残光の旗   作:∀キタカタ

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フォン・ブラウン(3)

 ケリィは自分の耳を疑ってから、ウラキの正気を疑った。

「学生時代に、フラナガン機関の公開している資料を読みあさって、アプローチしたことがあるんですよ。サイコミュに」

「お前、何を言っているんだ」

 サイコミュなどという言葉が出て来る、場所ではなかった。俺のガレージではないか、とも思う。脳波や感応波を拾って、兵器の遠隔操縦を可能にするという理論だったが、実戦で公式に使われた記録など殆どない。ソロモン宙域あたりで使われたというが、結局ソロモンは陥ちていたのだし、ケリィもほぼ知らないに等しかった。

「……理屈自体は、そんなに難しくもないんです。勿論、兵器として実際に造るとか開発するとか、そんなものなら、とても手に負えませんけど。それでも、ちょっとしたことなら、自分にもアプローチ出来るんじゃないかって」

「出来たのか?」

「まさか。ちょっとでも深く潜れば、機械いじりってより、科学者の領分だなって分かっただけです」

「ふん。当たり前だ。その話が、何だというのだ」

 ウラキは奇妙に湾曲した、片耳に着けると思しき形の機械を見せてくる。

「フォン・ブラウンの市場で捜したやつで、使えそうなのをバラして、造ってみました。この上からシリコンコーティングすれば、耳には付けやすいと思います。左耳、だけでいいんです」

 放り投げてきた。そんなに繊細な機械では、ないのだろう。他の機器を接続する前提であろう穴が、幾つも開いている。

「……要するに、脳波を拾えばいいって、思いましてね。今だって、義手や義足にはその手の技術は使われていますし、サイコミュなんてご大層な話じゃないですよ。戦場で一つの武器として使おうなんて、そんな大それた真似をするから、脳に負担がかかるし、使える人も限られるってだけで。簡単な日常操作に使えればいいだけです。だから、それらの特許でフラナガン機関が潤うって考えただけでも、別に隠す理由は、ないですから」

 あっさりと何を言っているんだ、とケリィは動揺していた。

 理屈は分かる。フォン・ブラウン市ならば都合のいいパーツの在庫も見つかるだろう。アナハイム社のお膝元なのだ。ただ、理屈と、パーツと、そして技術。更にセンス。そういったものを並び替えて組み上げられるというのは、ケリィには真似の出来ない柔軟な思考だった。

 向いているのだろう、メカニックに。あるいは、開発者に。

 テストパイロットも兼ねられるのならば、更にいい。

 だがそれは軍人の思考ではない、ともケリィは思った。何処か軍人には、上から流れてくるものを待つ、という思考がある。怠惰ではなく、そうすべきなのだ。自ら勝手に組み替えて、自前で用意してしまう、というのは個人では良くても、軍全体の動きを妨げることも多い。

「お前ひょっとして、家の中でこれを作ってたのか?」

「ええ。ちょっと邪魔くさい機械も調整に必要だったので、それもラトーラさんに嫌われてしまった理由なのかもしれません」

「あいつはそんなことぐらいじゃ怒らん。そう見える顔なんだ。……まあいい。それで? 俺に義手でも繋げというのか? 脳波が伝わって動く義手を?」

「いいえ。このヴァルヴァロと繋ぎます。なるべく、身に付けなきゃならない本体を、小さく軽くしたかったから、有線接続になりますけど。それにそもそも、無線になると自分の手に負える代物じゃなくなりそうでしたし」

 ウラキが指し示していたのは、何をどう斜めに見ようとヴァルヴァロだった。

「こいつが、自分が考えた、最後の一厘ですよ。別に遠隔兵器を操るとかなんとか、大袈裟な話じゃないです。ヴァルヴァロの、コクピットに向かって左に配置せざるを得ないものが、ケリィさんの意志で動けばいいだけですし。それに他の操作も、全部片腕でこなす必要も、なくなります。あくまで、補助ですけど。スロットルを微妙に固定したまま、他の計器をいじったりすることだってあるでしょうし、便利だとは思います」

「よく、こんなものを造れたな。幾ら基本的な理屈が簡単だと言ったって」

「道楽と言えば、自分もこんなのが道楽ですから。本業にするより、楽しくやれますし、閃きが沸いたりするんですよ」

 脳波や感応波を利用して接続された物を動かす、という程度なら、確かに基本的な理屈は民間にも流されている。だからこそ、さっきウラキが言ったように、義手義足も便利になっていた。ケリィだけではなく一年戦争の余波で、誰彼問わず手足を失った者も多いから、需要は高かった。

 ただ兵器レベルでなければ、大仰にサイコミュなどと言わないだけだ。

「欠点を言うなら、ケリィさん専用、というより、ヴァルヴァロ専用、というぐらいです。教育機能も組み込んじゃってますから、使えば使うほど、操作反応は機敏になりますけど、他に転用は利かなくなります。でも、乗り換えたりは、しないのでしょう?」

「するものか、ジャンク屋の親父が、そんなことを」

 他にあてなどない。あったとしても、乗らない。

 片腕でも乗れる、とは言えても乗りこなす、とまでは言い切れなかった。片腕でやれるように、簡略化や単純化させるのにも、限度がある。本来、手足が一本でもないということは、パイロットとしては終わりなのだ。

 終わりだと思ったから、ケリィはずっとここにいる。ここに、いたのだ。

「……しかしまあ、暢気に市場を回ってくるとはな。そこで自分が連邦に見つかるとは、思わなかったのか」

「忘れてましたよ、そんなこと」

「いずれ戻るんだろうな、軍には」

「戻ります。でも今はまだ、戻りたくないです。最後の一厘っての、他の九分九厘が仕上がらないと、分からないですから。見届けたいんですよ、自分は。自分の中にある、ちょっとした、一厘だけあるものが、ここで分かるような気がしてるんです」

 機体側の問題で残っている作業は、そんなにはもう、ないだろう。一週間そこらでウラキがそこまでやった、というよりも、ケリィがだらだらと先延ばしにしてきたことを、不眠不休の勢いでやってしまった、というだけだ。そして、ウラキはケリィが思う以上に、その手の作業には向いていた。

 単純なメカニックとしての腕前なら、ケリィよりも上なのかもしれない。才能があるとか、馴れればという話ではなく、既に今の時点で、ケリィよりも上なのだ。

「こいつが動けるくらいにはしてやるか、ウラキ」

「はい、お手伝いします」

「お前、本当に軍から逃げてジャンク屋を始めたら、俺を下請けに使えるぞ」

 ウラキと、呼んでやることにした。自分より、上だと思ったからだ。考えてみれば、既に軍人でもなんでもない自分が、軍歴云々を振りまわして小僧呼ばわりしていたことが、恥ずかしくなってくる。

 九分九厘か、と思い、手の中にある通信機ほどの大きさくらいしかない、装置を見下ろす。動かしてやれる。動かすことが、出来る。そういう日が具体的に来るのだということを、ケリィはずっと考えていなかった。

 見上げる。赤い、巨体。錆落としを丁寧にやっていたから、古びた印象は否めないものの、撃墜された機体を修復したと考えれば、仕上がりはきれいなものだ。

 俺はヴァルヴァロだぞ。

 そう言われた気がした。

 そうだな、と苦笑した。

 お前は、ヴァルヴァロで、モビルアーマーで、ガレージの飾りでも置物でもないのだったな。詫びるような気持ちが、わき上がってきた。

 ウラキがいる。九分九厘を実際に仕上げるのには、それほど時間はもう、かからない。あとの一厘は自分で、それを埋めるパーツさえ、ウラキが用意してくれていた。

 動かさずにいたものを、動くようにする。

 動いた先に、何があるのか。今は考えるまい、とケリィはそう思った。

 

  二

 

 ウラキは軍に戻ったようだった。別れの言葉も、短く済ませた。

 返すのを忘れていた記章を、ついでに投げ返してやった。ウラキも、忘れていたかもしれない。それを思い出させてやった。それだけだった。

 ラトーラは、それから少し機嫌が良くなったようにも見えた。ウラキが、気に入らなかったのかもしれない。ラトーラも、ジオン贔屓であったから、ケリィと、こんな関係になった部分はある。連邦がいるだけでも落ち着かない。だがそれだけでは、ないかもしれなかった。ガトーが訪ねてきたときも、やはりラトーラは、同じぐらいには不機嫌になっていたのだ。

 ヴァルヴァロは、動くようになっていた。試しに、細かい動作ぐらいは動かしてやったが、ちゃんと直っているかは、確かめきれない。モビルスーツ一機ていどなら、ガレージの敷地内で動かしても、ある程度は分かる。モビルアーマーでは、大きすぎるのだ。

 そこは、元は軍人だった。乗って、動かしてみれば、メカニックが数回テストした上では分からない機微がすぐに分かる。ヴァルヴァロはモビルアーマーであったから、飛ばさなければ話にならなかったし、しかも宇宙戦用の代物だ。

 フォン・ブラウンの中を飛び回るわけにもいかない。

 宇宙へのテスト飛行許可は、あっさり下りた。別に、変わったことでもない。ジャンク屋稼業で培ったコネで、些か早かった、と言うだけだ。それでも、コネがなかったら、今は無理だったのかもしれない。デラーズが演説を打って、艦隊戦まで起こっている事態なのだ。

 モビルアーマーなどが暢気に飛び回るのは、月の管理局としたってやめてくれ、と言いたくなるだろう。何も、そんなに派手に飛ぶ気はない。飛ばさなければ分からないことを確認するだけだ。

 当たり前だが、武装もない。ヴァルヴァロの、武装と呼べるようなものは、外すか封印している。使用痕が見つけられれば、しばらくは、宇宙には出られなくなるというだけのことだったし、ケリィには元から、武装など使う気がない。

 大型のトレーラーを、レンタルしなければならなかったし、フォン・ブラウンを移動中は、幌も被せて隠していた。ヴァルヴァロの機体は見るからに、ジオンのものだ。見れば、何ごとかと騒ぎにもなる。変に連邦を、刺激したくもなかった。

 連邦と言っても、月では、それなりに緩んでいる。士官など、専用のバーで酒を呑んで、ふらついているばかりだ。デラーズの演説は、まともに受けとめられていないのかもしれない。あれは、連邦ではなく、自軍に向けて放った演説だった。

 引き締まっているのは、交戦したアルビオンの関係者ぐらいか。あれは、立ち寄った客のようなもので、月の連邦軍というものではない。

 そちらと揉めた場合でも、ウラキの名前でも出せば、楽に通るのかもしれないが、そんなはめにはなりたくなかった。小僧は、小僧だ。コネとして使うなど、一人前の大人として、自分が許せなくなりそうだった。

 正規の宇宙港から外に出す、というのは憚られた。

 補給港からで良ければ、ということで話は付いている。そちらの方が、ケリィにとっても都合はいい。別に、ヴァルヴァロのお披露目会をしたい訳ではないのだ。

 動くのかどうか。それを確かめたい。

 ヴァルヴァロだけでなく、ケリィ自身も、動くのか。ウラキの造ってくれた、小型のサイコミュ式コントロールユニットも、試さなければならなかったが、そちらはもう、使う前から信用している。自分自身の中にあるものが、動くのかどうか。

 動こうと動くまいと、そちらは、構わなかった。ただ確かめたいだけだ。

 デッキに搬送して貰い、ノーマルスーツに着替えた。

 射出準備を、誰かがずっと眺めている。女だった。サングラスをしていたが、その向こうから不躾な視線が感じられる。

 スーツ姿だ。どこかの大企業、アナハイム社辺りの役職付き。そんな風に見える。歳も、相応に見えた。自分と同じ歳ぐらいか。比べてしまうと、ラトーラは少女のように思えてしまう。

「……これから、あれに乗るのかい?」

 話しかけられた。挑発的な響きがあったが、無視した。

「いいモビルアーマーじゃないか、ケリィ・レズナー大尉」

 そう呼ばれては、さすがに、無視出来なかった。だが強引に、気を引っ張られ、意識を向けさせられたという気もする。ただの女ではない。ましてやアナハイム社の、研究者でもなんでもない。

「……誰だ?」

「シーマ・ガラハウだよ。階級は中佐さ、ケリィ・レズナー大尉」

「軍を離れた俺に、階級など関係あるか」

「そうだねえ。だから、俺、お前で話してやっても、私は別に構わないよ」

 シーマがサングラスを外した。していた時よりも、若返ってみえた。代わりに、覇気のようなものが滲みだしてくる。モビルスーツ乗り特有の、攻撃的な覇気。前線に出ることでしか養われない覇気は、中佐の肩書きが、艦隊司令室の中だけで授けられた階級ではないのだ、と分かる。

「……俺に何か用か?」

「いや。偶然、こいつを見かけちまったからね。ヴァルヴァロだったかい?」

「詳しいな。試作機だぞ」

「試作機は嫌いじゃなくてね、私は。乗りたいかどうかは、別として」

 ケリィはまだ訝しむ顔を、やめなかった。ひょっとしたら、ずっとその顔をすべきなのかもしれなかった。シーマという女は、どれだけ訝しんでも、過ぎるということはなさそうにしか、思えなかった。

 補給港に、パプア輸送艦が繋留されているのが、見えた。

「……なんで名前を知っているのかって顔をしてるねえ。安心おしよ、別に、調べて探してたわけじゃないんだ。単に、思い出したもんでねえ」

「俺は、お前など、知らん」

「そりゃあの時は、私が一方的に居合わせただけだからね。左腕をなくして、まだ次に乗るモビルスーツかモビルアーマーを寄越せって喚いていた、お前の近くに」

「……ソロモンにいたのか?」

「あんなごっちゃまぜになった場所じゃないか。誰が何処にいたって、おかしくはない。たまたま、そうやって暴れて、最後は取り抑えられて麻酔を打たれたやつがいて、近くの者にあれは誰だと名前を聞いただけさ。妙に、覚えていた」

「しかし、俺とは今、偶然会っただけだろう」

「あのヴァルヴァロを見てね。どんな奴が乗ろうとしているのか、ちょいと聞いてみたら、またお前の名前が出て来たからね。何かの縁かと思い、こうして話しかけてみてるだけさ」

「……あれはただの道楽だぞ。動くかどうか、確認したいだけだ、中佐」

 階級で呼んでみた。探りを入れたようなものだったが、シーマは簡単に読み取ったようだった。ケリィは元大尉だが、シーマは中佐のままだというなら、今、月にいていい女ではない。デラーズ・フリートに属している筈なのだ。

「……例の演説は聞いたかい? まあ、聞かずに済ます方が難しいだろうけれど」

「あの演説で踊ろうとする手合いか、お前が」

「おや、ご挨拶だね。いかにも女狐みたいな言い方をする」

「そんな服を着て月にいる、元ジオンの中佐。女狐なのだろう、お前は」

「その女狐を飼い馴らせる演説に聞こえたのかい? じゃあ、野良犬はもう一度、檻に戻りたいと思ったのか、あれを聞いてね」

「……あんな演説は、俺には関係ない」

「奇遇が重なるもんだね、私もさ。ギレンの真似事は巧かったがね。芸人で食っていけるんじゃないかい、あの少将閣下は」

「下に就いているのではないのか? デラーズ・フリートの中で」

「迂闊なことをお言いでないよ。すぐに答えを出したがる男は風情がないね」

 誰かに聞かれても、構いはしない。それは、度胸と言うだけではなかった。実際に、ここで誰に聞かれても、支障はないのだろう。正規の宇宙港とは違って、補給港は身分管理が甘い。誰がいても、詮索するような奴はいないし、互いのためにも、そうすべき場所だった。裏口、というなら、文字通り、そうなのだ。

「何の話が、したいんだ?」

「別に。昔話でもしようかと思っただけさ。場末の酒場で意気投合するよりは、上品だと思わないかい?」

「俺はもう軍人じゃない。ただのジャンク屋の親父だ」

「なんだって構わないさ。私だって、正規軍なんて言えるのか、怪しいもんさね」

「下、にはいるのだろう、デラーズの」

「横、と思っているよ。階級の上下ばかりは如何ともならないけどねえ」

 シーマ・ガラハウという名前。ケリィは思い出そうとしたが、やはり心当たりはなかった。ソロモンの時の戦いの、部下や仲間のことは思い出せる。上官は、ドズルぐらいしか思い出せなかったし、上官と呼ぶにはドズルは遠すぎるだろう。

 部下でも仲間でも、なかったのだ。ならばそれだけでもいい。

「月に、何をしに来た? 見当ぐらいは、つくが」

「恐らくご推察の通りさね。民間企業ってのは故あればどっちにでも寝返るのさ」

「寝返る、もまた違うと思うが」

「連邦と契約書を交わしていたって、私と話す。寝返りだろう、書類上では」

 誰にでも、何でも売る、というならケリィの商いもそうだった。買う相手が何の陣営に属していて、何が目的かなど、端的に言ってどうでもいい。ケリィのジャンク屋と違ってアナハイム社などという巨大企業ともなれば、契約書だけでも山のように積み上がるのだろうが、抜け穴など幾らでもある。

 ケリィの規模では、金だけの話だ。目先の、金だけだ。

 アナハイム社ともなれば、金以外の立ちまわりも増えてくる。一見、損益だけのように見えても、それでいいのだという動きも出来る。何にしても、モビルスーツ開発でアナハイム社は欠かせない存在なのだから、立場は何処よりも上、と言っても言いすぎではない。一年戦争のあとに、ジオンの御用達だったジオニック社を、吸収合併したこともあり、一社が寡占してしまっている。だから、連邦とジオンのモビルスーツを好きなだけ、組み合わせたり試したりも出来る。

 ヴァルヴァロは、ジオニックの社風を色濃く残していた。アナハイム社の手が入る前の、一年戦争中の試作機である。

「……懐かしささえ、覚えるね、私は。見たこともない試作機だというのにねえ」

「使い捨てられたような、ものだからな。あんなものは」

「あとに残らなきゃ、仕方がない。そういうことに拘るのは、男の性分かい?」

「お前が女なら、自分で検証すればいいだろう」

「女はね、捨てた男のことなんぞ、翌日には忘れてるんだよ」

「捨てられても、か?」

「都合良く考えられるもんでねえ、その辺は。で、お前はどうなんだい、ケリィ・レズナー元大尉。捨てたのか、それとも捨てられたのかい?」

 どちらかと言われると、ケリィには分からなかった。捨てたという気も、捨てられたという気も、ない。ただ、流れというだけのことだった。きちんとした別れもせずに、別れた相手。それが、一番、しっくりくる。

「あの時、ソロモンで、ちぎれた左腕を止血しただけでまた出撃しようなんてのは、死のうとしたのかい?」

「戦おうと、しただけだ」

「言い方一つで物事を変えられるのなら、なかなか見所はある男だね。……それで? 片腕で、あれを御そうと?」

「御せるようには、変えてある。それを試すところだ」

「ヴァルヴァロに、ふられるようなことにならなきゃ、いいけどねえ。見させて貰うよ、別に、構わないだろう?」

「勝手にしろ」

 振り払うように、離れた。左腕がない状態で、ヴァルヴァロを御せるかどうか。テスト飛行でも、それは分かるはずだ。やれるということは、全てやった。それでも満足しないというなら、それはすぐに分かる。だから、テスト飛行なのだ。

 ヴァルヴァロのコクピットに乗りこむ。ヘルメットを被る前に、左耳にユニットをかけた。気にならない。違和感は、なかった。ヘルメットを被っても、それは同じだった。ただ、コンソールから、有線で繋げなければならない。

 コクピットの中では、それほど大きくは動けない。配線の長さにも、余裕はある。動きをさまたげることには、ならない筈であったし、こうして繋げてみると、ヴァルヴァロと一体化したようで、意外に愉快ではあった。

 飛ぼう、と呼びかけた。お前が言うのなら、そうしてやる。返事は聞こえた。

 お前は、俺を御せるのか。俺に乗るのに、相応しい男か。

 まだ声は、聞こえてくる。返事は、宇宙ですべきだろう。言葉ではなく、行動で納得させてやるしかない。

 俺には、過ぎたる女。ラトーラのことを不意に、思いだした。それでも、一緒に暮らせてはいる。ヴァルヴァロも、似たようなものかもしれなかった。

 配線を接続して、ヘルメットを被った。ウラキが、かなりうるさく、ヘルメットは内部をそれなりに加工してくれ、と言っていたのを思い出す。コントロールユニットが、無加工で入るほど、小さくはならなかったのだ。その程度のことで、と苦々しく思ったが、ヘルメットでさえも加工しなければ、使えなくなっていたのが少し、おかしくもあった。ジャンク屋の親父が、専用ヘルメットとは笑わせる。

 ブースターに点火した。リフトから離れるのは、すぐだ。

 




小僧ども、一週間ぶりだな。ここにフォン・ブラウン(3)を用意したぜ。読んでくれたなら有り難い。前回のヒキからも分かるだろう。俺は本当にここから勝手きままなことをする。これが二次創作というものだ。解釈違いなど知るか。そんなものは気にしていられるか。俺の解釈というものをお前たちに問う。違うというならそれまでだ。それが気に入らないというなら、それまでだ。分かったか。俺はそう覚悟しているぜ。最初っからな、そう覚悟しているぜ。納得してくれたのならここから先も見守ってくれ。小僧ども、まだまだ物足りないぜ。
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