指すのかを理解した。

 

「ほう、大和は立派じゃないか。それで徹はどんな物だ?」

「機銃だって、弾数と威力が高いってさ」

「何!我が弟ながらけしからんな!」

 この会話を確りと聞き、理解していたのは由紀江もだった。そして、その態度を百代は見逃さなかった。

「妹とクリスはああなっているが、まゆまゆは一年なのにけしからんなー」

「ほんと。私たちの会話確り理解していたよね」

「ええ!?」

(違うぜ、まゆっちは純情少女なんだ!)

 モロばれの由紀江に為す術は無く、松風の言葉も虚しく響くだけだった。二人からはムッツリのイメージが植え付けられるのであった。

 

 

 

 

 

「ほらー早く来いよー」

「うわー露天風呂に川神水!これぞ鉄板だ!!」

 体にタオル巻きつけた少女たちが仲良く入って来た。一人は活発そうな雰囲気のある少女、方や艶めいた雰囲気のある少女である。

「うわー二人とも可愛いわねー」

 あれから復活した一子は、隣に居るクリスに彼女達の感想を話し掛けた。

「ああ。それに何か武術を嗜んでいるのではないか?」

 クリスはその歩き方と雰囲気から何か鍛えている様に感じ一子に尋ねた。

「クリスもそう感じた?」

 体を洗っている最中も凝視して見る二人に、艶めいた雰囲気の有る少女がちらりと見やった。

 

「どうした弁慶?」

「いや、何にも。それより、よっちゃん」

 徹との出会い以降、三人の中で気に為る者が居た場合こうしてあだ名で呼ぼうと決めていた。

「ど、どうした、べんちゃん…」

「今温泉に浸かっている人たち、かなりの腕を持っているよ」

 義経は初めての旅行で舞い上がり、百代たちの存在に気が付かなかったが、弁慶は違う。元々家臣と言う役目を帯びていたクローンと言う事もあり、態度と言葉はあれだが周囲への警戒は怠らなかった。

「何!?」

「ほら落ちついて。そんなキョロキョロし出すと怪しまれるよ。あと、あれは武神じゃないかな…… もしかして、これは……」

 弁慶は義経に此処から離れるなと言い含め、一度更衣室へと戻ってしまった。

 

「チャーンス!」

 百代は一人になった義経を確保するべく、行動を開始した。彼女はこうなるのを虎視眈々と狙っていたのだ。

「まったく、弁慶は…… 心配してくれるのは嬉しいが、義経は子供じゃないぞ……」

 シャワーで泡を流しながら一人で呟いていると、後ろに誰かが立っているのに気が付いた。

 

「ッ!? 誰だ!!」

 義経はシャワーを向けて相手を怯ませようとした。だが、その相手はいなかった。

「ほう。私の気配に気が付いたか。中々、可愛い娘じゃないかー」

 同性同士なら合法とばかりに百代は義経の体に抱きついた。

「あわわわ!?」

 義経は弁慶と同じ様な事を始めた百代に、慌慌て始める。

 見ず知らずの女性にこうされるのはやはり抵抗があったのだ。

「おお、中々鍛えているな、それも中々に強いな。まさかこんな所で出会うなんてな」

 百代はセクハラと共に筋肉の付き具合から相当鍛えていると感じ、彼女の中に眠る衝動が目を覚ました。

 

「義経!!」

 弁慶が戻るとそこにはセクハラを受けている義経の姿があった。

「おお、あそこにもかわゆいねーちゃんが居るじゃないか!!」

 百代は動き出そうとしたところで、動きを止めた。

「川神百代様、申し訳ありませんが義経から手を離して下さい」

「ファーック。まったくこんな所に武神が居るなんてもっと調べておけってんだよ」

 従者部隊の李とステイシーが、メイド服のまま武器を百代に構えて立っていた。二人ともかなりの殺気を出し、一子達も何事かと身構えている中、百代だけは違った。

 

「おお、さらに美人が増えた。それに強そうだ!」

 百代の笑みは徐々に衝動によって禍々しいと言える物に変化していた。

「川神百代様。どうか暴れない様お願い申し上げます」

 李は言葉丁寧に懇願するが、手に力が入ってしまう。

 

「いやだって言ったら?」

「楽しい旅行が台無しに為りますよ?」

 百代はその言葉で雰囲気を戻す。

「ロック!おい大丈夫か、義経?」

 ステイシーは解放された義経を抱き留めると確認する様に声を掛けた。弁慶も駆け寄り義経の顔を覗き見た。

「ああ、義経は大丈夫だ。抱きしめられていただけだから」

 その頃には一子達も駆け寄り、騒ぎになろうとしていた。

「皆さま川神百代様の関係者で御座いますね。申し訳ありませんが御説明を致したく、一度風呂を上がって頂きます」

 李は有無を言わさぬ雰囲気と目で以って一子達に行動を促した。

 

 対して男風呂も似た様な展開に為っていた。

「久しいな、赤子」

「ヒュームさん!?あんた謹慎しているんじゃ」

 瞬間移動したかのような素早さで、温泉で寛ぐ徹の下に姿を見せた。厳つい体に執事服を纏う異様な人物に下ネタ話で盛り上がるファミリーは静かになる。

「解けたからこうして此処にいるのだ。さて、此処にいる赤子どもはお前の友だな」

 睨み付けるようにヒュームが見たことで、四人とも恐怖心が襲い出す。

「脅す様な事はしてはいけませんよ、ヒューム。川神徹様、申し訳ありませんが皆さまとご一緒に(わたくし)共に付いて来ていただけませんか?」

 クウラディオは李の上司らしく物腰柔らかく、丁寧な言葉使いで徹に願い出る。年長者から懇願されれば、断ることなど殆んど出来はしないだろう。

 

「分かりました。キャップ、大和いいな?」

「おう、俺は構わないぜ!」

「分かった」

 翔一は何が起こるのかわくわくした事で承諾し、大和は何に巻き込まれるのか見当つかずファミリーを守る為に従った。

 彼等は急ぐ様に露天風呂を後にすると、大きな部屋へと案内された。

 




 ご一読いただき有難う御座いました。

 義経達を加えたらどうかなと書いてみました。
 次話、幕間として此処にはいない葉桜清楚についてとなります。


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