ライファン[LIFE FANTASY]〜抜忍人生第弍録〜   作:モノイクロ

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10のお話[過去]

 

 

 

 

 

数夜忍衆(すうやしのびしゅう)華毒(かどく)山倉(やまくら)太輔(だいすけ)の始末をしている時刻。

炎上中の和々城(わわじょう)を脱出するため、城内の抜け道を使い、窮地を脱する、和々城 城主・安佐馬(あさま)十郎(じゅうろう)と忠臣・山倉(やまくら)誠ヱ門(せいえもん)

 

「殿! 外に出ます!」

「うむ!」

長く複雑な抜け道だが、二人はその道筋を頭に入れている。

いくつかの出口があるが、2人は城の東方面にある林間地へと出る。

 

(後は、山を1つ越えれば、上永の地とその友たちに会える!

 着いた暁には、この騒動の発端…三嶋(みしま)めの無礼者に誅を下す…!!!)

安佐馬は今回の和々城炎上事件の黒幕が三嶋と勘づいていた。

 

 

〜〜〜

 

 

今回の騒動が起きる前から安佐馬家と三嶋家との間での交流が数回あった。

安佐馬は、交流が良好に進んでいくのなら三嶋家との同盟契約をも厭わなく思っていた。

 

しかし、その考えを改めたのは三嶋(みしま)重屏(じゅうへい)が二つ目の国を盗った時のことだ。

その時も三嶋は、その国との和睦を目的とし、近づいていたのだが、突如として戦を始めたのである。

 

第三者目線からは、和睦が上手くいかず、何かしらのいさこざになり戦に発展してしまったかの様に思われるが安佐馬はその時の戦の生き残り、百姓や町民、足軽などを自国で受け入れ、その人達から話を聞いていた。

百姓達からは田んぼに利用させてもらっている川が毒物に侵され、町人達からは山道や街道での人襲いがよく起こった。

これは合戦が始まる前、つまり三嶋家がその国との交流で幾度か国内に入ってきていた時になる。

 

極めつけ、戦に参加していた流れの負傷の武将に聞かされたのは三嶋軍が伝令で送った内容と全く違う行動をしたことである。

 

【国の衰退が大きすぎこれ以上攻め入るのは当家としても気が引ける。

 国主の御璽(みしるし)を差し出し、降伏するのであれば最大限の後処理をさせてもらう。

 返事は三日後、懸命なご判断を願いたてまつる。】

 

このような伝令を送ったのにも関わらず、三嶋家はその伝令の一日半後に攻め入り、この国は奪い取られた。

 

奇襲作戦と言え、汚染と治安悪化で弱体しつつある国にこのような虚言を吐き、更に追い詰めるやり方に安佐馬は憤慨していた。

 

 

 

そして、安佐馬がついに疑問の余地をなくしたのは、歌山国(かやまこく)と同盟している緒有賀ノ国(おうがのくに)

その国にいる家臣の一人。 兼白(かねしろ)龍賀淨(りゅうがじょう)義上(よしかみ)の助言であった。

 

「三嶋の者たちは信用してはならん。

 我が国の主、天信(あまのぶ)様もあそこだけは信用できず、いつかあの血族の根を絶やそうとおいでますからな。

 わたくしもそのつもりであります。」

 

緒有賀ノ国は非常に商業と物品流通が盛んであり、他国の貿易品の輸出入も積極的に執り行っている。

その政策などを作ったのは緒有賀ノ国の現国主である、緒有賀・総坐之介・天信(おうが・そうざのすけ・あまのぶ)である。

 

その貿易とのやり取り間には陽ノ本(ひのもと)

この島国の中心である、帝国(みかどこく)もあり、緒有賀ノ国はこの国とも同盟を結んでいる。

 

昔は陽ノ本全土を束ねる帝という存在があり、その血族が陽ノ本を治めていた。

しかし、その威光も年月が重なるにつれ、衰退していき、次々に自分の領地を持とうとする国主たちが現れ、ついに帝国は陽ノ本中央にある小さな国になってしまった。

帝国・国主であり、現帝である、晴帝(はれみかど)公もまだ、齢10である。

 

しかし、ここ近日、帝国の元に戻ってきた国があった。

緒有賀ノ国、天信である。

帝国に献上品を送り、交流を重ね、同盟へと結びつけている。

 

そしてなぜ今更になって、帝国に取り入ったのか安佐馬は緒有賀へと向かい目的を聞いた。

そしてその目的を聞き、この国は信用に値する者たちが集っていると確信。

兼白 義上の助言も信じ、安佐馬は早急に歌山の国主の元へと出向き、緒有賀への同盟を申し込むように申告するのであった。

 

 

~~~

 

 

安佐馬と誠ヱ門が城の脱出路から抜け出し、外に出る。

時刻は21:00を過ぎているが彼らの後ろでは、激しく燃えている城が暗い夜空を照らしている。

 

(交流を拒んだ途端にこの炎上騒ぎ…。

 そして、切り倒したあの忍達は、三嶋がかかえていると聞き及んだ数夜忍衆…。

 もう、すべて明白…!

 三嶋…低劣な愚物が…!

 我が城とそこに仕えてきた家臣の無念…必ずや晴らしてくれようぞ!)

その惨憺な光景を目に焼き付け、安佐馬はあの炎上よりも激しい怒りの炎を抱く。

 

 

 

「おおー! 

 当たった!当たった!

 黒四ぃ、三でぶの読みは大当たりだな〜?」

「ああ…狂弍郎(きょうふろう)。」

「「!?」」

突然人の声が聞こえ、安佐馬と誠ヱ門は腰に差した刀を手に添え、声の聞こえた方を見る。

 

 

木の上に男が2人おり、1人は背丈が大きく、三爪の大きな鉄爪を右腕につけており、不気味にそれをなめながらにやけている。

 

もう一人は静かに立ち、口元を黒布で隠し、紺色の忍装束。

その上から腰丈ほどの黒い外套を羽織っている。

 

 

「しかし、何であの二人にも聞こえる大きさで喋った?

 上から不意打ちすれば楽に殺れたんだが…。」

「馬ー鹿!

 気づかれずに殺っちまったら、それだけだろう?

 怯えさせて、苦しませて、絶望させて殺す!」

手を広げた狂弍牢は、大声で語り始める。

 

 

「生き死にある生物は、生ある者は恵まれた立場!

 死んじまえば虫の餌にすらなっちまう…。

 

 俺様は残虐に人を殺し、それを目に焼き付け、常に自分が恵まれた立場っての自覚しようとしてるんだよ。

 それを心に刻み、天に感謝を捧げる…。

 そうでもしなきゃ俺様よぉ~…自分が生きられてるって事を軽く見ちまうんだ…。

 常日頃から感謝しなきゃだろ?」

長々とイカれた自論を説く。

 

 

 

数夜忍衆・狂弍郎という男は壊れている。

人格、思想、価値観、共感性…その全てが最底辺。

彼の口から出る言葉は、不快かつ苛立ちを与え、人間性が欠けた者の発言。

 

しかし、その狂乱な性格も相まってか、戦闘能力が高い。

この男が討ち取ってきた敵の数は多く、忍衆の貢献が多いのもまた事実。

 

数夜忍衆の長・幻夜爺(げんやじい)は、仮定や理由よりも結果や実績を優先する為、狂弍牢は忍衆の中でも偉そうに振る舞えるだけの地位にいた。

 

背丈は忍衆随一に高く、手足共に長い。

ボロボロで返り血塗れの忍装束に逆だちトゲトゲとした髪型。

首や腕、腰には自作したのか人の眼球や指、耳を結られた装飾品と思わしき物を身につけ、常に薄ら笑い。

もはや、狂犬病を患った野犬が人の姿をしてるだけではと思わされるほどのイカれっぷりである。

 

 

 

「相変わらず気色悪い自論だが、どっちを殺る?

 分担してさっさと済ますぞ。」

狂弐牢が自論を説いてた時、黒四円はずっと軽蔑しきった目を狂弐郎に送っていた。

はやく会話を切り上げたく、黒四円は一対一ずつの決着を狂弐郎に提案する。

 

「けっ! 壱黒道(いっこくどう)と同じで全く不愛想な奴だ。」

「おい!己ら!!!」

「あん?」

2人からしたら唐突に声をかけられたような感覚なのだろうが、誠ヱ門はしびれを切らし、2人を呼び掛けた。

 

「貴様ら! 和々城に火を放った忍衆一派だな!?」

「へっ! だったら何なんだよ、ばーかぁ!」

木から飛び降りた狂弐郎は安佐馬と誠ヱ門に向かって、自分の右腕につけている鉄爪の一撃を繰り出す。

 

「っ!? 殿ぉ!」

「おう!」

安佐馬達は避けるが狂弐郎の放った一撃は重く、2人がいた地面を割り、土ぼこりをたてる。

 

「ひゃりあ!!!」

「っ!? ふん!!!」

そのまま狂弐郎は安佐馬に目がけて突きを繰り出すがそれを察した安佐馬。

逆手で刀を抜き、鉄爪の間に刀を挟み、なんとか顔面へくらうはずだった刺突を防ぐ。

 

「くぅ…!!!」

「ひひひ。」

笑いながら力を入れ前に押す狂弐郎。

負けじに押し返そうと空いたもう片方の手で峰部分を押し始める安佐馬。

膂力では狂弐郎の方が上か、徐々に押し下がらされてしまう安佐馬。

 

 

「殿ぉ!!!」

主の窮地を救うべく、誠ヱ門は刀を抜き、駆け寄ろうとするが。

「っ!!?? なぬ!?」

足に何か妙な感覚が走り見てみると足首に苦無付きの鎖が巻き付いており、その鎖を辿ると黒四円がいた。

「ぐうっ…!」

「こっちに来な。」

「ぐわあっ!?」

そのまま引っ張りこかされ、競り合っている狂弐郎と安佐馬との距離がまた空いてしまう。

「くそっ・・・!」

立ち上がり、前を見ると二人を背に黒四円が立っている。

誠ヱ門が立ち上がっている隙に跳び、誠ヱ門が安佐馬の方に行けないように割って入っていた。

 

 

「黒四ぃ! 大将首で手柄になる奴は俺が殺るぅ!

 おめぇはそっちだ! いいな!?」

「なんでもいいさ。」

黒四円は適当に返事をし、自身の武器である鎖。

苦無のついてないもう片方の先端に鎌を取り付け、誠ヱ門を見る。

 

「邪魔だ!どけぇ!!!」

「来いよ。」

対峙していた双方は一気に走り、距離を詰め、互いの武器が重なり競り合う。

 

 

 

 

 

 

 

 

この炎上事件の後に歌山国は三嶋国に攻め入られ、歌山国という地は陽ノ本からなくなってしまった。

歌山国の防人・安佐馬・暖情・十兵衛と知られる武将がこの事件で帰らぬ人になってしまったからである…。

 

 

 

 

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