ライファン[LIFE FANTASY]〜抜忍人生第弍録〜   作:モノイクロ

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14のお話

 

 

 

 

 

「うわ…。」

「ん?」                                

ギルドの近くまで来た黒四円。

背後から不快感に満ちた声が聞こえ、彼は後ろを振り返るとギルドの受付嬢、エリエがそこに立っていた。

 

彼女のことを覚えている黒四円だが彼にとっては、ほとんど知らない相手であり、挨拶をするような間柄でもない。

 

声の元がわかった彼は、すぐに前を向き、歩き始めるが…。

「は? 無視? 腹立つんだけど?」

その行動が不服だったのか、彼女は喧嘩腰にそう言ってきた。

 

「なんだ? 挨拶するような仲でもないだろう?

 露骨に嫌そうな顔もしていたし、そのまま行こうとしたんだが。」

「ええそうねぇ! アンタのことなんてなーんにも知らないし、どーでもいい!

 ただ1つ知ってるといえば、しょっぱい依頼を細かに達成してきて報告。

 うちらの仕事増やしてくる、ウザい作業者って事は昨日でよく知れたわね!。」

「仕事が増える…ああ、そういえば、昨日、大声上げながら言っていたな。」

 

 

エリエがしている仕事は、主にギルド作業者の管理や仕事の斡旋。

新規の作業者の登録や住民課から来た依頼書の張り出し。

後は、作業者が達成した依頼の後処理といった所である。

 

 

「ええ、そうよ!

 只でさえ水準レベル別に依頼書分けたり、他の作業者の対応したりしなきゃならないのに、あんなに納品物の依頼を何件もやって…。

 依頼者に報告の手紙や依頼物の数の仕分けとかどんだけ面倒だと思ってるの?」

「へえ…俺らがやってもらった仕事の裏であんた等はそんなことをしてくれてるのか、ありがたい。

 

 だが、あの時も言ったがそれがアンタの仕事だろう?

 他人に不満言ってないで、もう少し真面目にやったらどうだ?」

 

黒四円はエリエの仕事時の態度などを思い返し、少し指摘をする。

 

「はあ? 何、説教なんてしちゃってんのよ?

こんな街に落ちてきたロクでなしのくせに。」

「そうだな。」

「そもそも、アタシは対してギルド員になりたかった訳じゃないわよ…。」

「じゃあ、なんで今の仕事をしている?」

「…っ。

 アンタみたいな他人に話すことじゃないわよ!」

「そうかい。」

余計な詮索をせずに、背を向け去ろうとする黒四円。

 

それを恨めがましく見るエリエだったが黒四円は背を向けたまま、彼女に話しかける。

 

「まあ、事情や思いはあるんだろうが、今のお前はこの建物の職員なんだ。

 やることもしっかりやらないような奴なんて、何やってもこれから適当に物事進めるような奴になっていくと俺は思うぞ。」

「はぁ!?」

「少なくとも俺は、やることはやり、ここに流れ着いてきた。

 じゃあな。」

そう言うと彼は再び歩き始め、ギルドの扉を開け、入っていった。

 

 

ーーー

 

 

「ほんっっっと!何よあいつ!!!」

 

ギルド職員の人間は作業員と違い、裏手の方に職員用の扉があり、そこから入る。

裏手の人気がない場でエリエは顔を真っ赤にし、地面に足をダンっと大きく1回鳴らして、怒りの声を上げた。

 

(ムカつく!ムカつく!ムカつく!

 また、オッサンくさく、説教してきてさー!)

心中を表すが如く、彼女の地団駄は次第に強くなる。

 

(何が!やることはやり、ここに流れ着いてきた…よ!。

 何が!やる事やらない奴は適当に生きていく…よ!!!

 名言でも言ってるつもり!? 全然響かないから!!!

 あんたみたいな奴が言ってもダサいから!)

 

今、この場にはいない怒りの対象・黒四円に暴言を心の中、時には一言だけを声に出したりなどしてイライラを発散させる事、数分…。

 

怒り疲れたエリエは壁に片手を付き、息を切らしながら、項垂れる。

 

「こっちはやりたい事も出来ずにここまで堕ちてきたっつーの…。」

ぽつりと呟いた彼女は深呼吸を1回した後、ギルドへと入っていった。

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

 

「ほぉー…。」

ギルド内に入った黒四円。

依頼書を手に取り、受付へと向かおうとしていたが、その前にこのギルド2階へと足を運んだ。

 

彼は、2階の存在を気がついていたが、昨日はとにかく金を稼ぐ事を重点に置き、ギルドに何があるかの把握は、後回しで良いと思っていた。

だが、ククリナイフを購入して金が減ったとはいえ、現在、文無しというわけでは無い。

1,160Y。

仮に今日、稼がなくても一食一泊の所持金は持ち合わせてはいる。

金銭面にゆとりが生まれ、彼は2階に何があるかを改めて調べようと思ったのである。

 

といっても特別な何かある訳ではなく、応接室が何部屋かとギルド職員達が使用している倉庫。

そして、図書室があった。

今、彼が興味を示している部屋である。

 

この図書室の設置の目的としては、作業者へ知識を身に付けてもらい、依頼達成率と生存率の上昇。

また、専門的な職業へなる為のスキルアップの向上支援などが狙いの施設であり、数多くのギルド役所がこの施設を導入している。

 

 

抜け忍の理由でこの大陸へと渡ってきた黒四円。

だが、陽ノ本にいる時から物事を知ったりする事が好きであり、読書も好きでよくやっていた。

 

特に外国に関しては強い興味と関心を示していた黒四円は、それ関係の書物を読んだり、任務で時間が空いた際、貿易船で来ていた外国人につたなくはあるがその人達の言葉を使い、色々と教えてもらっていた。

その好奇心のおかげで彼は今いる大陸の人達とも、言葉での意思疎通が出来るのである。

 

 

 

(歴史や文化…か…興味があるが…今、優先して読みたいのはこうゆうのじゃなく…。

 ああ、あったな。)

図書室に入り、棚に収まった本を見る黒四円。

 

本棚の隙間が空いていたり、その棚とは全く違うジャンルの本が置いていたりなどがしている。

職員の整理が杜撰(ずさん)だったり、利用者が適当に戻したり、またはそのどちらかが盗み売って、小銭を稼いでいるのが主な原因であろう。

 

しかし、ある程度ジャンル別に本は並べられてはいるのでそれがまとめられた本棚を見つけ、本を手に取り、適当にページ開け、読み始める。

 

(この地に生息している生き物はひと通り知っておきたかったから助かったな。)

その本は生物図鑑。

彼は討伐依頼を今後受けようと思っていた為、出来れば討伐対象になりうる危険生物(モンスター)の情報を収集しておきたかった。

他にも食べられる野草や近くの地形など色々と読んでおく書物は多かったが彼は一通り流し読みを終え、本を戻した。

 

(仕事だけではなく、勉学に費やす時間も必要になったな。

 今はこの街に居続けるのだし、じっくりと学ばせてもらおうか。)

好奇心も満たせて、仕事にも役に立つ。

そんな場所を見つけ、満足気の黒四円は、今からこなそうとしていた依頼書を持ち、図書室を後にする。

 

 

ーーー

 

 

 

「…だろ?」

「ん?」

黒四円が図書室の扉を閉めた後、男性の声が聞こえてきた。

 

(なんだ?)

声は図書室の向かって左にある部屋。

扉のルームプレートには第2倉庫と書かれ、黒四円はその部屋の前へと立った。

扉が閉まり切っておらず、少し空いていたから声が黒四円にもかろうじて聞こえたのだ。

何も深く考えずに扉を開けようとしたその瞬間…。

 

「え〜?

 ここ職場ですよ〜♡?」

「いいじゃん、バレないから抱かせてよー!」

「!?」

 

部屋の中からいきなり男女の声が聞こえ、そのような話の内容に黒四円は驚いた。

 

真面(マジ)か?

 朝のこんな場で…?)

黒四円は興味本位で少し空いた扉から部屋を覗いてみた。

 

 

ーーー

 

 

(うーん…ほんとにどうしよっかな〜?)

第2倉庫でギルド職員に迫られているモモは、内心、誘いを受けるかどうか迷っていた。

 

モモ・フアンクワリは色欲魔である。

このギルド内の男性職員とはひと通り相手にしており、今迫ってきている男とも何回かは経験済み。

 

(しょーじき、この人、上手くないんだよね〜。

 お金払いは結構いいんだけど、モモは気持ちよくなりたいだけだしな〜…。

 

 この人とはいいや。

 エリエちゃんか娼館のお姉ちゃん達にでも紹介しよ。)

 

昔、彼女は、この街のとある娼館で働いていたことがある。

お姉ちゃんとは娼婦時代、共に働いていた先輩達のことであり、今でも金回りの良い人間を見つけたら紹介し、その店の売り上げなどに貢献しているのだ。

 

「モモちゃーん、これぐらいは出すからさー。」

「うーん…してあげたいけど、実はー…。

 ん?」

(あっ…まずっ…。)

 

男が指を2本立てているがモモは断ろうとした。

が、扉の先に目が入ったモモは黒四円が覗き込んでいるのに気づいた。

 

「♪」

「モモちゃん?」

「よいですよー、ヤりましょ♡。

 声は控えめでね♡」

「ま・マジか!? やった!」

(なんだあの女? 視○癖か?)

「それじゃあ、脱いでいきますから、しっかり見て行ってくださいね〜♡」

(○姦癖か…。)

 

黒四円も自分の覗きがバレていると気づいている。

しかし、彼に気づいた瞬間にモモは悦ぶように目の前の男との行為を同意し、衣服を脱ぎ始めた。

しっかり見ていてというのは今部屋にいる男に言ったのか、または黒四円に言ったのか…。

 

 

「お…おぉ…相変わらず、スゲー下着…。

「モモは常に勝負下着だよ〜♡

 はい、下の方も…♡」

上の際どいピンクの下着を見せつけ、履いているスカートも下ろし、下の下着も見せつける。

 

(えへへ〜♡

 覗かれながらするチュエーションなんて、滅多にないもんね〜。

 覗き魔君も後でたっぷりと…あれ…?)

 

扉の方に視線を向けたモモだったが、黒四円がいなくなっている事に気づいた。

 

(むぅ〜…。)

「じゃあ、モモちゃん、早速…。」

「やっぱり、や〜めた!」

男の方も上下脱ぎ、パンツ一丁になっていたが唐突にそう言われ男は面食らう。

 

「ええ!? な・なんで!?」

「なんでも〜。」

「そんなー頼むよー!

 下着姿見せられて、もうその気になっちゃったんだよー!? オレは!」

男はモモの両肩を掴み、強引に迫ってこようとするが…。

 

「良いのかな〜?

 もしここでモモが大声上げたら、誰か来ちゃうかもよ〜?

 モモ、上の人達とも仲良いから、その人達に見られてたら、先輩どうなっちゃうかわかんないよ〜?」

「ぅぐっ…!」

「それに、先輩って娼館にもよく出入れしてるんでしょ〜?

 モモの知ってる、娼館のお姉ちゃん達に先輩は強引に女性に迫るって告げ口しちゃったら、ほぼ全部の娼館、出禁になるかもね〜?

 そういう情報って回るの早いよ〜あそこは…。」

「ぐぅ…くそっ!」

突き放すように離れ、衣服を着て、男は部屋から出ていった。

 

 

「ふぅ…これであの人とは最後だね〜。」

彼女も衣服を着て、身なりを整える。

彼女は夜間のギルド作業担当で今から帰るところである。

 

 

「もぉ~覗き魔君め~。

 良いもの見せてあげたのに途中で帰るなんて~。」

頬を膨らませるモモ。

最後まで見ていかなかったことにご立腹の様子。

 

「まあいいや。

 モモ、目はいいから顔もなんとなーく覚えてるし、今度相手してもらおーっと。

 その人はモモを悦ばせてくれる人の1人になってくれるといいな~。」

想像をし、いやらしそうな表情を浮かべ、うっとりと悦に入るモモ。

ウフフっと妖艶に笑いながらモモは部屋を後にした。

 

 

 

ーーー

 

 

 

「さっさと済ましてくるか。

 あ…。」

モモと一緒にいた男のやり取りの終わり頃…。

覗き見を止め、依頼の受付を済ました黒四円。

 

さっき出会ったエリエが受付にいて、嫌な顔をされながらも承諾の判をもらい、ギルドから出ようとした時、階段の方からさっきの男が2階から降りてきたのを見かけた。

不服そうな顔をしながら黒四円の横を通り過ぎて行く。

 

(終わったらしいな…。)

何気なく、その男を見る。

受付の奥の方に引っ込んでいった。

 

(朝っぱらから盛った(さかった)野郎だが、女遊びをするっていうのはああいうことなんだよな。)

昨日、宿に向かう途中に話をした、ライナとの会話を振り返る。

(金とかの物が間に入ってくれるから、変に恋慕の情が入ることも無いし、確かに気楽な関係でいられるな。)

金で買える男女の肉体関係。

 

妻子が居たら問題になるが、抜け忍として命を狙われる立場でいる黒四円は、生涯伴侶を持つ気はない。

残りの人生を自由に生きる事を決めた黒四円にとっては、いい遊びのひとつであると彼は再認識した。

 

 

(しかし、まあ…。)

彼は懐にある財布の中身を思い出す。

1160Y。

これで一晩、身を売ってくれる女性なんて、この世にはいないだろう。

 

(一にも二にもまずは金だな。)

ギルドを出て、屋根をつたい、クワール街の防壁を飛び越えていく。

 

今回も採取依頼だが昼からは少し本を読み、討伐もこなそうと彼は考えている。

やりたい事とやる事が多い黒四円だが、どことなく彼の表情は生き生きと楽しそうに見えるのであった。

 

 

 

 

 

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