ゲヘナの愛する裁判長   作:このアカウントは削除されました

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生徒の流血シーンがあります
苦手な方はブラウザバック



小鳥遊ホシノと空崎ヒナ

 ジャッジメントが機関銃の威力で弾き飛ばされ、手から離れた。森の奥へ回転しながら飛び、重力に従って落ちていき、地面を滑って木にぶつかり弾かれ、カタッと停止。だいたい30-40mくらいの距離が開いた。

 通常の相手ならこの距離でも一瞬で拾いに行ける。しかし、相手がヒナちゃんであれば無理だ。10mでも無理だ。その間、無防備な背中を撃たれるか、移動不能を狙って脹脛を襲われるか。どっちにしろ、戦闘続行は不可能になる。

 

 ヒナちゃんを睨んだ。

 

 ヒナちゃんは毅然としていた。

 

「サバキ。降参(サレンダー)して。そして、ゲヘナに帰って」

「……嫌だと言えば?」

「ここで気絶させるだけよ」

 

 ここで嘘を吐くことも可能だ。

 例えば、「降参するよ。やっぱりヒナちゃんは強いね」とか言って、油断を誘い、背後から手榴弾を投げつける。例えば、ゲヘナに帰るように見せかけて、遠回りだがアビドスへ向かう。

 

 しかし、ヒナちゃんにそんな嘘は吐きたくなかった。

 

 自分の懐に手を入れる。ヒナちゃんのデストロイヤーが火を噴く。ノックバック。手榴弾のピンが外れる。投げる。機関銃の弾と衝突。宙空で爆発。煙が広がる。

 戦術的撤退。森の奥へ。ここで逃げ切れば勝機は見つかる。ゲリラ戦は得意だ。長期戦になってしまうのがネックだが、暗殺者として一撃で沈める準備はある。

 

「サバキ、大人しくして」

 

 並走していた。

 

 あ、と思うと、蜂の巣にされる勢いで弾丸を浴びせられ、後ろの樹木達は弾け飛び、私は衝撃で転がる。うつ伏せになる。すぐさま起き上がろうとして、後頭部に重い感触。

 

「ごめん、サバキ」

 

 頭を撃たれた。地面に顎を打ち付け、脳震盪。力が抜けた。ヒナちゃんの羽織った制服が見えた。意識が遠ざかるのを必死で堪えた。

 

「ダメ……ダメだ……ヒナちゃん……行っちゃ、ダメ」

「サバキ……これは風紀委員会の問題。風紀委員会の問題は、風紀委員長である私に責任があるわ」

「ダメ……責任は()()が取る……だから、私が……行かなきゃ……」

「? ……何を言っているの? ……あなたも()()でしょ?」

 

 意識を失った。

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 朦朧とする意識。痛いのに眠い。ぼやけた思考。このまま硬いアスファルトの上で寝たい。その誘惑。

 

「ハミ!?」

 

 声が聴こえた。誘惑を抑え込み、目を開ける。カヨコさんとシロコさんが顔を覗いていた。

 

「お、お二人、とも……どうかしました、か?」

「私の名前わかる?」

「……カヨコ、さん。……それとシロコさ、ん」

「OK。意識は無事ね」

 

 それ以外は無事でないことが判った。引っ繰り返ってうつ伏せになる。汗が頭から垂れるような感触。身体が動けないため、目に入る。滲みる。地面に汗が落ちる。見ると赤かった。

 

「今手当てする。アヤネ、救急箱」

『はい! すでに送っています!』

 

 仰向けにさせられた。布を頭に押さえつけられた。所謂圧迫止血法。

 

「ちょっと出血が多いね」

「頭に直接当たったから」

「頭は毛細血管が集まっている場所だから、少しの怪我ですぐに血が出る」

「頭蓋骨は割れていない。怪我の深さは浅い。広範囲で出血してるだけ」

『救急箱、到着しました!』

 

 軽い震動。カヨコさんが離れる気配。周りを見る。廃車の陰にいた。銃撃戦の音がする。硝煙の香り。

 

「い、ま……なにが……」

「他のみんなは戦闘中。風紀委員会が攻めてきた」

 

 風紀委員会。目をかっ開く。上体を起こそうとして、頭を圧迫されている状況だと思い出す。

 

「ハミ、じっとして。傷が開く」

「で、ですが」

「今のハミが行っても足手まとい」

 

 何も言えなかった。大人しくする。観念したと見たシロコさんは「ん」と満足そうに頷く。カヨコさんが戻った。

 

「とりあえず、止血剤と痛み止めと包帯。それがあれば戦えるでしょ」

「……カヨコさん、は、なんで残って?」

 

 溜息。諦めたような表情で、応急処置をテキパキとしてくれる。私に落ち度があったのだろうか?

 

「社長の一声で便利屋も参戦することになったのよ。アビドス側について」

 

 どうして、と声が出る前に、応急手当が終わった。頭を叩かれた。傷口に滲みる痛み。開いたかもしれない。これくらいは怪我人に対するキヴォトスでの挨拶だ。……もちろんゲヘナの救急医学部やトリニティの救護騎士団はこんなことしない。

 

「それと、ありがと」

「?」

「庇ってくれたでしょ」

 

 記憶がスッポ抜けている。首を傾げる。カヨコさんは呆れたように溜息。シロコさんと共に立ち上がった。私も起き上がろうとすると、手で静止させられた。

 

「もう少し止血するまで待った方がいい」

「で、ですが……」

 

 意識もはっきりしつつある。身体もたぶん動かせる。当然だが、全力疾走は無理かもしれない。けれど、全回復までそこまで時間はかからないだろう。

 

「それとも、私達がやられるとでも思う?」

 

 そうは思わなかった。確かに、風紀委員会は正規軍なだけあり、練度は高い。チームワーク、団体行動、組織的な戦闘。

 しかし、アビドス生と便利屋68は少数精鋭。機動力が高く、練度も一級品。簡単には負けないだろう。

 とはいえ、数で押されたら敗北の二文字が見える。

 

「そんな顔をしなくても大丈夫。今は拮抗。いえ、押している方よ。各個撃破するようにみんな立ち回っている。風紀委員長不在の風紀委員会相手に遅れたりはしない」

 

 安心させるような微笑みを浮かべた。久しぶりにカヨコさんの笑った顔を見た。私は大人しく横になった。

 

 

 

 ある程度血が固まった。立ち上がり軽い屈伸。……大丈夫そうだ。

 前線へと赴く。

 

 と、アビドス・便利屋連合は一個小隊を片付け終わっていたようだ。委員と向かい合って会話している。あれは……チナツとイオリだ。

 

「な、なに?! 私たちが負けただと?!」

 

 イオリの驚愕。チナツの諦観。先生が一歩前に出る。

 

「〝久しぶり、チナツ〟」

「先生……こんな形でお目にかかるとは……」

 

 溜息。後悔と苛立ちの混じった吐息。声も焦っている。

 

「先生がそこにいらっしゃることを知った瞬間、勝ち目はないと判断して後退するべきでした……私たちの失策です」

『アビドス対策委員会の奥空アヤネです。所属をお願いします』

『それは私から答えさせていただきます』

 

 風紀委員会から公開電波通信が繋がった。ホログラムとして行政官の姿が現れる。

 

『こんにちは、アビドスの皆様。私はゲヘナ学園所属の行政官、アコと申します。今の状況について少し説明させていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか?』

「ん。知ってる」

『?』

 

 私が前に出る。行政官が驚く顔が見える。

 

「行政官、校則第九条違反です。これは法務執行部部長のサバキ裁判長やヒナ風紀委員長も知る所です。……たぶん……手を引いてください」

『……まさか、すでに手のものを送り込んでいるとは思いませんでした。流石、サバキ裁判長。何かしてくるとは思っていましたが、ハミさんを派遣するとは』

 

 しかし、と苦々しく不敵に笑う行政官。

 

『アビドスの校則がどうなっているかは不明ですが、少なくともゲヘナでは内政干渉は厳罰対象です。裁判長もあなたも罰せられるでしょう』

「確かに普通なら罰則対象です。普通なら」

『?』

 

 私は懐から退部届を掲げる。

 

「先生のお陰で、私は法務執行部から退部できました! 日付は昨日です! これで政治的な拘束から私は解き放たれています! 裁判長がたとえ私に命令したとしても私はそれに従う義務はありません! よって、これは私のボランティア活動です!」

『なっ! そこまでしますかっ。それがどういうことを示すのか、あなたはわかっているのですか!?』

「当然です。ですが、内政干渉と見られるよりはマシです。裁判長に迷惑がかかるのも論外です。そもそもあなたにだけは言われたくありません」

 

 沈黙。時限爆弾でも設置されているのではないかと思われるくらいに時間が進む。

 

 ついに、行政官が口を開いた。

 

『こうなったら仕方ありませんね。……攻撃を開始してください』

 

 

 

 戦局は膠着状態を維持した。私はビルに上って上からの射撃。移動しては射撃。対戦車ライフルの威力を精密に一人ずつ当てる。頑丈なキヴォトス人とて流石に一発で気絶。他の委員が気絶した委員を後方へ下げる。そこは狙わない。戦力が下がってくれるのに、狙う必要はない。違う分隊に照準を合わせる。

 私の存在に気が付き、こちらに来ようとする分隊を発見。

 

「こちら、ハミ。現在のビルに委員が集まってきました。移動します」

『はい、わかりました。そこから南東のビルが施錠されていません。そちらに向かってください』

 

 無線でアヤネとやり取り。分隊の一人を狙撃してビルから脱出。隠密行動を駆使して、次のビルに上る。それの繰り返し。

 前線ではホシノさん不在のアビドスがイオリ率いる風紀委員会を押し留め、遊撃部隊な便利屋が側面を攻撃。相手の前線が崩壊、あるいは局所的な撤退。

 

 しかし、数は減らない。正確には減っているのだろうが、多いため誤差だろう。最初は一個中隊。そして今、増員。第八中隊までいるということは、二個大隊。1,000人近い。

 

「はぁ……はぁ……まだいるの!?」

「この状況でまだ投入……!?」

「た、大したことないわよ! まだまだ戦えるんだから!」

「それはそうだとしても……これはもう、アコの権限で動かせる兵力を超えてる。ということは、この襲撃、アコの独断じゃなくて、まさか……」

 

 カヨコさんがこちらを向く。私は首を振った。

 

「風紀委員長が指示した事実はありません。アコ行政官の独断です」

「それは……信じていいの? 根拠は?」

「事前に、調査官が調べました。行政官が風紀委員長にバレないよう、演習行動を計画していました」

「……なるほど。それをヒナは知っているってこと?」

「裁判長がお伝えしたのですが、昨日までエデン条約関連でトリニティに赴いていて身動きが取れていませんでした。……また本日は、有給休暇消化義務日となります。つまり」

「アコの暴走を止めるやつがいないってことね」

 

 肩を落として頷く。カヨコさんは前を向く。まぁあまり心配してないけど、とカヨコさんが呟く、私は首を傾げる。

 

『さぁ、これで最後にしましょう。風紀委員会、三度目の攻撃を────』

 

 行政官のホログラムが手を挙げる。そして、下ろす。

 

『開始してください』

 

 軍靴の音が迫る。規則正しく重い音。ビルの隙間に風紀委員達の姿。第三回目の戦闘が始まる。

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 空崎ヒナは獄寺サバキを見下ろしていた。死んだように気を失っているサバキの元へ屈む。右手の手袋を脱ぎ、口元に手を当てる。唇の感触と細く小さい確かな吐息。

 ヒナは安心する。そのまま、手を頭へ。混じりっけのない灰色の髪。本人はこの色を好んでいないが、ヒナは好きであった。手入れをしているためか、指がスッと通る。手櫛で艷やかな髪を楽しむ。どこか哀愁と、迷いが見られた。

 

 ヒナが溜息を吐いて、サバキの頭を撫でる。猫の毛皮でも撫でるように、優しくやわらかに。

 こんなことをしている場合ではない。すぐにアビドスへ行き、アコを止めなければならない。しかし、ヒナは躊躇いを見せた。

 

「ヒナ、ちゃん……」

 

 ドキッとした。が、寝言だと判断できた。吐息が寝息に変わっている。目もレム睡眠。目玉が振動している。ちょっとしたことで起きる可能性がある。それは不都合。

 

 ヒナは目を瞑った。深く息を吐く。名残惜しそうにしながらもきっぱりと髪から手を離す。

 立ち上がって、数瞬止まって、閉じていた目を開いた。羽織っていた制服を翻した。アビドスへと駆けた。後ろを振り向かずに。

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 アビドス廃校対策委員会のメンバーに疲労の色が見えた。

 便利屋も目立った疲れは見えないが、苛立ちと焦りを抱えていた。それが傍目でわかるくらいに、戦線は少しずつ確実に下がっていた。こちら側が小規模な撤退を繰り返していた。

 とはいえ、弾薬補給はまだある。信じられないことに、先生の支援物資にはアビドス生だけでなく、便利屋や私の銃に合う銃弾やムツキさんの爆弾が揃っていた。不思議だが、今はそれどころではない。

 

 風紀委員会側も、戦力を半減させているようだ。人員はキヴォトス人特有の頑丈さで減らないが、武器の損傷や弾薬の数量が充分に回せなくなっているのを確認した。ビルの上から見た感想。

 前線を押し上げたり、手薄になった箇所へ攻勢に出たりした。しかし、焼け石に水。

 

 敗北。その二文字が目に浮かぶ。

 

『ハミさん! 後方支援お願いします!』

 

 ハッとする。先生の指示でアヤネさんが無線を放つ。私は慌ててしまって、出鱈目な照準でトリガーを引いた。当然外れた。

 舌打ち。集中力の減退。汗を拭う。

 

『〝ハミ、大丈夫?〟』

 

 先生の声。私は移動しながら話す。

 

「すみません。集中力が落ちています。場所もバレたので、移動します」

『〝うん。……無理はしないでね〟』

 

 地上で指揮を取っている先生には敵いませんよ、と思う。先生は銃弾一発で簡単に死ぬらしい。それを認識させられたのは、先生に銃口を向けた後だった。今思い出しても冷や汗が出る。殺人未遂。何度思い出しても後悔しかない。

 地上に下りると、銃撃を受けた。風紀委員がスタンバっていた。物陰に隠れる。無線で連絡を取る。

 

「こちらハミ。敵と地上で交戦中。支援滞ります」

『〝ハミ。そこから動ける?〟』

「いえ、弾幕が厳しく身動きできない状態です」

『〝今からそっちにセリカを向かわ────〟』

 

 向こう側で爆発音。無線が途切れる。肝が冷える。

 

「先生! 先生!?」

 

 50mm迫撃砲が手前で着弾した。物陰のコンクリート片は跡形もない。銃弾を受ける。雨霰。逃げ惑う。50mm迫撃砲が発射される音がした。空を見上げる。が遅く、後ろで着弾。吹き飛ばされ、ビルの壁にぶつかる。頭の傷が開いた。一筋の血が眉間から鼻筋を通って、唇に浸った。苦い。鉄の味。

 また、砲弾が飛ぶ。倒れた私に向かう。

 

(あ、やられる)

 

 目を瞑った。着弾。しかし、直撃も爆風もなかった。

 

「大丈夫? ハミちゃん」

「ホシノさん!?」

 

 目を開けるとホシノさんがいた。盾で砲弾を受け止めていたのだ。

 

「今までどこに!? って今はそれどころじゃない! 先生が! 先生が!」

「大丈夫だよ。おじさんがさっき助けたから。その代わり、無線機は壊れちゃったけど」

 

 ホッとする。

 

「じゃあ、一旦撤退しよっか」

 

 

 

 アビドスと便利屋と先生と私。固まって風紀委員達に囲まれていた。

 まぁ、無線機が壊れたり衝撃で落としたりしたため連絡が取りづらい状況だったから、離散しても集合しても状況はあまり変わらない。疲労も濃ゆい。唯一五体満足なのは先程来たホシノさんのみ。

 

「ねぇねぇカヨコちゃーん。風紀委員会弱いんじゃないのぉー」

「間違ってはいないよ。風紀委員長がいない風紀委員会は弱い」

「確かに、一人一人は弱いですけど……」

「ん。数が多い……っ」

 

 跳弾があり、少し位置をズラす。数の暴力と言わんばかりの弾幕。包囲網を突破しない限りは勝機を見いだせない。何発が隙間から撃っては、迫撃砲の照準をズラして直撃は免れているが、時間の問題だろう。

 

「……とりあえず、おじさんが前に出るよ。それで包囲網を突破しよう」

「あの軍勢よ? すぐに取り押さえられるのがおちよ」

「ん。ホシノ先輩なら大丈夫。私が保証する」

「わ、私も保証します! 唯一私が逃げ切れなかった相手です! これで信憑性が増したでしょ?」

 

 ちょっと誇張はしているが、ほぼ事実。というか、まだ実力を隠している可能性まである。

 カヨコさんはホシノさんに少し関心を示すような素振りを見せた。

 

「とりあえず、わかった。じゃあ、こうし────」

 

 弾幕が止んだ。公開無線が入った。

 

『まだ戦う気ですか? もうそろそろ諦めたらどうですか?』

「っ……! 誰が!? 諦めるもんですかぁ!?」

『猫が鳴いても可愛らしいだけで、怖くはありませんね』

「なにをぅ!?」

「……そういうアコ。あんたも焦っているんじゃない?」

『?』

「ハミから聞いたけど、風紀委員長はあんたの行動を止めようとしてるんでしょ? 来られたら計画がおじゃんになる。焦っているのはそっちの方よ」

『……確かに、ヒナ委員長は私の今の行動をお認めにならないでしょう。わかっています。真面目で正義感の強いかたですから。……ですが』

 

『だからこそ、私は委員長の望む世界を見てみたいんです。その道にエデン条約があります。これをクリアしないと私は委員長の見ている世界を見ることができないんです……ですから』

 

 進軍してください。

 

 軍靴の音。規則正しく重い音。弾幕がさっきよりも強い。先程までは遮蔽物の陰からちまちま撃てる隙間があった。その時に迫撃砲の準備を邪魔していたのだ。しかし、それができない。つまり、

 

『迫撃砲、斉射してください!』

 

 花火の上がる音がした。笛の鳴るような甲高い、そして脅威の音。青空に描かれる、放物線。爆薬の詰まったそれは、こちらへと吸い込まれるように落ちていく。しかし、ホシノさんが前に出た。

 IRON HORUSを掲げる。迫る砲弾を盾で弾く。ショットガンを放ち空中で誘爆させる。しまいにはサッカーボールでも蹴るように足で逸らす。

 

 砲弾は一発もこちらに飛んで来なかった。

 

 敵味方、互いに呆気にとられる。曲芸。ホシノさんは着地して「うへぇ~」と言って、こちらを向いた。

 

「どう? これでもおじさん、強いんだよ?」

 

 カヨコさんは唸る。アルさんは白目を剥いて、ムツキさんは驚き顔。ハルカさんに至ってはキラキラ目を光らせている。

 

「……え? ホシノ先輩、こんなに凄かったの?」

「いやだなぁ~、セリカちゃん。一緒にいてその感想はないよぉ」

 

 仕方ないでしょ! とセリカが怒鳴るのを尻目に私はカヨコさんを見る。

 

「作戦は? 参謀長」

「……ホシノって言ったっけ?」

「んぅ?」

「あんた頼りの作戦になるけど、いい?」

「おっけーおっけー。さて、おじさん頑張っちゃうぞー」

 

 行政官からの公開無線が繋がった。

 

『……少し驚きましたが、それでもあなた達は袋の鼠です! 降伏することをオススメします!』

 

 焦りの声色だった。こちら側は準備ができた。ホシノさんが私達を見て、盾を構える。風紀委員に突撃した。銃弾が集中する。しかし、ホシノさんはなんのそので、盾に隠れつつ委員を撹乱していく。縦横無尽に動く。ハルカ、シロコ、セリカが左右に別れ、追従。アルさんと私は後方支援。一人ずつスナイプ。

 先生が声を張り上げて適確な指示を飛ばす。アヤネさんのドローンで弾薬補給。ホシノさんとシロコさんとセリカさんとハルカさんで撹乱、そして誘導された委員達は一箇所に。そこをノノミさんの機関銃とムツキさんの爆弾で一網打尽。

 

 もちろんこちらも被弾がある。先生を守る。色々制約がある。それでも戦線を押し上げた。ホシノさんが加わるだけでまた歯車が噛み合うように回りだした。先生も指示出しが流暢だ。

 

 そして、ついに、ホシノさんが包囲網の外に出た。穴が開いた。そこを補強するようにセリカさんとノノミさんが弾幕を張る。私とアルさん、カヨコさんで先生を護衛しつつ、前へ前へと進む。

 包囲網を突破した。

 

『……』

 

 しばらくすると、アコ行政官のホログラムが引き攣っていた。

 

 私達は風紀委員の補給路を寸断した。命令系統もぐちゃぐちゃにした。惑う少女達。各個撃破されていく委員達。逃散していく。

 

 私達の勝利であった。

 

 




閲覧、しおり、お気に入り登録、評価付与、誤字報告、ここすき、感想、沢山頂いて嬉しいです。ありがとうございます。かんしゃぁ

今回は補足させていただきます
流血
キヴォトス人は頑丈。そのため、流血自体は稀な現象
原作でも50mm迫撃砲の被害にあったカヨコちゃんは流血しておりませんでした。気絶か倒れるかはしておりましたが

ですが、あえて、流血させました
これは作者として感覚的に、ここは流血があった方がよりよいものになりそうだ、というワガママです

とはいえ、なるべく不自然にならないようにはしました
しかし、原作既読の方は結構違和感を持たれる方もいるでしょう

キヴォトス人が頑丈かどうかは、考察で別れる所でしょう
銃弾や爆発については強い、が靴擦れや転けて怪我をする
ただ今回に限って言えば、本当に作者のワガママです

今回は迫撃砲なので、弾丸+爆発
原作描写だと痛い程度
もしかしたら、軽い怪我もしているかも? と思って、思い切って投稿しました
不快に思われた方には、謝罪を



いつも、感想ありがとうございます! 毎回読ませていただいてます! 全てに返信する予定なので、返信が苦手な方は、評価付与の一言でお願いします。
そんなこと言うと、評価されたいみたいな欲望が見え隠れしますが、事実、評価されると嬉しいです
低い評価でも、一言書いていただけたら、参考にします。まぁ、あまり強い言葉は使わないでくださいね
第一話の後書きで長く書きましたが、今ではだいぶ精神的にも成長したので、ある程度の賛否には対応できます。もちろん、作品に反映するかどうかはまた別
しおりやアクセス履歴は、何人の方が最新話まで読んでいるのか確認するためにもよいので、しおり登録はしてもらえると助かります
誤字報告、毎回助かっています。確認しておりますが、どうしてか見逃してしまい恥ずかしいです。ご指摘いただかなければ一生恥を残したままでした。かんしゃぁ
お気に入りしてくださった方が多く、全員を把握できておりませんが、この作品の更新を待っていてくださるという現れなので、嬉しいです
ここすきも参考にさせていただいてます! 狙った所がうまく伝わっているのか、とか、予想外の所で反応してくださる、とか。見ていて楽しいです

上記書いたことは、無理強いしません。また、取り消すのも自由です。読者の皆様が快適にハーメルン生活を謳歌して頂けたら幸いです
もちろん常識の範囲内で

長文失礼しました
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