「アロナー、今何時だぁ?」
俺がそういうと、机に置いてあったタブレットの画面にピカっと海が周りに広がる教室が浮かび上がった。
そのタブレットの真ん中には、青い髪、白い髪をした瓜二つの少女たちが出てきた。
「ふぁあ・・・せんせぃ、おはようございま・・・ぐぅ。」
「アロナ先輩、起きてください。先生、おはようございます。現在時刻は5時53分です。」
「さんきゅ、プラナ。ん”んぅ~、よし。準備するか。」
ベッドから降り、シャワーを浴び、朝食を済ませ、家からでる。
「今は何時だ?」
「はい、ただいま6時42分です。」
また時刻をアロナたちに聞くと、カバンの中から声が聞こえてくる。
「始業までは余裕だな。」
独り言をつぶやいて、自身の仕事場、シャーレへと向かった。
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「ふぅ・・・」
普段通り早めに着いたため、当番の生徒用の書類分けを済ませ、一服する。
壁にかけている時計を見て、8時半ほどだということを確認していると
ウィーンという扉が開く音がして、そちらを向いた。
「先生、おはよう。」
「おはよう、キキョウ。今日もよろしく。」
彼女はキキョウ。百鬼夜行連合学院の生徒だ。
「いつもありがとう先生。わかりやすくまとめてくれて。」
「あぁ書類か?当たり前だろ、当番にわざわざ呼んでいるわけだしな。」
「それでも、ありがと。」
いいのいいのと、適当に相槌を打ち、各自黙々と作業を始めた。
しばらくたち、背伸びをしようと腕を振り上げようとしたら。
何かを引っ張っているような感触が右手に来る。
そちらを見てみると二股のしっぽが、がっちりと腕に巻き付いていた。キキョウの物だ。
「あ、あの?キキョウ?どうしたんだ?」
「・・・あまり気にしないで。」
「いや気にしないでと言われてもだな。」
俺がそう返事をしている最中にもしっぽががっちりと巻き付いている。
「離してくれるか?」
「いや。」
「・・・なんでだ?」
俺が問うと、キキョウは顔を赤らめながらまた一言。
「体温を、感じれなくなるから・・・」
言葉を聞いて、俺もこっ恥ずかしくなり、頭を搔く。
「そ、そうか。なら、もう少し緩めてくれ。」
「・・・しょうがないね。」
若干名残惜しさもあったのか、少しためらいながらもしっぽの拘束を緩めた。
どうやら俺は、大半の生徒に好かれているようだ。
最初はうぬぼれだと思っていたが、次第にそれは間違いだと気づき始めた。
一部の生徒に至っては、「ん、先生を襲う。」だの「私の王子様☆」だの・・・。さすがに気づく。
俺のどこがいいんだか全くわからん。
キキョウも、時折しっとりとした目線を送ってくる。
どこかじめじめとした視線に冷や汗をかく。それが日常だ。
俺は先生だ。生徒たちをたぶらかしてしまうのはよくない。
なので一線を引いて見届けるようにしているのだが、どうにもならない。
「はぁ・・・」
複雑な感情が混ざったため息を深く、深く吐いた。
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「やっと終わったな。長引いてすまない。」
「いいよ先生。長いこといれたし。」
「どうだ?今日は金曜だし、よかったらどっかいくか?」
「あ、それいいね。どこかい「ウィーン」」
キキョウが誘いに乗ろうとしたとき、ふいにドアが開いた。
「せ~んせ、おつかれさま、です。ってあれ?先約の方がいる。」
杏山カズサ、トリニティ総合学園の生徒だ。
彼女もまた猫の特徴を持った生徒だ。
「あんた、だれ?」
「わ、私は杏山カズサ。あなたは?」
「桐生キキョウ。で、あんたは先生に何の用?」
「あ、あんたって・・・。先生にスイーツでもと思ってね。」
「そう。ならおいていきなよ。私と先生、今からどこかに外食する予定だから。」
キキョウがそういった瞬間、カズサが黙り込んでしまった。
金曜日、たまにカズサはスイーツをもってシャーレに遊びに来ることがある。
この二人は何かと似通った部分が多いから合わせるべきじゃないと薄っすら思っていたが、やはりか。
「まぁまぁ、よかったらカズサもどうだ?一緒に。」
ほんと!?と目を輝かせるカズサとは裏腹に、キキョウはチッと舌打ちをする。
・・・何か判断を誤ってしまったようだ。
手ごろなファミレスに足を運び、席へと座った。
「え、え~っとだな。じゃあ適当に好きなの頼んでくれ。もちろんおごりだ。」
4人用の席に案内されたのに片方は無人、もう片方は三人。
つまりは俺の両サイドにキキョウ、カズサがいる状況だ。
「わたし!・・・先生と同じの。」
「じゃあ、わたしも。」
「はぁ!?なんで合わせるの!?」
「うるさいね、あんた。こんな奴は構わない方がいいよ?先生。」
シャー!ニャー!と今にも聞こえてきそうな喧嘩が始まってしまった。ここへ来る道中も含めると3回目ほどか。
「ま、まぁまだご飯時でもないし、パフェでも頼もうかな~・・・なんてな。」
ここで俺が間に割り込むように声を張ってそういった。
「ふ~ん、パフェね。じゃ、私はこれ。」
「はぁ・・・じゃあ私これ。」
ということで、メニューが決定した。
俺がチョコレート、キキョウが抹茶、カズサがイチゴだ。
パフェを頼み、待っている間、仕事中に感じた感触が今度は両手に感じる。
「あ、あの?お二人さん?どうしてしっぽを巻き付けてるんだ?」
「あんたも巻き付けてるの?反吐が出る。」
「そっちこそでしょ!?」
ガルルルとより一層喧嘩が始まると思ったが。
「ご注文のパフェ三つになります・・・」
店員が頼んだパフェを持ってくると同時に、喧嘩が鳴りやんだ。
(二人は人見知り寄りだからな・・・)
頼んだパフェを一口、やはりうまい。久しぶりに食べたがチョコが甘苦い。
「おいしいな。な、ふたりとも。」
俺がそう聞こうと二人を見ると一方は恥ずかしそうに、一方は堂々と俺にパフェの乗ったスプーンを突き付けてくる。
「せんせ、パフェ…いる?」
「私はあんまりこういう洋菓子は得意じゃないの、一口どう?」
両者、自分たちがまだ手も付けてないパフェを俺に向けてきている。
「いや、俺が最初に食うのはあれだろ?好きなだけ食ってくれ。」
そういうと、スプーンを自分たちの元へ戻し、ほおばる。そして
「「・・・チッ」」
舌打ち。
(ちょ、超怖ぇえ・・・)
身体から冷や汗が止まらなくなった。
「ふぅ、おいしかったな。」
俺は見事に完食し、一息つく。
「悪くなかった。」
「おいしかったぁ。今度アイリ達とも来ようかな。」
二人の顔色を見て、安堵する。
(な、なんとか平和に終わったな。)
「で、せんせい。」
「ど、どうした?カズサ。」
「先生はこれから暇?」
時刻は18時前ほど。この質問。何か危険信号が聞こえてくる。
「ど、どうしてだ?」
「・・・ん?私とこれからど「待った。」」
カズサが一線を越える発言をする前に、キキョウが割って入る。
「あんた、何を言うつもり?」
「あなたには関係ないでしょ?ね、せんせ。」
「は、ははは・・・はぁ。」
・・・やはりこうなるのか。
俺はこっそりアイリとユカリにモモトークを送った。
(二人とも、早く来てくれ・・!)
その後二人が訪れ、カズサはアイリに、キキョウはユカリに連れられ、共に帰っていった。
「はぁ、疲れた。」
ミスマッチな二人があってしまうとああなってしまうのか、と思いながら帰路につく。
二人は同族嫌悪、というやつなのかもしれない。
そう思いながら、両腕についた服のシワをならし、ため息をついた。