視点:とある転生者
私は『原作』知識を今一度思い返した。
「…彼らは負担にたえかねているのだ」
このレベロ先輩の発言に続いて『原作』ではウィンザー夫人が反駁したのだったが、そのミセスが居た筈の席には“現状”私が座っている。
当然に私は何も言わない。言わなかったが、やがてサンフォード議長が発言し始めた。
「ええと、ここに資料がある…」
支持率、不支持率そして支持率の上昇予想と、ほぼ『原作』通りのデータを開陳して行く。
「…上昇することが、ほぼ確実なのだ」
ざわめいた何人かの中の誰かが投票を提案する前に、私は発言した。
「拝聴したデータは、それで全部ですか?」
「まだ何か必要なのかね?」
「画期的な軍事上の勝利、とおっしゃいましたが、それはどの程度確実なのでしょうか?」
何が言いたい?と聞き返されるまでも無く続ける。
「戦うのは我々ではありません。
そして残念ながら我が軍は、最近でもアスターテで残念な結果に終わっています。
アスターテの様に敵が攻めて来ているのでも無いのに此方(こちら)から出兵して、不適当な事を言うみたいですが、もしもアスターテ同様の結果に終わったら、その時の支持率シミュレーションも試されたのでしょうか?」
ここで意図的に呼吸を入れた。
「確かに数値計算をするまでも無いでしょう。
新参の私以外、今ここに皆さんがいらっしゃるのは第6次イゼルローン攻略戦の結果ですから」
「私としても、せめて次の選挙までの短い間にでも果たして置きたい仕事ぐらい残っている」
ホワン先輩が突っ込んだ。
「そう言う私の仕事まで巻き込んで欲しくは無いな」
会議の空気が微妙に成って来ている。
出兵賛成派にしてみれば、いま投票したならヤブヘビの可能性が出て来た。
『原作』では賛成6反対3棄権2だった筈だ。
しかし賛成票の1人と私が入れ替わっているから5対4。
賛成票の1人が棄権するか、棄権票の1人が反対に回るだけで賛成反対が同数に成る。
もっとも私の様な「反則」無しでは、国防委員長の票は賛成だろうと読んでいるだろうが。
しばらくの間、お互いに思惑と空気を読み合う様な時間が過ぎているうち、議長が私に視線を向けた。
「君は、出兵したら負けると考えているのかね」
負けると「知って」いるのだけども。
「繰り返しますが、戦うのは我々ではありません」
「その通りだ。戦うのは軍人だ。そして、これは其の軍部からの提案なのだか」
「その提案してきた軍人は、シビリアンである議長にまで「勝てる」と保障したのですか?」
『原作』のアイツなら想像出来る。
「君は、その保障では不足なのかね?」
「私は“彼”に会った事も在りませんが?」
結局、この日の評議会では問題は先送りに成った。
帝国軍が攻めて来ているのでは無い。今日明日の問題でも無かった。
そして、次の評議会までに私と軍側の提案者との面談が設定された………。
……。
…私は、あえて2000万人と言う数字を意図的に思い出しながら面談に臨(のぞ)んだ。
『原作』でのビュコック提督が振る舞った態度を思い出しながら、フォーク准将に相対したのだ。
翌週の評議会。私はボイスレコーダーと医師の診断書を資料として提出した。
真に遺憾ながら、再投稿のストックも、当面の妄想力も尽きたようです。
名残惜しい事ながら、今話にて一旦、完結とさせて頂きたいです。
これまで御愛読されてきた皆様には、厚く御礼申し上げます。