ゲヘナの愛する裁判長   作:このアカウントは削除されました

1 / 21
開廷します



Q.自由とは?

 自由とは?

 その言葉で何を連想するだろうか。

 心任せな状況か、自然体な姿か、気ままな態度か、思うがままの生き方か。あるいは、基本的人間の権利、知識による解放、混乱極める無法。

 

 日本語で「自由」を呼ぶと、英語では二つの単語が導かれる。『freedom』と『liberty』。

 校風を『自由と混沌』とする学校、ゲヘナ学園。ゲヘナで【自由】を問えば、「freedom」。【混沌】を言い換えれば、『無秩序』。【liberty】は主に法で守られた権利としての『自由』。

 結論、ゲヘナの自由は、〈freedom〉。

 

 そう、権利/法(レヒト)がない。いや、正確にはある。しかし、機能しているかどうか怪しい。やたらめったらに作るし変えるし放って置かれ忘れられる。

 それがひとえに風紀委員会とその長・空崎(そらさき)ヒナちゃんを激務に走らせている。そう考察した。けしからんことに大きくは間違っていないだろう。

 

 空崎ヒナちゃん。ゲヘナ学園の最強格にして、キヴォトスでも屈指の実力者。人々からは畏敬の目で見られている。

 口癖は「めんどくさい」。趣味は睡眠・休憩。怠惰で気怠げな佇まい。知らない人から見れば、きっとこの娘の休日は布団の上でごろごろして過ごすのだろう、と思う。最強の称号とのギャップで親近感が湧く。

 しかし、そのあり方は違う。

 

 責任感。他者から推されて就いた風紀委員長という地位。それにも関わらず毎日21時間フルで仕事に務める姿。怠惰な心を人々のために押し込む。

 真面目。ズルをせず、手を抜かず、逃げることもしない。理不尽にも、押し付けられた雑用にも、文句は言いつつ、面倒臭さを隠さず、全て熟す。

 繊細さ。本棚が揃っていないと整理してしまう性格。わずかな違いにも気づいてくれる。神経質とも言われるが、これも魅力のうち。高い本棚に背と手と伸ばす姿は可愛い。

 

 そうヒナちゃんである。ヒナちゃん。

 私はヒナちゃんが好きである。大好きである。前世のときから愛している。

 

 凛とした態度が好きだ。毅然とした佇まいが好きだ。真っ直ぐな姿勢が好きだ。驚いて見開く目元が好きだ。敵と対峙した時の視線が好きだ。愛おしむ眼差しが好きだ。揶揄われて頬を染める表情が好きだ。時折見せる微笑んだ顔が好きだ。怒った時の雰囲気なんて歓喜だ! 内心では面倒臭がっているのが好きだ。それでも風紀委員長としての義務を全うしようとする責任感が好きだ。平和を求める考え方が好きだ。風紀委員達に慕われているのが好きだ。先生との信頼関係は少し悔しい。しかし、それも含めて好きだぁ! 容姿が好きだ。白銀の癖のある長髪が好きだ。紫紺の瞳が好きだ。黒い勇ましい羽が好きだ。ダークパープル下地の紫に発光するヘイローが好きだ。愛機・デストロイヤーが好きだ。スク水姿が好きだ。ドレス姿が好きだ。それでもやっぱりゲヘナ風紀委員長の制服姿が一番好きだ! 声が好きだ。CV広橋涼ボイスが好きだ。儚くも弱々しい、だけど威厳と力を見せようとする声が好きだ。可愛いのが好きだ。格好良いのが好きだ。好きだ。好きだ。好きだぁああ!

 

 ヒナちゃんの全てが好きだ。

 

 今世『ブルーアーカイブ-Blue Archive-』の世界に転生。ゲヘナ学園に通う。青空を見上げ改めて感じる。

 

 私はヒナちゃんがどうしようもなく好き

 

 死んで生まれ返った。別世界だと知った。悲しかった。しかし、ここがキヴォトスだと理解して覚醒した。

 

(ヒナちゃんに、現実のヒナちゃんに、会える!?)

 

 すぐにゲヘナ系列の幼稚園に転園。探す。いない。転園。探す。いない。転園。探す。いない。転園。繰り返し。そして、見つけた。同姓同名の子。

 通園。来た、見た、勝った。お昼寝中だった。笑顔だった。まっさらな幼女だった。原作よりもちっこい、可愛い、猫みたいな姿。ひにゃ。尊死。

 死体は保健室へ。目が覚めて見知らぬ天井を眺めながら、「夢だったか」と愚痴る。すぐに退院。通園。来た、見た、勝った。絵本を読んでいた。欠伸をしていた。目が合った。首を傾げられた。尊死。死体は保健室へ。起床。「夢かぁ」と溜息。退院。通園。来た、見た、勝った。「大丈夫だった?」と心配された。尊死。死体は保健室へ。幼稚園と保健室の往復を何度も繰り返した。流石に耐性が付いた。

 夢見心地の狂気。ヒナちゃんうふふ状態。YESロリータNOタッチ? そんなの知らん。夢だと思って積極的にヒナちゃんに接近。お手々繋いでらんらんらん。好き!

 

 しかし、ある日、不良共の抗争に巻き込まれる。のほほん私に、いつも通り冷静なヒナちゃん。銃弾が私の額にヒットしていたが痛いだけ。死にはしない。お気楽気分。しかし、ロケットランチャー。ヒナちゃんが私を庇う。ヒナちゃんが怪我をした。そこでここが本当の意味での〈現実〉だと知る。

 血の気が失せた。急いでヒナちゃんを病院へ。幸い軽い怪我で済んだ。ロケット弾で負うにはおかしいくらいの掠り傷。しかし、私はヒナちゃんの怪我が治っても怖かった。これからヒナちゃんを失う恐怖で怯えた。4thPV。あの光景が瞼の裏に蘇った。

 そんな中、ヒナちゃんは言ってくれた。

 

「だいじょうぶ。サバキは私がまもるから」

 

 私は死んだ。当時見習いのセナちゃんが呆れていた。

 

 見慣れてしまった天井を見ながら私は思った。

 

 あのヒナちゃん。天使のようなヒナちゃん。そのヒナちゃんに待っている苦労の未来。誰が想像するだろうか? 誰が期待するだろうか? 誰が貶めるだろうか? そんな奴、決して、許せない。そんな事、決して、許してはならない。あのヒナちゃんを何としてでも幸せにしなくてはならない。あの笑顔を守らなければならない。ワーカーホリックなんて以っての外だ。

 私は激怒した。必ず、かの邪智暴虐な過労を除かなければならぬと決意した。

 

 ここで冒頭に戻る。

 原作のヒナちゃんを激務たらしめているのは何か。

 温泉開発部の破天荒な破壊活動か? 美食研究会の給食部を巻き込んだ暴走車か? 便利屋68の社長・陸八魔アルか? ヘルメット団やスケバンに代表される不良グループか?

 将又、政治組織の万魔殿(パンデモニウム・ソサイエティー)か? 議長・羽沼マコトの嫌がらせか? 棗イロハのサボり癖か? 丹花イブキの可愛さか? 京極サツキの催眠か? 元宮チアキのゴシップか?

 それとも風紀委員会か? ヨコチチハミデヤンの暴走か? 火宮チナツのメガネか? 銀鏡イオリが足を舐めさせるからか?

 

 いいや、違う。確かにどれも仕事を増やす要因だが、一つ一つが片付いても新たな仕事が増えるだろう。問題は、そういった要因が自然発生する、ゲヘナ、という土台。ゲヘナが原因だ。

 

 なら引っ越そう、とはならない。何故ならキヴォトスで学校を変えるとは国を変える事と同義。確かに行き来は前世より自由だ。それでも手続きが多く、文化的な違いもあり、抵抗感も生まれる。移住先もトリニティ総合学園では元ゲヘナ生は苦しいだろう。ミレニアムサイエンススクールでは科学技術が煩わしそう。百鬼夜行連合学院では緩すぎる気がする。その他色々学校があるが、どこも色々な問題がある。

 何よりヒナちゃんが面倒臭がっている。結論、可愛い。移住はなし。

 

 ならどうするべきか? 残す所は一つ。ゲヘナを改革すればよい。悪いゲヘナを善いゲヘナに変えるのだ。まずは法律。ゲヘナに司法を持ち込む。

 

 原作で語られるゲヘナには政治的な役割の生徒会である万魔殿、警察権や主に治安維持活動をしている正規軍の風紀委員会。後は救急医学部とか、給食部とか、帰宅部とかがある。

 PVで懲罰委員会なるものもあったが、こちらの世界線には存在しなかった。おそらく原作の懲罰委員会は裁判所みたいな役割だったのだろう。物語を読む限りでは機能していたと思えない。

 

 一言物申す。

 三権分立どこ行った!?

 

 まずは政治をどうにかしなければならない。

 原作で語られなかった部分。そこにメスを入れた。

 

 原作の万魔殿には、立法権のある議会と行政権のある議長が内包されていた。現実の万魔殿には、そこに司法権も含まれていた。まさしく古代の中央集権的な様相を呈していた。権力行使機関をどうにか分離しなければならない。そこで、元々警察権と統帥権っぽいものを保持している風紀委員長に行政権を移管して、司法となる組織を設立し、新憲法となる新しい校則を制定した。

 

 三権分立。

 立法府は万魔殿。議会から選出された象徴的大統領みたいな議長。基本は儀礼的な国事に関する行為しか行うことができない……はず。

 行政権は風紀委員会。議会から選任される風紀委員長。不良が多いということで、選出理由の多くが「強い」「真面目」。まさしくヒナちゃん。

 そして、司法府は原作改変たりうる法務執行部。裁判所が推薦した複数の判事から風紀委員長が部長を指名・任命。

 

 これがゲヘナの現在ある統治体制。大幅な原作改変。まぁ、原作を全て見た訳ではないので、どこまで改変したか不明だが、おそらくかなり変わっているだろう。

 

 私は決して〈原作崩壊〉を望んでいる訳ではない。原作のバッドエンドは、世界の崩壊と同意義。世界の崩壊はヒナちゃんの幸せを願う上では避けなければならない。ブルアカファンの願いでもある。原作ハッピーエンドは壊さない。

 だからと言って、ヒナちゃんをこのままjob漬けにする訳にはいかない。仕事している方が落ち着くとか末期患者にしたくない。ヒナちゃんには〈普通の女の子〉として過ごしてもらいたい。

 そのためなら、安牌な原作ルート沿いではなく、原作改変という愚行をおかしてでも、ハッピーエンドを実現してみせる。それが私の生まれ変わった理由だと思うからだ。

 

 また、ヒナちゃんが〈普通の女の子〉として過ごすには、『先生』の存在が欠かせない。ヒナちゃんは本質的に甘え方が下手くそだ。それを受け止めてくれる存在が必要。それが原作では〈先生〉であった。先生とヒナちゃんの関係性は快いものがあり、嫉妬の対象だったが、ヒナちゃんを幸せにするなら先生との時間は大事にしてもらいたい。多いほうが良い。

 よって、先生との時間を作る上でもヒナちゃんの激務をどうにかしないといけない。原作では睡眠時間3時間。頑張って捻出した時間が3時間。多くても合計6時間の休息。最悪、捻出した時間が睡眠時間だったというオチもあり得る。そんな状況で先生と恋仲になれるほど世の中甘くはない。ヒナちゃんと先生こそ恋人関係が似合うペアもいないのに、他の生徒に掻っ攫われてしまう恐怖。ヒナちゃんの幸せが零れ落ちる絶望。そして、嫉妬。

 正直、私の中でも感情が混沌としている。事実を認めたくない。そんな感情を無視して考えると、やはり『ヒナちゃん幸せ大作戦』の中核には〈先生〉が必要。これは絶対。時間が必要なのだ。愛に大小はない。しかし、重ねた時間が愛を深くさせる。そう信じている。

 だから、私は風紀委員会及び風紀委員長の業務改善を実行しようと思った。それが私の行動原理である。

 

 そうやって暗躍して、10年の時が経った。

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 法廷に入る。「起立!」との廷吏の声。その場全員が起立、する訳もなく、座ったままの傍聴人。飲食をする傍聴人。お喋りをする傍聴人。傍聴人。ここは溜まり場ではない。真面目なのは、被告と原告のみ。クロノススクールの記者もテキトーにメモを取っている。まさしくゲヘナ。

 裁判官席の横に並ぶ。椅子の方が高い。灰色の短髪。灰色の虹彩。左右白黒瞳孔。机から首だけが出ている。生首、と笑う者がいる。気にしない。

 廷吏が「礼!」と叫ぶ。真面目な者だけお辞儀をする。「着席!」。全員が座った状態になる。正確には寝転がっている者もいる。背の高い椅子に座ると、貧相な胸が壇上に上がる。黒の法服。黒の角帽。ヘイローは飾り円に天秤。

 

「只今より、空崎ヒナ被告に対する違法労働事件の審理を行います」

 

 ヒナちゃんが訴えられた事件の裁判が始まった。原告は万魔殿。どうしてこうなった……。

 

 




ここまでご覧になっていただき、ありがとうございます
以下長文駄文になります。主に作者の感想です。本作の再掲載の経緯とかです
興味ない方はブラウザバック推奨です





















あ、読んでくださるのですね
長くなりますがお付き合いお願い致します

本作は、3回目の再掲載です
1回目はアカウント削除に伴い消去。2回目は作品削除。
1回目アカウント削除した理由は、心無い言葉を頂いたため、辛くなって削除しました。匿名投稿ではなかったので、追跡を恐れてアカウントごと
もう二度とハーメルンに戻ってこないと思いました
2回目再開の理由は、やはり拙作を読んでほしいと思ったからです
しかし、断念。完結できない。評価されない。挫折。混乱。評価に惑わされて自分を見失いました。作品だけですがもう一度削除しました
今回3回目。3度目の正直とはいいますが、やはり厳しいものがあります

完結。それは結構重い言葉だと思いました

それでも3回目の再掲載を決意した気持ちとしては、おそらく、執筆に取り掛かった当時のオモイを思い出したからだと思います
書きたい物語がある、読んでほしい作品がある。評価されたいのは当然だが、それよりも当時は純粋な気持ちが強かった
2回も作品を削除して、「なにやってんだろ」と自問自答しました。何がしたいのかわからなかった。もうこの作品に取り掛からない方がいいのでは、とも思いました

いまだに答えは出ません。そもそも完結できるか不明なほど長大な構想が頭の中にあります。エタる可能性の方が高いです
だからこそ、挑んでみたい、最後のシーンをより鮮やかにしたい、想像だけ妄想だけで終わらせたくない。そう思いました。そう思ってしまったんです

罵りがあるかもしれません。当然だ。優柔不断な投稿・削除。読んでくださった方々に対する裏切り。
エタるなんて最初から言うな。お叱りの言葉があるかもしれません。それでも自信はないのです

しかし、きっと、だからこそ、私自身を誇れるようになりたい。再掲載はそうして決断しました
私はプロではありません。プロになりたい訳でもありません。ただ純粋に、物語を書きたいだけ
そこに反応があれば嬉しいなという程度です。いや、やはり今は純粋でもなんでもないですね。評価ほしいです。感想ほしいです。読んでほしいです。物語を書きたいです。そんな思いがぐちゃぐちゃになって表出した結果です

お手柔らかにお願いします
長文失礼しました

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。