俺は本日やる書類整理を一通り終えた後、シャーレの窓際で一服する。
眺める風景の中から、かすかに聞こえる話し声や銃撃戦の音が風に乗ってくる。
「はぁ、めんどせぇけど、そろそろ始めるか。」
今日も仕事が山積みであることを思い出し、すばやく一服を終えようとする。
「・・今日の当番はカンナだったか?」
「ご名答。先生、こんにちは。本日もよろしくお願いします。」
独り言に後ろから返答が帰ってきたことに驚く。
「お、おう。よろしく、カンナ。」
シャーレの業務は膨大なので、時折生徒の中から抽選で一人から二人、当番を雇っている。
彼女もその一人であり、名前は尾刃カンナ。ヴァルキューレ警察学校の公安局に属し、町の治安を守っている生徒だ。
「もうじき業務時間です。早速始めてしまいましょうか。」
「了解。・・・うし、今日も頑張るか。」
軽く背伸びをして、気合を入れる。
俺とカンナは席に着き、書類を手に取り始めた。
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「ん・・・とりあえず今日分は終わったな、そっちはどうだ?カンナ。」
「えぇ、こちらも終わりました。お疲れ様です。」
今日の業務を終え、また背伸びをする。
そして窓際に行き、また一服。
「タバコですか?お体に触りますよ?」
「いいんだよ。ルーティーンみたいなもんだ。」
黒い空にうっすら白い煙を吐く。また吸う。
「先生、今日はいい月ですね。」
カンナが窓際に来てそう言った。
「あぁ、そうだな。それとカンナ。」
「どうしましたか?」
「その言い方だと、告白みたいになってるぞ。」
俺がそう告げた瞬間、カンナの顔がボッと赤くなる。
そして俯きながら、「えぇっと・・・取り消します。」
カンナは強面ではあるが同時に、とても可愛らしい一面も持った生徒だ。
「はっ、そうか・・・残念だ。」
ケラケラと笑い返す。
「・・・揶揄うのはよしてください。」
まだ顔を赤くしながら照れるカンナにまた喋りかける。
「カンナ、今日は金曜だったよな?」
「んん”ん・・・えぇそうですが。」
まるでさっきのことを誤魔化すように咳払いをし、カンナは答えた。
「そんじゃ、『いつもの』いくか。」
「・・・承知しました。遅くなりすぎるのもいけませんし、さっそくどうでしょう?」
「また随分と乗り気だな・・・消灯確認するから、先行っててくれ。」
「わかりました。お先に失礼します。」
「おいおい、ちゃんと待っててくれよ?」
カンナが笑いながら相槌を打ち、部屋から出る。
俺はシャーレ執務室の電気を消して、後に続いた。
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「大将、適当におでん見繕ってくれ」
「じゃあ、私も。」
「あいよ。」
いつもの、というのは行きつけの屋台だった。
以前カンナがここで小さな宴をしていたのを見つけたことで、この習慣ができた。
「最近、また後輩が失敗してしまいましてね。」
「私は怒るつもりはなかったんですが、どうもこの顔が災いとなってしまって。」
ヴァルキューレの仕事はキヴォトス全域の治安管理。
どうしても失敗や伝達ミスが起きてしまうだろう。
「部下を持つと、やっぱり失敗はどうしても起こっちゃうもんだよな。」
「先生は誰か雇わないんですか?」
「当番があるしな。それがあれば生徒とのコミュニケーションもとれるし、一石二鳥だ。」
「そうでしたね。ですが、キヴォトスの学生全員を相手にするのは大変では?」
シャーレには連日、身分や性格が全く違う生徒が訪れる。
その生徒達を管理するには、それ相応の職務量がやってくる。
「まぁ、ここに来てからは前と比べられないほどいろんなことをやってきた。」
一つの学校の廃校を防いだり、学園間の争いを止めたり、キヴォトス全域も守った。
その代償と言ってはだが、腹に一発貰ったり、不思議なカードでまずい状況も変えた。
「・・・ま、それも全部思い出として保管してるさ。」
「そうですか。本当、お疲れ様です。」
「・・・カンナもな。」
「そして。」
「これからもよろしくお願いします。先生。」
「・・・なんだよそれ。」
軽く笑いながら、店主に新しい酒を注文した。
お久しぶりです。
この作品は独自設定マシマシで書きます。
よろしくお願いします。