あ、この世界ではなんかよく分かんないけど、キヴォトスの事は周知されています。
「学園都市キヴォトス・・・?」
「そ。私と紅音の次の赴任先」
黒井と知り合って早数年。
お互いに大学を卒業し、教鞭を取るようになり久しい今日この頃。
つい先日、紅音との婚約を果たしその報告を黒井にしたところ、お祝いがしたいと言われて三人でバーへ飲みに来ている。
「その様子だと、紅音からはまだ聞いていなかったのかい?」
「あはは・・・。婚約したことが嬉しくて、転勤の件がスッポリ頭から抜けてて・・・」
「紅音は本当に彼の事になるとポンコツになるなぁ・・・」
「そこが良いんだろ」
「君も大概だよ・・・」
二人の軽い惚気をカクテルと一緒に飲み流し、転勤の件に話を戻す。
「ふぅ・・・。「学園都市」の名の通り、数千もの学園からなる超巨大都市・・・それがキヴォトスだ。それくらいは君でも知ってるだろう?」
「大学の講義で習ったからな」
「じゃあその都市を運営しているのが、学生達自身だという事も覚えているね?」
「・・・お、おう」
「くっくっくっ・・・!本当に君は、嘘が吐けないね!私はそういう君の純粋さが好きだよ・・・!」
「俺はお前のそういう、いちいち人を小馬鹿にしたようなところが嫌いだよっ!」
「二人とも、昔とは比べられないくらい仲良くなったよねぇ~」
「なってないっ!!」「私たちは親友だからね」
「あ、バーテンさーんっ!注文お願いしまーす!」
「聞けよっ!?」
~閑話休題~
「・・・で?なんで二人が、そのキヴォトスに赴任することになったんだよ?」
「う~ん・・・。それなんだけどね?私たちにもよく分からないというか・・・?」
「なんだよそれ?」
「いや、紅音の言う通りさ。奇妙・・・この一言に尽きる内容だったね」
「どんな理由だったんだ?」
「それがね?向こうの都市を統括している「連邦生徒会」ってところの、生徒会長直々の指名だったの。私たち面識ないのに、不思議だよね?」
「しかも相手方には破格の条件を提示された上に、是が非でも私たちを引き抜きたいという想いがあからさまに出ていてね?だって、実質一国の主たるトップが直々に出向いてきたんだよ?」
「ええ・・・?怪しくないか、それ?」
二人の言葉に不信感しか抱けないヒノワ。
しかし、二人から返ってきた回答は意外なものだった。
「うん・・・でもね?彼女の表情を見ていると、凄く思い詰めているような・・・”助けて”ってずっと叫んでいるような、そんな顔で必死に頼んできたの。あんなの見せられたら、私は彼女の手を取らないなんて選択は選べなかったんだ」
「私も同じだね。今ここで彼女の手を掴まなかったら、私は今後も教師を続けることは出来ないとまで思ったほどだよ」
そう語って聞かせる二人の表情は、正しく生徒を導かんとする・・・”先生”の顔であった。
「だからね?せっかく婚約したばかりで、ヒノワには心配かけちゃうかもだけど、その・・・」
「追いかける」
「え・・・?」
「俺も、直ぐにとはいかないかもだけど・・・二人を追いかけて、キヴォトスへ行く。だから、安心してそっちで俺を待っててくれ」
「ひゅ~♪それって、プロポーズに聞こえるけど~?」
「そのつもりだ」
「え・・・あぅ・・・うぅっ!ヒノワ~~~っ!」
「おっと!」
突然のプロポーズに感極まってヒノワに抱きつく紅音。
それを受け止め、頭を撫でてやる。
「私、待ってるから!契と一緒に、ヒノワのことずっと待ってるからねっ!」
「ずっとは待たせないよ・・・。なるべく早く向かいに行く。だからそれまで、紅音のことを頼んだぞ?・・・契」
「っ!!・・・初めて名前で呼んでくれたね?任せてくれ、君のフィアンセは命に代えても守り通すさ」
「頼んだぜ?・・・親友」
「任せな、親友」
コツン、と拳を合わせて契りを交わす。
「よしっ!今日は朝まで飲むぞ~!」
「ま、たまには羽目を外すのも悪くないよね♪」
「学生の時以来のオールだ~!」
そうして、これからも続いていくであろう幸せを噛み締めながら宣言通り朝まで飲み明かした。
それから数日後、紅音と契はキヴォトスへと赴任していった。
距離は離れても、二人とは毎日連絡を取り合い、お互いの近況を報告し合っていた。
そうやって時は過ぎていき、やっとキヴォトスへ行く目処がたった頃に一通の通知が届いた---
---『青天紅音、黒井契・・・キヴォトスにて殉職』
---笑顔で再会を誓ったあの日から、ちょうど一年後の事だった。
序盤が明るければ明るいほど、曇るって知らない誰かが言ってました!!