俺の恋人、メンヘラインキュバスなんだが? 作:キージェンエグゼ
リヴィが言ってることを簡単に言い換えると、
『俺、金持ちだから付き合わない? 』
ってことになるわけだ。つまり、俺は金程度で釣られる軽い男って思われてるってことか。失礼なやつだ。俺はそんな男じゃない、自分の気持ちを優先するんだ。
リヴィが俺の耳元で誘惑の言葉をささやく。
「俺と付き合えば一生働かずダラダラ過ごせるよ」
……。一生、ダラダラ……、今の生活は激務に追われる日々だ。日本国調査局局員、それが俺の仕事。異世界と呼ばれる世界と同化してしまった地域を調査する仕事。魔獣との交戦が多く死ぬリスクも十分にある。けど、けど俺は
「別にそんなの興味ない! 」
はっきりと言う。俺は金程度に釣られる軽い男じゃない!
「あ、思い出した。淫紋刻んだから君はもう俺のものなんだった」
「えっ? 」
「ユウヤくん、自分のお腹見てみなよ」
俺は焦って自分のお腹を見る。下腹部あたりにエロ漫画とかでよく見る紋章が……。
終わったぁぁぁぁぁ!!
両手で頭を押さえる。詰みじゃないか! 俺、リヴィの彼氏になるの確定ってこと!?
「は、ちょ、もう。マジかよ! 」
リヴィは終始嬉しそうだ。いや、俺は全然嬉しくないよ! なんでこうなるんだよ! ギリ犯罪、バリバリ犯罪だろこれ。
「そんな喜ばないでよ、恥ずかしい」
「全然、喜んでねぇよ! 」
俺が声を張ると、リヴィはタバコをくわえたまま、ニヤリとした笑みを浮かべた。あの顔はヤバい。完全に“落とした獲物”を見る目だ。
「ふふっ、照れなくてもいいのに。淫紋を刻むって、つまりそういうことだからさ。もう君は、俺と運命共同体ってわけ」
「運命共同体!? な、なんだよそれ、聞いてないぞ!」
「言ってないもん」
即答かよ! ふざけんな、どこまで自己中心的なんだこの男! 俺は思わずベッドから飛び起きようとするが──
「……ん?」
足元がふらついて、ドサッと無様に転がる。体が重い。力が抜けてる? まさか、これも淫紋の影響ってやつか?
「身体の一部、俺の魔力で保護してるから。俺と離れすぎると、ちょっとだけ動きにくくなるよ」
「支配する気満々かよ!!」
俺は絶叫しながら部屋の出口へ走る。逃げろ、全力で逃げろ! が、ドアノブを回すと──
「……カチャ」
鍵、かかってる。俺の希望、終了。
「どこ行くの? まだ朝ごはんも食べてないでしょ?」
「監禁か!? 俺マジで通報するからな! 警察と調査局に!!」
そのとき背後から、ぬるりと絡みつくようにリヴィの腕が俺の腰を抱きしめた。
「だーいじょうぶ。君が俺を好きになるまで、ちゃんと待つってば……でも、俺、待ちながら攻めるタイプなんだよね」
「いや、怖いよ! そのテンションのまま言うセリフじゃねーだろ!」
だがその瞬間──リヴィの指が、俺の下腹部をなぞった。
「うぐっ……!?」
ビリリと全身を貫くような衝撃。電撃? いや、違う。もっとこう、深いところから痺れる感じ。膝がガクッと崩れ、立っていられなくなった。
「ね? 淫紋って便利でしょ?」
「くっ、てめぇ……!」
体が熱い。視界もぼやける。風邪の引き始めに似た感じだが、それよりもっとこう……えっちい。ヤバい。思考が鈍ってくる。
リヴィが俺を抱きとめ、耳元でささやいた。
「ほら、ユウヤ。俺の恋人になりますって言って。そしたら、気持ちよくしてあげる」
「……!」
頭がぐらぐらする。今なら、言えば楽になれる気がする。すべてを投げ出して、堕ちるように。
──が。
「ふざけんな! 誰が言うか、バーカ!」
俺は最後の力を振り絞ってリヴィを突き飛ばした。息が荒い。体中が熱くて痛くて、でも言ってたまるか!
「……あーもう、ちょっとだったのに!」
リヴィは頬をふくらませてぷんすか怒る。なんだその反応、子供か!
「まあいいや。淫紋がある限り、君は俺の“言いなり”だしね?」
「な、どういう意味だよ!」
「そのままの意味だけど? 次はもっと強く効く魔力注いであげよっか♪」
笑うな! 怖いわ! こいつ、見た目美形なのに中身完全に悪魔だ!
「マジで……ヤダ……誰か助けてぇ……!」