男の娘がミカのお嫁さんになる話   作:ペロペロさん

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思ったより見て頂けているようなので続きです。
主人公出てきません。
過去捏造注意

あ、転生者の生徒達は皆TS転生です。


第二話

 持ち帰った仕事を終えて、正に就寝直前のコール。画面に浮かぶ名前は予想通りに幼馴染だったので驚きはない。

 軽い説教の後聞いた話には流石に彼女——桐藤ナギサも驚いたが。

 

 

「それで、拾ってきたと……?」

 

「うん☆」

 

「うんじゃないんですよ。ミネさんに連絡しました?」

 

「ミコちゃんが連絡先持ってたからしたよー。しなかったらそれこそ街を破壊しながら探しそうだし」

 

「あなたミネさんをなんだと——いえ、あり得るかもしれませんね」

 

 あの人破壊したものは時間経過で直ると思ってませんかね。流石にそれはないんじゃない?と、失礼な会話を挟んで本題へ。

 

「——で、その助けてくれたもう一人が()()()()()()()()()()()()()……」

 

 直近の事件でトリニティ内で知らない者はいないレベルの有名人である。

 

「……はい、個人的な連絡先は今送りました」

 

「ナギちゃんありがと! カルデア支部に直で連絡して良いかわかんなくてさー」

 

 未来保証機関カルデア。

 生徒達の未来を保証する、という題目と共に十年前突如として立ち上げられた互助組織である。俗に言うドロップアウトした生徒を救い上げる事を主な目的としており、様々な関連企業が上げる莫大な利益を活動に注いでいる。

 

 代々の連邦生徒会長が存在を認め、いくつかの学校に支部を持つ事すら許された巨大組織。

 関連企業は娯楽関係が多く、未来を見ているかのように流行に合わせた品を発売する事から、名前の通り未来を観測できるのではとの噂もある。

 

「そうそう、あのマルタちゃん。時期ティーパーティー確定と言われてる私とナギちゃんが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「理由が理由だけにあまり責められないのですよね」

 

 近年建てられたカルデアトリニティ支部の教会は、陰湿ないじめや派閥闘争で追い落とされた生徒達の最後の駆け込み寺となっていた。

 支部兼教会では常駐している幹部が相談や懺悔を受け付けている。

 カルデアに所属する生徒は多くいるが、幹部は老成した精神を持つ者が多く相談者の事を第一に考えて解決策を提示してくれると評判だった。

 マルタも例に漏れず姉御肌な性格で、多くの生徒に慕われていた——故にそれは必然だったのかも知れない。

 

「すごいよねー! 友達がいじめられてた原因がティーパーティーの派閥闘争だと知った途端殴り込みだもん!」

 

「右の頬を打たれて倒れた相手に馬乗りで左の頬へ追撃でしたからね……」

 

 偶然見た現場を思い出したナギサは自然と遠い目をしていた。

 マルタの言い分はこうである。

 『いじめやら派閥争いやらで逃げ込んで来る子が多いから、ティーパーティーに対策を要請してたのに、むしろ率先してやってるってどう言うことよ!あったま来たからシャバ増達に喝入れる事にしたわグーで!』

 

「片っ端から殴り倒した結果ティーパーティーが壊滅して、私たちにまでお鉢が回ってくる事になるとは……」

 

「最初、クーデターかと思ったよね!」

 

「私はマルタさんと話すまで疑ってましたよ。カルデアの全生徒を招集すると三大学園クラスの人数になるとまで言われてますからね。 遂にトリニティに取って代わろうとしたのかと……」

 

「ナギちゃんは心配性だよねー」

 

「実際不気味に思っていますよ、カルデアの事」

 

 カルデア所属の生徒はカルデアでの活動で単位を取れる。

 数多の事業で手に入れた利益を資格取得支援や就職支援、ドロップアウトした生徒の復帰や転校支援等々の生徒の救済に使用する。使用し続ける。その気になれば新しい学園を起こせるだろうに、連邦生徒会と提携する一企業という立場をたもっている。不祥事があったことも無ければ、カイザーのように黒い噂もない。

 

 真っ白すぎて疑わしいのだ。

 

 ただの一本気で姉御肌な少女でしかないマルタの事は信頼しているが、カルデアを信用するのは難しい。あの組織に恩のある生徒が多すぎるし、ナギサとミカも他人事では無い程度に恩はある。

 単純に幹部勢の戦闘能力が高すぎるのもある。

 

 把握できている分だけでも『茶房の三十人(サーティーパーティー)』『空想科学部』『つるぺたヘルメット団』『バーローワークス』『赤本浪士』等カルデアの息がかかった組織が各地にある事が知られている。

 因みに『つるぺたヘルメット団』はブラックマーケットによくいる連中とは違って、カルデア専属の傭兵みたいな連中であり、他のヘルメット団には権力に尻尾を振る者らにヘルメット団の資格なし、として嫌われている。

 『茶房の三十人(サーティーパーティー)』は今回の件があって、ティーパーティーの運営を手助けする為に作られた組織だ。トリニティ所属でカルデアに縁のある優秀な生徒が集まって結成されたが、マルタの暴挙が織り込み済みだったようにも見える。ナギサが疑うのも仕方がないと言えた。

 

「考えすぎじゃない? あ、マルタちゃんから返信きた。明日ミコちゃんの装備一式と私服に身分証明書持ってきてくれるって! 至れり尽くせりだねー」

 

「……装備一式はともかく、身分証明書の即時発行は幹部待遇を決定したという事では?」

 

「あー、そうかも?」

 

「あ、怪しいですね……」

 

 D.U.内にカルデアの本拠地があるが、最上階のフロアは幹部クラスしか入れないと専らの噂だ。 そして、幹部の選定基準は全くもって不明。

 入ったばかりの新人、ブラックマーケット出身者、支部もない遠方の自治区からD.U.に初めて来た生徒、観光客、新興企業の社長等、何を基準にしているか全くわからない。

 所属学園の自治区で要職に就いており、カルデアでの活動を一切行っていない様に見える幹部もいる。所属学園も部活も勤続年数も貢献度もバラバラで、共通しているのは妙に強いという事だけ。

 何らかの方法で戦闘能力を調べてスカウトしているのではないかとも噂されている。

 

「まあまあ、ナギちゃんもいつか一緒に暮らすんだからその内顔合わせしないとね」

 

「……はい?」

 

 思案するナギサは一瞬耳を疑った。

 

「ん?」

 

「ミ、ミカさん? ミカ? 何を————あっ」

 

 突如ナギサの脳内に溢れ出す、存在する記憶。

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 幼い頃、ミカが物を良く壊してしまう時期があった。そこにやってきたのが当時発足したばかりのカルデアと提携していた研究施設『時計塔』の関係者。

 

 癖毛の青い髪に黒縁の眼鏡をかけて、端正な顔を常に不機嫌そうか皮肉げにしている幼女。

 同い年にも関わらず大人びた態度とその口の悪さに、ナギサとミカも最初は戸惑ったものの、ミカのお気に入りの童話の作者本人だと知るとミカは大いに喜んで彼女をもてなした。

 具体的にはお気に入りの紅茶とスコーンで。

 

「お前のその馬鹿力の原因はこちらにもあるかも知れんのでな。お前の神秘の本質を知る物がよりによって俺たちである事。その中にそれに対する信仰を持つ者がいる事が無関係とも思えん。書く事で多少干渉できる俺が楔を打ちに来ただけだ。そのまま聞き流しておけ」

 

 実家の庭に建てられた休憩所で、紅茶が冷めるのも構わずこちらに目も向けずに言葉を連ねる彼女。 ともすれば無礼とも取れる姿勢だが、幼いナギサはその視線の先で素早く踊るペン先の煌めきに圧倒されるばかりであった。

 言っている事の半分もわからないが、手元の白紙の本につらつらと文字を連ねていく姿をキラキラとした目で見つめるミカを覚えている。

 

「元素は火、関連する色は赤、方角は南、対応する星は金星、又は水星か太陽————お前の目の色からして金星が有力か。 水星の魔女など笑い話にもならん」

 

 上品な装丁の白紙の本は正確には白紙ではない。毎ページ半分は手書きの挿絵が既に描かれているようだった。水性絵の具を使い、優しいタッチで描かれたその絵を見ていくと、天使の女の子が様々な困難を乗り越え、多種族の登場人物と仲良くなっていく物語と推測できる。

 

「この物語の内容に大した意味はない。くだらん深読みをするだけ無駄だ。俺の神秘特性上必要だから書いているだけだからな。そら、完成したぞ————お前の為の物語だ」

 

 差し出された本を宝物の様に抱きしめるミカ。そのままへし折れてしまうのではとナギサは心配したが、本は無事だった。よほど頑丈な素材か、もしくは——

 

「しばらくそれを手放さない様にしろ、見ての通り力を抑えられる。あの夢魔が材料から用意したモノなら楔としても十分だろうさ」

 

 やはり言ってる事はわからないが、彼女があっさりと問題を解決してくれた事は理解できた。

 

「ありがとう!だいじにするね!さっかせんせいっ!」

 

「わたしからも、ありがとうございます」

 

 礼を言う二人に彼女は微妙そうな顔をしていたのが印象的だった。

 

「作家『先生』と来たか……。 間違いではないが……『先生』と呼んでいる訳ではないからいいか」

 

 それからは条件付きとはいえ力加減ができる様になって大喜びのミカが、色々な話を振るのを日が暮れるまで律儀にミカ達にもわからない様に答えていた。それだけ付き合ってくれるのだから面倒見はいい方なのかも知れない。本人曰く本物(?)程では無くても人物鑑定に定評があるらしく、こんな話もした。

 

 なんでも、ミカは恋に傾倒しやすく、ナギサは愛に傾倒しやすいのだとか。

 

「あくまでどちらをより大事にするか、というだけだがな。二人とも心労を溜め込んでいずれ爆発する類いの女とも見えるが……まあ、一つ覚えておくと良い」

 

————ある作家曰く、『恋は現実の前に折れ、現実は愛の前に歪み、愛は、恋の前では無力になる』との事だ。

 

「なんかじゃんけんみたい!」

 

「じゃ、じゃんけんってミカさん……」

 

「ハッ、幼子らしい感想だな! 何かを手にするならば、何かを手放す。 友情と恋を天秤にかけねばならない事もあるだろうさ。 愛も恋も人の欠陥にして最大の特殊スキルだが、恋愛なぞそんなモノ——」

 

「わかった! じゃあ、けっこんするときはナギちゃんといっしょにする!」

 

「へっ? む、むりじゃないですか?」

 

 幼な心に無理がある様に思えたナギサであったが、ミカは止まらない。

 

「わたしが『こい』をだいじにして、ナギちゃんが『あい』をだいじにする! ふたつあわさってさいきょうだよ☆」

 

「『さいきょう』、いいひびきですね……」

 

「でしょ!」

 

 わーい!と手を取り合って喜ぶノリノリな幼女達を眺めながら、少しの間呆けていた作家は笑った。

 

「ははは! それは良いな! 愛と恋が合わさって最強に見えるというやつだ! グーとチョキを独占すればじゃんけんに負ける道理はないからな! やはり、幼子の創造力に勝るものは無のだろうな。 ああ、欲しいものは両手に掴んで走り抜ければいい。 お前ならそれができるだろうさ……」

 

 最後に上機嫌な彼女はミカに絵本を持ち続けるのは数日で良いと告げると去って行き、事実数日後本を手放してもミカが物を壊す事は無くなった。

 彼女と会った夜ミカは何だか楽しい夢を見た様な気がしたが、朝になると忘れていた。

 その後作家先生は各地を転々としながら執筆を続けているのだとか。

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

「(あれですかー!?)」

 

 

 この後、ナギサが約束を忘れているとは欠片も考えていないミカにそれを悟らせずに少年と会う約束を取り付けたのに苦心したナギサ。

 

「(何者かは不明ですが、カルデアの後ろ盾がある分には責任の追及先がはっきりしている分良しとしますか……。 ですが、私はミカさん程チョロくはありません。そう簡単に絆されるとは思わないで頂きたいものですね……!)」

 

 闘志をを燃やすナギサであったが、基本善性の者同士相性は良いと思われる。

 そして、長年ミカに振り回されつつトリニティの荒波を政治力で乗り切ってきたナギサは、本人に自覚はないが純朴で癒し系に弱い。

 つまり、フラグであった。

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