ライファン[LIFE FANTASY]〜抜忍人生第弍録〜   作:モノイクロ

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20のお話

 

 

 

 

 

アイゼンが経営しているCafé(カフェ) Moku(もく)で食事を終えた黒四円(こくしまる)

両手を合わせた後、イスから立ち上がる。

 

「馳走になった、勘定を頼む。」

「はーい!」

 

パーネットに言われた金額よりも少し多めに渡した黒四円。

当然、お釣りが出るのでパーネットは両手の指で頑張って計算して、金庫からお釣りを持ってくる為に店の奥へと行き、釣り銭を持ってきた。

 

「はい、どうぞ!

 パーの計算、あってるよね?」

「ああ、問題ない。」

「わーい!やったぁ!

 

 おにいさんはこれから何をしにいくの?」

「ん? そうだな…。

 腹ごなしに仕事を数件やったら、また、ギルドで本でも読もうと思う。」

「えー!? おにいさんじぶんからべんきょうするのー!?」

「まあ、そうだな。

 なんだ? 君は学ぶのが嫌いか?」

「んー…。

 お店のおてつだいみたいにスキって言えないかも…。」

「何故だ?」

「だって、モンダイとかむずかしくて、わからなかったらおもしろくないもん!」

 

「パーがもっと色んな店の手伝いをしたいって言うから、勉強させてるんだろ?」

「うっ…!

 わかってるけど…。」

パーネットの発言を聞き、アイゼンは注意するが彼女はバツが悪そうに俯く。

 

「将来、カフェをやりたいって言うなら、さっきの宿題をしてこい。」

「…は〜い。」

「君。」

父のアイゼンに言われ、トボトボと自分の部屋に戻ろうとしたパーネットを黒四円は呼び止めた。

 

「ん? パーのこと?」

「ああ、今、やってることが理解出来たのなら、次に学ぶことも理解できるようになるかもしれん。

 そして、その次に学ぶことが君の言う好きな物事かもしれん。

 好きなことなら頑張れるし、知っていきたいんだろ?」

「もちろんだよ!

 パーはおりょうりとかスキだし、もっと知っていきたい!」

「そうか、じゃあ、励め。

 時が過ぎねば、わからないことだが…今からする嫌な事をやっていて良かったと思う日が必ずくる。」

「そうなんだ…そっか…。

 ありがと! おにいさん!

 また、来てねー!」

お礼を言って、手を振るとパーネットは自室へと戻っていった。

 

 

 

「中々に良いこと言う。」

「そうか?」

「ああ…。

 体から人の血の臭いを発してなかったら、素直に感心できた。」

そう言われ、黒四円は驚き、目を見開いた。

そのあと、複雑そうな表情をし、視線を下に向けた。

 

「そんなこと…よく、わかるな?」

「作業者時代に私も山賊退治などで人を殺めた。

 人族とモンスターの血の臭いは違う。」

「…ああ。」

「君からは人族の血の臭いが特に臭った。」

 

この臭ったというのは現在進行形で臭いを発してるモノではない。

言うなれば、今までの行いが体に染みついてしまったというモノ。

 

コーヒーを淹れ続ければ、コーヒーの匂いが…。

鉄を打ち続ければ、鉄の匂いが…。

旅を続ければ、自然の匂いが…。

 

そして、生き物を殺しを続ければ、血の臭いがついてくる。

 

においとはその人間がどういう行いをしてきたかによって決まり、濃い人生を生き、様々な人々を見てきた者にはそういった事だけでどんな人間かを見極める(すべ)が身に付き、アイゼンもその1人である。

 

 

 

陽ノ本(ひのもと)は、内地でまだ戦争をしている島国だというのは知っている。

 だとしても、その血生臭さはどうなのだ?」

「…。」

「滅多に嗅ぐ臭いではない。」

「すまん…馳走になった。」

金も払い、黒四円は早く去ろうと思い、詫びを入れ、店を出ようとした。

 

「ああ、またのお越しを。」

「えっ?」

 

黒四円は戸惑った。

アイゼンはまたこの店を利用しても良いと簡潔に言ったのだ。

 

黒四円は心中、自分の店や娘。

そういうアイゼンにとって穏やかで大切なものたちがあるこの場に自分のような血生臭い人間には近づいて欲しくないと思い、惜しいけれど、この店には来ないことにしようと考えていた。

 

 

「ここはカフェだ。

 金を払い、問題をおこさなければ、利用してくれても構わない。」

「…。」

「こんな街で経営しているんだ。

 危険そうな奴でも多少は接客してやる。

 まあ、今後気に入らんくなったら出禁にするが。」

「かたじけない。」

頭を下げ、感謝の意を伝える黒四円。

 

コーヒーをまた飲める嬉しさもあった。

しかし、それとは別に、また来ても良いと言われたのが純粋に嬉しく、彼の胸の奥をあたためてくれた。

 

 

 

頭を上げ、店を出ようとしたが。

「そういえば、ライナはどうしている?」

アイゼンは思い出し、黒四円に質問をしてきた。

 

「え? あの娘のことか?

 いや…朝餉(あさげ)をよばれて以来あってないが。」

「そうか。」

「あの娘が言ってたが後、1~2日に彼女の友人が戻ってきて、自分の実家に帰るらしい。」

「むう…。」

それを聞き、アイゼンは心配そうな表情を浮かべる。

 

「あの子は君の為にこの街に残った。」

「ああ。」

「なら、少し気にかけてやってくれ。

 あの子はこんな街に居るべきではない。」

「…。」

アイゼンに言われ、黒四円は改めて彼女のことを思う。

 

「あの子、友人の家に泊まらせてもらってるらしいが知っているか?」

「フレイヤの所か…ああ。」

 

ライナの泊まっている場所を聞き、黒四円は店を後にした。

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

中央広場から北方面に向かうと民家が多く建てられた住宅街がある。

基本的に住人達の人柄も大半は悪いのだが、この街ではまだ、マトモな人間達が集っている区間でもある。

 

ライナの友人・フレイヤと呼ばれていた人物の家もこの辺りにある。

 

家は主に木材をベースに作られた、シンプルな2階建ての家であり、貧困者漂うこの街からしたら十分立派な家屋である。

 

 

アイゼンから聞いた家の情報と一致し、フレイヤ宅。

現在、ライナが居る筈の家の前に着いた黒四円。

 

「御免。」

玄関扉の前まで行き、中にいる住人に呼びかけるが返事はなかった。

 

「御免!」

少し声の大きさを上げ、もう一度呼びかけた。

すると「はーい」っと声が聞こえてきて、こちらに足音が近づいてきた。

声からして彼女、ライナであるとわかったのだが何故か少し元気のなさそう声色だったことを黒四円は感じ取った。

 

 

扉が開くとタンポポの髪色と草原のような瞳の色をした、お人好しな女性が黒四円を見て、驚いていた。

 

 

「え?えっ!? クロまる君!?

 なんで、この家に?」

「ああ。

 前、一緒にカフェに行った店主に聞いたんだ。

 この街は危ないから、もう少し気にかけてやってくれって言われてな。」

「アイゼンさんが?

 えへへっ、やっぱりあの人は優しいなあ。」

自分の心配をしてくれている人達を考え、嬉しそうに笑うライナ。

 

「クロまる君もありがとね!」

「ああ。

 …?

 何かあったか?」

「へっ? な・なんで?」

「いや…なんとなく…。

 前と違い…空元気ような…。

 ん?」

元気な顔を見せてくれたライナ。

しかし、黒四円には彼女が無理をして笑顔を取り繕っているように見えてしまった。

 

そして、家の奥を見ると違和感があった。

妙に物が散乱してあり、テーブルに飾られていたであろう花瓶が割れて、破片と土が飛び散ったりなどしており、慌ただしい瞬間があったのが見てとれる。

 

「随分と散らかしたな?

 人ん家なんだろう?」

「そ・そうなんだよ!

 泊まらせてもらってるし、張り切ってお掃除しようとしたんだけど空回りしちゃって…。

 いやー! 慣れないことを張り切っちゃダメだね! お掃除増やしちゃったよ!」

「…嘘が下手だな。」

「え?」

「いくらなんでも掃除で下手(へま)してこうはならん。

 お前とは知り合ってまだそんなに経ってはいないが人の家を散らかす、礼儀知らずじゃない事ぐらいはわかる。」

「…。」

「何があった?」

ライナの虚言を見抜き、黒四円は本音を聞こうとした。

 

 

彼女は俯き、少し苦笑いをした後、口を開いた。

「その…昨日夜遅くに…盗人が入り込んだの。」

「なに?」

質問の答えが返ってきた。

詳しく話したいのと見てもらった方が早いと思い、ライナは黒四円を友人宅へ招き入れるのであった。

 

 

 

 

 

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