ビィラックと鍛冶師プレイヤーメインのお話。
婿入りしたりはしない。

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鍛治師の婿入り

SunLuckチャンネル唯一にして伝説に近いプレイ生放送「オル検証」

ぱやガルチャンネル……否、配信者連合全体においても王国騒乱の最大のハイライトとして名高い勝負、通称「双竜決闘」

 

この二つが今まさに私たちにのし掛かっていた。

 

サンラクのあの装備はなんなのか

サンラクと同じ装備が欲しい

 

「……今ので何人目だ?」

 

「数えてない」

 

無理なものは無理だ。

 

だがそれは彼ら「非生産者」には分からない。

 

ユニーク由来のものなんて再現はまず不可能。これはまだいい。

 

「問題は『NPC鍛治師』の作品だよな」

 

「システム上は再現不可能ではない……はずだけど」

 

「根本的にリソースポイントが足りない」

 

「その前に『神匠』の獲得でしょう?」

 

「あれは『甦機装(リ・レガシーウェポン)』の製作がメインだろ」

 

「それは『古匠』」

 

まあこの際どっちでもいい。

 

とにかく現状で問題なのは、私たちでは()()()()()なNPC鍛治師の作品の模造品(コピー)を求める人があまりにも多いと言うこと。

 

そんな鍛冶師プレイヤーにとって荒れに荒れている中、数人だけは作品(オリジナル)を求められているのもまた事実。

 

「イムロンさんとパスタはいいよなぁ」

 

「マシではあるな……まあ、『ペンネ』を求められても断るんだが。……あれツチノコさんでもないと素材集められないから」

 

「イムロンさんは……」

 

「今日も不在」

 

「ログインはしてるみたいだ。掲示板には顔出してるし、新作の報告はある」

 

「てことはやっぱ?」

 

「NPC鍛治師のとこだろうなぁ」

 

……

 

その場にいる全員が一瞬口を閉ざし

 

瞑目し

 

同じ事を思い付いた

 

……気がした。

 

 

◇◇◇

 

「……と、いうことなの!」

 

後日、鍛治職プレイヤーの溜まり場に足を運んだイムロンは、その場で包囲網を組まれることになる。

 

「どうか、後生ですから……!」

 

一目でいいから、いや、一目では足りない。

 

N()P()C()()()()()()()()()()()()()

 

「量産型パスタもそっち側なの……か?」

 

「まあ、会いたいか会いたくないか、だと」

 

 

◆◆◆

 

「と、いうことだ」

 

事に当たってイムロンがまず相談したのは、サンラクだった。

 

「……それを俺にどうしろと?」

 

「ダメな場合は『ツチノコさん(持ち主)とコンタクトを取れ』との最終決定でな」

 

「『当事者()』の意向は?!」

 

「という事で交渉に協力するか、空いてる日取りを教えな」

 

それはもう脅しでは?

 

「あーもう、仕方ねえな……ならまずはヴァッシュからだな」

 

「本人からでなくていいの?」

 

「仮にビィラックがOKでもアニキに無断で連れ出すのはなんとなくだが()()()()。それに、親父が許可を出した、と言えばビィラックも行きやすいだろ」

 

 

と、そんな流れで俺たちはアニキに謁見を求めたわけだが

 

「なんでぃ、そんなことか」

 

まさかの二つ返事であった。

 

「……本当に良いので?」

 

「ビィラックが良いって言えばだがなぁ。ああ、そうだ」

 

そう言い、アニキは指をちょいちょいと招くようにして……魔法陣?

 

「お呼びでしょうか。お父上殿!」

 

出てきたのは二足歩行の猫……いやアラミースじゃねえか。

 

「ビィラックがちぃと外へ出掛けるかもしれんでなぁ。()()を頼めるかぃ?」

 

「愛しの姫君の為ならば喜んで!!」

 

アラミースは初見かイムロン?ポカンとしてると置いていかれるぞ。

 

…………

 

……

 

「という事でビィラックの工房前まで来たわけだが……アラミース、お前はここで留守番な」

 

何故(なにゆえ)に?!」

 

お前が護衛って知ったら気持ちが揺らぐかもしれないからだよ。

 

……

 

「おーい、ビィラック、いるか?」

 

「おお、ワリャか……イムロンもおるんけ。一緒とは珍しいの」

 

かくかくしかじか

 

「もちろんアニキには話を通してある」

 

「オヤジがええっちゅうなら、わちも話してみたいの。鍛冶師同士の交流っちゅうんには憧れもある」

 

言質は取った。

 

 

――数日後――

 

「どうしたんですわ?サンラクさん」

 

「んー?どうした、ってエムルよ、ちょっと思い出しただけさ」

 

「なにをですわ?」

 

「今日だったなー、ってさ」

 

「?」

 

 

◇◇◇

 

「ワリャはそんな近づかんでええ!」

 

ニーネスヒルの喧騒とした市街地の中で声が響く。

 

ローブの女性はそう言って男を突き放すが、男は意にも介さない。

 

「そうはいかないな乙女よ!何せ父上殿直々の依頼、「吹き荒ぶ旋風(ワイルドウィンド)」の名において見事に成し遂げて見せようぞ!」

 

実のところ、街道のプレイヤーの視線を集めていたのは、ローブで全身を隠した女性(ビィラック)ではなく、煌びやかな装いの男性(アラミース)の方だった。

 

「致命兎の秘環、ねぇ……」

 

致命兎(ヴォーパルバニー)でなくても使えるのね、という考えが過るよりも前に、イムロンの頭に浮かんだのは「とんでもないユニークアイテムだ」ということだった。

 

わちゃわちゃとコントをしながら歩く二人を引き連れ、たどり着いたのはある武器屋。

 

「ここが?」

 

「そう……だ。良く工房を借りるんだが、今日は貸し切りにしてある。鍛治師以外は入れないから安心していい」

 

「なるほど」

 

加えて、参加する鍛治師には箝口令を敷いている……けど、おそらくどこかから漏れるでしょうね。

 

だからこれは最初で最後の交流会かもしれない。

 

「アラミースの役目は……」

 

「お任せあれ!長靴騎士団の威信にかけても、愛しの君をお守りしましょう!」

 

 

◇◇◇

 

 

「はい!いや、おい!全員揃ってるか?」

 

「バッチシです!イムロンさん!」

 

「入り口施錠します!」

 

そわそわがざわざわに変わるのを見て、イムロンが出したハンドサインは「一旦座って」。

 

入り口を施錠していた鍛冶師も含め、全員が着席したのを確認してイムロンは口を開く。

 

「全員落ち着いた(?)ところで紹介しよう。こちらが鍛冶師のビィラックさんで、隣が護衛のアラミースさんだ。」

 

フードの人物と、隣の男性が会釈をする。

 

「事前に話しま……話したが、二人のことは掲示板含め一切の他言無用、厳秘情報だ。分かってるな?」

 

同意が取れたことで、ビィラックがフードに手をかける。

 

フードの下から飛び出るウサギ耳に、会場がざわめき

 

ぽふん

 

と、アラミースが変身を解いた。

 

「え?!なにそれ?!」

 

「人に変化できるのか?!」

 

ざわめきは更に激しい議論と推測の波となり、

 

「因みにNPC専用のユニークアイテムです」

 

イムロンが現実を突き付けると『ユニークか……』というさざめきだけが残った。

 

「全員着席したわね……したな?会合を始めよう」

 

「議題はあるんか?」

 

甦機装(リ・レガシーウェポン)について!」

「蠍素材ってどれくらい使ったんですか?!」

「それよりアラドヴァルですよ!」

 

「はい。一旦ストップ。そんなに一度に言っても進まないわよ」

 

「そうじゃの……なら水晶群蠍(クリスタル・スコーピオン)の素材についてから話すかの」

 

一応持って来たんじゃ、とビィラックがインベントリから取り出した水晶の鋏や宝珠に周囲の目線が奪われる。

 

「相も変わらず良い輝き……」

 

「そうかイムロンさんは使ったことあるんですよね」

 

「パスタもそうだな」

 

「これが噂のリソースガン盛り素材……」

 

「水晶素材自体は多いんですけど、ほんと蠍の素材は流通が無くて……」

 

「商会が蠍素材を扱い始めたのも結構最近だもんな」

「高額なのは仕方ないとして、絶対数が本当に少ない」

 

「水晶巣崖が――」

 

 

◇◇◇

 

「どうぞ……アラミースさん、でよかったかな?」

 

「ありがたく頂戴致しましょう。……貴方は参加しなくてよろしいので?」

 

「それなりの人数がいるからな。交代しながらでないと、俺達もビィラックさんも疲れるだろ」

 

良く見ればビィラックの元へも定期的に飲み物や食べ物が運ばれていることに、猫顔の護衛人は納得の言葉を返す。

 

「それはごもっとも」

 

赤い液体の入ったグラスを一口煽ると口角が上がった。

 

「ふむ。これは素晴らしい」

 

「わた……僕らは舌が鈍くてな。お気に召したようで何よりだ」

 

鍛治師もグラスを煽る。

()には美食舌が無いが、仮にあってもアルコールの感触はシャンフロでは感じる事が難しい。

 

「我々ケットシーも疎い方ですが……良いものなのは確かかと」

 

()()()()()()()と鍛治師は感じながらも、目線はある場所に吸い寄せられていく。

 

「……?ああ、(これ)が気になるので?」

 

「バレちまったか。いや、警戒してるんじゃぁない。それも彼女の作品かと思ってな」

 

ただでさえつり上がった口角がさらに上がる、いや、口そのものが大きく開く。

 

「ご明察だっ!鍛治師のヒト!これは以前黒き乙女に戴いた逸っ品!この僕「吹き荒ぶ旋風(ワイルドウィンド)」アラミースのには欠かせぬ、我らが愛の結晶!」

 

「なるほど、性能はどんな感じなんだ?」

 

「非常に取り回しが良く!至高の一閃(プライマル・スラッシュ)にも(しん)折れず!何より我が手に馴染む完璧な採寸と美しいディティーッルッ!!」

 

「とにかく扱いやすい、と」

 

「乙女は使い手を良く見ているのだよ」

 

ふふん、と誇らしげに猫は犬を一振して納鞘。

 

「おいバカミース、ここで剣を振るうんじゃないわ!危ないじゃろうが!」

 

「しょ、承知した……」

 

げんこつを受けた猫は嬉しそうな顔で襟と姿勢を正していた。

 

 

◇◇◇

 

水晶群蠍の素材リソースや特性、英傑武器とそのリビルドの経緯、甦・遺機装とそれに必要な古匠について。

 

兼ねてよりイムロンから伝え聞いていた(リーク)情報を再確認するとともに、鍛冶師プレイヤー達はこのNPC鍛冶師(ビィラック)の熟達度を感じ取っていた。

 

故に

 

「というデザインを検討してるの……」

 

「面白いと思うが……強度が厳しそうじゃな」

 

「そうなのよ。なんとかならないかしら」

 

「構造の簡略化やより強い形への変更で幾らかは良うなるとは思うが……一番は良い、硬い素材を使うことじゃのう」

 

情報交換会はシームレスに武器構想の大相談会に移行した。

 

「今ある素材はこんな感じなのだけど……」

 

「うぅむ……鉱石を多めにするのもありじゃが……コイツもええかもしれんな。硬い外殻から作った武器は硬くなるからの。気持ち程度じゃが」

 

「リソースポイントとは別にモンスターの特性も馬鹿にはできないのね……ありがとう」

 

 

「あ、次は僕のを見てください!」

 

彼女の前に今日だけで何枚の設計図が広げられただろうか。

 

その一枚一枚を良く見て、意見を述べていた小さな口がまた開く。

 

「これはちと尖り過ぎやありゃせんか?使えない剣を渡しても仕方ないじゃろ」

 

奇抜な武器の構想に、兎の鍛冶師からの正直な疑問が突き刺さる。

 

基本を忘れず、扱いやすくて強い、使い手を意識した武器。鍛冶とは、そういう地味でも善い武器の積み重ねなのだろう。

浪漫は大事ではあるが、剣とは振るう者のための剣であるべきだ。

そんな当たり前の、本当に目指すべき所から、俺達は簡単に外れてしまえるのだと再認識させられる。

 

「……じゃが、鳥の人ならええかもしれんな。あん人なら渡せば大抵の武器は使いこなすわ」

 

カランカラン

 

「いるかー?ビィラック」

 

「ビィねーちゃん迎えに来ましたわ!」

 

「?!おどりゃあ、どうしてここに……」

 

「「ぇツチノコさん?!」」

 

なんで扉が開いて、

……イムロンさんが開けたのか。

 

「来るって言うから開けたけど、来ないんじゃ無かったの……なかったか?」

 

「んー、まあ、帰りも隠密は大変そうだなーってのと」

 

ツチノコさんは室内の鍛冶師を見渡すように首を回す。

 

「一通り話し終わった後なら詰められないかな、と」

 

「……もう暫く話したいんじゃが構わんか?」

 

「もちろん。俺が勝手に迎えに来ただけだしな」

 

そして目線はビィラックへと向き

 

「それ次の武器案か?」

 

テーブルへ広げてあった設計図へ。

 

「これはわっちのやないぞ。……そうじゃ、ワリャから見てどうじゃ?コイツは」

 

「んー……?」

 

「まだまだ出てくるで、ゆっくり見るんじゃな」

 

………………

 

…………

 

……

 

「いやあ、久々に話したわ。コレで全部か?」

 

一通りのプレイヤーとの武器案の談義を終えた兎の鍛冶師は大きく伸びをする。

 

幾らか耳を揺らした後、彼女は立ち上がった。

 

「今日は良い1日じゃったわ」

 

それはこちらの台詞だとばかりに、俺達も感謝を返し、

 

「で、鳥の人はどうじゃ?」

 

「これと……これ、コレもだな。イムロン」

 

呼ばれたイムロンがテーブルへと駆け寄る。

 

「プレイヤーの相場感はお前のが詳しいだろ。……幾つ要る?」

 

「全部で7つくらいだと思うわ」

 

「オッケー。じゃあ全部買いで。値段は(いくら)?」

 

周りの鍛冶師は何が起きているのやら、という顔だ。俺も同じだ。

 

「……正直、マーニより素材の方が嬉しい」

 

「そうか。じゃあ試作用も加えて……×10(10倍)くらいか?全部イムロン経由でいいよな?」

 

「それでいいわよ」

 

ツチノコさんはおもむろにインベントリを触り始め……

 

「あ、テーブルの上はやめてね。壊れるから」

 

「あいよ」

 

「それじゃ、イムロンはまたラビッツで」

 

それだけ言い残してツチノコさんは兎2匹と猫を連れて帰って行った。

 

「と言うことで、これ設計した人挙手。はいこっち来てー」

 

「この武器、案を完成させたものをサンラクが買い取るそうだ。問題無ければ素材をこれから提供するから並んで。それと、素材には報酬分も含むから、残った分は好きに使って構わない。完成した武器はわ、俺が預かって渡しに行く」

 

後に残された武器一つを作るには明らかに過剰な量の水晶群蠍の素材(リソース)を前に、俺達は同じことを思った。

 

――外れ値《ツチノコ》を意識しすぎるのはやめよう。

――それはそれとしてサンラクさんにパトロンになってほしい。

と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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