『三好左京大夫になりましたが先が見えないので朽木と手を結びたい』   作:零戦

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これにて完結


後編3

 

 

 

 

 

 

 重存は義輝公を京から追い出す事を決断した。重存は直ぐに一族の冬康や康長、三好三人衆に松永兄弟らを飯盛山城に呼び出した。

 

「義輝を京から追い出す」

「殿、追い出すにしても何処へ……?」

「関東管領のところに行ってもらう。朽木を介して関東管領に文を出そうと思う」

「重存殿、義輝公を弑逆はせぬのか?」

『………………』

 

 そう言ったのは冬康だった。冬康の言葉は場の雰囲気を重くするが重存は首を振った。

 

「あくまでも将軍の殺しはせぬ」

「しかしッ」

「だが……配下は別だ」

 

 冬康の言葉に重存はそう告げる。

 

「大舘陸奥守晴光だけは何としても首を刎ね、伯父上の墓石に添える必要がある」

 

 重存の言葉に全員が頷く。それは冬康も同等であり、そこだけは満場一致であった。

 

「配下、討たれれば剣豪将軍も何かと動く事は出来ない。彼は越後で暮らしてもらう」

「ですが殿、代わりの将軍は誰にやってもらうのですか?」

「義輝公の弟君のどちらかだな。二人は取り敢えず保護して代わりの将軍をやってもらうか話をするしかあるまい(まぁ義昭はどっかのタイミングで殺すがな)」

 

 自身の死亡フラグである義昭ーー覚慶は絶対にヤル(抹殺)と決めている重存である。

 

「しかし……行うにしても密かに兵を集める必要があります。何かの名目があれば良いのですが……」

「紀伊に逃げた残存畠山討伐は如何ですか? 紀伊を攻略する名目なら河内と和泉に兵を集める事は可能です。その一部の戦力で京周辺に配置すれば良いでしょう。朝廷が何かと言ってきたら丹波からの侵攻の節有りしと言えば朝廷もそれ以上は言わずなか黙るでしょう」

「成る程、畠山討伐の名目か……」

 

 三好三人衆の岩成友通がそう具申し、他の者達も納得している様子を見せていた。

 

「良し、友通の案を採用する。長逸の大叔父上と久秀に宗勝は俺と共に京に上る」

「承知仕りました」

「承知ッ」

「畠山討伐として政康と友通は二万程の兵力で若江城で待機」

「承知」

「冬康の叔父上と康長の大叔父上は平島公方のところに赴き、義親様の将軍就任への意向を確認してもらいたい。これはかなりの重要なお役目でござる。義親様がその気であれば我等も将軍宣下もやりやすいでしょう」

「……成る程。確かに重要な役目だな」

 

 重存の言葉に嬉しそうに冬康は頷く。恐らくは重要な役割を与えられたと知って嬉しいのだろう。なお、康長は重存の言葉を直ぐに理解した。康長を指名したのは冬康の動向を監視する為であったのだ。念の為、康長は重存に視線を向けると視線に気付いた重存は軽く頭を下げ康長は確信の笑みを浮かべるのである。

 斯くして三好家は長慶の仇を討つ為に義輝を追い出す事になる。重存が書いた書状(事情説明)は直ぐに塩津浜城の基綱のところに向かうのである。

 

(そりゃ三好家はキレるよな〜。俺ら(朽木)もそうなったら絶対にそうするな)

 

 重存からの書状を見ながら基綱は内心、溜め息を吐く。書状には朽木経由で義輝を逃がすのでそのまま越後に届けてもらいたいと記されていた。越後の上杉にも話はしているようで上杉も北条を討つ大義名分が出来たと喜んで大急ぎで義輝用の館を作っているらしい。

 

「信九郎殿、重存殿に伝えてくれ。この件に関しては委細承知したと」

「ハッありがとうございます」

「なに、我々も幕臣には煮え湯を飲まされているのでな。むしろ消えてくれるなら好都合と言うものよ」

 

 黒い笑みを浮かべる基綱に信九郎は頭を下げるのである。そして障害が無くなったとばかりに三好家は内密な作戦を開始する。

 

「しょ、しょ、将軍を襲うじゃと!?」

「落ち着いて下され御爺様。将軍は生きてもらいます。幕臣は討ちますがね」

「そ、そ、それはそうじゃがの……」

 

 重存は母方の祖父である九条稙通と話をしていた。

 

「そ、それで重存殿はワシにどのような用を……?」

「はい。近衛殿に情報を流して朝廷からの援護を頂きたいのです」

「朝廷からの援護を?」

「はい。義輝を万が一討ってしまった場合、任命責任がある朝廷から三好家追討令があるやもしれません。そこで関白の近衛殿に対し密かに二条御所を襲撃する日を伝え、朝廷の混乱を最小限にしてもらいたいのです」

「な、成る程。確かに任命責任とまでされたら麿や近衛殿にも被害が及ぶやもしれぬ……」

「はい。無論、近衛殿の信用を得るためにも近衛殿の妹君の保護を致します」

「ウム、それが良かろうの。重存殿、朝廷の事は麿に任せるでおじゃ」

 

 重存の言葉に稙通は頷き、稙通は直ぐに近衛前久と話をしたのである。前久も妹の保護が出来るならと三好家の行動を事実上黙認したのであった。そして近衛は更に一芝居を打ち、この襲撃情報を義輝にも流したのである。

 義輝は義兄からの襲撃情報に驚きつつも三好が本気で二条御所に攻めるなら逃げるのもやむを得ないとした。

 その為、義輝は逃げ出すのを襲撃前日としたのである。それを重存が知ったのは襲撃前日だったが、それはさておき、永禄八年1月18日。三好家は全ての準備を整えたのである。

 

「大丈夫なのかしら?」

「まぁ……何とかなるさ」

 

 雪姫の言葉に重存はそう答える。雪姫の腹はふっくらと膨れていた。雪姫は重存の子を宿していたのだ。雪姫のおめでたは三好家は元より伊勢北畠家も喜んでおり雪姫に土産を持って来たりしていた。

 

「将軍を追い出すんだもの。何かしらの事は起きるんじゃないの」

「もう、虎ったら……」

 

 女中から側室へと変身を遂げた次郎法師は肩を竦めつつも重存に膝を貸して膝枕をさせていた。雪姫の懐妊後、雪姫は次郎法師を呼び側室になる事を要請した。最初は拒否していた次郎法師だが雪姫から「井伊家再興とかはしないのかしら?」等々説得され、最終的には重存を加えた三人での初夜をしたりして結局は重存と共に歩む事を決める次郎法師である。

 なお、側室に当たり虎姫として名を変え重存との交渉により男子は三好家の分家として井伊家を再興し娘は三好家の娘として育成する事で合意するのである。

 

「でも……勝てるからやるんでしょ? なら良いじゃない。私達は殿が帰ってくる場所にいればいいのよ」

「……素直じゃないわね」

「フン」

(……何としても守らないとな……)

 

 笑みを浮かべる雪姫に頬を赤く染めつつ視線を逸らす虎姫である。そんな二人に重存はそう誓うのである。そして1月20日、重存の軍勢約1万は密かに飯盛山城に集まり夜半に飯盛山城を出陣し一路京へ目指すのである。

 翌朝、軍勢は京の二条御所を包囲する事に成功し固く閉じる正門に対し訴訟の儀有りと伝え門が開かれたと同時に待機していた鉄砲隊が次々と射撃を開始する。

 

「弓隊、火矢を放てェ!!」

 

 鉄砲隊の射撃後に弓隊に火矢を放たせ火事を起こさせる。

 

「女は構うな!! 歯向かう者は遠慮無く斬り捨てろ!! 幕臣と義輝公は必ず捕らえろ!!」

 

 義輝公は将軍の間で幾多の名刀を畳に刺し応戦していた。しかし、別室で引き剥がした畳の盾により太刀を取られそのまま押さえつけられ捕縛されるのである。他にも幕臣達も次々と捕縛されるも三淵大和守藤英や細川兵部大輔藤孝等は逃げ遂せる事に成功していた。

 

「三淵や細川がいないのは?」

「……前日に知らせて逃がした。余も朽木に逃げようとしたが……大舘陸奥守等に反対されたから仕方なく戻ったのじゃ」

 

 捕縛され重存の前に引っ立てられた義輝はそう答える。

 

「それで、頸を三条河原に晒すのか?」

「晒してどうする? 俺達三好家の目的は大舘陸奥守ら貴様の取り巻きを討つだけ。正直、将軍の命等どうでも良い」

「ど、どうでも良い……ッ」

 

 肩を竦める重存に義輝は驚愕の表情を浮かべる。

 

「伯父を貴様の取り巻きによって殺されたのだ。伯父の墓に大舘陸奥守らの頸を供えねば我等三好家は末代までの恥だ!!」

「……………」

 

 重存の言葉に義輝は何も言えなかった。義輝も長慶と義興が殺されたのがまさか自身の取り巻きからの指示とは気付けなかったのだ。

 

「だがしかし……」

「ッ」

 

 重存は脇差を抜き、義輝の髷を切り落とす。

 

「命は取らぬが髷は取り、三条河原で晒してやる。さぁ、さっさと京を離れろ。越前までは俺の兵が貴様や貴様の家族を護衛してやる。その後は上杉の兵が来る」

「上杉!? まさか上杉が絡んでいると申すのか!!」

「当たり前だ。貴様を殺さない方法は上杉に送るしかないからな」

 

 上杉も将軍を追い出すのは難色を示したが上杉に送る事で合意したから実現出来た事だ。なお、朽木に送る案は基綱が嫌ったので無くなっている。

 

「……後悔するかもしれんぞ?」

「上洛は出来んと思うがな……やってみろ」

 

 そう言って所蔵していた太刀等に渡し義輝を馬に乗せて行かそうとするが、義輝は太刀の一振りを重存に投げた。

 

「余を京から追い出す褒美じゃ!! 有り難く受け取れ!!」

「そいつは御丁寧にどうも」

 

 そう言って義輝は生母や正室、側室等と共に京を離れ近江経由で越後に向かうのである。ちなみに義輝から褒美として貰ったのは『三日月宗近』である。

 

「さて……余興はこれまでだ。本番といこうか」

「御意」

 

 重存の言葉に長逸は頷く。その後、捕縛された幕臣達は問答無用で頸を刎ねられ三条河原にその頸が晒されたのである。

 

「これで伯父上らも安堵するだろうな」

 

 重存の言葉に長逸や康長、三好家の者達は感涙するのである……が、数日後に重存らが驚く報告が舞い込んできた。

 

「何!? 覚慶が興福寺から逃走したと!?」

「ぎ、御意。どうやら、逃げていた三淵や細川らの生き残った幕臣達が手引きした模様です」

(馬鹿な、逃げるにしても何処に行く気だ……)

 

 報告を聞きながら重存は覚慶を殺さなかった事を後悔しつつ処置を行うのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ基綱殿。どう思う?」

「難しいなぁ……」

 

 将軍追い出す事件ーー通称『永禄の変』から二月が経っていた。重存と朽木基綱は清水山城の櫓にて琵琶湖ーー淡海乃海の景色を見ていた。三好家と朽木家は同盟締結を公表した事で畿内等では大きく揺れていた。

 朝廷は飛鳥井家や九条家等の政治工作により義輝には同情しつつも幕府のグダグダには付き合いきれないとし「畿内の安定」を三好家と朽木家に要請するがこの要請に六角輝頼が反発したりして朽木と六角の睨み合いが続いたりする。

 また、行方を眩ませていた覚慶と三淵達の幕臣達は何と尾張にその姿を現し尾張の織田信長は覚慶らを保護し三好家討伐を目標に上洛しようとしていたりする。(なお、肝心の美濃はまだ攻略出来ず、長島も一向衆が騒いだりしている)

 

「取り敢えず、俺達が手を結ぶ事で何とかの安定は出来るだろうな」

「だな。それで朽木家は……」

「あぁ……越前が厄介だから北を目指す」

「分かった。六角の動きは此方も抑えるようにする」

「助かるよほんと……代わりに交易は強めるよ」

「めちゃくちゃ助かる……」

 

 そんな事を話す二人であるがその表情はどちらも明るかった。二人にしてみれば、二人は未来を知る者であり未来の事で話が咲き誇る時もある。だからこそ二人は仲が良くなっていた。

 

「取り敢えずは……」

「あぁ」

『互いに頑張ろう』

 

 そう言って二人は頷き合い笑い合うのであった。

 

 

 

 

 




取り敢えずは三好家の滅亡未来は回避出来たかなと。
まぁまだ不穏分子はいますけどね(義昭とか義昭とか義昭とか)
深くは考えてはいませんが、この後は三好家と朽木家は協力して天下統一の事業を行っていくでしょう。


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