以前には妄想力の限界を感じ、完結とさせて頂きましたが、今回は思い付いたものを投稿させて頂きます。
「帝国領侵攻」が結局は不発に終わり、何だか消化不良の様な空気が漂っていた同盟領に、驚愕の情報が帝国側から伝わってきた。
皇帝が死んだ。
もっとも私は”知っていた”のだが。
直ちに召集された最高評議会では、様々な意見が飛び交った。
「今度こそ、侵攻の好機。速やかに出兵を」
等と言い出す者がいて、レベロ先輩とホアン先輩に叱られていた。
私は発言を求めた。
「皇帝は後継者を定めずに死にました。
間違い無く、次の権力者を巡って闘争が起こるでしょう。
闇雲に出兵すれば、折角(せっかく)分裂してくれる帝国を取り敢えず団結させることにも成りかねません」
「では、折角の機会を見送るのかね」
「そんなことは言いません。只、しっかりと見極める必要が在るでしょう。
これは、本当のチャンスかもしれません。
分裂し、闘争する各陣営の中に、帝国を我々と共存可能な方向に変化させる可能性を持った陣営が現れるかも知れません」
「そんな不確かな希望的観測など」
そんな言い方もされたが、しかし私は”知っている”のだ。
「帝国軍では既に下級貴族や平民出身の士官が有力な勢力を構成しています。
まして兵士の大部分は平民です。
彼らを自陣営の地盤とするためには、門閥貴族の利益だけを図る訳にもいかないと気付いている陣営が現れてもおかしくありません」
ここで1息入れた。
「それよりも恐れるべきは、我々の干渉を恐れた陣営による謀略でしょう。
例えば…軍部の不平派を扇動してのクーデターなどとか」
「まさか…」
「同盟軍が、鋼鉄の1枚岩の様だと思いますか?
それに仕掛ける側は、クーデターを成功させる必要は在りません。
我々が、帝国の内戦に干渉出来なければ好いのです」
場の様子が真剣に成ってきた。
「油断はするべきではありませんが、過度に恐れる必要も在りません。
発生すれば、鎮圧するのに大兵力と時間を必要としますし、傷も残ります。
ですが、未然に防げば、MPの1個中隊で、ことは済みますから。
取り敢えずは、情報当局に警告を発するべきでしょう」
どうやら場に安堵が広がっていった。
捕虜交換は、出兵に代わる平和攻勢として同盟側から提案され、既に終わっていた。
選挙の事を考えれば、捕虜に参政権は無いが、帰還兵や其の家族や友人の票は期待出来る。
そう私は主張し、採用されていた。
そして、帰還した元捕虜の中に、アーサー・リンチ少将の名は無かった。
情報当局には、捕虜交換の終わった今に成って、帝国から帰還してくる者への警戒が厳命された。
1方、表立っては最高評議会の名義で
「帝国内部の権力闘争には不干渉」
の旨が宣言された………。
……。
…遂に、帝国の内乱は勃発した。
片や、それと前後して同盟ではクーデターを謀議していた者たちの摘発が行われ、未遂に終わった。
このクーデター未遂が、帝国のローエングラム侯爵の謀略であることは、何故か公表され無かった。
「何故、これを隠す必要が在る」
「ローエングラム侯爵は平民階級に支持基盤を置いています。
ゴールデンバウム王朝の既存体制という共通の敵を持った、我々の敵の敵に成り得ます。
彼との和解の可能性を、今切ってしまうべきではありません」
私の主張に対して不満げな様子の評議員も居た。
何とか選挙を乗り切って続投していた政権の中では「画期的な軍事的成功」という誘惑にまだまだ捕らえられている者たちが居たのだ。
彼らにしてみては、この内乱への干渉は絶好の機会としか思えないのだろう………。
……。
…遂に内乱はローエングラム侯爵の勝利で終わった。
更には、背後の味方であり潜在的な最期の敵だった帝国宰相まで倒し、遂にローエングラム独裁体制が成立した。
この独裁体制は、平民階級の権利を大きく前進させた改革を開始した。
私やレベロ先輩、ホアン先輩たちは、ローエングラム体制との交渉を模索していた………。
……。
…遂に決定的な事が起きた。
幼い皇帝を連れて亡命して来た者たちがやって来た。
彼らの処遇を巡って、最高評議会では激論が戦わされた。
だがしかし、亡命政府の樹立を主張する評議員たちがフェザーン自治領からの闇資金を受けていたことが暴露され失脚すると、新たに議長代行と成ったホアン先輩が宣言した。
「人道上、彼らの亡命は認める。だがしかし、亡命政府の類(たぐい)は認めない。
”言論の自由”により、彼らが何を主張するも勝手だが、同盟政府の公認する処ではない」
更に、フェザーン自治領主府の策謀が暴露された。
すなわち、帝国に同盟征服の大義名分を与えるための策謀だったと。
これに対し、帝国のローエングラム体制側からは、何のリアクションも無かった。
この沈黙が何より雄弁だった。
だがしかし、あの覇気に富んだ「黄金の有翼獅子」が、これで銀河統一を諦めるとも限らない。
私は新たに就任したウォルター・アイランズ国防委員長と共に、帝国軍がフェザーン回廊を武力突破してきた場合に備えるための準備を始めた。
この時活躍したのが、私が当時のアイランズ委員に接近し「アスターテ会戦」に先んじて第6艦隊から委員会付に引き抜いていたジャン・ロベール・ラップ中佐だった。
第6艦隊、数10万の将兵の中から彼1人を救うのは偽善かも知れなかったが”私”が『原作』に介入出来るかの試金石としたのだ。
私とアイランズそしてラップは軍部の幹部たち、帝国領侵攻が未遂に終わったため健在だったシドニー・シトレ 統合作戦本部長やアレクサンドル・ビュコック宇宙艦隊司令長官、ウランフ、ボロディンといった提督たちと協議を重ねた。
そして、ローエングラム公爵の侵攻に対する準備を重ねた。
更に、ヤン・ウェンリー提督とイゼルローン要塞に対して協力し、あるプロジェクトを密かに進行させた。
帝国軍がイゼルローン回廊以外から侵攻して来たとき、要塞と要塞駐留艦隊、何より同盟軍最大の戦略家という戦力を最大限に活用する為だった。
銀河の歴史は、また1ページを進めようとしていた。
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