ライファン[LIFE FANTASY]〜抜忍人生第弍録〜   作:モノイクロ

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13のお話

 

 

 

 

 

「御免。」

 

ライナとの朝食を終えた、黒四円(こくしまる)

ギルドでの依頼を受けに行く前に早朝に確認した、武具屋へと足を運ぶ。

店の看板には【(はがね)】と書かれ、字体と文字を見て、黒四円は店主は陽ノ本(ひのもと)出身かもしれないと少し思い、店の扉を開けた。

 

 

「らっしゃい。」

挨拶した声の方に小男がいた。

 

髪の毛は短く、鍛冶場で火を使うからか汚れた白鉢巻をし、上にまとまるようにしていた。

身長は小さく130㎝近くしかなさそうだが、岩石のようにどっしりとした体つきをしており、皮膚がよく焼けている。

白肌着に橙色ズボン、その上から作業道具などが付いている茶色の革エプロンを身につけている。

 

今彼は、店に置いている武器や防具の整理をしていた。

 

鉱人(こうじん)か…。)

 

 

 

鉱人(こうじん)…これは陽ノ本での呼び方であり、大陸では主にドワーフと呼ばれる種族である。

 

動物が多種多様にいる様に人族にも様々な姿形をしている者達がいる。

ドワーフ族も数ある人族の1種族である。

 

黒四円やライナのように外見的特徴があまり無い人族。

これらを只人(ただひと)、ヒューム、ヒューマンなどと呼ばれている。

 

対してドワーフには特徴的体型やものの考え方、性格などがある。

 

今、黒四円が出会った鋼の店主。

成人になっているのに彼の背丈が低いのも種族の特徴であり、ドワーフの平均身長は130〜150cm。

長身のドワーフは滅多におらず、男女問わずそれぐらいの背丈である。

 

力においては只人族より何倍も優れており、生まれて5つのドワーフの腕力ですら、成人只人の男性と同等近くはある。

そのためか体格は横に広くでかく、男女問わず、ずんぐりむっくりな体型になっている者が多い。

 

陽ノ本人(ひのもとびと)鉱人(こうじん)と読ぶが如く、ドワーフ族は土や鉱物と共に生きていると言っても過言ではない種族。

 

ほとんどのドワーフ達は豊富な鉱物に関しての知識、それらを扱うための技術を持っている。

武器や防具、果ては建造物や調理器具などドワーフに作って貰えば、実に質の良い物が出来上がっていく。

 

土と鉱物で職人の物作り。

敵襲来れば、自前の武器と怪力で全てを粉砕。

それら全てを終えれば、樽に入った酒を皆で飲み、ワハハと笑い夜を過ごす。

 

屈強かつ繊細、頑固者が多いが仲間思い。

それがドワーフ族と呼ばれる者達である。

 

 

 

「あまり見ねえ顔だが…格好と(つら)見るにあたり、陽ノ本人か?」

「ああ、昨日、流れ着いた。」

「そうかい。

 ワイも陽ノ本生まれだが…同郷だからって特別扱いするつもりはねえ。

 銭あんならさっさと選んで出ていきな。」

 

素っ気なく、厳しい言葉を投げつけるドワーフの店主だったが、彼の後ろに人が立っており、そのドワーフの頭を思いっきり引っぱたいた。

 

「ったく、折角、こんな朝早くに客が来てくれたってのになによその対応は。」

「ぐ…ぬ…。

 なにすんじゃ、貴様(きさん)!」

「いい加減ちゃんと接客できるようになりなさいよ!

 ただでさえお客さんなんてあんまり来ないんだから!」

「うっせーわい!

 見る目のねーやつが買って行っても腹立つだけじゃあ!」

「じゃあ、武具屋なんてやるな!!!

 甲斐性なしが職人ぶってんじゃないよ!」

「なんじゃと!?」

 

(女の方は耳が長い…森人って種族だったか?

 初めて見たな。)

 

 

 

森人(もりびと)…別名エルフと呼ばれる種族。

 

外見は只人とあまり変わらないが、只人と違うところは耳が長く尖がっており、すべからく皆が美形。

全てのエルフ族は色白で蒼色の瞳、黄金色の頭髪が特徴なのだが、武具屋から出てきた女性エルフは銀髪であり、髪色だけは個人差がある。

 

ドワーフや只人達と違い、極力自然に手を加えずに木々の中で暮らしている。

平均寿命が60や200の只人やドワーフと違い、エルフの寿命は500を超えることもある。

人目に付かない場で暮らし続け、長命で繁殖も少なく、人口数が少ない。

なので世の中で見かけるのは珍しい。

 

黒四円が見るの初めてだと思っていたが現在の陽ノ本ではエルフ達が暮らしている集落などの目撃例は無く、どこかの神社で1人エルフがいるという噂しかない。

陽ノ本に居続けてしまえばまず、見ることのない種族である。

 

 

 

(あの森人…さっき夫って言ったよな?

 森人と鉱人の夫婦か…。)

 

 

 

ドワーフとエルフは昔から互いが互いを嫌悪している。

この2種族が偶然にその辺りでバッタリと出会うだけで理由をこじ付け、罵り合いが始める。

 

理由としては彼らを創造した神が関係していたり、対照的な思想や外見、自分達に無い能力の羨望による嫉妬など様々な理由が述べられているがあえて簡潔に説明するのであれば生理的に苦手なのである。

 

虫嫌いな人は自分より小さく害のない虫であっても嫌う。

匂いに敏感な人は、案外まわりは気にしてないのにその匂いを臭く感じ、距離をとりたがる程に嫌う。

 

理屈ではなく、本能でどこか苦手意識があり、この本能が働く者達が種族間で多い為、ドワーフとエルフは仲が悪いというのが世間的な認知になっている。

 

仮に2種族の村が近くに存在し、何か厄災があっても彼等は決して手を取り合ったりなどはしない。

ドワーフやエルフを調査していた学者はこう説くほど、この2種族は相容れない存在なのである。

 

黒四円はこんな世帯もあるかと気軽に思っているが実はかなり稀な夫婦を目撃している。

 

 

 

「ごめんなさいね、ウチのバカは愛想なくて。」

「いや…気にしないでくれ。」

「誰がバカじゃ!」

「うっさい! 今、お客さん相手してんだから!

 失礼、それで何かお探し?」

「あ…ああ…。」

エルフの怒鳴った時と接客をしてる時の雰囲気が違いすぎて戸惑う黒四円。

クワール街で商売をし続けているのだから、相当、肝は太いだろう。

あまりこの店で横柄な態度は取らないでおこうと黒四円は心に決めた。

 

「とりあえず、脇差ぐらい長さの携帯に向いた武器を一振り欲しいんだが…。」

「なにぃ?」

怪訝そうな顔をするドワーフ。

 

「お前さん今、いくら持ってんだい?

 昨日流れ着いたと言っていたが…。」

「ん? ああ、確か…。」

黒四円は、懐から財布を出し、改めて金を数える。

 

相部屋だった男の財布には元々、12,000Y入っていた。

そこからマラリアに朝に追加で400Y払っていたので黒四円も現在の手持ちは11,600Y。

昨日とは違い、かなりの金額を彼は持っていた。

 

「昨日、着いたにしては中々持ってるんですね?」

「まあ、色々とな。」

「ふん、まあ、ロクな事して稼いだんじゃねーだろーが、銭は銭だ。

 しかし、その程度の額でうちに置いてある陽ノ本印の刀を売るわけにはいかねーわな。」

そう言うとドワーフは店の壁に掛かって売られている刀を一振り手に取り、抜いてみせた。

 

「数打ちにしては、質が良い刀だな。」

「む? わかるのか若造?」

「ああ。」

 

 

数打ち。

戦争などで下っ端の兵士や足軽などにも行き渡るよう、大量に作られた刀剣である。

簡単に折れたり欠けたり、切れ味が悪くなってしまい、作りは粗末である。

使い勝手は非常に悪いがその分、安価で手に入る為、武器屋などで置いてある店は結構多い。

 

 

「確かにこれは数打ちだが、それでもワシら鉱人が打った刀よ。

 大陸・都市部にある武具屋の剣よりもよっぽど丈夫で切れ味も損なわんは。」

「そうか、確かに陽ノ本でも鉱人が作った刀は総じて高価だったな。」

「ああ、そうじゃ。

 ワシら鉱人は誇りと生き甲斐を込めて物を作っておる。

 例え、大量に作られる刀であってもな…。

 じゃから、その程度の金額で刀を欲しいと言われても…。」

「いや…俺に刀は…。」

ドワーフ店主が口で売らないと言う前に黒四円は口を挟む。

自分に刀はいらない…そう言おうとしたのに口が止まり、複雑そうな表情を浮かべる。

 

 

「どうしましたか、お客さん?」

「えっ?

 ああ、すまない…。」

エルフが違和感を覚え、訪ねてくるが黒四円は謝罪をし、話を続ける。

 

「とりあえず、陽ノ本の物じゃなくてもいいから、何か刃物はないか?」

「うーん…そうですね~…。

 はっきり言わせてもらって中途半端な額ですから…何でもいいって言ってくださるなら…。

 アンタ、ククリナイフとかどうかな?」

「む?

 まあ、たしかにあれぐらいなら今の若造の手持ちでも十分に足りるな。」

「くくり…なんだ?

 武器なのか?」

「ああ、あんなのです。」

エルフは壁にかけられている、今言った商品を指差す。

 

刀身は、くの字に曲がった内反りになっており、付け根にはw型の小さなくぼみがある。

持ち手は鉄部分に綺麗に整えられた円柱型の茶木をはめ込み、滑り止めとして麻紐が巻かれていた。

 

1尺4寸(約40センチ)辺りか…小脇差ぐらいか…。

 やや内反りの刀身…鎌みたいだがそれ以上に戦闘には向くか。)

「どうですか?

 武器として使う方も多いですが、日常的にも草刈りや枝を切り落としたりなど結構汎用性が高い刃物ですよ?」

「そうだな、投げて相手に当てるのも良さそうだ。」

「おい若造。

 雑にわしの商品を扱うなら、売ってやらんぞ。」

「回収はする、勿体ないからな。

 それでいくらだ?」

「ったく…それぐらいだったら、10,000って所だな。」

「そうか、手に取ってみたいんだが…。」

「ええ、どうぞ。」

 

確認を取り、黒四円はククリナイフを手に取る。

重さを確認し、手首だけで軽く振ったり、逆手持ちをしたり、刃の部分を持ち、投げる構えを取るなど、彼なりに確認をしていき、武器の特性を考え、自分なりに解釈していく。

 

「ありがとう、返すよ。」

「買っていくんだな?」

「ああ、少なくともこうゆう携帯用の武器は一振りは欲しい。」

「じゃあ、他にも何本か打ってるのあるから、見てけい。」

「あら?

 ちょっとは対応良くなったじゃないかい。」

「けっ。

 その若造は、まだ考えて、選んでる様ではあったからな。

 自分の身を守る得物だ、しっかり選んでいけ。」

 

そう言うとドワーフは店の奥に行った。

他のククリナイフを持ってくるつもりだろう。

 

 

「ごめんなさいね〜あんなので。」

「別にいいさ。

 国を超えても、職人なんてのは皆同じなんだと、少し笑えたよ。」

「あっはっはっは! そうかもね!」

ドワーフと結婚し、長いこと一緒にいるからか、豪快な笑い方をする美しいエルフがそこにいた。

 

「さて、あのククリを買っちゃうと手持ちで買えそうな物はなくなりそうだけど、他にも見ていきますか?」

「いいのか?」

「ええ、もちろん!

 そのかわり、またウチで商品を買って行ってくださいな?

 私は、エルテルム。

 そして、さっきのドワーフがこの店の主人で私の夫、鉄ノ助(かねのすけ)

 ドワーフとエルフが営む、この物騒な街の武具屋【鋼】を今後ともご贔屓に。」

綺麗にお辞儀をするエルフに黒四円も頭を下げ、名を名乗り、再び店内を見て回る。

 

 

色々と目ぼしいものは見つけ、エルテルムからはこの店で行っているオーダーメイドなどのサービスの話も聞いておいた。

 

そして、結局の所、今1番必要な物で手に入るのやはり、ククリナイフという結論に至り、鉄ノ助(かねのすけ)が倉庫から持ってきてくれた物を見定める。

黒四円の見る目と二人の意見を聞き入れ、手頃だが非常に質の良いククリを手に入れることに成功した黒四円。

 

二人に感謝を伝え、店を後にする黒四円。

そして、今日も仕事をし、路銀を稼ぐ為に彼はギルドへと足を運ぶのであった。

 

 

 

 

 

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