戦いに疲れたのでスローライフをエンジョイします! 作:リュオネイル
道路舗装や宅地造成、配管工事などの多くの工事に携わり早数年……男社会の世界や俺個人としても動かなかったこともあってか、恋人はおろか女友達すら一人もいない。その上、工期に間に合わせないといけないために監督自ら現場作業をしないといけないし、そのせいで事務仕事が出来ずにそれを処理するために現場が終わった後に夜遅くまで残業……翌日も朝早いというのに家に帰ってくるのは夜の10時か11時……そんな生活サイクルを繰り返していけば、どんな人間だって限界は来るもので……。
「……と、いう訳で貴方は過度の寝不足で倒れて、偶然そこにダンプトラックが貴方の頭を」
「あ、もういいです神様。それ以上説明すると警告タグ増やさないといけなくなるんで……」
そう、気が付いたら俺はエ〇シャ〇イに出てきそうな空間に光の玉だけの存在になって、女神様――メガーメガと対談していた。最初は『相手は神様だし、失礼のないようにしなきゃ……!』とか思ってたけど、実際話してみるとめちゃくちゃフレンドリーで拍子抜けだった。
「でも、そっかぁ……俺死んだんだなぁ」
「はい……あなたは所謂、『昭和寄りのブラック会社』な土木会社で働きすぎによる過労と合わさっての事故死……若いのにとても辛いことです」
「……」
メガーメガの言葉に、俺は勤務状況を思い出す。……確かに、何か失敗があるたびに殴られ蹴られ、慰労会という名の飲み会では上司による絡み酒やアルハラ事案……他にも色々とあって、今思い返してみるとロクな会社に就職しなかったんだな、俺。おまけに色恋やそういった色鮮やかな思い出もない。……まぁこれに関しては俺にも原因はあるが。
「でも大丈夫です! そんな会社でも頑張ってきた貴方には是非、来世で幸せな生き方をしてもらいたいと思っています!」
そう言ってメガーメガは胸に手を当てて微笑みながら告げた。
「良かったら、貴方のご要望をお聞きしますよ! これでも私、ある程度自由にやれちゃいますので!」
「え? そうなんですか? ……じ、じゃあ俺を『不老不死』にしてください!」
「はい!」
メガーメガの提案に俺は無茶ぶりだと理解しつつも言ってみるだけ言ってみると、意外にもメガーメガは思いっきりいい笑顔で了承した。 そんなあっさり了承していいのか、女神様よ……。
「では、体の中をマナがぐるぐる循環して老いることのない体にしましょう! ほかに希望はあります?」
「他? 他ですか……ん? そういえばマナって言ってましたけど、そのマナって何ですか?」
「そうですねぇ……簡単に言えば、ド〇ゴ〇ボー〇でいう氣みたいなものですね」
「マジですか!?」
メガーメガの言葉に俺は思わず声を荒げてしまう。仕事が激務になり、なかなか手に付けることはなくなったが俺は所謂『広く浅い系オタク』であり、アニメやゲームなどの娯楽を嗜んでいた。その俺からすれば今の例えは盛り上がること間違いなしなのだ。
「マジです♪ それで、他に希望は?」
「え!? え、えっとっすね……!」
やっべぇどうしよ!?そんな条件提示してくれるなんて思ってもなかったから咄嗟に言葉が出てこねぇぞ!? えっと~えっと~……! あっ、そだ!
「あ、あの!出来たら、孫悟空のような能力とか貰えませんか!?」
「ん~? 孫悟空というと……あぁ、ド〇ゴ〇ボー〇の例えでそれにしたんですね?」
「あっ……えへへ、そうっす」
メガーメガの言葉にテンションが上がっていた俺はハッと我に返り、顔が熱くなるのを自覚する(顔無いけど)。
「分かりました! では、来世が貴方にとって、とても良いものでありますように!えーい!」
そういってメガーメガはどこからともなく星のステッキを取り出し、頭の上で振るった。その瞬間、ステッキから光が迸り、俺は思わず目を瞑った(瞑る目ないけど)。そして光が収まり、目を開けるとそこには……。
「…………」
「おぉ……御使い様じゃ……魔族との戦に備え、神々が我らのために御使い様を遣わしてくださったぞぉ!」
『うぉぉぉぉおおおお!!!!!』
なんか暗い地下室みたいな場所で、何十人ものフードをかぶった人やなんか宝石を散りばらせた王様っぽい人がなんか盛り上がってた。……なんぞこれ。
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「え……えぇ!? ど、どうして!?彼は平和な世界に送ったはず……!」
「困りますよぉ、メガーメガさん」
水晶で私が送った彼の様子を見て困惑した。その時後ろからねちっこい声音の声が聞こえ、振り返るとそこにはおかっぱ頭の丸メガネの男神が立っていた。
「マルスさん……」
「我ら神々の協定で『神に匹敵する能力与えるべからず』というのがあること、お忘れですかぁ?」
見るからに不快な笑みを浮かべる男神――マルスさん。 私はいつものスマイルを浮かべ対応する。
「……いいえ~。忘れておりませんよ~?」
「そうですか? その割には先ほどの彼にはあっさりと不老不死の能力をお与えになったじゃないですかぁ?」
見られてたのか……あるいは、
「まぁ、今回は争いの酷かった時代――あなたが本来送るはずだった時代から3000年ほど昔に送りましたので、彼には我ら神の使いとして頑張ってもらいますかねぇ。クックックッ……」
「……ぇ?」
……今、彼は何て言った? 私が送る時代から3000年前……? そ、その時代って!
「ま、まさか神人魔大戦時代に送ったというのですか!? それも、神の使いって……それってつまり」
「えぇ、我々神の『駒』として彼には大立ち回りをしてもらうんですよ」
「そんな……!?」
「おっと、そんな怖い顔しないでくださいよメガーメガさん? 私のおかげで貴女の暴挙は大義名分を得たのですよ?」
「はぁ……!? どういうことです!?」
マルスさんはやれやれと肩をすくめて説明を始める。
「いいですか、メガーメガさん? 貴女は彼に、不老不死と悟空なる者の力を授けました。 それすなわち、神の加護を受けた
「そんなこと……!」
「ない、と言い切れますか? 彼とて一人の人間、過ぎた力に溺れ、驕り高ぶって世界を支配しようとする……世界中の生物たちを支配下に置いて、ね」
「っ! ありえません!」
「えぇ、今のはあくまでも『可能性の話』……上に立つものは、常に最悪の状況を想定して動くものなんですよ。 故に、不老不死であり強大な能力を持った彼には、混沌蠢く大戦時代に身を置き、我ら神が彼に首輪を着けるのです。 ……後々、反抗されないように」
「…………っ!」
それはつまり、あの人は今後何十、いや何百……いや、何千年にも渡って
「あぁ、このことは上層部には伝達済みです。 貴女が何を騒ごうが、もうどうしようもないですが……大人しくされた方が身のためですよ?」
そういってマルスは光となって消えた。 マルスが消えた後、私は水晶に目を向け、彼を――転生したばかりの彼を見やる。彼は困惑しながらも王様の話を相槌を打ちながら聞いていた。
「……ごめんなさい」
……こうなったら、私も彼にはやれるだけのことはやろう。せめて、せめて私が本来送るはずだった時代までは、彼の事を見守ろう。 そう心に誓ったのだった。