ライファン[LIFE FANTASY]〜抜忍人生第弍録〜   作:モノイクロ

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15のお話

 

 

 

 

 

黒四円(こくしまる)がクワールの街に来て、4日目。

2日目、3日目と仕事をこなした彼は、初日の文無しとは思えない程の所持金を手にしていた。

 

途中、読書や食事休憩などの時間は少しとっていたが、それ以外はずっと依頼をこなし続けた黒四円。

採取依頼よりも貰える、討伐依頼の方も受けては成功。

泊まっていた宿屋、マラリアのポベロンは変わらず800 Y(ユーラ)と安く寝泊まりさせてもらっている。

 

更に金が貯まるのに拍車をかけたのは、食事。

作業・時間効率を優先し、食料は依頼先で現地調達できる、魚や野草、食用になる野生動物などを捕り、彼はそれで食事を済ましていた。

 

宿泊先は安く、食費は無料(タダ)

3日目と4日目と労働にかなりの時間を費やした彼の懐は現在、かなり潤っていた。

 

 

 

誰かの家の屋根の上にいる黒四円。

日が落ち、辺りも暗くなり始めている時刻である。

朝方とは違い、この街の人々も活動し始めていた。

 

(さてと、どうするかな…?)

黒四円の考え事。

それは、現在の金の使い方である。

 

(なんというか…思ったよりも金って貯まるもんなんだな…。)

黒四円はギルドで作業者として働いている今と忍として働いていた時代のことを考えていた。

 

 

忍時代の彼は、数夜忍衆(すうやしのびしゅう)という忍軍団に所属し、そこの(おさ)だった、幻夜(げんや)の命令を受け、任務をこなしていた。

仕事を終えれば、金などの報酬じゃなく、価値のありそうな物品などを渡されてはいたが装飾品やそれ目的で作られた武具などには興味がなく、彼は放置していた。

住む所や食料も里の一員であれば提供され、任務時には金や道具なども里から支給される。

 

唯一の趣味は外国を知るという事だったが物を収集したりなどではなく、本を月に数冊手に入れ、深く読むといった行為。

外国に関する本は陽ノ本に入れば、貴重になり高価になるが普段から金を使わない彼は金額など気にしなかった。

 

昔、名刀5本と10ページ位しかない外国本を交換した時は、流石に里の人達に呆れらたこともあった。

しかし、それ以外のことで金などを使ったりすることは無く、黒四円は金銭面で困ったことなど一度もなかったのである。

 

そんな金管理をしない生活を20年間近くしてきた為なのか、黒四円は1日仕事をしたらどれだけ稼げるという事を大して知らなかった。

 

 

(仕事に使える道具でも見に行ってみるか?

 いや…この時間だ、店が開いてるか怪しい。

 それに、ある程度の作業道具はギルドから借りれた。

 

 危険生物の討伐も何件かやってはみたが小鬼(ゴブリン)や山犬、角の生えた兎の討伐しか受けれなかった。

 大群じゃなく十匹程度ならこの武器(ククリナイフ)だけで今は何とかなるな。

 

 稼ぎすぎたら金もかさばるし、一時的に金を預かってくれたり、隠せるような場所があればいいんだが、そんな都合の良い場所は知らん。

 下手こいて金を盗られるのも癪だしな…。)

 

現段階で何かに使えないか少し考える黒四円。

しかし、すぐに必要な物や入り用な事もない。

なので、頭の片隅に置いていた考えで金を使うことに決めた。

 

「行ってみるか…娼婦店とやらに。」

この大陸に来て、まだ、4日目。

もう少し落ち着き、余裕が出来てからと思っていた黒四円。

だが、現状、持っている金を安心して預けられる場所や人物も知らない。

大金が掛かる買い物も今の所はないので、多額に持っていても今は邪魔な現金を使うことにする。

 

(あの婆さんの宿に2、3泊出来る程の金が手元にあるぐらいで今はいいが、この街でも金を安全に置いておけるような場を探さなければな。)

そう考えながらな黒四円は、夜なのに明るい、一区画へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

荒れ落ちた人間が求めるものは刺激。

その刺激を簡易的に得られるものは様々であり、酒や博打、そして、異性。

それらが揃い売り出される場はそうそうないが、クワール街には需要者が大勢いるので必然的にそれらを供給する輩も自然と集まる。

 

治安が無い街・クワール街。

規則がない場所ほど欲望が集まりやすく、こんな街でも人はいなくならないのであろう。

 

 

 

 

 

「へぇー凄いな…。」

 

クワール街で性欲を発散させられる娼館区画。

街の建物の壁や屋根の色や魔法で灯されている街灯の火は、ピンクや紫、赤などの派手な色が多い。

娼館にはそこで働く娼婦が見せ物のように客寄せをしており、道行く人達も足を止めては品定めをしている。

 

(本質的には遊郭と同じだろうなのだろうが、建物が西洋作りなのもあってかなり新鮮だ。

 あの建物の壁、石造りなのに赤い…赤い石なんてのがあるのか?)

初めて見る異国の風俗情景に感動する黒四円。

今日、娼館に入って女遊びをするよりもこの街並みを見るだけでも面白いのではと彼は思ってしまう。

 

「兄さん!」

突然、肩に手を乗せられ、声を掛けられた黒四円。

振り返ると上下の前歯が1本ずつ欠けた50代ぐらいのおっさんが彼に向かってニカっと笑っていた。

 

「兄さん、お店探してる感じ?」

「ん? まあ、そうだな。」

「おっほー! そうかい!そうかい!

 それならウチの店の娼婦、味わってっいってよ!

 ぜっっったいに後悔させないからさ!」

「うーん…そうか?」

 どんな女達がいるんだ?」

「そうっすねー。

 あっしが経営している店なんですけども。」

「店主が自ら客引きしてるのか?」

「ああ、はい。 なに分、細々とやらしてもらっていて、店のデカさもそこまでじゃあ…。

 だけど! そういった細かい経費削減を積み重ねてる分! 質と技術(テク)の高い娼婦の子達と品のある綺麗な部屋を用意させてもらってるよ〜。」

「ほんとかよ?」

「もっちろん! 店主自らが保証します!

 だから…ね?

 頼むよにいさーん。 うち、使っていってよー?」

下手(したて)にでながら手を揉む客引き店主。

さっき着いたばかりの黒四円。 即断即決をするのはどうなのかと思ったが行きたい場所が無いので彼は客引きの話に乗ろうとした。

 

「まあ、いいか。」

「ほんとですかい!?」

「ああ。

 金は30,000Yほどあるが…これで足りるか?」

「いやあーもう、全然全然!

 こんだけあるんならウチで好きなだけ遊んでってください!

 ささっ…あっしに着いてきてください。」

愛想良く案内する店主に黒四円は着いていく。

 

 

ーーー

 

 

「そんじゃあ兄さん、ここで待っててな。」

「ああ。」

経営する店の部屋に案内された黒四円。

さっき街を見渡していた、大きい店とは程遠い小さな店。

外装も部屋も年季が入り、ボロく見えるが清掃はされているので不快感はなかった。

 

黒四円はどんな女の子が良いと店主に聞かれ、誰でも良いと答え、部屋を待つこと数十分…。

「入るわよー。」

部屋に来たのは厚化粧をほどこした、さっきの店主ぐらいの年齢のおばさんであった。

 

「…。」

「なーにさその(ツラ)

 あの人から聞いたけど、アンタ誰でもいいって言ったんでしょうが。

 なら、ババアが来たからって文句言うんじゃないよ。」

「…。

 そう…だな…。」

「なんだい変更かい?

 別にいいが、変更代で別料金は払ってもらうからね?

 ったく、どいつもこいつも…結局若い(ガキ)がいいってかい…。」

イラつきながらな出て行こうとする中老の娼婦だったが。

 

「待て。」

「あん?」

黒四円は肩を掴んで引き留めた。

「相手してくれんだろ?

 だったら行くなよ。」

「はあ? ははっ…。

 なんだい、ボウズ、金が掛かるのが嫌でこんなババアで妥協する程、溜まってんのかい?」

「違う。

 ただまあ…こっちが誰でもいいって言ったのは確かだからな。

 無礼な反応して悪かった。

 夜伽(よとぎ)を頼む。」

詫びを入れ、上着を脱ぐ黒四円。

中老娼婦は、少し不思議そうにするがフフっと呆れ笑いをすると部屋のベッドに腰をかけた。

 

「おかしなガキが来たもんだね…。

 OK、溜まってるもん発散させてやるよ。

 ババアだけど35年間この仕事やってるんだ、技術で野郎を喜ばす事ぐらいは出来るよ。

 でも、その前に…。」

すると中老娼婦はベッドに寝転んだ。

彼女は薄く透けるような紫色のローブを1枚羽織っているだけである。

 

「さっきの失礼な態度とった詫びだ。

 まず、アンタがしな。」

「む…俺がか?」

「ああ、そうさね。

 なんだい? やっぱり年寄り相手は嫌かい?」

「まあ…わかった。」

 

 

ーーー

 

 

(うひひっ! 今夜は客がよく来てくれるわい。)

黒四円を自分の娼館に連れてきた歯抜けの中年店主。

部屋代の前払いを数えながら嬉しそうに笑う彼。

 

あいつ()が客の相手をしなきゃならんほど今日は回ってるし…これだけいけば、明日のギャンブル資金は十分に貯まるわい。

 さっき、連れてきたあの小僧…年増を回したのはわりーが…まあ、人妻を抱けてると思って勘弁して…。)

「んぁあああぁぁぁっっっ!!!♡♡♡」

「っ!? なんだ!?」

店主が色々考えていた最中、甘い声が店内に響いた。

何事かと部屋の扉を開ける客がいたが店主はそれらを(なだ)める。

店主は聞いたことのある声だなーっと薄っすら思いながらも声のした部屋へと向かい、客と娼婦に注意しに向かう。

 

(ったく少し扉開いてんじゃねーか。)

だからあんなに部屋の外まで聞こえたのかと納得。

だらしない利用者と娼婦にイライラし、問答無用で扉を開けた店主。

 

「おい!

 もう少し静かにできん…の…かよ……。」

「ぁぁ♡ 」

「ん?」

店主が見たのはさっき連れてきた客の黒四円。

口元を腕で拭っており、その奥のベッドでは今も年増娼婦として働いている店主の嫁がいた。

法悦した顔で舌を垂らして白目をむいており、ビクビクと痙攣していた。

 

「ど・どうしたーーー!?

 おまえーーー!?。」

「ぅぁ〜♡ 」

「っっっ!?

 貴っ様ああ!!!」

「うお!?」

店主は黒四円の胸倉に掴み、壁へと押し入る。

 

関係は大して良くなく、馴れ初めもロクでもない店主と娼婦。

しかし、なんだかんだで25年近く夫婦としてやってきた2人はお互いある程度のことは知っているつもりだと少なからず店主はそう思っていた。

だが、店主は妻のあんな法悦した表情を知らなかった。

 

「何をした!? アイツに何をしよったーーー!!!」

「な・何って…先にしろって言われたからしただけで…。」

「なっ!?それだけで!?」

黒四円が説明するが目を点にして、信じられないといった顔をする店主。

 

夫婦になる前の若い時から娼婦として働いてきた彼女。

仕事で色々なことをしてきたせいか、店主と私的に性交するようになっても、彼女が満足することは決してなく、店主もそれは感じ取っていた。

年も重ね、枯れてきた彼女はもう性的に満足することなど出来ない。

夜の関係がなくなった彼女をもう女として見てない店主。

今更、彼女が他の仕事をできるとは思えなく、雀の涙ほどでも稼げれば良いと思い、今まで娼婦をさせていたのだが。

 

(わしが何しても散々無表情だったのに…口だけで…。)

快感が抜けきれずはぁはぁっと息を切らしているがご満悦な嫁を見る店主。

その姿を見ると何十年も満足させることもできなかったのに、たった数十分でここまで骨抜きにした黒四円に男としての色々な格の違いを見せつけられたように思い、彼のプライドはボロボロ。

そして、嫉妬で腹が立ってきた。

 

「よくも…よくも、ウチの嫁に手を出したなー!!!」

「はあ!?

 ここ、娼館だろう!?

 ってか嫁!?

 歳食ってるとはいえ、アンタ自分のかみさんに何させてんだよ!?」

「うるせぇー!

 帰れぇー!

 ぅおーーーん!!!ちきしょーーー!!!」

店主は泣きながら部屋の外へと黒四円を追い出し、脱いだ上着も彼に向かって投げる。

 

「おい!うるせえよ!」

「何の騒ぎよー?」

「ぅぐ…。」

黒四円は泣いている理由や金についての質問をしたかったのだがここにきていた客たちがこちらを注目し始めているのに気付く。

 

(ああ! くそっ!)

上を着て、黒四円はさっさと店の近くから離れる。

 

 

ーーー

 

 

 

(何だったんだよ一体!?

 たったあれだけで終わったぞ!?

 前払いで結構取られたし、もう、これだけじゃ遊べないんじゃないのか?)

 

今、行ったあんな小さな娼館の前払いだけで12,000Yも払ったのだ。

他の娼館でもこれぐらいは取るんだろうと考え、今、有る手持ちを思い出す黒四円。

 

(今回のあれ、いざこざだよな? だったら前払いの金返してくれ…。)

淡い思いを抱くがあれだけの事を起こしてはもう、あの店には行けんだろうと考える黒四円。

 

はぁーっとため息を付き、今夜はしょうがなくポベロンの宿へと帰っていくのだった。

 

 

 

 

 

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