【完結】空飛ぶ雛と飛べない鳥~ヒナの親友だった少女が狂い彼女の敵になって壊れる話~ 作:詠符音黎
「なるほど、四人がそうだったんだね……」
ヒナが過去に『雷帝』と呼ばれる暴君を打ち倒したときのメインメンバーを集めると言い、みんなの了承が取れたという事なので私はゲヘナ学園にあるとある空き教室にやって来ていた。
そこで顔を合わせた面子――向かい合わせてくっつけた四つの学習机を中心にそれを囲むように椅子に座るヒナ、マコト、カヨコ、ハルナに、私は顎を指で掴みながら軽く驚く。
「まあマコトは列車砲の一件があったから知ってたけれど、まさかカヨコと、そしてハルナもだなんて……」
「うん……これに関しては普通に秘密にしてたからね。先生ならそんなことしないと思うけれど、社長達にも内緒でお願い」
「うんもちろん。誰だって触れられたくない過去ぐらいあるからね」
「あら、もしや先生にもその手の過去がおありで? ふふふ、どんなに腕の良い料理人も過去の失敗や試行錯誤があってこそ……美食への道はすべての求道に通ずる、というわけですね」
「……ハルナは相変わらずだね」
彼女のひょうひょうとした態度に私は思わず苦笑する。
きっとハルナにもいろいろとあったんだろうけど、それをまったく気にしていないどころかすぐ美食に絡めていくその姿勢はなんだかホッとするものがあった。
「まあ私達の過去はいい。それよりも先生、今はこれからの未来……地羽クイナの現状への対処について話し合うのだろう?」
マコトが落ち着いた様子で私に言ってきた。
す、すごい……この前もチラっと見たけれどあのマコトがこんなにも冷静かつ重々しいオーラを放っているなんて……。
この集まりの中で一番いつもと違う彼女の姿に、私は思わず息を呑む。
「……うん、そうだね。ヒナ、とりあえず指針を改めて教えてもらっていいかな?」
「分かったわ先生。まず、私達の目的は地羽クイナを『雷帝の遺産』に侵されている状況から助け出し、かつゲヘナ内外においても事後の悪影響を残さない事よ」
ヒナは立ち上がり、くっつけた机の上に紙の地図を広げる。
それは紙にプリントアウトされたゲヘナの地図とブラックマーケットの地図、その他に今回の件に関わっているであろういくつかの資料だった。
地図にはそれぞれ赤いマジックで印がつけてある。
「今回ゲヘナで襲撃された場所はここで、そしてブラックマーケットでクイナが通り魔的な犯行を行ったとされる場所がここ。カヨコ、ここから補足できる情報、そして推測できる事は?」
地図を指さしながら言うヒナの言葉にカヨコが立ち上がり、彼女は青いマジックを持ってそのキャップを外す。
「うん。ゲヘナにクイナが来たのは彼女の言う通り探し物のためでイレギュラーな出現と見るとして、やっぱり今彼女はブラックマーケットに潜伏してると見るのが妥当かな。データから推測される身体能力を鑑みても、この距離この頻度で犯行を行うなら拠点がなければ無理だし」
カヨコはそこから地図に青マジックで数字と線を書き込んでいく。
どうやらそれは犯行時間から想定される移動経路のようだった。そしてある程度書き込むと、今度はブラックマーケットの一定範囲をぐるりと青い丸で囲んだ。
「ざっと今ある情報だと彼女の拠点はおそらくこの圏内。ここからさらに特定するにはもっと情報が必要だからしばらく時間をちょうだい」
「ありがとうカヨコ。マコト、情報統制の方は?」
「はっ、私を誰だと思っている? 案ずるな、イブキとのバケツプリンパーティーが終わってからすぐさま手は回した。不都合な情報はもはや出回る事はなく、トリニティなどの他校に渡る事もない。ただこの情報統制にも期間はあるのは覚えておけ」
「まあバケツプリンパーティー! それはまた素晴らしいものを開いたのですね!」
「ハルナちょっと黙って。で、どれくらい?」
「ざっと十三日と言ったところだ。これ以上は綻びが出る」
「さすが現議長。お見事」
「お前に褒められても何も嬉しくはないがな」
テキパキと話を進める彼女らを私は黙って見ている。
とても頼もしい姿で、彼女らがかつて本当に手を組んで戦っていたことがよく分かる姿だった。
ただこれ、私いるかな……とちょっとだけ思ってしまったけれど、これはちょっとワーカーホリックな考えかもしれないと考えを改めた。
「そして、改めてハルナ……ここからが肝心な話よ。あの『雷帝の遺産』は、一体何?」
ヒナが言うと、みんなの視線がハルナに集中する。
対してハルナは微笑みを絶やさないまますっと立ち上がり、彼女もまた机のそばに立ち寄って、一枚の写真をテーブルの中心に移した。
クイナがあのとき捨てた携帯用で緑色、ゲヘナの校章が入ったガスボンベの写真だ。
「……ベルセルク・ガス。これが今回の騒動の原因です」
「ベルセルク・ガス……」
ヒナがハルナの隣で反芻する。
「はい。効果は皆さんも知っての通り、吸引するだけでその個人をとことん戦うために特化した怪物に変えてしまうガスです。『雷帝の遺産』の中でも個人というものをこれほど侮辱し、貶めるものはないでしょう」
語るハルナの顔は普段とは違いとても真面目な様子だった。
それだけでも彼女の語るベルセルク・ガスが非道で尋常ではない発明だという事が伝わってくる。
「軽々と屋根の上まで飛び上がり、一瞬で十数メートルを詰めることのできる脚力。片手で乗用車を持ち上げられるほどの筋力。距離があれば銃弾どころか対空機関砲の弾をも受け止められる防御力。鋭敏なセンサーのような聴力、視力。本来ならヘイローが壊れるほどの傷ですら瞬時に回復する治癒能力……」
「そうね……それらは彼女の戦闘を記録した映像や証言からも十分伝わってくるわ」
ヒナが重々しい顔で言い、そこからまたハルナに強く視線を向ける。きっと彼女が知りたいのはもっと別の効果……つまり、クイナの精神状態にどんな影響を与えているかなのだろう。
ハルナもそれを当然分かっていて、コクリと頷き話を続ける。
「……そしてベルセルク・ガスと名付けられた一番の理由でもあるのが、身体能力の強化と共に“思考の先鋭化”をもたらす事です」
「思考の……先鋭化?」
聞き返すカヨコにハルナは再度頷く。
「はい。ざっくり説明すると、ガスを吸引した本人が戦闘行為に積極的になるよう思考を極端にするのです。例えば死にたくないと思っていたら、自分の敵を皆殺しにしてしまえば死なないと考え暴れ続ける事になります。そういう風に作ってると、かつて彼女は語っていましたわ」
「なるほど。ゆえに地羽クイナは強さを求めるという目的のために他のあらゆる存在を力で制圧する、となっているわけだな?」
「彼女の発言から類推するにそうかと。ただこの“思考の先鋭化”のミソは理性を失うのではなく、狂化を前提にとことん思考回路が戦闘に特化され戦闘中に合理的な判断を下すようになる事ですわね。判断がつかないのではなく、戦闘に関してはむしろ判断が冴えるのです」
「厄介だね、怪物的な能力だけじゃなく頭の回転も早くなるなんて……本当に戦いのためだけに狂った存在にされてしまう訳か……」
これまでの説明にカヨコが眉間に皺を寄せている。
ヒナもまた目を細めて口元を渋くしていた。
私も彼女らほど表情には出していないが同じ気持ちだった。
あの優しいクイナが、そんな存在になってしまうなんて……。
「……だが、私達が今までその存在を知らなかったということはゲヘナの外で作られ、かつそれでも秘密裏に廃棄された一つでもあるという事だ。それほどの発明でも処分されたということは、当然その効果に見合わぬデメリットがあったのだろう?」
けれども、ハルナの話を聞いている中でマコトだけは一切表情を崩さずに冷静にハルナに質問した。
本当に凄いな今日のマコト……思ったよりもしっかりした子ではあるよね、なんては思っていたけれど、ちょっとこれは知らない顔だ。
もっと彼女の事をちゃんと見てあげたほうがいいのかも。いやいつも彼女が言ってるみたいに
ちょっとそんな脇道に離れた事を考えていると、ハルナもまた普段からは想像がつかない重苦しい表情になった。
それを見て、私達は息を呑む。それほどのデメリットがそのベルセルク・ガスにはあるという事なのだ。
「そうですね……ベルセルク・ガスには二つの致命的欠陥が存在しました。結局それは改善されることはなく、ガスの開発は凍結されたのです。……私の知っているラボは引き払われたはずなのですが、ゲヘナ外部でなお研究を続けていたのでしょうね」
そっと机の上の地図を撫でるハルナ。
彼女のその仕草だけでも、やはり私の知らない彼女の過去はそう軽いものではないと察せられた。
ハルナはそこから少しだけ間を置く。そして、ベルセルク・ガスのデメリットについて話を続けた。
「一つ目のデメリット。それはガスを吸っても能力が強化される成功率がとても低い事でした。動物実験においてガスを吸引した生き物は拒否反応を引き起こし、そのまま死亡。成功率は大まかに計算して〇・〇〇二パーセント程でしかなかったのです」
「れ、〇・〇〇二パーセント……? じゃあクイナは普通なら死ぬはずのそれを吸って、なおかつそんなありえない確率を引いたっていうの……?」
ヒナが青ざめた表情をしている。
私も同じく、言葉を失い口元を手で覆ってしまった。
それほどの低確率なんて、奇跡としかいいようがない。彼女はそれを事故で吸引してああなった? いや、しかしそんな出来すぎた話がありえるのか?
私達がそんな疑問を抱いていると、ハルナはさらに付け足し始める。
「ただ、そこから確率を大きく上げる方法も、ある程度は確認されていたのです。しかし本来ならばガスを投与する側からはそう簡単には操作できない事でもあったのであまり現実的な手法とも見られていなかったのですが」
「それは一体、どういう……」
「……まず、心身共に非常に衰弱状態であること。そして、自己の判断でガスを吸引する事、です」
「……っ!?」
カヨコの質問から出たハルナの言葉に、ヒナと私は驚きを隠せなかった。
ハルナはさらに続ける。
「動物実験は様々な状況を用意し行われました。その中で外傷を大きく与えた個体、仲間の個体が死ぬ姿などを見せストレスを与えた個体、そしてそれらの状況で追い詰め、かつガスへの危機感を植え付けた上で二者択一な状況を作り、そこから自ら摂取しにいった個体。これらに関しての成功率は露骨に上がっていました」
「そんな事が……? 驚いたな……」
「雷帝傘下の科学者チームにとってもその仕組みは謎だったようで。しかし成功率はなんと五十パーセントを越え効果は確実に見られました。ただ肉体的損傷、心的外傷はともかく自己判断の部分がどうしても被験体自体に委ねられる部分だったので不確定要素として強すぎたのです」
彼女の言葉が本当とするなら、ここで一つの可能性が浮上する事になる。
クイナがその危険性を知りながら、自分でガスを吸ったという可能性だ。
おそらく今彼女がいるところはハルナの言う外部に作られたラボで、ガスの危険性を知るための資料を目にする事はできたであろう。
また場所がブラックマーケットならば、非合法な組織がそこを拠点にしてクイナに外傷を与えたとも考えられる。
そして、もう一つの要因である精神の衰弱状態。
これは、きっと――
「――クイナは……私との関係に、ああなる前からずっと、ストレスを抱え込んでいたのね……」
ヒナは胸をぎゅっと握る。あの夜クイナに言われたことが、また心の中で繰り返されているのだろう。
私はそんな彼女の肩に静かに手を置いた。
「……ヒナ、今は顔を上げよう。クイナに謝って話し合うためには……でしょ?」
「………………そうね、ごめんなさい先生、みんな。続けてハルナ」
それなりに間をおいたヒナは呼吸を整え、目をしっかりと開いて言った。
ハルナもまた、真面目な面持ちで頷く。
「了解しました。ではもう一つのデメリットについてです。『雷帝』がベルセルク・ガスを凍結したもう一つの理由……それは例え成功したとしても、その戦闘能力の代償として肉体に極大の負荷がかかる……有り体に言えば、寿命をあっという間に削ってしまうからです」
「っ!?!? じゃあ、クイナが吐血して、ガスを吸ってたのって……!?」
「ベルセルク・ガスの副作用でしょうね。ガスの効果が切れるとそれまでの体への負荷が一気に襲いかかってくる。それを消すためには再度ガスを吸引する必要があり、その過程でまた体に負荷がかかって、最後には死に至る……あれは、そういう代物なのです」
ハルナは「『極めて低い成功率を越えてもあっという間に壊れてしまうのはコストに見合わない』というのが『雷帝』の出した結論でした」とその後に言葉を続ける。すると、これまでの説明を受けたヒナが、わなわなと肩を震わせ始めた。
「……どこまでも、彼女はっ……! いつまで、私達の……!」
歯を食いしばり、見てても分かるぐらいのとんでもない力で手を握りしめるヒナ。
私はそんな彼女の手に、静かに手を合わせた。
「ヒナ……気持ちは分かるけど、落ち着いて。それ以上握ってると、ヒナの手が壊れちゃうよ」
「……先生だって、私の手を握る力、強いわ」
言われて気づく。どうやら私も気持ちが出てしまっていたらしい。
それを生徒の体に味あわせてしまうなんて、さすがにひどいなこれは……と私は反省して手を離した。
「……ごめん、情けない事をしてしまったね」
「いえ……おかげで私も冷静になれたわ。ありがとう」
ヒナが静かな声で答えてくれる。彼女の今の声と顔は、まだ名残りは残っているも落ち着きを取り戻していた。
「ベルセルク・ガスの危険性は分かったわ……じゃあどうやってそれからクイナを救い出せるのかしら。方法は……あるのよね?」
「はい、一つの答えを用意できますわ。中和剤を彼女に撃ち込むのです」
「中和剤? そんなものがあるの?」
カヨコの言葉にハルナは彼女の方を向いて頷く。
「『雷帝』はそこもしっかりと作らせていましたからね。方策としてはクイナさんを戦闘で消耗させ、ガス切れを起こさせたタイミングで中和剤を撃ち込むのが最も成功率が高いでしょう。ただこの作戦には二つの問題があります」
「……現在、我々の手元にその中和剤がない事だな」
「ええ……」
相変わらず冷静な表情のマコトにハルナが苦々しい顔をして返した。
「なんなら化学式も探すところから始めないといけません。ただこれはクイナさんが先日ゲヘナを襲撃した場所を調べれば出てくるかと。きっとあそこは私達が知らなかったラボの一つだったでしょうから。……ただ、彼女がそこで見つけたモノがもう一つの障害となるのですが」
「あの金属のバックパック……なるほど、ベルセルク・ガスを常に吸引するためのものだったのね」
ヒナの言葉で思い出す。確かにあのとき、クイナは金属のバックパックを片手に持っていた。
銀色に輝くそれは彼女が片手で持っている姿を見てもなお重そうで、あのときのクイナが桁外れの力を出していた事が分かる代物でもあった。
「で、それが尋常なく硬いってことだよねつまり」
「ですね。きっとちょっとした対物火器の攻撃ぐらいなら耐えてしまうでしょう」
「まあ、確かにベルセルク・ガスの運用を実際に考えるならそれぐらいのモノになるのだろうが……」
少しばかり今までとは表情を変えて難しい顔になったマコト。
きっと私も彼女と似たような事を考えていると思う。
――そんな硬いとか、さらっととんでもない代物だな……。
なんて事を、多分。
「それについての対処はこれから考えましょう。化学式に関してはマコト、
「あ、それなら心当たりがあるよ。と言っても、さすがにゲヘナの外、具体的には山海経に頼る事になるけれど……」
私は顎に指を置いて悩むヒナにすっと手を上げて言った。
ここでの心当たりというのは、山海経で不老不死の霊薬を開発している生徒、錬丹術研究会の
中和剤がどれほどの薬なのかはまったく想像もつかないけれど、サヤなら多分さっくり作れてしまうだろうという信頼があった。なんせ若返り薬なんて物も作ってしまうレベルなんだからもう目的にしてる不老不死の霊薬以外に作れない薬なんてないだろうし。
ただ、これに関してはゲヘナの外部に話を持っていく事になるから簡単には決断できないだろうね、特にマコトあたりは……。
「私は構わないわ。マコトは?」
「いいだろう。許可する」
「えっ!? 提案した私が聞くのも変だけれど……いいのマコト?」
そんな事を思っていたら二つ返事で返ってきたのでびっくりで、私は思わず聞き返した。
すると、マコトは不敵に笑った。
「ああ、優先すべきは『雷帝の遺産』の脅威の完全なる排除だ。そのためには山海経に一つぐらい借りを作っても惜しくはない。それに先生の紹介なのだろう? なら下手な事にはなるまい。先生が信じてるのなら、私も信じるさ。キキキッ」
私を信じる……そのマコトの言葉が、胸に響く。
やっぱり普段は変な方向に飛びがちだけど、いい子だよなぁマコトって……としみじみする。
なんだか感動してきたな……。
「……な、なんだ先生、その目は」
「いや……さすが、マコトは偉いなぁって……! かっこいいよマコト……!」
「ふ、ふっ……! な、何を当たり前の事を言っている先生。私が偉大な事など太陽が東から昇るくらいに当たり前の事ではないか。しかし私の偉大さに感じ入っているという事は、ついに我らが
「――あ、ごめん。それとこれは別だから」
「なっ……!? キキッ……さすが先生。一時の感情に流されないか……それでこそ私達が求めるシャーレの実力者だな……!」
マコトがいつもの驚き顔になり、いつもの通りに妙な過大評価を始めた。
うーん、これぞマコトだなぁと感心した直後になんかさっきとは別方向にしみじみ安心してしまった。
そしてこんな私達を見てなんだか場の空気も緊張感が薄れてきたようだった。
「まったく……先生は、本当に先生だね」
「ええ。だからこそ、私達はすべてを信じて、任せられるんでしょうね」
「ふふふっ、またすべてが平和になって先生とまた美食を追求したいですわね。なんならみなさんもご一緒にどうです? 過去のよしみで大きな美食への探求を共に行ってみませんか?」
「……い、いや。さすがにそれはちょっと遠慮するかな」
ハルナから目を逸しながらカヨコが呟いていた。
まあハルナの美食への探求と言うと、カヨコは大変な目に巻き込まれてる経験が多いだろうからね……。
「まあ、とりあえずやることは決まったね。じゃあみんな頑張ろうか。そうだね……せっかくだしチーム名とか決めようよ。うん、それがいいと思う!」
私はちょっと燃えてきた勢いでそんな事を言う。
やっぱいいよねチーム名って。かっこいいしロマンもあるしテンションも上がるし。
「チ、チーム名……?」
なんかヒナの反応が悪い気がするけどきっと気のせいだろう。
大事なのは勢いだし! と私はそのまま思いついた名前を言う。
「よーし、じゃあこんなのどうかな……『ゲヘナ雷帝対策委員会』! どう! いい感じじゃない!?」
「…………」「…………」「…………」
「……あ、あれ?」
なんか、ヒナもマコトもハルナも急に黙っちゃったんだけど……しかもなんか、微妙な目線向けてきて……。
「……先生」
と、そんな中で一緒に黙っていたカヨコが口を開いて、私に苦々しい顔を向けて言ってきた。
「安易なパクリって、良くないと思うな」
「これは美食においても言える事なのですが、素直に他を模倣すればいいというものではないと思いますわ」
「……ほっ、ほあああっ……」
「到底大人がしちゃいけない顔と声をしてるわね……」
「私はたまに、先生が分からなくなる……」
カヨコとハルナの辛辣な言葉に続いて、ヒナとマコトの明らかに呆れている言葉がグサリと私の胸を突き刺したのだった。