ライファン[LIFE FANTASY]〜抜忍人生第弍録〜 作:モノイクロ
時刻は真昼間。
〜〜〜
「少しは落ちついたか?」
「ぅん…ありがと…。」
彼女の大事なバイオリンを取り返してくれると黒四円が言い、感涙を流し、言葉が出なかったライナ。
そこから少し時間が経ち、彼女が落ち着き、話せるようになったことを確認する。
「それじゃあ、聞くが盗人の顔は見たのか?」
「グスッ…。 う・ううん…。
手燭で灯してたけど、フードを被ってて…。」
「そうか…。」
「で・でもね、背は少し小柄だった。
声も聞いて、男の人だっと思う…多分、私たちよりも若い子。
それと…。」
〜〜〜
「白い髪色だったか…。」
ライナの放った風魔法。
ハズレはし、すぐに窓から逃げられたがフードが剥がれた後ろ姿は目撃できたのだ。
その時、わかったことは白い髪の色。
黒四円はそれらの特徴を聞き、1人だけ思い当たる人物がいた。
初日にポベロンと同室になった、下着泥棒の青年だ。
彼の体躯や髪色は、ライナの見たという人物と一致している。
(確証もない可能性の話…全然違うのかもしれんが…。)
しかし、今わかっていることはそれらだけ。
黒四円はその男の情報をなんとか得るべく、あの時、ポベロンに泊まっていたのでマラリアから話を聞いてみようと思い、目的地へと向かう。
ーーー
「御免。」
「ああ、アンタかい。」
ポベロンの入り口を開け、受付の側にいたマラリア。
何やら新聞紙のような物を読んでいたようだが暇つぶしだったのか、黒四円が顔を出すとそれをすぐに閉じた。
「なんだい? 今日は馬鹿に早い利用じゃないかい?
まだ、夕暮れにもなってないよ。」
「そうじゃない。
少し、聞きたいことがある。」
「ほう?」
少し茶化すマラリアだったが黒四円はすぐに本題に入りたそうな事を察し、黙って聞く姿勢をとってくれた。
「俺が最初にここに泊まりに来た時、先に泊まっていた客と同室にしただろう?」
「ああ、確かそうだったね。」
「その客を探してるんだが、何かわかることとかないか?」
「あーん? なんだい、わかる事って?」
「名前とか…この街の人間なのか…。
よく見る顔ぐらいかどうか程度でも良い…どうだ?」
質問をし、顔色を見る黒四円。
マラリアは、葉巻を取り出すと火をつけ、不機嫌そうに黒四円を見た。
「この街で欲しいものがあるんだったら、力づくで奪うか金目の物を渡すかだよ。
何の気なしに質問して話が聞けると思っちゃーいけないよ? 若造。」
「いくらだ?」
「いくら出せんだい?」
「今すぐにだと、これぐらいだ。」
黒四円は、懐から小さな袋を彼女の前に置いた。
街の外で捨てられた布や紐を拾って作った、手製の巾着。
彼は今これを財布の代わりにしている。
マラリアが中を改めると12,000近くの金が入っている。
(まったくこの子は…。)
それを見るとマラリアは呆れ笑いが出てしまう。
額を見れば大したことはないのかもしれないが彼女が信憑性のある情報を提供してくれるのかわからないのに彼は金を全額その場にさらけ出したのだから。
マラリアは、葉巻を取り出し、火をつけながら口を開く。
「この前、あんたと同室にしたガキだが…ありゃよくここを利用する奴さね。
毎日、夜遊びが好きなろくでなしだろう。
ウチに安く泊まっては浮いた金で女やら賭博なんかに使ってるってのがアタシの予想さね。」
「そうか。
よく利用するなら、名前ぐらいはわかるのか?」
「当然。
アンタもウチを利用する時に宿帳に名前書いたろ?」
受付の下からメモ帳を出し、4日前のページを開き、クワイトという名前に指を刺した。
「間違いないのか?」
「よく利用してるって言っただろう?
それにいけ好かないガキだからよく覚えてるよ。」
ふんと鼻を鳴らし、葉巻を吸うマラリア。
何か気に入らない出来事でもあったのだろう。
「そうか、かたじけない。」
「ちょい待ちな!?
どこ行くんだい?」
頭を下げ、宿を出て行こうとする黒四円だったが、マラリアは慌てて呼び止める。
「どこって…この男を探しにいくんだが?」
「探すってどうやって?」
「聞き込むなり辺りを見て回るなり…だな。
この街の住人ならいずれ見つかるだろう。」
「なーに時間を無駄にすること言ってんだい。
それに代金分の情報をまだ教えてないだろう?」
「えっ? だからそれは名前で…。」
「名前だけでこんなに取らんわい!
アンタもうちょっと、物の価値の釣り合いをとった方がいいよ。」
「そ・そうか…。」
頭を掻く黒四円に呆れるマラリア。
葉巻を吸い切り、本題の教えようとしていた情報を話し始めた。
「さっきも言ったがこのガキは毎晩、女、賭博なんかで金を使い続けているんだが、少し疑問に思わないかい?
どうやって、そんなに金を用立ててると思う?
アンタよりも若そうなガキが。」
「ん?そうだな…。
俺みたいに作業員の様な仕事をしつつ、盗みで得た物を売り捌いているから金があるとか…か?」
「そうだったとしても、作業員の仕事なんぞ日に3,000〜4,000
盗みの方もこの街じゃ金目の物を持っている住人の方が珍しい。
仮に毎日、100,000近く稼いでいたとしても、あの区画を欲のままに利用したらあっという間にそんな金、飛んじまうよ。」
「ふむ…じゃあ、日に十万…もしくは、大金を得られるような仕事をしていると?」
「ああ。
そんで、ああいう奴の仕事ってのは大抵…ろくな事じゃない。
あのガキ、腕にバングルを付けていたろ?」
「ばんぐる?」
「腕輪よ腕輪。 装飾の一種さ。」
「それがどうした?」
「あれなんだが、似たような物を付けているやつを何人か見たことがあるんだよ。」
「…集団の印の様な物ってことか?」
「へえ、少しは察しがいいじゃないか。
作りの粗さがあるが、色や絵柄が似たようなものを何人も付けてる。
強盗団だろうね。
大方、街外れの通りにいる人達から掻っ払っているんだろう。」
「大勢で盗むを働いているのか…。」
「そうだね、まあ、珍しくもないことだが。
そんで、そのバングルを付けたチンケな強盗団が
「っ!」
顎に手を当て考えていた黒四円だったがマラリアのその発言に顔を上げ、聞く態勢をとる。
「ここから南に行った森の中さ。
木が切り倒された、少し開けた場所があんだよ。」
「…。」
「これが代金分の情報さ、毎度あり。」
「なぜ、そこまで知っている?」
黒四円は不思議に思った。
年の功で人を見ただけでどんな人物か大体察せられることは可能かもしれない。
しかし、黒四円の探している強盗団のたまり場まで知っているのはどう考えても知りすぎており、不自然に思えた。
「さあてねぇ…。」
「…。」
黒四円はジッとマラリアを見続けるが余裕の表情で彼を見返している。
「かたじけない。」
頭を下げる黒四円。
(この人が盗人の一員なんてことはない。
教える必要がないし、それに…。)
黒四円は、金を追加で渡したときのことを思い出した。
あの時出した圧は並大抵の人物に出せるものではない。
それこそ、様々な
そんなようなものを会った時から感じてた黒四円は、マラリアがチンケなコソ泥の一員とはとても思えなかった。
今回の件とも関連性がないと思った黒四円は、詮索を止め、礼を言い、行こうとする。
「興味本位で聞くがなんだってそんなの探してんだい?」
「ん?」
「わざわざ、金を盗んだ野郎を探そうとするかい?
相手はキレてくんのが普通なんだから会いに行く必要もないだろう。」
クワイトから金を盗んだことを知っているマラリアはなぜ黒四円が彼を探すのか疑問に思い、率直に聞いてみた。
「初めて泊まりに来た時に女を連れてただろう?」
「ああ、アタシが娼婦と間違えちまった子かい。
それがどうした?」
「あの子の大事な物をそいつが盗んだかもしれないんだ。」
隠す必要もないことなので黒四円はマラリアに説明した。
ーーー
「へえ、それであんたが取り返そうしてんのかい。
お優しいことで。」
事情を聞き終え、葉巻に火を付けたマラリア。
そして、黒四円が取り返えしてやることも言ったがそれを聞き、呆れて馬鹿にするようにそう言い、ひと吸いする。
「言わせてもらうがこんなクソみたいな街だって承知の上であの子はアンタにお節介を焼いたんだね?」
「ああ、ライナから聞かされた。」
「じゃあ、その子の危機管理能力にも問題があると思うねアタシは。
盗む方が前提で悪くても、この街ではそれが普通なんだ、だったら盗まれている方がなめられる間抜けだったとしか言えなくなっちまう。」
「…。」
「アンタがこの街で生きてくんなら忠告しといてやるよ。
良い事をする奴はこの街ではなめられるよ。」
そう言い放つとマラリアは自分には関係がなくなったように横を向き、葉巻を味わい始めた。
黒四円は、彼女のその姿を見ると頭を下げ、背を向け行こうとするが。
「確かに、善行なんて
「あん?」
黒四円が背を向け、話始め、マラリアは横目でそれを聞く。
「俺も随分と惨い事をしてきた…。
自身の中でやめろと言っているのにそれを押し殺し、無視して…その鬼畜な
「…。」
「でも、もう、する必要は無くなった。
自身の中で助けろと言っているからその言葉に従ってみる。
これからは、自身の中の
振り返り、マラリアを見直し、淡々と語る黒四円。
「それは都合の良い懺悔かい?」
「罪滅ぼしに残りの人生を使う気はない。
そんなことで軽くならんし、そう思いたくもない。
でも、あの子の恩義には恩義で返そうと思う。」
「それがアンタの中で言ってんのかい?」
「ああ。」
背を向ける黒四円。
「くだらない話をしてすまん、それじゃあ…。」
「ああ、今夜もウチに泊まりに来な。」
「無理だな、金がもうない。」
「一泊分ぐらいツケでいいさ。」
「かたじけない。」
そして、黒四円はポベロンから出て行った。
「・・・」フゥー
吐いた煙が宙に舞う。
なにかを思いふけながらマラリアは黒四円が置いていった金を見る。
「使いづらい金を置いていきやがったね~…あの若造。
このボロい金入れはいらないっつーの。」
葉巻を消し、払われた金を集めるとマラリアは奥の私室へと向かう。
挨拶だけ間違えて覚えている飼い鳥に餌をあげるのを忘れていたから…。