ガトーがジオンの魂などと言うのも、大袈裟ではない。
アクシズに残ったジオニック社の人間が、やり残した仕事とばかりに組み上げたものだ、量産しないのではなく、物理的に、一機しか組めないという機体だった。
アナハイム社が一切関わっていない。機密も何も漏らされておらず、機体構想が横流しされたりも、していない。そういう意味では、ガンダム開発計画など、ザルの目そのものだった。アクシズが引きこもって、連邦と距離を置いていたからこそ、ノイエジールは、ジオニック社の社風を凝縮したような、最早、アナハイム社に吸収合併され消えてしまったジオニック社の、その残党による意地、とでも呼べる機体になっていた。であるから、ガトーは、魂の具現化と評したのだ。
アクシズもそう、堂々と支援は出来ない。言質を得たからといって、図に乗ったような真似をして、連邦を無闇に刺激することはなかった。艦隊一つよりは目立たぬが、艦隊一つ以上の働きは出来る。ノイエジールにガトーが乗れば、それが出来る。
最早、連邦にガンダムはない。こちらにも、ない。
だがそれは最初から、予定されていた事態だった。だからアクシズは良いタイミングで、ノイエジールを回せたのだ。
「では、ガトー。ノイエジールにてシーマ艦隊を援護せよ。背後からかき回し、近づくものから撃破し轟沈させよ。貴公とノイエジールが加われば、連邦にはまずコロニーを邪魔するような真似は出来ん」
「承知いたしました」
浮き立つ、という顔でガトーが一礼し踵を返した。
ノイエジールが、都合良く、今ここに。連邦の追撃をかき回すには有利な、背後からの仕掛けが可能な、今。サイサリスが失われたという直後に、何の間断もなく。そういうことをガトーは一切、考えてもいない。
ガトーは、与えられた機体に、政治的意図など、見いださない。
だから素直に、ジオンの魂の具現化、などと言えるのだ。サイサリスを見たときも、ガトーは似たような、美辞麗句を述べたはずだ。あれも何処か、ジオニック社の社風を感じさせる。そういうものに、ガトーは、単純に喜んでしまうのだ、とデラーズは思った。
このまま、ガトーにとっての、良い上官で居たい。そういう私情が、デラーズにはある。だがガトーに抗命されるときも、また、あるのではないか。それは自分が、清濁を併せのまねばならない立場だからだ。少将であるからだ。
濁りの部分を見せたとき、ガトーは自分を、どう思うだろうか。それはデラーズにも、想像が付かない。志というものは、一度、すれ違ってしまえば、お互いにとって掲げるに足る旗、ではなくなってしまう。
ここまで来た。そういう自負はある。ここまで、自分の足で、歩いてきたのだ。
かつて三年前に、いや四年前に、ジオンが総力をかけて行ったことを、残党、と呼ばれて仕方のない兵力で、ここまでやれたのだ。
志、がなければ出来ないことであった。誇りでも、あった。
この作戦に、大義はあっても、実利はない。それも、分かっていた。全てはギレン・ザビの遺志を汲まんとして、続けてきたことであった。言うなれば、そうすることが、この三年の雌伏の末に起こした、この決起で得られる実利とも思う。
矢。一刻も早く、突き刺さって欲しい。
二の矢はない。なくとも、そこにガトーがいるなら、耐えられる。自分の掲げる志、その旗の傍にガトーがまだいるというなら、全てが水泡に帰したとしても、それは、自分が清廉でいられたのだという証でもある。
ノイエジールの、巨体。ジオンを象徴するような機体の緑は、やや薄いように、デラーズには、思えた。
グワデンから、飛び立っていく。
弓から放たれた矢のように、それはすぐに視界から消えていった。
二
アナハイム社のオサリバンに、このまま、勝ち逃げはさせない。
やるべきことは、やって貰う。
その点では、シーマもデラーズとは、協調していた。背後では連邦が、蹴散らされている。ガトーが、ノイエジールを縦横無尽に操り、瞬時に五艦のサラミス級を轟沈させる、という荒技を行っていた。密集していたから、いい的だった、というのもあるだろうが、それでもシーマのゲルググマリーネでは、真似出来ない。
ケリィのヴァルヴァロにも、無理だろう。
「……少将閣下も恐ろしいオモチャを貰ったもんだよ。アクシズも子供の機嫌を取るのが上手と見える」
お陰で、コロニーは計画通りに、月の周回軌道まで運ぶことが出来た。
だがまだ、阻止は出来る。外からの力を介入させ、月面への落下、は防ぐことが出来る。その一手が今、連邦にはない。シーマ艦隊と、何よりあの、ノイエジールが、全ての手札を、連邦から取り上げてしまっている。
通信が、繋がっている。相手は、オサリバンであった。
「……さてどうするね、オサリバン? もうお前が動くしかない。お前が、試されるんだよ今度は」
「新型のモビルスーツならば、もう届けましたものを」
「少し遅かったがね。どのみち、ちょいとばかり高性能なモビルスーツが欲しくてこんな真似をしている訳じゃあ、ないのさ。分かっていると思うがねえ。鉄火場で勝ち逃げしようなんて奴には、似合いの役回りさ。少しは戦場でヒリついておくんだね」
「少しばかりとはまた、贅沢な。あの『ガーベラテトラ』を」
「その開発名はどうにかなんないのかい? 少女趣味な響きは性に合わなくてね。デラーズ閣下の専用機にしてやりたいぐらいだよ、何がガーベラだい」
「しかしシーマどののお好みの性能です。ゲルググマリーネに後付けしたバーニアと加速性能ではなく、設計段階からシュツルムブースターを組み込んでおります。故に、プロペラントタンクなどという危険な爆発物も背負わずとも済みますぞ。外面もお好みかと思い、元ジオニック社の開発陣に組ませました。存分にお試し頂ければ幸いです」
「武装はどうなんだい。火力だよ。飛び回れても墜とせないんじゃ意味がない」
「ガンダムのビームライフルをマシンガンとして仕立て直してあります。出力こそ試作一号機には劣りますが、連射式です。それもまたシーマどののお好みかと思いましてな」
ガンダムに持たされるビームライフル。一年戦争を通じて、そして今も、あの破壊力に勝るライフル系の装備はない。
ならば、あの、装甲を貫けるのではないか。
シーマは少しだけ、オサリバンに感謝が湧いた。許してやってもいい、そういう緩みすら出た。そしてオサリバンがそこに畳みかけてくる。機を見るに敏、とはこのことだ。
「……そして交渉材料はまだ、ありますぞ。シーマどのが今から、推進剤なりなんなり使ってコロニーを逸らして頂ける、というのであれば、勿論それなりのものを」
曖昧だった。具体的に言われれば、或いは。だがオサリバンは誤った。あるいはただのブラフで、何もないのかも知れない。シーマの内に沸いた、僅かな油断は、それで帳消しにされていた。
「……月にコロニーを落とす心算はないけどね、落とさない理由も、特に私にはないんだよ。お前に選ばせてあげているのさ、私は。このまま、押し潰されたいというなら、それもお前の判断だ、好きにすればいいじゃないか」
「月での騒ぎは困る、と何度も申し上げましたが」
「困らせてるのさ、女心の分からんやつだね、オサリバン」
どのみち、やる。だからタイミングを、逐一、オサリバンに教えている。この通信こそがオサリバンに、勝ち逃げを許さない記録となる。もっとも、このまま、押し潰されて死ぬというなら、見事な勝ち逃げでもあるが、オサリバンはそれを勝った、とは決して思わない。
月からの介入で、コロニーは軌道を外せる。容易く、外すことが出来る。
コロニーに残った太陽光パネル目がけて、三本の光条が走った。オサリバンは、不承不承、もう一度鉄火場に戻ることにしたようだった。
レーザー照射が太陽光パネルに照り返され、一本に束ねられてコロニー内に突き刺さっていく。そしてその先には、コロニーそのものの推進材が収められている。そこに、着火させたのだ。
そんな偶然があるか、という精度であった。いずれかが手引きし、合図しなければ、為しえない成果だった。しかもレーザーは連邦ではなく、アナハイム社の持ち物である。オサリバンは自分が、『星の屑』作戦に関与したのだという証拠を、残さざるを得なかった。
その程度、幾らでも立ち回れるだろう、とシーマは思った。
お前の戦場は、そこではないか。
「……オサリバン。全員から上前をはねて逃げようったって、そうはさせないよ」
「仕方ありませんな、これは。月を、守らねばなりませんでしたから。連邦の頼りも期待できず」
それで乗り切れるほど甘いかどうかは、今後の展開に、左右される。
オサリバンは、自分ではもう、鉄火場には参加出来ない。もう、オサリバンの賭けは終わった。あとは、誰が勝ち馬になるのかを見守っているしかない。どの馬に、どれだけ賭けていたのかは、シーマの知るところではない。
コロニーが、エンジンから火を噴き、自ら推力を放出していく。
推力を得たコロニーは、月の周回起動から、逸れていく。
仮に、連邦が総出で馬鹿揃いだったとしても、電算機は、馬鹿ではない。馬鹿にでも分かる計算結果を、すぐに導き出してくる。月から逸れたコロニーが、今度は、何処に向かうのかを。
コロニーは、地球の引力に導かれて、そちらへ向かう。
悪名高き、コロニー落とし。地球への、大質量による、直接打撃。一年戦争で人類を恐怖させた悪夢の再現。
いったん、月に向かわせたのは、連邦の残存艦隊を引き寄せるため、でもある。シーマ艦隊とノイエジールによる連邦艦隊撃破など、コロニーを守る程度にすぎない。主力にただ、こちらを追わせる。それが目的だった。
ここから先、地球へ進路を変えたコロニーを追撃するには、連邦の船は、軒並み、推進剤を失っている筈だった。
止めようがないのだ。
「……この先はこっちも鉄火場さ、オサリバン。ただ見ているだけのお前よりは、気が紛れるがねえ」
「……しかしシーマどのも、私どもの頭を越えて、グリーン・ワイアット大将に繋がりを取っていたとか。届きましたかな、そのラブレターは」
「ふん。気付いていたかい? しかしあの通り、星の屑になって宇宙に散らばっちまった奴のことなんぞ、今更」
「しかし、アルビオンの連中には渡したようですな」
その物言いに、シーマの顔色が変わった。ここにきて、オサリバンに一枚上を行かれたのか。背筋が総毛立った感覚は、理屈として、言葉に変えられていない。直感した。ただ、それだけだが、間違いないとも、シーマは思った。
「さて。連中は当然、上へと渡すでしょう。まず読んだ後に」
「……読むだろうさ、だからガトーのところに、アクシズもノイエジールを送ったんだ。邪魔されるにしても、あの機体相手じゃ、ろくに何も出来ないはずさ」
「そこまではそうですが、何も、アルビオンが如き遊撃隊のような一艦に渡したかったラブレターでは、ありますまい、シーマどの。彼らは我が社の補給港、ラビアンローズに寄港したおり、あの情報を手に騒ぎを起こしましてな」
「……強襲揚陸艦が一艦だぞ、手に負える話かい。あの情報が」
「義ですな。義。青臭い言い方ですが、やはり軍人は義によって奮い立つのですな。シーマどのはコーウェン中将に届けたかったようですが……やはり少し、手間をかけさせすぎましたな」
「何をした、オサリバン」
「こちらもラブレターを。とても景気のいい内容のプロポーズを載せましたよ。果たしてシーマどののものと、どちらが情熱的かは、今となっては存じませぬが。私が差し出した相手は、ジーン・コリニー大将です。今や、連邦の総司令官。傍に控えるは、ジャミトフ・ハイマン准将。ご存じですかな」
シーマが、手にした扇を、モニターに叩き付けそうになっていた。
もう、傍観しているしか手のなくなったオサリバンが、ここにくるまでに、もう一手、賭けていた。ジーン・コリニーとジャミトフ・ハイマンの派閥には、シーマは何も賭けていない。グリーン・ワイアット一人で、本来は十分に勝てる賭けだった。
「……コーウェン中将は恐らく、排除されるでしょう。中将では、やはり貫目が足りませんな。しかもシーマどのは直接、届けたわけでも接触を試みた訳でも、ない。コーウェン中将の周囲を動かしやすくせんものと、現場にいたワイアットを排除したまでは良かったものの、重しがなくなれば、意図とは違う、下の者も出てきます。そしてコーウェン中将には、それらに抗うだけにたる武器を用意されていなかった。喩えるなら、機動性を持たないゼフィランサスと言ったところです。それと似たようなものでしたな、あれは」
「……私という馬を、潰そうってのかい、オサリバン」
シーマのやりようはやはり、少し、手が遅かった。だがワイアットとの接触が出来ていれば、全て丸く収まっていたはずなのだ。シーマの計画通りに、いや正確には、アクシズの身勝手な要請通りに、この馬鹿騒ぎは落とし所を、シーマの勝ち、で終えていたというのに。
落とし所を用意せよ。アクシズは全面的な戦争を望んでいない。
曖昧で身勝手な密命。やはり、アゴで使われている。しくじったとしても、アクシズは責任を持たない。シーマは、ただの裏切り者として扱われる、に決まっていた。
「……私を少し、締め上げすぎましたな。これでも気が長い商談を心がけている心算ではありますが、こちらも命がかかっておりますから」
「……アルビオンの連中は」
「我らが補給港、ラビアンローズで、揃って軍法会議ものの騒ぎを。極刑も厭わぬという有様で、何とも若い。それはそうでしょうな。シーマどのから齎された情報、『星の屑』作戦の全貌を知り、尚、不条理に拘束されそうになったのですから」
そんな騒ぎまで起こしたのなら、アルビオンを麾下に従えるコーウェンの失脚は、確定的だった。仮に、全てがコーウェンまで話が届いていても、もう発言権はない。こちらから、ガンダム開発計画の欺瞞、をエサに交渉する術もなくなった。
コーウェンの失脚は即ち、ガンダム開発計画そのものの完全消滅を、意味する。
何の交渉価値もない。ただのテロリストの、能書きにしかならない。
義。
そんなもの、のために、アルビオンの連中は、何もかも、めちゃくちゃにしようとしているのか。シーマは、オサリバンよりもむしろ、アルビオンの連中に怒りを覚えていた。義。そんな、くだらぬもののために。
「大義や志。そんなものは、子供に与えるにはいささか危険な玩具ですな。さて私は、ここまでです、シーマどの。しかしあなたはまだ、踊るのでしょう、鉄火場で。見させて貰いますよ、月から。それとこれはついでの話ですが、シーマどのがお嫌いなガンダム、例の試作機の一つですが……いわば三号機と呼べるものが、ラビアンローズに置いてありましてな。何、これはガンダムだと言えば話が通ったような機体でして、一号機二号機ともまた別ですがね」
「……まさか、それを奪われたのか?」
「ええ。ガンダム試作二号機をデラーズに奪われたようにね。試作三号機、デンドロビウムが、今度は連邦の艦に」
まだ宇宙にいるというのか。あの悪魔のような機体が、もう一機。
政治があり、そして戦争があり、戦線がある。
全てでシーマは、自分が押し込まれている錯覚を覚えた。このままでは、沈む。オサリバンが沈むかどうかは五分の話だが、何もしなければ、シーマは間違いなく、機を失う。
このままでは、デラーズ麾下の艦隊ということでしかない。
「思えば試作一号機も二号機も、あだ花ですな。一号機は過渡期の、それこそ試作に過ぎず、二号機はMk82核弾頭がなければ鈍重なガンダムでしかありません。三号機も、そしてシーマどののガーベラテトラも開発部門の趣味と言って過言ではないと、私には思えてなりませんよ」
「そのMk82核弾頭はどうなんだい? あれは充分に画期的じゃないか」
「はは。科学者と技術者の好奇心と探究心で、我が社は伸びましたのでな。それを尊重して開発したようなものです。お分かりでしょう、あれこそ、あだ花ですよ」
それはシーマにも分かる。まず射程が短い。炸裂に巻き込まれる距離でしか、撃てないのだ。故に試作二号機はあの図体になった。Mk82核弾頭ありきの機体。更にその射程の短さ故に、固定砲台ではなくモビルスーツに運用させねばならなかった。
敵のまっただ中で撃つ、と考えれば随伴機も本来ならば用意せねばならない。敵の陣営に穴を空けなければならないからだ。そしてあの威力は、その随伴機をも巻き込む。ケリィとヴァルヴァロだったから逃れることが出来た、というだけだ。
その威力は、まさに強大と言うに相応しかったが無比ではない。他でなんとでも代用できる。その癖、開発技術が、入り込みすぎている。あれでは量産も出来まい。本当に、技術者、開発者のための、ただ一発のあだ花だった。
後世には残るまい。試作ガンダムも、Mk82核弾頭も。
自分も、そうなのかもしれないと、シーマは不意に思い、そして、その思いを掻き消した。ガトーは連邦の教本、にすら名前が載っているという。ガトー自身がどう思っているかは知らないが、既に、ガトーはあだ花ではない。だが、それを羨ましい、などとも、シーマは全く思っていなかった。
「……それではまたいずれ。シーマどの。私は、あなたのことが好きでしたよ。願わくば貞淑な妻として迎え入れたいと思うぐらいに」
「待ちな」
一方的に告げて、通信を遮断しようとしたオサリバンを引き留めた。
圧をかけた心算が、かけ返されていた。それは、やるものだ、と思わないでもない。オサリバンは、何もシーマには伝えず、ただ沈むのを見ていても良かった筈なのだ。こちらが悔しがる顔を、見たかったのか。そういう顔の私を、見たかったのか。
してやるものか。
不意に、シーマは、眉間で何かが、閃いた気がする。ただの、勘。そう思っても、何処かに確信がある。
「……ひょっとしてオサリバン。お前は本当に私に惹かれていたのかい?」
「当たり前ではないですか。世辞ではございませんよ。シーマどのはご自分の女性としての魅力に、もう少し自覚的になってもよろしいかと」
「そいつは有り難いね。もう少し、男に積極的になってみようかね」
「ええ。それをおすすめいたします。出来れば生き延びて、そうすべきでしょう」
通信。今度こそ切れた。アナハイム社との糸も、これで切れた。
オサリバン。本当に自分に心を寄せていた。だからガーベラテトラなどという過剰な機体を回してきたのだ。シーマに気に入られたいがために。
ゼフィランサス。
サイサリス。
デンドロビウム。
そして、ガーベラテトラ。ガーベラ。
ガンダム開発計画の、直系の機体。全て、花の名前など付けられている。試作機それぞれに着けられている。
開発時期を考えれば、三号機よりも先に出来ていたのではないか。本当の三号機はガーベラテトラではないのか。だからガンダムに持たされるビームライフルを装備していたのではないのか。もしそうであれば、幾ら元ジオニックに任せたと言っても、隠蔽するにも限度がある。こちらから、ガーベラテトラを入手した経緯を連邦に流せば、オサリバンは絶対に無傷では済まない。
強奪されたサイサリスは仕方がない。ガーベラテトラが、ガンダムの試作機を流用した機体であるとすれば、それを、オサリバンは個人的に、好意で、そして手順を踏んだ商いの上で、シーマ艦隊という『敵』に供与したのだ。
時間も技術者もいないから、調べさせていないが、下手をしたら、装甲までガンダリウム合金かもしれない。ガンダムというものを、無敵の存在にさせている、連邦に圧倒的な有利を齎す、装甲。もしそうであれば、ガーベラテトラ、という機体は、ガンダムそのものと言っていい。
機密漏洩どころではなく、外患誘致にも等しい。
これで積極的に、鉄火場に引き込んでやれる。また共に、踊ろうではないか。
それでも乗り切れるというなら、それはいい。これがシーマの見当違いならば、仕方がない。最後の手札が、すかされたというだけだ。
しかしオサリバンがここからどうなろうと、シーマの現状を打開する、ということにはならない。腹いせ。それが、出来るというだけだ。
扇。握りしめていた。気がつけば、折れていた。デッキに、捨てた。
小僧ども、また更新が来たぜ。いよいよデンドロビウムとかいう、試作ガンダムシリーズの中でも悪ふざけが過ぎる何かの名前が出てきた。俺はここから一気呵成だ。書いていた時もずっと乗っていたが、思い返すとここからが「もう止まることが出来ない」という有様だったという気もしているぜ。ここまで付き合ってくれたお前たちなら、きっとこの先も楽しんでくれるだろうと俺は信じている。ここから楽しめなくなったとしたら、それは俺の敗北だろう。甘んじて受け入れるしかないが、俺はそれでも構わない。これは俺の、魂の問題だからだ。小僧ども、まだまだ物足りないぜ。