銀英伝短編集(小ネタあれこれ)   作:高島智明

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この短篇は、wildcat様から頂いた御感想よりインスパイアを受けました。
改めて、wildcat様には厚く御礼申し上げます。


異世界迷宮に行く筈が~帝国バージョン~

「貴方は、貴方の半身を失う積もりですか」

これは賭けだった。増してラインハルト・フォン・ローエングラムの様な気性の激しい相手には。

小説投稿サイトをネットサーフィンしていた筈が、見付けてしまった。

「自殺の決意をする前に」

確か『異世界迷宮でハーレムを』というライトノベルのプロローグに出て来るサイトだった。

 

「まさかね」

その時の俺は『いせはれ』のファンが作ったサイトとしか思っていなかった。

そこで、何処まで『原作』に似せて作ってあるかを確かめる程度に考えて、そのサイトにアクセスしてみた。

 

先ずは「行く世界」の選択だ。

俺はあえて「剣と魔法の世界」を選ばず「科学技術が発達した世界」を選んでみた。

次に「国同士が積極的に戦う世界」を選択してみた。

すると…

 

「どの陣営を選びますか」

という画面が出た。

「民主主義の陣営」「帝国主義の陣営」「商業主義の陣営」等から選択する。

 

「まるで『銀河英雄伝説』の世界だな」

そう思いながら、

「ドイツ料理好きだし、家庭菜園もやってるから未来世界での園芸とかも興味あるな…。

よし、帝国主義の国を選択しよう…」

と考え、選択した………。

 

……。

 

…俺は目覚めた。

そこは砂漠に囲まれたオアシスの様な集落だった。

通りかかった農民らしい人物に尋ねてみる。言語は「帝国公用語」を選択してあった。

その答えは…

 

惑星ヴェスターラントだった!

今は何時かと聞いてい見れば、

「皇帝フリードリヒ4世陛下の喪に服している」

という返答だった。

 

好かった。未だ核攻撃までは時間がある。

だがしかし、遠からず内戦が始まる。そうなれば…

 

考えた末、俺は此の惑星の代官に物申すことにした。

だがしかし…

 

どうやら、

「余りに搾取すれば、領民に殺されることに成りますよ」

等と言う物言いは、代官シャイド男爵のお気に召さなかった様だった。

その場で、惑星からの追放を申し渡されてしまった。

それも公用船などは使わず、この辺境にも商売根性宜しくやって来ていたフェザーン商船に放り込まれ、運賃は自分持ちにされてしまった。

 

さて運賃を請求されて、俺は財布から「渋沢栄一」を取り出した。

「何だい?これは」

「地球時代、それも13日戦争前の紙幣だ。骨董好きに売れば、好い値段に成る筈だぞ」

疑いながらも、鑑定の為に船載コンピューターに持って行った。

結果は…当然だ。本物なんだから。

こうして俺は、運賃のみならず、当面の生活費を手に入れた………。

 

……。

 

…帝都オーディンの地表に立って、俺は此れからのことを考えた。

虐殺からは逃れられたものの、自分だけのエゴイズムの様で、後味が好くも無い。

せいぜい、出来ることをしよう。

そう思って、ローエングラム元帥府の門を叩いた。

 

幸いにして元帥府の主は、とある伯爵令嬢との気持ちの好い対談の後で気分を好くしていたらしい。

俺は不審がられながらも、元帥の執務室まで入(はい)れた。

 

俺は知っている限りのことをぶちまけた。

身内の末路に逆上した領主が、自分の領地を核攻撃する危険が在ること。

しかも、見殺しにした後で貴族どもの非道を喧伝する材料にする、などと余計な進言をする参謀が居るかも知れない、と。

 

不審気な元帥に、俺は決定的な言葉を投げつけた。

「貴方は、貴方の半身を失う積もりですか。

キルヒアイス提督は、絶対に貴方を赦さないでしょう」

この言葉は、ラインハルトの感情を突いた。

「貴様などに、俺とキルヒアイスの何が分かる!」

 

「そう、貴方が誰よりも御存じでしょう。

キルヒアイス提督が、このような非道を赦す人かどうか」

絶句。更に俺は、

「あるいは、貴方の姉君は貴方を赦すかも知れません。

ですが、それは自らの半身を失った弟を哀れんでのことかも知れません。

そして、姉君も貴方から離れるかも知れません」

「姉上のことまで、どうこう言うな!」

 

「言うべきことは申し上げました。選択するのは貴方です。後悔なさりますな」

俺は、元帥府から叩き出された。

「まあ、言うことは言った。あれだけ感情を刺激されれば覚えているだろう。後は彼次第だ」

俺は、事の次第を見守ることにした………。

 

……。

 

…その時、超光速通信に乗って帝国全土に向けて放送が流れた。

 

「帝国全土の臣民に告ぐ。卿らの忠誠に彼らが値するものかどうか、再考すべき時が来た」

惑星ヴェスターラントを核攻撃しようしていた特務艦がローエングラム軍に拿捕されて、没収された熱核弾頭ミサイルがガイエスブルク要塞へと叩き付けられた。

「受け取るが良い。

お前たちが、お前たちの護るべき民衆に向けた憎しみの炎を、お前たち自身に返そう」

そしてラインハルトは、こう演説を締め括った。

「あらためて帝国臣民に問おう。誰が卿らの敵であり、誰が其の敵から卿らを護るのかを」

 

この放送を見守って、俺は1人思った。

これで1つの悲劇は回避出来た。

そしてこれは、もう1つの悲劇にも影響する筈だ。

2つの悲劇が回避されたならば、銀河の歴史はどう成っていくか。




ご意見ご感想をお待ちしております。

この短篇が、連載中の第13話に成ることに気付きました。
その為、第14話の投稿見通しが出来てからの投稿と致しました。
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