一
デラーズは謁見室で、シーマ艦隊の動きを報告された。
旧ソロモン宙域での騒ぎに、シーマは加えていない。別行動を命じていた。動きは、予定通りに推移している様子だった。
先のガトーによる猛打撃によって、連邦は実に三分の二を、少なくとも、宇宙においての兵力を損壊している。そこで畳み込めなかったのは、ガトーの一撃が、彼我を問わず影響を与えたため、思わぬ緩衝空間を作り出していたからだった。どのみち、連邦は三分の一となっても、まだデラーズ・フリートに数で勝る。
もう一手、打つ。必要なら、二手でも、三手でも。
まだ、放った矢は届いていない。届けなければならない。この流れが潰えれば、やはりデラーズの志も、潰える。二の矢を用意出来るほどの余裕はなく、また、それを考えるのが、却って矢の力を奪うような気がした。
シーマ艦隊には、工作員のような真似をさせていた。本来なら、プライドもあり断られても仕方のない実務だったが、引き受けていた。命令に従った、というより、喜々として受け入れたふしもある。放っておいても、勝手にやったかもしれない。
シーマが本当の意味で麾下にあるとは、デラーズは思っていない。ガトーが不機嫌になった理由も、分かる。それでも必要であったし、だからこそ必要、という面もある。多角的に物事を捉えるには、完全には手綱を取れない者が、いた方がいい。
デラーズに賛同しジオン中興の礎となるも良し。一連の騒ぎを利用して、自らの一手を打つも良し。そう思っていた。どのみち『星の屑』作戦には、関わらなければならない。そしてどんな力でも、この作戦は前へと進み、矢も進む。
清濁併せのむ。その喩えであれば、ガトーが清く、シーマが濁っているとなるだろうが、どちらかが完全に正しいとも、間違っているとも、デラーズには断言できない。強いて言うなら、ガトーが清くあろうとし、シーマが濁りを厭わないのは、デラーズの内では、調和の取れている行動だった。
ならば、よいのだ。
清いシーマも、濁ったガトーも必要ではない。
今、シーマにやらせていることも、そうだった。ガトーにやらせれば、露骨に嫌な顔をするだろう。そして、従うのだ。そこでガトーの意志は、消える。命令に従う、有能な軍人となる。
それが、ガトーを濁らせる、使い方だった。
サイサリス強奪でさえ、やらせるべきかデラーズは迷った。ガトーが、待ち続ける鬱憤を晴らしたがっている、ように思えたから、命じた。それにサイサリスに搭乗し、そのまま宇宙にまで届くよう操れる、と思えるのはガトーしか、いなかったのもある。
ガトーは、濁らなかった。だが、二度はやらないだろう。
やらせる気も、なかった。ここから先は、やらせずとも良い。
一年戦争の余波で人々が離れ、無人となったコロニーが、二基。コロニー公社の管轄である。やがてまた、地球からそこに移住し、子を育て、世代を重ね、そしてスペースノイドとなる。
巨大な、円筒の形をしている。先端から最後尾までの長さで伸びた三枚の板は、太陽光発電に使うパネルであった。そのスペースコロニーは二基、ほぼ並んで、宇宙に浮かび続けている。
破壊活動をさせた。
そこを監視しているコロニー公社は、戦争とは関係ない。
そういう人間たちをも、墜とさなくてはならないだろう。やはり、ガトーにやらせる訳にはいかない仕事だった。というよりシーマが適任この上ない。濁った仕事を厭わない、のもあるが、ここからは『星の屑』作戦の、次の段階であり、それなりの流れを知る、中核となるメンバーにやらせねばならない。そしてそれは、ただの工作部隊では、信用がおけない。
使うのは、公社管理下にある、無人のコロニーである。
ギレンのやったことに、デラーズが不満があるとすれば、落とすコロニー内の住人を、皆殺しにしたことだった。結果として、スペースノイドの人口を、減らす結果になっている。徴兵出来た筈の兵士も、当然減る。
それもまた、仕方がない。
大規模疎開を許せば、必ず、連邦に察知される。そして残せば、当然、コロニーを落とすまいと、内部の人間も抵抗する。なので先だって、ガスを吹き込み、皆殺しにした。
間違ってはいない。そうデラーズは、自分を納得させている。
今は、自分の行うコロニー落としのことだけを考える時だった。
宇宙で必要なのは、何よりもバランスだ。巨大になればなるほど、維持が難しくなる。一度動き出したものを止めるのも、やはり、困難になる。
シーマ艦隊に総出で、それぞれの太陽光パネル一枚を破壊させ、完全に切り落とさせた。巨大な、パネルだ。それなりの人手が必要となる。それを、やらせた。一枚で良かった。全てではなく、少し、残してある。失われる重量は計算してあった。ただの破壊は、むろん、やっても仕方がない。目的は、コロニーの調和したバランスを失わせることだった。
どうなるか。コロニーは常に回転し続けている。内部に重力を発生させるためだ。
パネルを一枚失ったコロニーは、回転に乱れを発生させる。大きく、その位置を、自らの歪んだバランスによる回転で、位置を歪めさせ始める。
そしてやがて、ぶつかり合う。
その衝撃で、コロニー同士はあらぬ方向へと、互いに弾け飛ぶのだ。
そういった計算は、数字の話ではあったが、戦術のうちだ。そして戦略へと繋がる。これは戦争の一部だった。
弾け飛んだコロニーは止めようもなく、漂っていく。推進剤など使って、かなり強引に起動を歪めるような真似は出来るが、停止させようと思っても困難であるし、最早、完全に破壊するぐらいしか、対応出来ない。
時間は、連邦に与えていない。旧ソロモン宙域での騒ぎも、まだ尾を引いている。
漂っていく、コロニーの一基。
月に、引かれていく。月の引力圏に、捕まってしまう。逃れようのない縄は、既に伸びてコロニーの一基に、絡まって引き寄せているのだ。
連邦が、よほど頭が悪いのでなければ、科学者や技術者に予測させるまでもなく、誰にでもすぐに分かるはずだ。
これが、月への『コロニー落とし』なのだということが。
そんな暴挙の裏付けにしているのも、また、MK82核弾頭を、先に使おうとしたのは連邦である、という口上に拠るものだ。こと、ここに来て、いちいち、そんな理由付けなど必要はない、ともデラーズは思うが、志というものには、濁りがないに超したことはない。
フォン・ブラウンを潰す。
連邦の、宇宙における最大拠点にして前線基地であるグラナダは、出来れば、残したい。元々はジオニック社の拠点で、今はアナハイム社の拠点でもある。完備された工場と、基地としての能力は、ジオンの手元に戻したかった。
連邦は、デラーズが間違いなく、月にコロニーを落とすのだと、そう思う。何故なら、デラーズが今この瞬間、その心算だからだ。
決して演技ではない。これでいい、とすら思っている。
放たれた矢。ガトーによって、思い切りの加速の着いた、その矢は、この行為によって、更に鋭く飛ぶこととなる。
あと何時間もない、という状況なのだ。連邦に冷静かつ、丹念な相談をさせる心算は、微塵もなく、コロニーを止めるための完全破壊という手札もまた、デラーズ・フリートの方が、多く手札を所持している。
連邦が妨害をしようとするのなら、まずデラーズ・フリートと一戦交えて、突破する手間が生じるのだ。観艦式での騒ぎで残った兵力は、その即断が可能だろうか。
月からの、連邦の手による迎撃は、まずない。観艦式の騒ぎで、そんな余裕はない筈だ。あったとしても、またしてもデラーズの守りを一度、抜かねばならない。
連邦の、出方。それを、挑発するように、デラーズは更に手を重ねる。
こちらのペースに乗せなければ、ならなかった。コロニーが月に落ちるのだと、馬鹿でも分かるようになるまで待って、連邦のジャブローへと慇懃無礼に過ぎる要求書を送りつけていた。
コロニーを、このまま落とされたくなければ。
その脅しは、連邦の判断を、落ち着かないものにさせる筈だ。要求書は、通るはずがないもので、埋め尽くされている。仮に月を失い、グラナダを占拠されるはめになろうと、そんな要求を呑むわけがない、というほどに、図々しかった。
ギレンのやろうとした、つまり一年戦争で勝利を収めた場合、当然、そうなった、という条件を羅列している。旧ソロモン宙域での勝利ひとつで、一年戦争の結果をひっくり返そうというのだ。図に乗るのもいい加減にしろ、とでも思うだろう。
一年戦争の休戦は破られ、そして今度は終戦となる。
ジオンの勝利という形で。それほどの要求だった。
全て通る、はずがない。ほぼ、まやかしだった。
あれが通るのなら、苦労はしない。通らないから、苦労をし策謀を練っている。連邦を憤慨させている。それでも、月にコロニーが落ちることは、何らかの行動を起こさねば、対処しようがないのも、確かなのだ。
デラーズの要求で通したかったのは、デラーズ・フリートの背後に控える、アクシズ先遣艦隊の存在だった。背後から圧力に加わっているアクシズは、連邦にとっては、不気味で、鬱陶しかったはずで、出来れば、排除の方向に持っていきたかっただろう。直接の実害はなくとも、アクシズが動いている、というだけでデラーズの「ジオン中興の志」には、お墨付きが与えられる。
デラーズの掲げる旗はより鮮明となり、結束力を高めさせる。
残党も、次々と、集まって来るだろう。観艦式の騒ぎの後では、尚のことだ。
実際に、日和見で過ごしていた者たちも、集まりつつある。
アクシズの全面参戦ではなく、背後からの圧力と、補給のみ。アクシズ先遣艦隊が、直接の参戦はせずに、ただ存在すること。他の要求は、ついでに書いたようなものだが、図に乗ったテロリストの言いだすこと、のように考えるだろう。
とりあえず、その程度なら応じる。時間稼ぎのためにも、幾つかは応じる。
アクシズを黙認するのは、最も簡単で、妥協にすらならない要求だった。
それを、引き出すのには成功した。それだけでデラーズは良かった。アクシズ先遣艦隊が黙認されるのならば、補給線を背後に得たに等しい。デラーズの目的は、連邦が潰さぬと約束する、補給線の確保だけだった。
別に、その約束も、破られても良かった。
しかし当面は、約束は守るだろう。その当面の間だけ、連邦に枷をかけられれば構わないのだ。損耗の修復と、増えた兵力に対する軍備の供給。傷病兵をアクシズに下げ、入れ替わりに、兵員も補充する。連邦が息せき切らしているという時に、こちらは十二分に、体力を回復できるのだ。
サイサリス。ゼフィランサスと共に、塵と消えたという。ガトーは、シーマ艦隊のケリィが拾ってきていた。シーマが、たかがモビルアーマーが一機とは言え、こちらに回すという気を遣ったのが、デラーズには今ひとつ、得心はいかなかった。かといって、ケリィの存在が自分にとって、不具合な要素も、見つからない。
実際に、ガトーのサイサリスによる急襲は、ケリィがいなければ、もっと面倒な物になっていたと、ガトー本人からも報告が入っている。
シーマも時折は、そういうことをする。それで片付けて、問題はなさそうだった。目的達成の助けになったというのだから、訝しみすぎるのも良くはない。
ガンダム開発計画の成果物は消え、そして、Mk82核弾頭も既にない。誰も最早、真実の検証は出来ない。
南極条約違反を責めての決起。形としては、そうだった。
実際はそれが、南極条約になど違反していないのを、デラーズは承知している。アナハイム社と、利害が一致しただけだった。決起するのに、いい口実になった。アナハイム社は両機体を、核弾頭を、宇宙で試して貰いたかったのだ。そして出来れば、実戦の中で。
連邦の実験では、限定的な閉鎖空間で、実害の及ばぬという慎重さで、行われる。それでは開発など、遅々として進まない。ジオンの残党に渡して、殺意を持って使用される方が、実戦でのデータが取れる。
政治でもある。連邦の宇宙艦隊に対する予算の組み方は、モビルスーツを生産ラインの基本にしているアナハイム社としても、小回りの利くモビルスーツやモビルアーマーの価値を、再確認させたかった。実際、あの破壊力の中、艦隊が全滅に等しい被害を受けている、というのにサイサリスは健在だった。
モビルスーツやモビルアーマーにならば、そういう小細工が施せる。巨大で、動きの鈍重な戦艦の類いでは、対抗しきれない。出来れば、艦など、モビルスーツやモビルアーマーの輸送目的にのみ、遣って貰いたい。そういう運用が主となる流れが、アナハイム社としては、望ましい。
アナハイム社の都合としては、大体、そのようなものだろう。選ぶのはこちらであったし、デラーズは差し出されたものを掴み取った。掴み取った瞬間から『星の屑』作戦という矢が、弓から離れたと言える。
しかしアナハイム社はやはり、技術者優先を社是と言ってもいい、現場主義がある。
試したいという技術者のために、膨大な予算と手間を注ぎ込み、そして試作したものは平然と使い捨て、データだけを残し、先へと進む。そのための予算確保、に動き続けた結果、会社が大きくなった、と言ってもいい存在だった。
宇宙で、実戦で使ってくれ。そう現場に言われれば、まず、そう動こうとする。地上では、このデータは取れなかっただろう。仮にサイサリス強奪後に、そのままジャブローを急襲しても、それはアナハイム社の意志には、そぐわない。デラーズの意志にも、やはりそぐわなかった。それはただ単に、連邦の基地一カ所に打撃を与える、というだけの話だからだ。連邦は、手痛いだろうが、それだけだ。傾きすらしまい。ましてやジオンが、デラーズ側が先に核弾頭を、勝手に使ったとも、受け取られかねない。
義はこちらにある。そういう形は、造らなければならなかった。それが、ただの口先だけの話でも、やはり必要なのだ。ガトーのように、デラーズの言葉一つで動ける、という者も、やはりジオンの残党には多くいて、そういう軍人こそが、多く、必要なのだ。シーマのような者などは、あまり多くいて貰っては、困る。
勢力が絡み合う中で、利益を確定させて抜けたのは、アナハイム社だった。他はみな、舞台の上でまだ、それぞれの役目を演じている。
だからという訳ではないが、アナハイム社にも、ついでの役割は用意してある。
舞台から降りても、やって貰わなければならないことは、あるのだ。
コロニーはゆっくりと、月の引力によって、移動している。このまま放っておけば、月の周回軌道から落ちる。アナハイム社のある、月へと。何もせぬという訳にはいかない。そしてどうせなら、もう少し、こちらに手を貸して貰う。
コロニーの周辺には、やはりシーマ艦隊を配置してある。
旧ソロモン宙域で、難を逃れた連邦の艦隊が、まだ充分、残っている。コロニーを破壊して、無力化しようというなら、その船団が向かうはずだ。どの程度の規模かまでは、掴んでいないが、シーマ艦隊よりは多いだろう。
向こうは、ムサイ級を潰されている。麾下には別行動も取らせているから、シーマのザンジバル級へは随伴機は、せいぜい、一艦か二艦といったところだろう。
コロニーに傷一つ、与えてはならない。その気概が必要だった。
少しでもバランスを崩させれば、また、あらぬ方向へと飛んでいってしまい、月の周回軌道を外れることにも、なりかねない。連邦も、そう考えて、まだ余裕はある、と思っているはずだ。しかし連邦は圧倒的に、不利だった。月にこちらの意志で落とすか、連邦側が支えきれずに、落とされるか。結果は同じでも、そう単純な話ではないのだ。
「……ガトー少佐をここに」
ガトーを呼んだ。相変わらず、引き締まった無表情で現れる。
不機嫌では、なさそうだった。戸惑いを隠せていない、という部分は、滲み出ている。ここから先のことは、伝えていなかった。サイサリスや、Mk82核弾頭の云々に関しても、ガトーは聞かされても何も思っていなかった。興味がないのだ。
「……レズナー少佐とは、ちゃんと話をしたのか?」
「はい。何一つ鈍るところなく、むしろ紫電一閃が如き鋭さに感服いたしました」
他人行儀な物言いを、とふと思わないでもない。
ガトーの他人への好悪は、何処か無理にもってまわった言葉にしようとするところに出る。無理をして、そんな言葉にせずともいいだろう、と思うこともある。しかしやはりそういう不器用さもまた、清さの表れではあった。
「ガラハウ中佐がアクシズに打診して、レズナー少佐の階級を上げてくださったとか。こればかりは感謝せねばなりません」
「そう、気にせずともよい。ガラハウ中佐のやることを、余り意識するな」
「はい。ただ、共同でことに当たるという話も、この先ありましょう。『星の屑』作戦はまだ終わっていないと、レズナー少佐からも伺っております。私は、あの核弾頭の一撃こそが作戦そのものかと」
「重大な、役割ではあった。まさにあれこそが、両輪の一つなのだ。作戦の頭から最後まで、貴公が出張るような話でもないというだけだ。作戦の片輪を、貴公一人が担ったのだぞ」
「レズナー少佐だけではなく、カリウスにも、助けられました」
手柄面はしない。少なくとも、上にそういう顔は見せない。自分の中での達成感が、ガトーにとっては何よりも大切で、そしてそれが、ほぼ全てだった。
だから、自分の中で達成感が得られないような任務であれば、どれだけの戦果を挙げて褒美を与えられても、ガトーは納得いかないだろう。自分の中にある、自分。男の誇り。そういった言葉が、恐らく、似つかわしい。
「カリウスにも、目をかけてやれ。お前を慕っている、よい部下だ」
「頼りにしております。三年前の、直属ですから」
「待たせた、ものだ。三年越しであるからな」
「それももうじき、閣下のお力で終わろうとしています」
終わり。ガトーにとってそれは、任務の完了という意味でしかない。それがデラーズには羨ましくもある。しかし自分は、少将なのだ、とも思う。終わりは、まだ先で、まだデラーズには自らに課した任務が残っている。
「……レズナー少佐は月にコロニーを落とすという今作戦に、何か不満そうではなかったか」
「月には、落とさない。そう判断しているようでしたが、気が気ではない、といった風情もありました。やむを得ぬことではありますが」
「それでも、猛ったりはしなかったということか」
「月には、落とさない。そう、私が約束しました。納得してくれたようです」
「落としたら?」
「私が、嘘つきになる。友を一人失う。それだけのことです」
「月に落とす意味など、あるものか。レズナー少佐はそれをちゃんと分かっていたのだろう」
口約束で引き下がるような男では、ないだろう。ガトーとてそうだ。だが誰に約束されたかで、それを肯んじてしまう。そして根拠など示さなくても、言うまでもなく、月にコロニーを落とす意味などないことぐらい、端から見れば誰でも分かる。
分からないのは、連邦ぐらいだろう。こちらが、何をしでかすか分からない、という予断を持たざるを得ない。そして月にコロニーを落とされれば、それはそれで充分に、連邦にとっては痛手にもなり得うるのだ。
いつ、こちらの違う目的に気付くか。そういう話だった。
気付いている者が何人いるか。その判断が、きちんと通っているか。
連邦の巨大さと官僚主義は、一刻の判断を、手足の先まで伝えきれない。ガトーの一撃で、グリーン・ワイアット大将を失ったばかりだ。上意下達が徹底されているとは思えず、勝手な動きをする余地もある。それが纏まりを欠くこととなる。連邦という組織が巨大な、無能の集団と化す、僅かな隙。
とにかく、コロニーを失わないことだ。その動きを乱れさせても、ならない。
「……レズナー少佐はシーマ艦隊に戻ったようだが、やはり多面的に、連邦から攻撃を仕掛けられては、モビルアーマーが一機では手が回るまい。ガラハウ中佐がモビルスーツ部隊を繰り出しても、厳しい部分はある」
「ご下命あれば、すぐにでも、私が」
「背後を突くにはちょうどいいものもあるしな。……どうだ、あのモビルアーマーは?」
「あれはまさにジオンの魂が具現化したもの。感恩戴徳の極みであります」
ガトーにしか、乗れまい。そういうモビルアーマーを、アクシズが下賜してきた。
ノイエジール。
モビルアーマーは大型機体が多いが、それと比べてもはるかに大きい。もはや、小型の戦艦とさえ呼べる代物であった。
小僧ども、今回からは新章「宇宙駆けるけもの」の開始だ。物語もいよいよ終盤に向けて展開しつつあるぜ。当然、宇宙は「そら」と読んでくれ。リズム感がいいだろう。長いことやってきてしまった気がするが、俺の真剣さ、俺の思い、そういうものを詰め込むだけ詰め込んでいく心算だ。俺の魂、俺の志、俺の誇り、そういうものが伝わっていたら嬉しい限りだ。小僧ども、まだまだ物足りないぜ。