冥王の息子   作:侍魂

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第11話 魚人島目指して 上陸シャボンディー諸島

王下七武海、ハナフダを撃退後も航海を続け、俺たちは偉大なる航路、後半の海、新世界を目前にしていた。

偉大なる航路の航海も残り半分で前半戦を終えた。

この頃にはスペード海賊団も総勢二十人と一匹というそれなりの規模に成長していた

船長のエースをはじめ、スペード海賊団の面々は、他の海賊たちからも一目置かれる存在になっていた。

この勢いのまま新世界に突入すると思われたが……そう簡単にはいかない。

情報屋のスカルが待ったをかける。

 

「コーティング?」

 

エースが聞き慣れない言葉に首を傾げる。

ランプの明かりに照らされた船内の一室。

椅子に座るエースの側にはコタツが大きな身体を縮こまらせるように丸くしていて気持ちよさそうに寝息を立てていた。

 

「ああ。船を特殊な天然樹脂で覆ってやるんだ。そうすっと、海の中を航海できるようになる。それで海の底まで潜れるようになるっーわけよ」

 

スカルが事前の海図を広げながら説明を続ける。

次の行き先を示す記録指針(ログポース)は遥か、海の底にある島・魚人島を指していた。

海の底にある為に、このままでは当然辿り着けない。

海の底に行くには、専門の職人の手によって船にコーティングという特殊な作業を施さなければならない。

そして、そのコーティングを行える場所が。

 

「シャボンディ諸島か」

スカルが広げた海図に目を落としながら、エースが呟いた。

そこには大小さまざまな島の集まりがあった。

スペード海賊団の船は、スカルの提言で、目元シャボンディ諸島を目指して航海中だった。

 

「シャボンディ諸島は、正確には島じゃない。島のひとつひとつが世界一巨大なマングローブ<ヤルキマン・グローブ>という樹だ。島の地面になっているこの樹の根から分泌されているのが、コーティングに必要な樹脂だ」

 

「なるほど、島じゃないから立ち寄っても記録(ローグ)が書き換えられる事はねえってわけか。79もの島々。これらがすべて樹の集まり、でその樹の集まりで、その根の上に人々住んでいるのか……」

 

スカルの説明にシャボンディ諸島の出身である俺が補足すると、デュースが頷きながらもその根の上で暮らす住人がいることに驚いていた。

 

「腕の良いコーティング職人はネミットの旦那が紹介してくれるって話さ」

 

「ああ。腕の良いコーティング職人の事は俺に任せてくれ。ただ、その人でも船をコーティング作業して……だいたい三日ぐらいだ」

 

コーティングを依頼する俺の父親で師匠である白髪の男を思い出す。

 

「ここで三日間の足止めか」

 

エースが難しい顔をした。珍しく海図を見ながらなので不思議な光景だ。

だけどコーティングが出来る間を滞在ではなく足止めという表現はエースらしいな。

 

「でメシはうまいのか?」

 

「ああ。シャボンディ諸島は新世界の入り口で立派な観光名所だ。美味しい食べ物なんて幾らでもあるよ」

 

「ふーんなるほどなぁ……」

 

色々な店を思い出しながら話すとエースは楽しみなのかニヤリと笑みを浮かべる。

 

「そんで、この髑髏マークのところには、行っちゃまずいってことか?」

 

エースが海図にでかでかと描かれたマークを指差して訪ねる。

髑髏マークには俺も気になってた。

本来ならここに向かうはずなんだけど……

 

「なに言ってるんですかい。エースの旦那。こいつぁ、俺のマーク。すなわち俺の目指すべき場所。目的地。俺たちは今からここに行くんですぜい」

 

「そうか….なぁ、マーク分かりづらくないか……?」

 

「ええ!?そうですかい?じゃあ仕方ねぇ……」

 

スカルはエースから指摘を受けると渋々ペンに赤いインクを付け髑髏マークを大きくハートで囲った。

エースはなんとも言えない気持ちで俺とデュースを見る。

 

船は進み目的地、シャボンディ諸島に到着した。

 

「久しぶりだな」

 

この島を出てそんなに経ってないはずだけど久しぶりの故郷を見ると安心する。

 

「でけえ」

 

デュースが目の前の光景を見てつい声を漏らす、他の仲間たちも同じのようで口をポカーンと開けていた。

目の前にそびえ立つのは、シャボンディ諸島出身の俺以外の人から見たら想像異常に巨大な樹のようだ。

そんな巨大な樹の根からは特殊な天然樹脂が分泌されて、コーティングの材料となるものだ。

それらは根の呼吸とともに空気で膨らんで、大きなシャボン玉と膨らんで、大きなシャボン玉となっては空へと舞い上がっていた。

島には、そうして生まれた無数のシャボン玉がまっていた。陽の光を反射して、シャボン玉が七色に輝いた。神秘的な光景に、仲間たちは声を失っていた。

シャボン玉が舞う先には大きな観覧車が見える。

 

「……!?」

 

ただ何でだろう?観覧車を見ると子供の頃に誰かと乗ったような気がする……

 

私ね……私の歌でシャンクスや赤髪海賊団の人たちや世界中の人を笑顔にしたい

 

顔がぼやけた女の子の声が脳内を過る……誰か分からない……でも俺はその子と遊園地で遊んだ気がする……一緒に観覧車に乗った気がする……その子は昔、一度出会ったシャンクスさんと……赤髪海賊団の人たちと関係があるのか……

 

「いや、負けてられねえよ」

 

懸命に忘れた女の子の記憶を思い出していると、デュースがコートから手帳を取り出して真っ白なページに調子のよさそうに書き出していく。

冒険記を書く事を夢に持つデュースは自身が感じた事を手帳に書いてるみたいだ。

デュースがシャボンディ諸島の事をメモして満足げにしていると、内容を背中から盗み見た仲間たちが感想を言う。

 

「『なになに……めっちゃ樹、超シマシマ』なんじゃこりゃぁ……」

 

「『舞い上がるシャボン玉的なもの。すげえとしか言えない駄目なおれを、どこかへ連れ去ってくれないだろうか』一体何処へ行くきなんだアンタ?」

 

「『万年根無し草のおれが、根の上に住んでいいのか?』なんと奇妙な」

 

「うわぁぁぁ!!読むんじゃねぇお前らあああ!!」

デュースが顔を真っ赤にして大声を上げると船内は爆笑に包まれた。

 

「アンタ、くくくっ。本当に冒険記を書きたいんじゃなかったのかよ?」

 

「これで、ふふ、冒険記は無理じゃねぇか?」

 

「こいつは構成メモだ!!プロットっていうんだよ!!これからもっとすげェのになるんだからな!待っとけ!」

笑いをこらえながら訪ねる船員たちに言い返すデュース。

 

「へいへい。まあ、期待してるぜ」

 

「どうせならよ、俺が活躍するすげえの頼むぜ」

 

「ぜってぇ意地でもあいつらの事出してやらねえ!」

 

そんなことを言いながら持ち場に戻る船員たちの背中を見ながら、デュースが決心したように呟いていた。

俺はそんなデュースの肩を叩きながら話しかける。

 

「デュースが書いた冒険記楽しみにしてる」

 

「ネミット。ありがとうよ。そうやって言ってくれるのはお前だけだよ」

 

スペード海賊団の船は、海面にせせりだした巨大な根の合間を縫うように進んでいく。

船を泊めるためになるべく人目につかない場所を探す。

シャボンディ諸島には整備された港があるが近づかない。

コーティングの為に最低三日間この島に滞在しなきゃいけない。

その間、海軍や賞金稼ぎ、同業者たちに目を付けられたらコーティングどころじゃないからな。

広大なシャボンディ諸島には政府の目も届かない無法地帯も多く、俺たちはあえてそんな場所に船を泊めることにした。

身動きのできない状態で海軍に船を抑えられる事に比べればマシだ。

巨大な樹の影に奥まった場所に静かに船を寄せていく。

 

「海軍や賞金稼ぎたちだけじゃねぇ。世界貴族に人攫い……ここにはトラブルのネタが多い。コーティングが終わるまでは、厄介事はごめんだぜい」

 

停泊の準備に入るとスカルが船員にこの島で滞在する注意事項を言って念を押す。

 

「特に……頼むぜ。エースの旦那」

 

「あ?何だよ?」

 

目を輝かせながらシャボンディ諸島を見つめていたエースが訝しげな顔になる。

 

「いや面倒が起きなねえようにと」

 

「分かってるって。それよりも名物のグラマンってうめぇのかな?」

 

「ああ。うまいよ。この島の名物だしな」

 

「まじか!なぁ?他にうめえのはねぇのか?」

 

偉大なる航路饅頭(グランドラインまんじゅう)略してグラマンは島の土産で有名だ。

エースの頭の中はいっぱいで美味しい食べ物が何か俺に質問してくる。

 

「分かってねぇなこれは」

 

呑気に話すエースと俺の様子を見て、ため息を吐くスカルは、デュースに視線を向けるとデュースは苦笑いしながら頷く。

 

「俺が見ておく。あいつをひとり放っておいたら勢い余って世界貴族を燃やすかも知れねぇ」

 

「おいおい、勘弁してくれ……!いくら俺が情報屋でも、そこまでの事態は想定してないからな!やるなよ!絶対やるなよ!振りじゃねえからな!!」

 

焦り出すスカルの様子を見てデュースは笑う。

神経を使う接岸作業を終えて船上は一気にリラックスした雰囲気に包まれた。

 

「まあ、さすがに世界貴族相手は洒落にならねぇが、それ以外なら海軍に見つからなければ何とかやっていける……」

 

「待っていたぞ火拳!ここであったが百年目だ!」

 

「シルバーズ!今日こそ最上大技物の一つ、ハーデスを渡してもらいます!!」

 

スカルの声に混じって、聞き慣れた声が聞こえる。

 

「はず……だ……」

 

スカルの首がさびたみたいに声の方に向けられた。声の聞こえた外をうかがうと、腕を組み堂々と立つイスカと睨み付けているたしぎがいた。

 

「また出たか……」

 

「これで何度目だよ……」

 

イスカとたしぎの声に、船員たちがざわめきはじめた。恐れからというよりも呆れている様子だ。

それもそのはず、偉大なる航路で出会ってから、スペード海賊団の船は執拗につけ回され、エースや俺を逮捕するために女少尉と女軍曹につけ回される。それがイスカとたしぎ。

エースと俺を逮捕するために執念を燃やし、何度撒いても行く先の島に現れては追いかけてくるとんでもない女たちだが、今俺たちが無事に航海出来てる事から分かる通り彼女たちの目的が達成された事はない。

 

「おお、イスカじゃねえか。こんな所で何してんだ?旅行か?」

 

「旅行なわけあるか!!お前らを捕まえにきたんだ!!」

 

エースの脳天気な声に怒鳴りつけるイスカ。

 

「たしぎ。土産ならグラマンがおすすめだ」

 

「いいえ。みなさんには長持ちするグラせんを買いました……だから旅行じゃないと言ってるでしょう!!」

 

たしぎも怒鳴る。だけど俺や仲間たちは無言で二人の服装を見て旅行だと分かってる。

何故ならいつもの海軍制服ではなく浮かれた観光客そのものだからだ

偶然俺たちを見つけたんだろうけど広いシャボンディ諸島で出会わなくても……

こういうのを腐れ縁って呼ぶんだろうな。

イスカもたしぎは良い奴だ。

正義感が強く真面目で真っ直ぐだ。戦えば強いが肝心なところで抜けていて、エースにあしらわれ、俺たちに逃げられる。

いつものお決まりのパターンになっていた。

エースや俺だけではなくスペード海賊団の仲間たちの間でもイスカとたしぎは顔馴染みの存在として定着していた。

 

「火拳!大人しく投降しろ!!」

 

「シルバーズ!!貴方もです!!」

 

二人はかん高い声で叫び続けている。

三日間足止めで付きまとわれると厄介だな。

幸い休暇中だからかたしぎ以外の部下は連れてないようでこの二人だけならいつもみたいに逃げれそうだ。

一度何処かに隠れるか……

 

「デュース。手帳を貸してくれ」

 

「お、おう」

 

デュースから手帳を借りると俺が向かう場所のメモを書きデュースに渡す。

 

「イスカとたしぎの狙いは俺とエースだ。先に書いた場所に行ってる。後でこの場所で会おう」

 

「分かった。俺たちも船を隠したらすぐに向かうぜ」

 

「火拳、寝てるのか!!」

 

「シルバーズ、無視するなんて失礼ですよ!!早く出てきなさい!!」

 

デュースの言葉に頷くと正面を馬鹿正直に見張るイスカとたしぎから気配を消して船を抜け出す。

その後エースも俺と同じように船から抜け出していて島に上陸していた。

ただし、自分の財布を置いて。

お金を持たずに飯屋に食べに行った。

船長の破天荒な行動に船内は大騒ぎになり、仲間たちの非難の視線を背に受けながら慌ててデュースが追いかけて行ったみたいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウタsideの話

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