ライファン[LIFE FANTASY]〜抜忍人生第弍録〜 作:モノイクロ
クワール街の中央広場。
ほかの区画に行く道すがら、必ず通る場所であり、長く在住している住人も大抵はこの広場を通っていく。
昔、最初にこの街を作った人間の像が立っているが手入れも何もしてないからか、長年の雨と風化で劣化し、街の誰かのイタズラか首が無くなり、もはや元になった人が誰かなぞ全くわからない。
そんな、首無し銅像が目印の広場で待ち合わせをしていた
しかし、約束の時間に早く目覚め、到着した黒四円は、朝の街がどんなものか建物の上から場所を変えながら、見渡していた。
(やはり活動している者は少数だな…。)
彼が見渡した限り、外に出ているものは少なく、そう思った者も今帰ってきたのか…自分の家の中に入っていく。
店らしき看板を掲げた建物なら朝に開店の準備をしそうなものだが、どの建物も全くその気配はなかった。
昨日、見に行った道具屋も準備している気配はなく、開店時間所か今日店を開けるのかも黒四円は怪しんだ。
しかし、肩を落とすような事ばかりでもなかった。
もう1軒、見に行った武具屋には人影が動いていたのが何回も見えた。
(確か、武具屋は9:00に開くと表に書いてあったな。)
現在時刻は7:30 。
希望的観測が多少はあるが、開店準備をしていると予想をし、昨日の看板で見た開店時間に合わせ、黒四円は後で行ってみることにした。
(ん?ああ…あの子だ。)
この街の朝の人通りの少なさですぐにライナに気づいた黒四円。
(日の高さを決めてなかったが…早くに来たのだな。)
この時代には時計がまだ流通してない地もあり、
日や月の高さで大体の時間を予想していた。
だが、黒四円は時計の存在と読み方は知っており、今日出てきたポベロンにも置き時計があった。
彼がポベロンに出たのは6:00前後なので自身の方が待っているのだが、やれることがあったからか黒四円はすぐにライナが来たと思ってしまった。
彼は広場から見えた、高く見渡しの良い建物から飛び降りる。
しかし、広場の首無しの銅像からは少し離れているので、彼は少し駆け足でライナの待つ場へと向かうのであった。
ーーー
(早く着いちゃったかな?)
ライナは辺りを見渡し、黒四円を探す。
彼女自身も早く出てしまった自覚があるのか、回りにある石で造られているベンチに腰を掛けた。
(うーん…クロまる君の口に合ってくれるかな?)
持ってきた蓋付きバスケットと水筒を見て、そう思うライナ。
バスケットに入っているのは、フォカッチャと言われる平たいパンが手の平大サイズで3枚とトマトとチーズのカプレーゼが木の皿の上に盛り付けられ、用意されている。
水筒には紅茶が入っており、木で作られたコップを2人分用意している。
彼女も朝食を済ましていなく、黒四円と2人で食べようとしていた。
(美味しいって言ってくれるといいな〜。)
「はやいな。」
「ひゃあ!?」
微笑みながら考えていた最中に彼女は不意に話しかけられ、間の抜けた声を出して驚いてしまうライナ。
「びっくりした〜…もう、急に話しかけてこないでよ。」
「正面から話しかけたと思うが?」
「か・考え事してたから気づかなかったの!」
「どうしろと…?」
「もう………はい、これがお弁当だよ!」
「あ・ああ…ありがとよ。」
コロコロと変わる彼女の表情に困惑するが同時に面白いとも黒四円は思い、彼女の隣りに座る。
今朝は天気も良く、この街の朝は人も少なく、絡まれることもないだろう。
二人はゆったりと朝食をとるのであった。
~~~
「なんだ、結局、街を出るのは、今日じゃないのか?」
「あはは…。
昨日、フレイア…ああ泊まらせてもらってる友達ね。
その子から聞いた話なんだけど、昨日、私達を運んでくれた馬主さんの馬が盗まれたんだって。」
「ああ、肝が小さいのに言い草は強気だった奴か。」
「昨日買い出しのついでに頼めたら頼もうかなーって思ったんだけど、その前にその事聞いちゃってね。」
朝食を平らげた2人。
彼女が持ってきた紅茶を片手に話をする。
ライナの予想ではここで荷下ろしをするなら次は、彼女の実家がある、フリーリアという都市に馬車は行くと思っていたが馬車を引く馬が居なくなったのであれば、次、行く場所が目的地でも行く足がないので馬車の意味がない。
「じゃあ、ここをいつ出れるんだ?」
「うーん…わかんないけど、何ヶ月もはかからないと思うよ?
さっき話した友達のフレイアちゃんが送ってくれるって約束してくれたから。」
「護衛を買って出てくれたって訳か…。
良い人だな。」
「えへへ〜新人作業者の時に一緒によく働いてたんだ。
フレイアちゃん、槍を使うんだけど…新人の時から強かったんだよ。」
「そうか。
腕もたつなら安心だな。」
「うん!
でも、別の依頼を受けてて、4〜5日はかかるって言ってて、フレイアちゃんからは留守番してなさいって言われたんだよー。
子供扱いしちゃって全くだよ。」
親しそうに友人の話を笑顔で話していたが親が子供に躾をする扱いに遺憾なのかライナはプンスカと頬を膨らませ、少し怒る。
「仕方ないだろう。
会ってまだ二日しか経っていないが、俺から見てもお前さんはのほほんとした印象がある。」
「あー!そうゆうこと言うんだー!?
こう見えてもわたし、旅をし続けてもう4年なんだよ?
フレイアちゃんやクロまる君なんかよりもたーくさんの人達や場所に会ったり行ったりしてて、色んなことも経験してきてるんだから。」
見た目だけで判断されたくないのか、ライナは経験歴を語り得意げな顔をして胸に手を当てた。
「4年か…随分若い時から旅を考えてたんだ。
しかし、作業者でもあるんだろ? ギルドの事は詳しかったし…。」
「そうだよー。
15歳の時に新人作業者として、アイゼンさん…昨日行ったカフェのマスターね?
色々と作業者としてのイロハをフレイアちゃんと一緒に教えてもらったんだ。」
「へえ…さっき4年は旅をしたと言ったから、作業者として専念してたのは1年か…。
作業者時代は随分と短いな?」
「あはは…そうだね…。
でもでも!その1年で作業者ランクは10まで上げたし、1年間はすごーく気を入れて、作業者としての仕事に専念してたんだよ。」
ギルド作業者の本来の目的は国やその街の依頼を受け、社会貢献を行い、報酬を貰って自分の生活も守っていくというのが大前提である。
しかし、その仕事が長らく続くとやはり規律や決まり事などが出来てくる。
このランクもそのひとつであり、このランクが高ければ高いほど、熟練の作業員であることの証になり、継続的に点数が貯まっていればその作業員の仕事への意欲なども計れる。
そして、ランク自体の上限は100であるが、規定のランクまで到達すればギルドからも色々と働く上で有効な特権を受けられる。
まずは依頼を行なっていない期限の延長。
最初の期限は1年間であり、ランクが1上がる度に期限は1年延びていく。
エリエが黒四円に対して言っていたがランク4以上で依頼の掛け持ち。
ランク10で信用性の高い作業者として各地のギルドに知られ、他のギルドでも依頼を受けられるようになる。
そして、そのランクアップに必要な点数の獲得はギルドで受けられる依頼をこなすことだけである。
依頼内容によって獲得点数などは変わるが1年間しっかりと作業者として働けば、ランク10までにはあっさりとなれる。
「ランク10になれば各地のギルドで仕事を受けられる。
旅をするのも路銀がいる…。
だから、あんたは作業者の仕事をしているのか。」
「その通りなのです!
大陸ならギルドがない都市や街なんてそうそうないし、仮にまだギルド政策がされてない国に行っても、演奏でおひねりもらえることもあるんだー。」
「そうか、そういう生き方もあるか。」
黒四円は彼女が浮き雲のように自由に生きてると思っていたがその実、その様に生きる術を考え、努力もしていると知り、心の中で感銘と賞賛をもった。
彼女が作業者になった理由や作業者仕事の事などを話していれば時刻は8:30過ぎであり、ちらほらと人も見えてくる。
「さてと…俺はもう行くが、あんたはどうする?」
「う~んそうだね~…。
子ども扱いされて不満そうにしてたけど、フレイアちゃんが帰ってくるまで、家からなるべく出ないようにするよ。
ただでさえ急に押しかけちゃってるからこれ以上迷惑かけられないし、昨日、君にも迷惑かけちゃってるからね。」
「気にするな。」
コップに入った紅茶を飲み干し、立ち上がる黒四円。
「朝餉、かたじけない。
非常に美味かったよ。」
「そ・そうだった?
えへへ、ありがとう///」
「ああ。
四、五日もこもるのは暇だろうがまあ、頑張れよ。」
「だいじょーぶ!
楽器の練習や曲作りとかしてればあっという間だよ!
そっちもお仕事頑張ってねー!」
双方お互いに手を振りながら別れる。
今日も色々な人々の日常が始まる。