銀英伝短編集(小ネタあれこれ)   作:高島智明

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タイトル通り、転生ネタに属します。この短編集の他の作品とは一切、無関係です。

拙作「蝶は羽ばたいた」と似た表現が一部混じりますが、あくまで本人作品からの転用であり、また逆バージョンです。


リンカネーション~同盟バージョン~

現在、6才。

当然ながら、思考は6才児のモノでは無い。

 

本来ならば、現世での脳と心が出来上がるに連れて上書きされて行くのであろう前世記憶の類と、出来上がって来た現世の脳と心が、やっとバランスを獲得した現状を確認していた。

その出来立ての脳と身体に引っ張られているのだろう、精神年令としては、どうやら思春期が終わって心身が安定したばかり位の青年の感じだった。

おそらく、現世の外見年令が追い着いた辺りから、一緒に年を取って行くのでは無いのだろうか。

(後では、実際に予想通りだった)

前世記憶の内容としては、もっと高い年令の頃の事も知識にあるが、感覚としては、そうした年令の若者が大人の人生経験を話して聞かせてもらっている、まるでそんな感じだった。

 

問題は、むしろ前世記憶の内容だ。

 

*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*

 

もっとも鮮明なのは『銀河英雄伝説』という題名の小説(!)が存在する時代の記憶だった。

そして、次の記憶では、未だ(?)西暦が使用されている時代。

初めて人類が超光速航法を利用して、太陽系外への探検隊を送り出した時代だった。

 

その次の人生では、西暦から宇宙暦に変わった瞬間の記憶があった。

地球政府との抗争に勝利した筈の、シリウスの指導者たちが自爆してしまった後に生まれた。

そして、残された人々が銀河連邦を成立させて行く、同じ時代に生きた。

 

その次には、銀河帝国の平民に生まれていた。

幸い、流血皇帝だの敗軍皇帝だのの時代を外して、絶対君主なりに真面目な皇帝の時代だった。

おかげで『原作』での「疾風」の親とか「赤毛」の親とかの様な、平凡なりに穏やかな人生を送った。

 

*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*

 

そして「今世」は、自由惑星同盟の中流家庭に生まれていた。

精神年令が身体に引っ張られていて思春期の終わり位だと、この程度の情報ならば見た目は6才児でも入手出来るものだった。

 

その情報の中には、当然だが「今年」が宇宙暦で何年、といった事もあった。

問題は、その「今年」から6年を引くと、そして前世や前々世の記憶からすると『原作』の予言通りに歴史が進んでいるようだが、このまま進むとしたら、どうやら“あの”ヨブ・トリューニヒト辺りと、かなり近い世代に生まれてしまった計算に成りそうだった。

これは困る。

これまでの様に、平穏に人生を送れないかも知れない時代が来るかも知れない………。

 

……。

 

…予想した通り、思春期が終わる頃に現世の外見年令と内面の精神年令がバランスを回復し、それ以降は、現世年令の進行と共に、同じ年頃の前世記憶が知識から体感出来る記憶へと復帰して行った。

 

そして現在『原作』が始まろうとしている。

 

*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*

 

現世での人生の選択は、政治家を選んだ。

なぜならば、自由惑星同盟は民主共和政の国家であり「文民コントロール」が建前だからだ。

軍人に出来る事には限界がある。

実際『原作』でも、ヤンとかビュコックとか程度の好い軍人に限って、その限界を越えなかった。

それ以上の事は、政治家にしか出来ないのだ。

 

どうせ、何もしないでいても平穏に生きられないならばジタバタしてやろう、と決心してから、政治家の出身校として何気に有名な大学に進学して、学生の内に、とある政治家のオフィスでのボランティアから始めた。

その政治家のスタッフには、ジョアン・レベロとホアン・ルイという先輩がいた。

偶然では無い。探したのである………。

 

……。

 

…その後、その政治家のスタッフを「卒業」すると、故郷の惑星から立候補した。

そして当選したが、同じ時期に別の選挙区から、やはり初当選した1人にヨブ・トリューニヒトがいた。

 

*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*・・*

 

今晩の私は、『原作』にも登場した首都のレストランで、レベロ先輩やホアン先輩たちと同席していた。

 

何日か後にはアスターテ会戦、つまりは『原作』が始まる。

実の処、3個艦隊を出撃させ戦争をさせるための準備が、国防委員会だけで出来る訳でも無い。

財政委員長だって人的資源委員長だって、それなりに忙しかった。

しかし、これから忙しく成るかどうかは、アスターテ会戦次第だ。

(多少、後ろめたくなくも無い。忙しく成ると知っていれば)

今夜は、いわば中休みだった。だから、時間が取れた訳だ。

 

「先輩に御願いしたい事があります。裏取引は御好きでは無いでしょうが」

「話だけは聞いても好いがね」これはホアン先輩だ。

「情報交通委員会の副委員長に成って置きたいのです」

そう切り出してから、用意していた資料を見せる。

議員職権にプラス『原作』知識と言う反則あって、独自に調べた資料だ。

「これは?財政委員長としては見逃せんな。血税を……」レベロ先輩なら言いそうだった。

「表沙汰に成ったら、委員長にも火の粉は飛びそうだな」ホアン先輩も言いそうな事を言った。

「そうです。そして、現在の副委員長ですが……」

「ウィンザー夫人は関与していない様だが」レベロ先輩が突っ込んだ。

「夫人は潔白と言うよりも、むしろ潔癖でしょう。だからこそ、問題なのです」

 

先年、第6次イゼルローン攻略戦が実施されました。

当然ながら、こうした出兵の判断と決定は、最高評議会の評議と採決の結果です。

問題は、そうした場合、ウィンザー夫人の様に潔癖な出席者が最高評議会に加わっていたら……

「わたしたちには崇高な義務があります。

銀河帝国を打倒し、その圧制と脅威から全人類を救う義務が」

「確かに言いそうだね」ホアン先輩は何時もの調子だった。

「安っぽいヒューマニズムに陶酔して、その義務を忘れはてるのが、はたして大道を歩む態度と……」

「分かった。彼女を最高評議会に迎え入れるのは、確かに危険かも知れん」

レベロ先輩が大真面目に言い切った。

 

「ところで、ウィンザー夫人と入れ替わって君が出席するとしたら、どうするつもりだね」

「ホアン先輩。レベロ先輩も。

もしも私が出兵に賛成するとしたら、帝国内部に「敵の敵」が登場した時です」

 

銀河帝国、それも現在のゴールデンバウム王朝の様な不平等な体制への不平不満が、全く存在しないとは限らないでしょう。

ウィンザー夫人の主張する様な原理主義でも、単なる楽観論でも無く、帝国の内部から、あるいは下からの体制打倒を目論む勢力が出現しないとも限らないでしょう。

そして、そうした勢力は、当然ながら現在の帝国の有力者である門閥貴族を後ろ盾には出来ないでしょう。

その支持基盤を下級貴族や平民に置くとしたら、当然「そうした」支持者に対して何らかの利益を約束するでしょう。

そうした勢力が出現した場合、我々とは互いに、少なくともゴールデンバウム王朝という「敵の敵」には成るでしょう。

 

「しかし…現時点では、希望的観測だな」

レベロ先輩をしても希望的観測だろうな。確かに「現時点」では。

これから始まるのだから。

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