ライファン[LIFE FANTASY]〜抜忍人生第弍録〜   作:モノイクロ

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19のお話

 

 

 

 

 

黒四円(こくしまる)の娼婦失禁の件から翌日。

無駄金を使ったとはいえ、まだ、10,000Y(ユーラ)程、手元にある黒四円は、ギルドの図書室に行き、本を読み耽ることにした。

 

そうやって過ごすこと12時過ぎ。

昼食時になり、黒四円はある場所へと到着した。

 

 

「失礼。」

「…。」

やってきたのはCafé(カフェ) Moku(モク)

この街に来た初日、ライナと共にきたカフェである。

 

マスターのアイゼンは、入ってきた黒四円をチラッとだけ見た後、抱えていた麻袋を2袋、店内の物置きへと戻しにいった。

前に入店した時も無言でこちらを見るだけだったアイゼン。

しかし、物置から出てきた後、すぐにメニューをカウンター席へと置いてカウンター裏へと戻る。

 

意図を察した黒四円は、その席へと座りメニューを手に取る。

(無言で案内されるのは慣れんが…食い物屋はここしか知らんしな。

 それに…。)

彼はコーヒーの一覧が書かれている項目を見始める。

黒四円は初めてコーヒーを飲んだあの時、心の底から美味しいと気に入り、もう1度の飲みたいと思っていた。

 

(む…こんなにも品書があったのか…。)

この前、来たときはそこまでメニューをしっかり見ていなかった黒四円。

ライナに勧められた、Mokuブレンドというのを飲んだのは覚えているが他のモノがどういうものかわからない。

 

(軽めや濃いめ…味のことなんだろう…。

 あの苦味をさらに濃くできるのか?

 

 それに別の大陸内にある国の名前が書いてある…。

 確かライナは、コーヒー豆から作る飲み物と言っていたが、そこで採れたってことなのだろうか?)

 

口に手を当て、考える。

前と同じものを注文するかと思うが、他国の違うものもあるのかと思うと興味をそそられる。

 

「うーむ…。」

「むう…。」

内心は楽しみながらが迷っているが表情からはとてもそうとは読み取れない黒四円。

腕を組み、注文を待つアイゼンを待たせていることに気づかず、無言の静寂が流れる。

 

 

「パパー!

 パパが作ったしゅくだいおわったからお店てつだわせてー!」

すると店の奥から元気の良い少女の声が聞こえてきた。

 

「あっ、お客さんだ!

 いらっしゃいませー!」

気持ちいい笑顔と挨拶をしてくる少女に黒四円も彼女の方に向き、軽く会釈をする。

 

「パー、ちゃんと考えて問題は解いたんだろうな?」

「だ•だいじょうぶだよー!?

 ちゃんと計算した後もかいてるからみてよー!」

「よし、採点しよう。

 アンタ、まだ決まりそうにないなら少しいいか?」

「え? ああ。」

尋ね終えたアイゼンは、店奥へと行く。

 

奥は店で使う部屋だけじゃなく、アイゼンやパーネット達の私室もあり、彼は娘の部屋に向かったのであろう。

 

黒四円は、寡黙だったアイゼンに話しかけられ、少し驚いたがすぐにメニューを見て、何にするか考える。

 

(飯も食べるから、それに合うかも考えねばならんのだが…うーむ…。)

「ずいぶん、難しいお顔してなやんでますねー?」

「うん?」

話しかけられ、前を見るとさっきの少女・パーネットが不思議そうにしながら黒四円を見ていた。

カウンターは高いのだが、普段から手伝っている彼女は、専用の足場を使い、カウンター越しでも客と話せるようにしている。

 

「飯決めようとしているだけなのだが…そんな顔してたか?」

「はい! なんかこう…別の人もドキドキするような!

 うちのパパも新しいブレンドコーヒーためすときにそんなお顔してたなー。」

「そ・そうなのか…。」

堅物そうなアイゼンと同じ風に見られたことに少しばかりショックを受ける黒四円。

そう考えているが彼の顔つきや雰囲気も似たようなものなのだが…。

 

「まよっているならパパのブレンドでいいと思うんですけど…。」

「それももう一度飲みたくはあるんだが…折角来た異国の地…できれば、別の物も頼みたいと思ってな。」

「なるほど!

 じゃあ、この国から生まれたとくせいコーヒー! ドロッヒーなんてどうです?」

「どろっひー? なんだそれは?」

「ドロドロのコーヒーです!」

「ドロドロ…美味いのかそれ?」

「わかんない!」

喜劇を演じている役者のようにガクッと顔を落とす黒四円。

 

「えへへ〜ごめんなさーい。

 だって、苦くておいしいって思えないんだもん!」

「まあ、そうだろうな。」

「でもでも、パーも大人になったらおいしいと思えるようになると思うんだー!

 だって、パパの子供だもん!」

 

「そうかい。

 ちなみにドロッヒーってのは君の親父さんも好んでるのか?」

「うん! 目がシャキッ!ってなるらしいよ!

 コーヒーにはね! カクセイサヨウ?っていうのがあるらしいんだよ!」

「へえ…眠気覚ましになるのか。」

食べ物効果も聞き、興味が増すばかりの黒四円。

こうやってパーネットに聞いたし、彼はドロッヒーを飲んでみることにした。

 

「後は料理か…何にするか。」

またメニューを見て考える黒四円。

パーネットも一緒になって、うーんっと唸っていると。

「アサシンパスタ。」

「あっ!パパ!」

「ん?」

アイゼンがカウンター内に戻っており、彼に向けてその料理名を口に出した。

 

パーネットが父親の側に行くと、宿題は良く出来てたらしく、アイゼンは娘の頭を撫でるとパーネットはエヘヘっと笑いながら嬉しそうにしている。

 

「…。」

「あー…なんだ? アサなんちゃら?」

「アサシンパスタだ。

 俺はそれで良いと思う。」

「パスタっていうと、蕎麦みたいな麺物だったか?

 それがいいのか?」

「ああ。」

「ふーん…じゃあ、それで。」

注文を終えるとアイゼンは無言でキッチンの方へと行った。

 

「なあ、嬢ちゃん。

 そのアサシンパスタってのはどういう料理だ?」

「うーん? お兄ちゃん、食べたことないんだ?」

「ああ。」

「じゃあ、食べてからのおたのしみだよー♪

 パパー! パーもおてつだいするー!」

パーネットも奥にあるキッチンへと向かってしまう。

 

(パスタか…麺状の食い物ってのは書物で見たが実物は知らんな…。

 それにアサシンってなんだったか? アサシン…アサシン…。)

異国の言葉を思い出そうと考え込む。

 

(ああ、そうだ、暗殺者って意味だったな…。

 物騒な名前だが…大丈夫だよな?)

思い出したことにより、出てくる料理に不安を抱えることになるが、まあいいと切替、料理が出てくるまで、黒四円はのんびりと待った。

 

 

~~~

 

 

「おまたせしましたー!

 アサシンパスタ〜粉チーズかぶり〜でーす!」

待つ事、約40分近く。

黒四円が注文した物のひとつをパーネットが配膳してくれる。

 

「おお…。」

 

アサシンパスタ。

パスタをオリーブオイルで少し焦げを付けたところにトマトピューレなどを加えて出来るパスタ料理。

焦げ目が付き、トマトを吸ったパスタが赤黒く血に見えることからこのような物騒な名前が付いたのである。

 

「いただきます。」

ドロッヒーを待つ事もなく、フォークを手に取る、黒四円。

巻いて食べるということを知らない彼は、フォークで少しだけパスタを掬い上げ、口に運び、チュルチュルと周りに飛び散るのを気をつけ、ゆっくりと食べる。

 

美味(うま)っ!

 甘酸っぱい味が麺、そのものから感じられるな。

 

 ぱりっとした食感も良い…餅の焦げ目もこんな食感だったな…。

 

 上に降りかかっているのがチーズと言う奴か…鼻につく匂いだが一緒に食べれば旨味に変えられていき、濃厚差が口に広がる。)

 

料理の味を五感でたっぷり堪能する黒四円。

自然と口元が緩み、幸せ差が滲み出ていた。

 

「あはは! おいしそうに食べますね!」

「ん?」

料理に夢中になている黒四円に笑顔で話しかけるパーネット。

 

「実際に美味いぞ?」

「うん、パーもパパの料理おいしいって思うよ。

 でも、そんなにしあわせそうに食べてる人ってあんまり見ないから、なんかいいんだー!」

純粋な笑顔で喜ぶパーネット。

それを見た黒四円は、どう返事を返したら良いか分からないのと自分がそんなに顔がほころんでいたことに気恥ずかしさを感じ、そうかと気の抜けた返答しか出来なかった。

 

「…。」コトッ

「ん…ありがとう。」

そんな2人のやりとりの中、アイゼンがもうひとつの注文品•ドロッヒーを黒四円の食べてる、アサシンパスタの横に置かれ、それを持つ。

カップを持ち、回して液体がどのようになっているのか確かめる黒四円。

 

(本当にドロドロだな…。

 食べられる物に対して考えるべきじゃないが、泥多めの泥水だな。)

例えの引き出しが少ないなと自身を鼻で笑ってしまう。

 

回している最中にもコーヒーの豊かな香りが彼の鼻腔内をくすぐり、頬緩む。

そして一口飲んだ。

 

(うおぉ…!これは…!)

ドロッヒーを飲んだ黒四円の口内は苦味で口一杯。

目を閉じて味を感じ、ゴクンっと飲み込んだ。

 

(さっきまで食ってたパスタの味が全てこの飲み物にさらわれたな。

 だけど、口に入れたら一発で目が冴える。

 それに濃厚な苦味と香りが前飲んだコーヒーよりも感じられて、これはこれで良いな。)

 

人生において最初で最後の初めての一口目の味… 。

堪能した黒四円は、満足そうにカップを置いた。

 

 

「水だ…。」

「ん?頼んでないが?」

「無料だ…。

 それで口の中を洗い直し、また、アサシンパスタの味を楽しむといい…。」

「ありがたい。」

 

気遣いをありがたみ、グラスに入った水を口に運ぶ黒四円。

そして、フォークを手に取る。

 

「ごゆっくり。」

「ゆっくりしていってくださいね! お兄さん!」

親子2人に気遣われ、温かくなる黒四円は食事を続ける。

 

 

途中、パスタは巻いたら食べやすいなど、このメニューもおすすめなどパーネットから教えられながらパスタを食べ終える。

 

 

そして、最後はアイゼンに途中で教えられた最後の締め…。

カップに4分の1程残したドロッヒーにそれと同じぐらいの砂糖を入れる。

苦味と甘味という正反対な味を感じているのだが、混ざり合い、より一層の幸福感を得られる食べ方。

 

 

最初から最後まで頬緩む食事を終えた黒四円はまた、来ようと思いながらイスの背もたれにもたれ、満足そうな顔をするのであった。

 

 

 

 

 

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