【完結】空飛ぶ雛と飛べない鳥~ヒナの親友だった少女が狂い彼女の敵になって壊れる話~   作:詠符音黎

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23.オリジナルキャスト再結集

 ゲヘナ学園で先生と別れた私は、己の目的であるかつて共に雷帝を失脚させるために手を組んだ仲間と再び手を組むために動き始める。

 あのとき、中核となったメンバーは()()()()()()()

 その一人がいる場所は現在の万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)だった。

 彼女とはこの前のアビドスでの騒ぎにおいても『雷帝の遺産』の一つである列車砲シェマタを潰すために手を組んだ。つまり、今回も間違いなく手を貸してくれる生徒だ。

 彼女は今、万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)にある密談用の個室にて、私の前に偉そうに腕と足を組んで座っている。

 

「……という訳なの。手を貸してくれるわね、マコト」

 

 万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)議長、羽沼(はぬま)マコト。

 普段は犬猿の仲である私達だが、『雷帝の遺産』に関してだけは対立することなく協力する関係性だ。

 

「……フン、わざわざお前が訪ねてきて何かと思えば」

 

 言葉にはトゲがあって、表情はとても冷たい。

 だけれど、むしろマコトはこういうときの方が頼れるのを私は知っていた。

 

「相違はない。アレの残滓など一欠片もこのキヴォトスに残す気などないからな」

 

 そして彼女は当然の事だと吐き捨てるように言った。

 普段の甘さや抜けている雰囲気は、一切感じられない。これで普段もこの十分の一でいいから真面目にやって風紀委員会にちょっかいを出さずにいてくれたらいいんだけれど……とは思うが、この場では口に出さないでおいた。

 

「それでだけれど――」

「――大丈夫だ、分かっている。ゲヘナ内外における情報統制、及びに各校との政治的調整だろう? 任せておけ、ロクに情報は漏らさないし他校にも下手な手出しはさせん」

 

 ……本当に、この欠片程度でもいいから普段からしっかりして欲しいのだけれど。

 なぜこれで普段はああなのかちょっと理解に苦しむ。

 

「それと……クイナの事なのなんだけど……彼女の事もできるだけ、許してあげて欲しいの」

「……ほう?」

 

 マコトが興味深そうに目を開いて答えた。

 私は彼女が待っているだろう理由をなんとか続ける。

 

「彼女もまた『雷帝の遺産』の被害者でもあるから、情状酌量の余地が……いえ、違うわね。ここで取り繕っても、あなたにはバレるでしょうね」

 

 私は少し泳がせてしまっていた視線をしっかりとマコトに向ける。

 

「…………」

 

 どんな事を考えているのかは分からないが、マコトはただ黙って私の事を見据えているだけだった。

 私は、さっきとは打って変わってはっきりとした声で彼女に告げる。

 

「クイナは私の友達なの。だから彼女を救い出して、また友達に戻りたい。そのためならあなた達にいくら借りを作ろうと、私は構わないわ」

 

 きっとこれは風紀委員会にとっては大きな痛手となり弱みとなる発言だ。

 私達を敵視している万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)……というより、マコトにとっては付け入る恰好の隙だ。

 だが、それでも私は彼女を守りたかった。

 きっとクイナが聞いたらまた自分が守られる立場であることに不満を口にするだろうが、それでも私は“彼女を守る”というエゴを貫き通すと先生と話して決めたんだ。

 

「……なるほど」

 

 マコトがそっと頬を人差し指で叩いて言う。

 静寂の中で彼女は何回かそうした後、ふいに口を開いた。

 

「いいだろう。元々お前ら風紀委員会が裁量を持つ部分でもあるし、私からは何も言う気はない」

 

 彼女の回答に、私は驚き目を見開いた。

 てっきり、無茶な交換条件を提示されるものとばかり思っていたから。

 

「……い、いいの?」

「なんだ? 不服か?」

「いえ……そういうわけじゃ……」

「いいか勘違いするな。お前の気持ちを慮っての事ではない。地羽クイナはあくまで一般生徒、我々万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)の統治の恩恵を受ける大切な有権者の一人だ。故に情報統制や各校との調整もそこを考慮して行う。統治者として当然の行いだ」

 

 彼女の言葉に、私は大きく安堵する。

 マコトは権威欲はとんでもないが暴君ではない。そこに関しては元々分別があると思っているし面倒な政治は彼女に任せればいいと思えている根拠でもある。

 とはいえ、こんなにはっきりと答えが返ってくるとは思えなくて、ゆえに私は驚いたのだ。

 

「さて、話は終わりか? なら早くお前は次の者の場所へ行くといい。おそらく、()()()()()()()のところに行くのだろう? お前とこれ以上二人っきりで同じ空気など吸いたくはないからな」

「そうね、そうさせてもらうわ。彼女らなきっとクイナの居場所を一週間以内に見つけ出してくれるだろうから」

 

 私達はそうして個室を出る。

 数歩先を歩いて部屋の扉を開いたのはマコトだった。

 

「マコト先輩ーっ! 見て見てーっ! イブキでっかいバケツプリン作ったのー!」

 

 すると、直後に黄色く可愛らしい声が響いてくる。

 マコト達が猫可愛がりしている万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)の一人、丹花(たんが)イブキだった。

 

「なん……だと!? イロハ! サツキ! チアキ! 分かっているな!?」

 

 瞬間、マコトはいつものマコトの顔に戻った。

 

「ええもちろんですとも先輩。すでにバケツプリンパーティーの準備はできています」

「イブキの真心がこもった初めてのバケツプリンよ! 今日をゲヘナの記念日にするべきね!」

「記憶を残しまくりますね! 既に撮りまくったけどまだまだいくらでも写真を撮りますよ!」

 

 一気に騒がしく明るいお祭り騒ぎになった事に、私は思わず苦笑してしまう。

 

「……まったく、どっちが本当の顔なのやら。やっぱり狸ね」

 

 私はそんな事をこっそりと呟きながら万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)の部室を抜け出す。

 それはそれとしてあの感じだとまた面倒事になりそうだったので私はこっそりとアコに対処を頼んだ上で学園を出ていった。

 

 

 

   ◇◆◇◆◇

 

 

 ゲヘナ学園を離れて少し。

 私はゲヘナ自治区において中央からは少し離れているけれどまあまあ賑わっていると言える場所にあるテナントビルに来ていた。

 そこの一室に、私が会いたい人物はいた。

 

「なるほど……今はまあまあいいところに事務所を置いているのね」

 

 彼女らの事務所は結構場所を変えるからわりとこういうとき困るなと思いながらも、私は扉をノックする。

 

「はーい、今出るねーっ!」

 

 すると、朗らかな声が聞こえてきてすぐさま扉が開かれた。

 

「なになに? 依頼か――えっ?」

 

 扉を開いたのは彼女が今所属している企業、便利屋68の一人である浅黄(あさぎ)ムツキだった。

 彼女は笑顔のまま凍りついているように止まってしまっていた。

 

「あの、入りたいんだけど……」

「……アルちゃーん! 大変だーっ! 風紀委員長がついにアルちゃんを()りに来たよーっ!」

「えっ? 何を言って……って本当に空崎ヒナーーーーーーーーーーっ!?!?! な、なんでよーーーーーーーーーっ!?! 私最近は何もやってないわよーーーーーーーっ!?!?!?」

「ア、アル様を殺させたりなんかしませんっ……! わっ、私が命に代えても守りますっ……!」

 

 ムツキに続いて便利屋の社長をやっている陸八魔(りくはちま)アルや同チームの伊草ハルカがそれはもう大騒ぎを始めてしまう。

 というか、浅黄ムツキに関しては初見のびっくりはともかくその後においてはこれ、私はそういうつもりはないと分かってるのにあえて騒ぎ立てたっぽいわね……。

 

「はぁ……あの、落ち着いてくれるかしら……?」

 

 私は軽く頭を抱えながらため息をついてしまう。

 今回来たのは彼女らではなく、ただ一人が目的なのだけれど……。

 

「ちょっと……何事?」

 

 と、そんなとき事務所の奥から私の目当ての相手が出てくる。

 首にかかっているヘッドホンから、どうやら一人趣味の音楽を聞いていたようだった。

 彼女もまた、私の顔を見てギョッとする。

 

「えっ……? なんで……?」

「……今日はあなたに会いに来たのよ。……カヨコ()()

 

 私は含みをもたせるためにわざとらしく言った。

 すると今度はカヨコが片手で頭を抱えて「はぁ~~~~……!」と大きくため息をついた。

 

「え? カヨコ? どういうこと?」

 

 一方でまったく事情が理解できていない陸八魔アルが素っ頓狂な顔で聞いた。

 他二人も頭にクエスチョンマークが浮いているのが見える。

 対してカヨコはだいぶ面倒そうな顔をしながら私を見た後、他三人を見た。

 

「ごめん社長、私ヒナと二人っきりで少し話してくる。それでもしかしたら、しばらく個人行動を取るかもだから」

「……えっ、えええっ!? どういうこと!? 大丈夫なの!?」

「大丈夫だよ問題ない。少なくとも無理強いされるわけじゃないってのは保証するから」

「ええ、私も彼女に無茶はさせないと誓うわ陸八魔アル。あなた達の大事な課長を、取って食いはしないわよ」

 

 こうして私達は当然ながら事情を理解できていない便利屋メンバーを置いて外に出ていった。

 そして二人で近くの小さな喫茶店に入る。

 中には客は少なく、二人だけの話にはちょうどよかった。私達は店の中から外が見えるガラスに面した席に座る。

 昔からこうして周囲を伺うために二人でこういう位置取りをしたものだ。懐かしい。

 

「……社長達の前で、あの呼び方は止めてよ」

 

 すると、席代として頼んだコーヒーが届いた直後にカヨコは怖い顔で言ってきた。

 元々表情に迫力のある人だけれど、それを踏まえても怒っているのが分かった。

 

「あら。申し訳なかったですね、()()

「……訂正。二人っきりでも止めて欲しいな」

 

 ちょっと悪戯心が湧いて私が言うと、彼女はとても苦々しい顔をする。

 カヨコの態度は当然だろう。彼女は風紀委員会の情報部にいた過去を忘れたい記憶として扱っている。なんなら当時からして彼女が楽しそうにしていた姿なんて見た事はなかったし、明らかに今の便利屋にいてからの方が楽しそうだ。

 とはいえ、私はあまりそこに配慮する気もないのだけれど。

 

「そうね……でも、ああ言ったほうが私の意図はすぐに伝わるでしょう?」

「それはまあ、そうだけどさ……社長達には伝わらない話だから暗号としても間違いないし。にしても、そうか……わざわざ今のヒナが私に頼るぐらいのブツが出てきたわけだ」

 

 カヨコが表情をすっと真面目なものに変えて両肘をテーブルに立てて口元で手を組んで言った。

 彼女が情報部長だったころにしばしば見せていた、部下を威圧するときの姿だ。これもまた懐かしい。

 

「ええ。そして……それに手を染め、今なお被害にあっているのは私の親友……地羽クイナよ」

「っ!? ……そうか、なるほど。彼女が……」

 

 カヨコは更に険しい顔になる。どうやらクイナに関しては後ろめたい気持ちが彼女にもあるのだろうと感じた。

 彼女が情報部長だった頃は徹底的に冷徹な仮面で感情を殺していたから分からなかったけれど、今はだいぶ分かりやすくなったなと思った。

 ……きっと、それだけ今の生活が良いものなんだろう。

 

「詳しくお願い」

「ええ。……カヨコ、あなたはこれに見覚えはあるかしら?」

 

 私はそう言って懐から写真を取り出し彼女に見せる。

 それはクイナがあのとき投げ捨てた空のボンベだった。緑色でゲヘナのマークが刻まれているソレの映った写真をカヨコは手に取る。そしてそれを深く眉間に皺を寄せてじっくりと見て、少ししてから静かに首を横に振った。

 

「……いや、ごめん。これは私も知らないヤツだ。間違いなく『雷帝の遺産』だとは分かるけれど……彼女がコレを?」

「ええ……どうやらこれを使うと身体能力などが異常に強化されるらしいの。私の集めた情報、そして実際にこの目で見た感覚ではキヴォトスの生徒の範疇ですら異常な筋力、速度、防御力、そして回復能力を有していたわ。ただ、同時に明確に精神に異常をきたしていた」

「なるほど……あの『雷帝』が作りそうな発明だ。反吐が出るね」

 

 カヨコは今度はちゃんと心と釣り合っているであろう怖い表情をしながらも、写真片手に懐に手を伸ばしていた。

 私はそれに少し苦笑いをしながら「はぁ……」とため息をついてしまう。

 

「……別に燃やす必要はない写真よ。それに、今はライターなんて持ち歩いてないのでしょう?」

「あ……しまった、状況的に久々に癖が出たか……」

 

 自らに呆れたような表情になるカヨコ。

 まあ確かに私も昔に戻ったような気持ちにふとなりはしたが、少し不憫だなと今の彼女を見て思った。

 

「まあそれはそれとして……他にも私に手伝って欲しい事があるんだよね?」

「ええ、あるわ。クイナの居場所をなるべく早く特定して欲しいの。じゃないと、彼女は一週間後にゲヘナ全土で破壊行為を行うと宣言したわ」

「なるほど……。分かった、ただ今の私の情報網は当然だけど昔と比べたらだいぶ貧弱になったから、すぐには出ないよ」

「何日で出せると思う?」

「そうだね……四日はかかっちゃうのは覚悟して欲しい」

 

 確固たる根拠が感じられる声色で、彼女は言った。

 さすが私の元上司であり、諜報における師匠だ。情報部としてのネットワークを使わずにそうと言えるのは見事だと私は思った。

 

「分かったわ。()()()()()()()ね」

 

 彼女が情報の取得において日数を提示するときはだいたい最大日数で言うのを私は知っていた。

 常にリスクを考え、しかし現在持つ手札で明確に日数を示す。

 これがゲヘナが混迷を極めていた時代に戦い抜いた情報部長、鬼方カヨコなのだ。

 

「……当たり前だけど、待つ気はないんだ」

「ええ。彼女に大量破壊の罪なんて背負わせる気はないもの。それに奇襲をすれば勝率は上がる。情報戦を踏まえた上での戦いの基本よ」

「うん、そうだね……でも『友達のため』が最初に来るんだ……なるほどね」

 

 なんだかカヨコが急に柔らかい笑みになった気がする。

 これでも怖い方な気はするんだけれど、少なくとも昔はこんな笑い方はしない人だったからちょっとよく分からない良さも感じてしまうぐらいだ。

 

「とはいえ、問題はこの『雷帝の遺産』についての詳細を知らないからいざ戦うとなったときの対処法や彼女を元に戻す方法がはっきりしないことなんだけれど……」

「……そこは、やっぱり()()が一番詳しいんじゃないかな」

「ええそうね……()()が知らなかったらもうお手上げになってしまうわ」

 

 私達は同時にある生徒を頭に浮かべる。

 ()()は間違いなく当時の中核メンバーで一番『雷帝』に近く、様々な事を知っていたし、『雷帝』を失脚させるにおいて欠かせない存在だった。

 の、だけれど……。

 

「ただまあ……今、()()はどこにいるかがまず分かっていないのよ」

「あれ、学園にはいないんだ……って、そうか、ある意味それもいつもの事か」

「ええそう、いつもの自由過ぎる行動のさなかでしょうね」

「……大変だね、ヒナも」

「ええ、まあ……」

 

 私達は揃って眉間に皺を寄せた。

 かつて私達の同志であった()()は今、このゲヘナで……いや、下手したらキヴォトスでもトップクラスに自由な子になっていた。

 故に私もかなり苦労をかけられる事になってしまっていて、わりと悩みの種の一人になっている。

 

「じゃあまあ、こっちから呼ぶしかないんじゃないかな。()を撒いて罠を敷いてね」

()を撒いて……ああ、なるほどそういうことね」

 

 私は納得する。カヨコが思っている事がすぐ分かった。

 こういうところはさすが元上司と部下だなという気持ちになった。

 

「まあ、私に任せておいてよ。ヒナは調べるのはともかく、自分から情報を流すような欺瞞作戦の類は下手くそだったしね。ここは元情報部長の腕の見せ所、かな」

 

 カヨコはそう言ってわずかに微笑みながらスマホを取り出して軽く私に振ってみせる。

 人によっては気づかないぐらいの変化であったが、私には大きな変化に感じられた。

 

「ええ……頼みましたよ、()情報部長」

 

 私もまた、彼女に微笑み返しながらそう言ったのだった。

 

 

   ◇◆◇◆◇

 

 

 カヨコの撒いた餌は、その日の夜にさっそく効果を出した。

 ゲヘナ学園の近く、かつ人通りの少ない道に()()が興味を強く持つだろう情報がSNSに流されたのだ。

 さらにその信憑性を増しかつ一般生徒を巻き込まないためにこちらの風紀委員会の生徒を変装させてその場所に詰めさせている。

 これにより()()の目的としているモノが賑わっているように見せ、かつ一般生徒が入り込めないように人の壁を作ったわけだ。

 

 ――……相変わらずそっちで本気を出すと怖いわね、私の元上司は。

 

 改めて私はカヨコの手腕をしみじみと感じていた。

 と、そんなときだった。

 私が目的としていた()()()が聞こえてきたのだ。

 

「えっとここで良かったのー? 伝説の屋台ラーメンの場所ってー?」

「はい、SNSによると店長が気分でしか出てこず、過去に現れたのはもう十年前にもなるような屋台ラーメンがここに来ているようです。楽しみですね★」

「って、もう凄い人来てるじゃん!? 下手したら売り切れちゃうよ!?」

「落ち着いてくださいな。だからといって割り込みなどもってのほか、美食への冒涜です。ラーメンとはこの並ぶ時間もまた美食へと繋がる作法……焦らず、ただその味への期待を膨らませるスパイスで――」

「――確保開始」

 

 瞬間、私は用意していた捕縛ワイヤーを発射するワイヤーガンを放つ。

 ちなみにこれは先生がミレニアムのエンジニア部に作ってもらったものらしい。何故か自爆機能と5G受信機能がついているらしいが無視する事にした。

 

「あらっ? あららららっ?」

 

 ワイヤーガンは見事に目標に命中、()()をぐるぐる巻きにした。

 瞬間、四人共これは罠だと気づく。

 

「あっ、やばいっ!? あそこにいるの風紀委員長じゃん!? ごめん会長! お先っ!」

「ふふっ、これはまた珍しいパターンですね★ ではでは~」

「あーっ! 待ってよみんなーっ! せっかく一緒に逃げられるのに置いてかないでよぉーっ!」

 

 直後、()()を置いて三人は即座に逃走していった。

 前々から思っているけれど、こういうとき妙にドライなの凄いわよね彼女ら……。

 

「あらまあ、まさか初手で捕縛されてしまうとは。しかし今回はまだ美食にすらありついていないのですが、どういう事でしょうかヒナさん?」

 

 一方で彼女はワイヤーでぐるぐるの簀巻き状態なのに妙に余裕の態度で私に話しかけてきた。

 それに対し、私は彼女の元に近寄り、しゃがみワイヤーを切断した。

 

「……あら? これは一体……」

「今回、私はあなたと話したかったのよ。元万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)議員であり、一年でありながら『雷帝』の側近の一人だった、黒舘ハルナにね」

 

 私の言葉に元万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)議員でありかつての同志、そして今はキヴォトス屈指のテロリストの一人であるハルナは、変わらない笑みを浮かべながら髪を手でかきあげた。

 

「なるほど、そういうことですか……。ええ、いいでしょう。ではお連れくださいますか? 集まっているのでしょう? 他のメンバーも。詳しい話はそちらでもいいですよね?」

 

 ハルナが未だに肩にかけている万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)のコートが一陣の夜風にはためく。

 

「ええ、よろしく頼むわ。マコトもカヨコも、既に向かっているだろうから」

 

 こうして、私はかつての面々を集結させる事となった。

 すべては私の親友を救うため。

 そのためなら、私はなんだって頼ると決めたのだ。

 




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