銀英伝短編集(小ネタあれこれ)   作:高島智明

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以前に投稿しました『リンカネーション~同盟バージョン~』とは全く関係の無い、もっと大胆な改変を行った短編です。


流血の宇宙~改変~

「この俺と互角に戦えるだと?!」

装甲擲弾兵総監オフレッサー上級大将は、レンテンベルク要塞の第6通路で吼(ほ)えた。

 

対峙するトマホークとトマホーク。

そしてこの期に及んでも、伊達な薄ら笑いを忘れない「薔薇の騎士」だった………。

 

……。

 

…皇帝が死んだ。

その情報が帝国側から自由惑星同盟側に伝わった時、ヤン・ウェンリーは未だ待命中だった。

最終的には、イゼルローン要塞司令官・兼・イゼルローン駐留機動艦隊司令官と決定するが、その間の数週間のタイムラグの間に、決定的な情報が飛び込んで来たのだ。

 

この情報を入手して、ヤンは考えた。

皇帝は後継者を定めずに死んだ。

間違いなく、次の権力者を巡って闘争が起こる。

あるいは、内乱にまで発展するかも知れない。

その時…あの「戦争の天才」は、どう動くのか。

 

”彼”は下級貴族や平民出身の士官たちを抜擢し、大戦果をあげてきた。

まして、兵士の大部分は平民だ。

そもそも彼自身、貴族とは名ばかりの貧家の出身だと聞く。

彼が、その勢力の基盤としているのは…彼ならば…

 

そこまで思考を巡らせたヤンは、ある策謀を思い付いた。

そして、統合作戦本部長を辞任し故郷の惑星に隠遁する前に、後任者に引き継ぐため未だ首都星に留まっていたシドニー・シトレ 「元」元帥に連絡を取った。

 

シトレは旧友であり、敗戦後も最高評議会に留まっていたホワン・ルイに、ヤンの提案を持ち込んだ。

発案者のヤンは

「これでは、療養中の何処かの「元」准将と同じだな」

とか

「勝つことだけ考えていると、際限なく卑しくなるものだな」

とか考えながらも、無謀な出兵の結果として大きく戦力を落としていた同盟の為に、せいぜい悪あがきをすることにした………。

 

……。

 

…同盟軍から帝国軍に、捕虜交換が申し入れられた。

 

それに乗じて、帝国軍のローエングラム元帥に、同盟軍の密使が接触した。

 

その密使が告げた内容は、流石の「戦争の天才」をも、最初は驚愕させた。

だがしかし、すぐに理解した。

元々、来(きた)るべき内乱に、同盟軍を如何にして干渉させないか。

ラインハルト・フォン・ローエングラムの側としても、同盟軍を分裂させクーデターを起こさせてやろうかと、策を巡らせていた位だったのだ。

ラインハルトは同盟側の、恐らくはヤン・ウェンリーの策謀に乗ってやると決断した………。

 

……。

 

…門閥貴族たちの本拠地ガイエスブルク要塞へと進撃するローエングラム最高司令官以下の艦隊には、何と同盟軍のイゼルローン駐留機動艦隊が合流していた。

貴族連合側は

「我らを”賊軍”などと貶(おとし)めながら、叛乱軍を引き入れた。金髪の小僧こそ反逆者だ!」

などと喚いたが、ラインハルトは冷笑して黙殺した………。

 

……。

 

…本拠地ガイエスブルクへの途上に在る拠点の1つ、レンテンベルク要塞。

この要塞の心臓部に繋がる通路に立ち塞がる巨漢に対して、挑戦者が現れた。

同盟軍のイゼルローン要塞防御指揮官ワルター・フォン・シェーンコップ准将である。

 

対峙するトマホークとトマホーク。

「叛乱軍に亡命した若造にしては、この俺と互角に戦えるだと」

格闘は、果てしなく思えた。

 

だがしかし、1瞬の隙を「薔薇の騎士」が見逃さなかった。

倒れ伏す巨漢。

そして其の結果は、残る要塞側の兵士たちの戦意をも打ち砕いた………。

 

……。

 

…惑星ヴェスターラント軌道上。

ブランシュヴァイク公爵が命じた自領への核攻撃に対し、ラインハルトが迷っている間に、本来その指揮下に無いヤン艦隊が動き、派遣されていた特務艦を拿捕していた。

「とんでもないことを進言する参謀長もいたもんだ」

その冷徹さには、ヤンも戦慄していた……。

 

……。

 

…帝国の内乱は、ローエングラム軍の勝利に終わった。

 

陥落後の敵要塞の広間で、勝利の式典が行われた。その会場で…

 

「ローエングラム侯爵、我が主君ブラウンシュヴァイク公爵の讐(かたき)を取らせて頂く」

宣言とともに、ハンドキャノンの引き金を引こうとするアンスバッハ准将。

その瞬間…

 

動けずにいた提督たちの列から1人飛び出し、ラインハルトを庇う様に立ち塞がると同時に、その手元から1筋の光線がキャノンの砲口に吸い込まれた。

広間の中央で轟音と爆煙が起こり、消え去った後には復讐者の姿は跡形も無い。

当然だろう、発射寸前のキャノンの砲口を見事、逆に狙い打ったのだ。

内部の砲弾が誘爆すれば、木っ端微塵(こっぱみじん)だ。

 

未だラインハルトを庇う様に立ち塞がり、ブラスターを構えたままのキルヒアイスに、義眼の参謀長が向き直った。

「キルヒアイス提督。何故、卿は武器を持っている」

冷徹な声が、鞭の様だった。

 

「それは、私の銃ですよ」

その声は、会場の隅に列席していたヤン・ウェンリーだった。

「やはり、あなたの差し金でしたか。

何、会場の入り口で見かけたのでね。

流石に指揮系統の違う私からまで取り上げることが出来なかった様ですので、ちょっと貸してあげたのですよ」

 

「余計なことを」

と言わんばかりの義眼の光と、相変わらず冷徹な表情でヤンに向き直る参謀長。

 

「キルヒアイス提督を侯爵閣下が特別扱いするのを、あなたが快く思っていないのは、うすうす感じていました。

だがしかし、半身ともいうべき友人と、恐らくは姉君を失ったら、侯爵は人間性を失いかねない。

後に残るのは、覇道を進むだけの機械か、ルドルフ大帝の拡大再生産だけだ。

それが、あなたの望みならば…それは、あなたのエゴイズムだ」

 

義眼に何らかの感情を込めながら、冷徹なる参謀長は沈黙していた。

 

「侯爵の進まれる途が、帝国をより好(よ)き方向の未来へと導く様に、そして其れが我が同盟にとっても好き未来であることを願っています」

そこまで言って、ヤンは踵を返し立ち去った。




前話を投稿した後に今話の妄想を思い付き、その結果として全く別の短編と成りました。

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