ライファン[LIFE FANTASY]〜抜忍人生第弍録〜   作:モノイクロ

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1のお話

 

 

 

 

 

「荷下ろし、無事終わってよかったね~。」

「ああ。」

大通りに道を歩きながら、黒四円(こくしまる)とライナは先ほどの仕事を話す。

 

(途中、危なげな視線は何度かあったが…警備隊に卸す荷物があったからな。)

いくら治安の悪い街でも警備隊の荷物を狙えば警備隊に追いかけられる。

馬主もそれを見越してか先に街の個人店に荷下ろしをし、最後に警備隊本部にしたのだ。

 

 

「しかし、お前…本当にこの街で降りて良かったのか?」

黒四円がライナの方に振り向き、尋ねる。

 

本来ライナはあの馬車に乗り、フリーリアという都市に行く筈であったが、黒四円がこの街で降りると聞き、心配だったのか、彼女もこの街で降りたのであった。

 

「大丈夫だよ!

 いるといってもほんの2日間ぐらいだし、何年も女の一人旅をしてるんだよ?

 自衛の術ぐらい心得てるもん。

 それに…。」

胸に手を当て、フンスと自信を見せるライナである黒四円は彼女をよく見直す。

 

どうみても武器の類を所持しているようには見えず、着ているものも身を守る防具ではなく、ただ洒落ていて自分にあっている衣服を着ているだけ、中に鎖帷子のようなものを付けているのかと一瞬、黒四円は思うがそれはないと見抜く。

 

(じゃあ拳法使いの類か…?

 いや…しかし、この女が素手で相手を殴り飛ばしたり、攻撃を捌いたりする姿が想像できん…。)

 

彼女の体つきを見る黒四円。

姿勢良く綺麗な歩き方ではあるが正中線が一定になってはいなく、腕付きや足付きも健康的に肉付きが良いだけ。

屈強な筋肉を保持しているわけではない。

 

髪も絹糸の様に美しいが長髪。 

髪が長ければそれを掴まれる。

 

あとは女性であるが故に仕方のない事だが発育した胸。

女性としては武器だろうが実戦では邪魔なだけである。

 

(まあ、しかし、なにか護身術があるのならば大丈夫なのだろう。

 俺が深く関わることではないな。)

心配することを止め、ライナの話の続きを聞く黒四円。

 

 

「それにね、友人がこの街で住んでるんだ。」

「ほう。」

それを聞き、彼女の方を見た黒四円。

だが、彼女は複雑そうにしながら笑っている。

 

「本当は何回も会いに行こうとしたんだけどね…。」

「この街だから、来れなかったと?」

「それもあるけど…。

 でも、1番の理由は、その子は会いに行っても…。

 こんな街にはなるべく来ない方がいい、心配しないでって言うから。」

「訳ありか…。」

 

治安の悪い街といっても、全員が全員、悪人というわけではない。

やむ得ずこんな街にいる善人だっていてもおかしくはないのだ。

 

「深くは聞かないでおこう…。」

「ありがと。

 案外優しい?」

「人の不幸話で面白がるか。

 まあ、知らない人間だから、どうでもいいという思いもあるが。」

「冷めてるな〜。」

「逆にお前は他人に興味を示しすぎだ。」

むくれた顔をしているライナに黒四円は彼女の性格をツッコむ。

 

「知らない土地なんだから、もっと親しみやすくしないとこれから大変だよ?

 クロまるさん。」

「なんだ?その呼び方は?」

陽ノ本(ひのもと)の字は漢字っていう文字もあるんでしょ?

 黒四円の(こく)って(くろ)とも書くって知ってるんだーわたし。

 

 だから、黒四円のコクをクロに言い換え、少し短くしてクロまるさん。

 良い呼び名でしょ? これからそう呼ぶね?」

「勝手にしろ。」

 

そんな話をしている時も黒四円は周囲の邪な視線を感じていた。

 

汚いローブを身に包みながら、へたり込んでいる浮浪者。

バンダナを巻き、ボロボロの衣服、その上に獣の毛皮を羽織った男。

 

生気の無い視線。

物色するような視線。

品定めをするような視線。

 

(目をつけられてる・・・新参者だからか?)

 

クワール街は大きい街ではあるが、人口数はそれほど多くはない。

人から盗みを働こうとする者はそれで食っていってるのだから。新しい人間はすぐにわかり、カモかどうかを見定めいてる。

 

(油断してたら、すぐに喰いものにされるな。)

黒四円はライナと話しながらも常に周囲を警戒しながら今、自分に必要なものを提供してくれるであろう目的地に向かっていた。

 

 

 

向かう場所は国認可の施設、ギルド役所。

 

ギルドとは国が大都市や街などに設置し、基本的に運営している施設であり、その施設で働いてる職員は大まかにわけると二通りである。

 

ひとつはその国の法や一般倫理、知識などの知識を修め、公式の試験を受けてなれるギルド公務員。

広くはギルド員と呼ばれている。

 

ふたつめがその街内でのギルドで依頼を達成して、報酬を得られるギルド作業者。

この作業者は、公式の試験を受けなくてもよく、ギルド員がその作業者に仕事を任せても問題なしと思われれば誰でもなれる、自由な働き方である。

 

 

 

「大陸の方では国が浮浪者に仕事を斡旋したりもするのだな。

 陽ノ本ではどこかに仕えないとろくに仕事などなかったもんだが。」

「へえーそうなんだ。

 でも、気をつけてね、基本的には誰でもなれるけど、ブラックリストに認定されたらもう、その場所ではお仕事もらえなくなっちゃうから。」

「なんだ、それ?」

「問題行動ばかりしてるとこの街のギルド内でお仕事が出来なくなる…もっと酷かったらこの国で運営してるギルド全部からお仕事受けられなくなっちゃうって事。」

「なるほど。

 問題行動っていうと?」

「うーん…

 まあ、する気もないのに依頼を受けて全然しなかったり、依頼の報告がいつも適当だったりとかかな。」

「そんな当たり前の事が出来ない奴がいるのか?」

「いっぱい、いるらしいよギルドさん達の話では。

 うん、でも、その辺りをわかってるなら大丈夫そうだね。」

 

黒四円にその辺りの常識があると知り、両手をあわせて嬉しそうに笑うライナ。

そして彼らの視界に目的地の建物が見えてくる。

 

「着いたね。

 よし! じゃあ、早く中に入っておにいさんが作業員の仕事させてもらえるか聞いてみよー!」

手を上にあげ、元気にライナはギルドの扉を開け中に入っていく。

 

「なんで、アイツが張り切っているのやら…。」

そのさまを見ながら黒四円は呆れつつも少し笑いながらギルド内へと入っていった。

 

 

 

ーーー

 

 

 

通常は多くの作業者達が依頼の受注をする為、ボードに張り付けてある依頼書を見たり、完了報告を済ませ、報酬を貰う為に受付窓口に並んでいるものである。

しかし、ここ、クワール街ギルドはというと…。

 

 

 

「おいてめぇ!

 手ぇ貸してやったのに300ってのはどういうことだコラァ!

 今回の仕事の報酬は2500だろうが!

 もっとよこせや!」

「ほざけや!クズ!

 今回の洞窟のマッピングは全部俺がやったんだ!

 道中にモンスター3体倒した程度の能無しなんて、それで十分なんだよタコ!」

 

 

「なあ、姉ちゃん、そそる格好してんね~。

 俺個人の依頼、頼まれてくんねーかなー?」

「個人依頼ね~…。

 これだけ(8000)、くれるんならいーよー。」

 

 

「ほ・ほんとにいいですか?

 自分みたいな新人が遺跡の調査に同行させてもらっても?」

「ああ、もちろん。

 なあ?」

「おお、俺ら二人、スカウトやウィザードと前衛に向いてるとは言えないんだよ。

 だから、君みたいなファイターがいてくれると助かるなー。」

「遺跡にはお宝もあるみたいだし、それ手に入れて、君ももっと良い装備整えようや。」

「はい、正直村から出たばかりで何もわからなくて困っていたんですけど…何年もギルド作業員やっているあなた方に会えて、本当にありがたかったです。」

「まあまあ、感謝のお礼は後でいいから。」

「そうそう。

 後で…な。」

 

 

(きな臭いこと、この上なしだな。)

黒四円とライナがギルド内に入った瞬間に目の当たりにした、騒動・売春・騙す気満々のパーティー勧誘。

とても、国運営の公共施設とは思えない場所であった。

 

 

 

「わわっ…あそこ大丈夫かな?

 取っ組み合いになってるけど。」

「職員も止める気なしだな…関わるな。

 目立つと変に目をつけられる。

 実際、ここに入ってきただけで、何人か俺たちをジロジロ見てきてたぞ。」

「そうなの?」

 

ライナが辺りを見回すと確かに邪な視線がいくつか感じられ、背筋が少し寒くなった。

 

「新人でいるうちは必要以上にここにはいない方がいいな。

 働かせてくれるならさっさと依頼を受けてここを出よう。」

「う・うん。」

黒四円の意見を承諾し、ライナはギルド作業員の登録できる窓口を指差し2人はそこに向かった。

 

 

 

窓口には職員の制服に身を包んだ、若い女性が頬杖をつきながら気怠そうに座っていた。

少し肌が焼けており、ライナよりも派手な金髪をサイドに結っている。

 

「…。」

「…。」

「…。」

 

窓口の前に2人は立つが受付嬢は、爪をいじるだけで何も対応しようとしない。

 

「あ・あの…すいません。

 ちょっと聞きたいんですけど?」

「…。」

空気にたまらずライナが先に話しかけるが受付嬢は聞こえてないように爪をいじり、上の空。

ライナはどうしようかとおどおどする。

 

 

「おい、(アマ)

 仕事をしたいんだが?」

(ちょっ!?)

あまりの対応に黒四円は少し荒め口調で質問し、ライナはそれに内心オロオロする。

すると、受付嬢はわかりやすいため息をつきながらも席を立ち、すぐに書類を持ち戻ってきた。

 

「ギルド作業員に登録ね。

 じゃあ、この書類に名前。

 他国から来たんでしょーけど、名前ぐらい書けるわよね。」

「ここの大陸だとウェスト語だったな。

 ああ、ある程度はかける。」

指された項目に黒四円は自身の名前を書く。

 

「はいはいオーケー。

 じゃあ、ライセンス発行してくるから。」

「え?もう?」

「はっ? なにが?」

「い・いや…だって私がライセンス貰った時、もっと色々聞かれたから。」

「そうなのか?」

自分の時とはあきらかにライセンス発行までの時間が違いすぎ、思わずライナは疑問を投げかける。

 

 

ライナの話を聞く限りでは、出身確認や過去の経歴。

家族や親族などの身近な人間の有無など様々な事を書類に記入し、ギルド職員の面接を経て、合否を貰い、ギルド作業員の証であるライセンスが貰えるとのことだった。

 

 

「合否は当日にもらえるけど、少なくともライセンスの発行とかって翌日になったと…。」

「はぁ〜〜〜…。」

ライナが黒四円にライセンス話をしていると受付嬢が話を遮ぎる様に大きなため息をついた。

イラついてるが半分以上は呆れを抱く、そんな感情の溜め息。

 

「あのさ、ここの事なんも知らないわけ?」

「「え?」」

「はあ…そこの小汚い男とは違って身なり整ってるからどーせ都市部の安全な所から来たんでしょーけど。」

(小汚い…。)

黒四円が悪口を言われ、文句を言いそうになるが受付嬢の説明が始まる。

 

「こんな街にまともな作業者になるやつなんてほとんどいないわ。

 そんな相手に正規のルートで登録しようとしても通るわけないでしょ。

 

 前科あろうなんだろうが作業員になって依頼をこなしてくれるのならなんでもいいのよウチは。

 

 そもそもウチに限らず、ギルド作業員なんて慢性的にどこも人手不足じゃない。」

「そうなのか?」

「当たり前よ。

 依頼の大部分は命かかってるし、駆け出しの時なんて依頼多くこなさなきゃロクに稼げないし、アタシみたいな公務員からしたらほんとありえないって感じ~。」

 

「うーん、そうなのかもしれないね。」

「む?」

隣にいるライナの同意に黒四円は彼女の方に視線を移す。

 

「私が最初作業員になった時、回りに12〜3人ぐらいの同期の人達がいたけど、5日ぐらい経った後、ギルドで見かけたのって2人ぐらいだった気がするの。」

「たったの二人?」

「うん、そのギルドの受付さんと仲良くなってから聞いた話だと仮に20人受けても、正式にギルド作業員で続けて稼いでいく人って5人ぐらいらしいよ。」

「20人中5人も残ってくれるなら御の字じゃない。

このギルドじゃ50人受けにきてようやく5人ぐらいよ。

まあ、こんなクソみたいな街じゃ、50人もこないけどね。」

 

外部のギルドとクワール街のギルドでは、真面目に仕事をする作業員の数は雲泥の差があるのだろう。

 

 

「じゃあ、ギルカ作ってくるかその辺でお待ちを~。」

面倒そうにスタスタと奥に行ってしまう受付嬢。

 

「ぎるか?」

「ギルドカードの略だよ。」

ギルドカードとは、ギルド内で働いている事を証明する為のカードであり、それが無ければ作業員としてギルド内で職務をすることが出来ない。

 

「けど本当に良かったの?

 あんな話をしておいてなんだけど…こんな職を選んで…。」

「選べられる状況に今、俺はいてないからな。」

心配そうなライナを他所に何食わぬ顔でそう言う黒四円。

 

 

20分後、受付の奥に行っていた、さっきの受付嬢が手紙入れサイズの封筒を持って戻ってきた。

「はいよ。

 この中に入ってんのがギルカ。」

受付の台にポイッと投げ、雑に扱う受付嬢。

 

黒四円はそれを手に取り、中身を確認する。

中にはカードが入っていた

 

 

 

ギルド作業員登録者証明証

登録№0479640

登録者名:KOKUSIMARU

性別:男性

作業者ランク:1

 

 

 

「ほう、これがギルカってやつか。」

「仕事したいなら向こうの掲示板にやってほしい仕事の依頼書が貼ってるから、さっさっと見に行けば?

 アタシ、もう休憩時間だからそれじゃ。」

言い捨てると受付嬢はまた奥へと行ってしまった。

 

 

「随分とガサツな役員だったな。

 依頼が向こうにあると言っていたが何でも良いわけじゃあるまいて。」

「あはは…。

 まあ、とりあえず掲示板の方に行こ。

 どうするか順を追って説明していくから。」

1人は溜め息、1人は苦笑い。

 

受付嬢が見えなくなり、2人は依頼書が貼ってある掲示板に向かう。

 

「えーと…例としてクロまる君が今、受けられる物のひとつとかだとあれとかね。」

ライナが1枚の依頼書を例代わりに指をさす。

 

「この作業者レベルって書かれてる数字と依頼水準レベル条件の数字が同じかそれ以下だったらいいんだよ。」

「ふむ…それ以上の依頼は受けられないのか?」

「ううん、ギルドの人達からの許可が出たらレベルの高い仕事も受けられるよ。

 だけど、レベルが高い依頼っていうのは危険が多かったり、高い技術や知識を要求される依頼ってことになるの。

 だから、自分の作業者レベルより高い依頼を受けるなんて話はあまり聞かないよ。」

 

その例としてあげられるのは戦闘力が高い新米作業者が高レベルの作業者の推薦で凶暴なモンスターの討伐。

名のある学者が作業者となり遺跡から出た書物を解読するなどの例をライナは黒四円に教える。

 

「なるほど、まあ、大体はわかった。

 細かい事はオイオイ覚えていく。」

「そっか、それがいいね。

 じゃあ、どの依頼受けるの?」

「ふむ…そうだな…。」

黒四円は掲示板をじぃっと見て、ある依頼が目につきライナに尋ねる。

 

「ライナ、植物には詳しいか?」

「え? うーんどうだろ?

 お花とかは好きだから少し知ってるけど。」

「この、ライフハーブの採取というのを受けようと思うんだが…。」

依頼を手に取り、詳細を読んでみる黒四円。

 

「ああ!ライフハーブの採取ね!

 うん、すごくいいと思うよ!」

「そ・そうか。」

食い気味で肯定してくるライナに戸惑いを覚える黒四円。

 

「最初にやる仕事はこうゆう地道なものに限るもん。

 いきなり、モンスター退治とかの依頼とってたら、わたしコラーって怒ってたよ。」

「そんな無謀な事するものか。

 武器無し、防具無しで魔物と戦うなんぞ、やむ得ない時だけだ。」

話しながら黒四円は依頼書を手に取る。

 

「それでライフハーブという植物だがどんなのかわかるか?」

「それぐらいならもちろん!

 作業者なりたての人が最初に受ける依頼の筆頭だよ、ライフハーブ採取は。」

「そうなのか。

 じゃあ、教えてくれ。」

「はーい! じゃあ、いこっか。」

「え?」

 

彼は植物の形や色などの特徴みたいなものを口頭でいいから教えてくれればそれでよかったのだが彼女は彼の初仕事も手伝う気満々であり、黒四円はその事に驚いていた。

 

「どうしたの?」

「・・・。

 いや、なんでもない。」

「そう? じゃあ、依頼書、さっきの受付に持って行ってきて。」

「ああ。」

何も言わなかった。

彼女の親切心にこれ以上何か言うのは野暮だと思ったからである。

 

(礼は出来ぬといったが…これはしなければバツが悪くなりそうだ…。)

頭をかきながら黒四円は依頼書を受付に持って行くのであった。

 

 

 

 

 

依頼内容:ライフハーブ採取

依頼者:ギルド協会東支部全体

達成事項:最低採取量・約120g

備考:あきらかな不良状態の採取物は採取量のカウントから省かれるのでご注意ください。

 

 

 

 

 

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