ライファン[LIFE FANTASY]〜抜忍人生第弍録〜   作:モノイクロ

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11のお話

 

 

 

 

 

「朝か…。」

外が明るくなり始めると同時に黒四円(こくしまる)は目を開け、寝ていたベッドからスッと立ち上がる。

 

(久々に横になれたから深く寝れた気がするな。)

ここに来るまでに揺れる船の上で見つからないように数十日間過ごしたからか、黒四円は久々に気持ちよく寝れた。

 

朝靄が薄らと出ている早朝。

窓を開け、外の空気を吸う黒四円。

 

(この後、ライナと会うがまだ早いか?

 いや、しかし、やれることもないし、あの広場で待機しておくか。)

昨日、盗った財布を懐に入れ、部屋を出る。

 

 

ーーー

 

 

「おや? 早いじゃないかアンタ。」

黒四円がポベロンの受付まで行くとマラリアがそこにいて、木造りの丸いスツールに座り、紙巻の煙草を吸っている。

 

「ああ、仕事しなきゃならんからな。」

「へぇ…若いのに関心じゃないかい。

 この街の連中はこんな時間帯にはあまり活動しないってのにねぇ…。

 まあ、気張ってきな。」

「ああ、よく寝れて疲れもとれたぞ。

 後、これ。」

そう言うと黒四円は、昨日の金を取り出し、600 Y(ユーラ)程手渡そうとした。

 

「おいおい…昨日の400Yが全額ってのは嘘かい…?」

マラリアの声が低く、ドスの効いた声色になる。

騙されたと思い、怒りが出るのもわかるがその発言には底知れない圧を感じさせた…。

 

「いや、昨日の晩に同室だった奴から稼がせてもらった。」

「盗ったのかい? 悪人だねぇ。

 部屋の物壊してないだろうね?」

「ああ、バレずに()ったからな。」

「ほう…それじゃあ…。」

マラリアは6枚ある紙幣のうち、4枚を彼の手から抜き取る。

 

「ここの昔の基本料金は800Yだったからね。

 まあ、今じゃアタシの気分と客次第で値段を変えてんだけどねぇ。」

「随分、適当だな?」

「年取ったババアの気まぐれで開いてる宿屋だからねぇ。

 こう見えて金持ちだからねぇ、アタシは。」

「そうか、じゃあ、俺は行くぞ。」

「ああ、今度は真っ当に稼いできな。」

出口の扉に手をかけ、開ける黒四円。

 

「部屋は大概、空いてるからいつでも来な!」

「ああ。」

バタンと扉が閉まり、今日も1日が始まる。

 

 

ーーー

 

 

黒四円が出て行った後、再び紙巻タバコを一本取りだし、吸い始めるマラリア。

(あの財布…確か、同室だったガキが出してたのと一緒だったね…。

 結構な額入ってたのをチラッと見たから、もっと吹っかけたらよかったかね〜?)フゥー

 

吐いた紫煙が立ち上り、そんなことを考えるがあの時マラリアにそんな気は一切なかった。

黙っていれば400Yで済んだはずなのにわざわざ彼女に申告して足りない分を払ったのだ。

この宿を経営して、約20と数年と経つがそんな律儀なことをしていった客は片手で数えられるほどだとマラリアは思う。

 

(善人って訳じゃあないね…

 かといって性根の腐った小悪党でもなし…。

 

 善行悪行関係なしに自分の中で線引きをして物事を決めているね、あれは…。

 アタシの価値観と通じ合いそうだし、スリ以外にも色々と出来るんなら、使えそうだね…。)

ニヤリと笑い、タバコを吸い切るマラリア。

 

「オヤスミ!オヤスミ! オババ!

 キョウモイイテンキ!! オヤスミ!」

「朝はおはようだろうがトリ公。

 …ったく、なんで挨拶だけ逆に覚えたかね?」

 

フラッペが奥にあるマラリアの自室から出てき、彼女の頭上を飛び回る。

5年前にマラリアは愛玩動物のペペラインコと総称されてるフラッペを知り合いから譲り受けた。

物覚えは良く、使う言葉もその場面では大体合っているのだが何故だか挨拶の類は逆に覚えてしまっており、マラリアもどこで躾を間違えたかいつも疑問に思っている。

 

 

「オババ! オババ!

 カソウダ! カソウダゾ!」

「? あいよ。

 何があったのかね全く…。」

突然フラッペが言った[カソウ]。

それを聞いた途端にマラリアは自室へと戻っていく。

 

彼女にもまた、秘密の顔があり、いつの日か黒四円もそのこと知ることになる。

 

 

 

 

 

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