ライファン[LIFE FANTASY]〜抜忍人生第弍録〜 作:モノイクロ
(森の南方…そこに開けた場所があるんだったな。)
マラリアから強盗団の存在を知らされ、その中にライナのバイオリンを盗んだ白い髪色の青年、そいつがその強盗団にいるかもしれない。
(荒事になるなら…殺るか…?)
掃き溜めの街で生まれたチンケ悪党…。
死んでも別に構わないかと彼は思い、瞳の光がどんどんと無くなっていく…。
「クロまるくーーーん!!!」
「ん?」
そう考えていた
「ハア…ハア… 何か… ハァ… わかっ…! ハアハア…。」
「とりあえず、落ち着け。」
「うん… ふぅー…。」
友人の家を急いで片付けた後に走り回って彼を探していた為、ライナはかなりしんどそうに息切れをおこしていた。
息を整え終え、ライナは黒四円に改めて話しかけた。
「それで、私のバイオリンの事、何かわかったのかな?」
「ああ、恐らくだがな。」
それを聞き、少し希望を持つ顔をした彼女に黒四円は事情を説明する。
〜〜〜
「そっか。
じゃあ、その強盗団の所に私のバイオリンがあるかもしれないだね?」
「ああ、それで、そいつらが溜まってる場所に今から行こうと思っている。」
「ええ!? そんなの危ないよ!」
「だが、今の所、そこしか目星がない。」
「でもでも! クロまるくん、弱いんでしょ!?」
「はっ?」
「だってだって! この前、私が2人組に絡まれて助けてくれた時、お金で解決してたよ!」
「えっ?……ああ。」
この街に初めて来た晩にライナが2人組に絡まれ、金を払って穏便に済ました時のことを思い出し、合点がいった黒四円。
あの時は騒ぎや目立つのが嫌だった。
彼自身、金使いがルーズな所もあるので金で解決できるならそれで良いと思い、そうしたのだ。
自分が弱いなどと言われた事はない黒四円だが、俺は強いぞなんて口だけで言っても説得力がない。
どう説明をしたら良いか分からず頭を掻く黒四円。
「まあ、大丈夫だ。」
「何が大丈夫なの!?強盗団だよ!?
下手したら殺されちゃうよ!!!」
「でかい声出すな。
とにかく行ってくる。」
「ままま・待ってよ!」
説明を諦め、強引に行こうとする黒四円だが、片腕を引っ張り、止めるライナ。
「私も!私も行くよ!」
「何?」
「クロまる君に何か考えがあるかもしれないんだろうけど、もしそれが上手くいかなかったら襲われるかもしれないでしょ?
その時は私が戦うから!」
「あーいや…。」
「そもそも、私の物を盗られたんだから、私が行って取り返すのが道理だよ。」
「いや、それはまあ…。」
「よし! じゃあ、気合い入れていくよ! クロまる君!」
「…。」
張り切りながら、先に行ってしまうライナ。
(俺ひとりの方が早いんだがな。)
1人なら早駆けで目的地まで着き、強盗団を一網打尽に出来たと考えるが仕方がないと割り切った。
(………殺るって考えたのは早計だったな。)
息を吐き、反省するように考え直す。
彼に考え直すきっかけを作ったのはライナである。
ライナの性格やアイゼンに言われた事などで彼女が殺伐とした状況に不似合いということもあるが、黒四円が真っ先に思った事は…。
「クロまるくん、どうしたのー?」
「今行く。」
彼女の前で安易に殺しなどという行為を行いたくなかったのである。
ーーー
街の門から出た2人。
森道を歩き、目的の場所へと向かう。
「よいしょっと。」
少し高低差のある足場を降りるライナ。
(やっぱり、整備されてないから歩きづらい。)
木の枝や葉なども邪魔をする為、余計に注意力が必要とされる。
「大丈夫か?」
「えっ? あ…うん、ありがと!」
気遣いながら、その前を歩いていく黒四円。
ライナは気づかないが、彼は彼女の速度に合わせながら道を歩いている。
「この先に木々とかが無い、切り拓いた場所があるんだよね?」
「ああ、そこにいる一味の中にあんたの楽器を盗ってった野郎がいるかもな。
あれば取り返す。」
「それなんだけど、どうやって取り返すつもりなの?
力づくはクロまる君、出来ないんでしょう?」
「…そうだな、こっそりと拝借させてもらうことにしよう。」
「バレずに盗むってこと?
そんなに上手くいくの?」
「敵の内部に上手く忍び込むのは、忍の主な仕事だ。」
「そ・そうなんだ。」
(まだ明るいからばれずに済ませられるかは難しい所だがな…。)
明るく照らすお日様の光を見ながら考える黒四円。
現地時刻は16時。
夕暮れ時とはいえ、まだまだ辺りは明るい。
人数が2人や3人ならまだできる可能性はあるが、彼はそんなに少ない人数だとは見積もっていない。
最低、10人強ぐらいの頭数がいると思っている。
そんな人数の中で気づかれずに盗み取るなどというのは黒四円自身も無理だと考えている。
だが、そんな事はどうでもいい。
何人いようがただのコソ泥であり、いざこざになっても黒四円は勝てるだろうと思っている。
むしろ、見つかってしまえば、もうやる状況にしかならないのでさっさと片付ければライナの黒四円は弱いという勘違い問題は強引だが納得させてしまえる。
今戦うと言えば、ライナがまた騒ぎ出してしまい時間を食うため、先の発言は咄嗟にはなった彼の方便である。
都合よく盗めたにせよ、争いに発展して奪い返すにせよ、要はバイオリンを彼女の元に戻せるのであればそれで良いのである。
後々、ライナに小言を言われてしまいそうでもあるのだが…。
(それで済むなら安いもの…。)
そんな風に気軽に黒四円は考えていたのだが…ライナの方は…。
「クロまる君…ほんとにごめんね…。」
「ん?」
深刻そうに俯き、彼に謝罪をした。
「こんな事に巻き込んで…危ないことまでさせて…。」
「お前が悪いわけじゃないだろう?」
「でも…この前、絡まれた時だって大事なお金を使って助けてくれて…。
私、どうお詫びをすればいいか分からなくて…。」
「詫びなんていらん。」
「そうはいかないよ!?」
「あのなぁ…元々お前は俺なんかの為にこの街に残ってくれたんだ。
仕事のあてを教えてくれ…美味い物や割りの良い宿の紹介…。
充分だ。」
「そんなことで…。」
「それにやりたい事をやったら良いとまで言ってくれた…。」
「え?」
「今の俺にはありがたい助言だった…だからいい…。」
切なそうに…だが、それ以上に感謝の気持ちを乗せ、黒四円はそう言った。
「そうなの?
うぅ〜…でもでも、やっぱりぃ…。」
(納得しないのかよ。)
頭を抱えて悩むライナの姿を見て、溜め息をつく黒四円。
もう、一旦何かの要求でもしてこの話を切り上げよう思い、少し考えると彼女とポベロンに向かった時の会話を思い出し、彼女に話しかけた。
「それじゃあ、この件が上手くいったら、夜伽の相手でもしてくれよ。」
「………? へ……?」
「いや、だから、夜伽相手だよ、夜伽。
させてくれよ。」
「………っっっ!!!???
えええええぇぇぇーーーーーーー!!!!!!」
森中に響き渡るような驚愕の大声量。
その大きさに驚き、近くの木に止まっていた鳥達は羽ばたいて行ってしまう始末…。
「なななななな・何を言ってるのクロまる君!!!???/////。
そそそ・そんなこと…!///」
「ん? 礼をしなければ気が済まなさそうだったから提案してみたんだが?
それとも、何か謝礼になる物でも持っているのか?
無いからあんなに悩んでいるかと思っていたんだが…。」
「いやいや!!確かに何もお礼になる物なんてないから悩んでいましたけども!!!
でもでも!!! エッチなことして払うのなんて…そんなのお礼にならない…。」
「そうか?
お前、顔立ちは美人に入るだろう?」
「へっ?」
「雰囲気は無邪気な子供っぽい部分もあるが、穏やかで優しい…。」
「あっ…うぅ…///。」
「そんな雰囲気なのに、その出る部位は出ている豊満な女体…。
結構な額を払わんと相手してくれないと俺は見立てるが…。」
「も・もう!!!///// 顔が熱くなるからやめて!!!/////
そ・それに! 私はいくら貰っても、エッチなことなんてさせません!!!/////」
顔を真っ赤にし、涙目になりながら訴えるライナ。
両手を前にやり、どうどうと馬をおさめる様に落ち着かそうとする黒四円。
流石に冗談を言いすぎたかと思い、反省する黒四円。
そんな彼女の後ろから人影が2人分見え、木陰から姿を現した。
「おいおいおい。
なんだテメーら?」
「えっ?」
「ギャーギャー騒いでるから来てみればこれはこれは…。」ジュルリ…
1人は黒四円達よりは年上っぽいが若く、オラついた風貌の男。
もう1人もオラつき男と同い年ぐらいでライナを見た時、いやらしい視線を送り、舌舐めずりをした、気色悪いチャラついた男。
ライナは、その2人を見た瞬間に怯えて後退り、黒四円の側へと寄った。
(ど・どうしよう…見つかっちゃった…。)
(人の気配が辺りに出てきてたが…結構近づいてたんだな。)
怯えているライナと対照的に黒四円はひどく落ち着いている。
「おいおい! 逃げようとでも考えてんのか?
逃すわけねーだろーが!」
「ふふ…そうだな。
次の襲撃先の事でうちらのグループが全員集まってるから一旦、両方共、連れて行こうかね。」
「んだよ、めんどくせー。
野郎はぶっ殺して、女は犯せばいいじゃねーか。」
「ただでさえ、遅刻してるんだぞ?
これ以上、印象悪くなったら、次の
「…ちっ!
おい! さっさと来い!」
オラつき男は黒四円の後ろに立ち、背中を押す。
「クロまる君!」
「はいはい、お嬢さん、余計なマネはやめようね〜。」
チャラ男はライナの側に近寄り、背後に立つと彼女の両肩に手を置いた。
「いや〜可愛くて大きいモノ持ってるね〜。
後でしっかり味わわせてもらうよ?」
「っ!!??」
男のその発言にライナは全身に悪寒が走り、激しい嫌悪を感じたが抵抗すれば黒四円に危害が加わってしまうと感じ、何もできなかった。
「わかった、大人しくついて行こう。」
黒四円は両手を上げ、抵抗の意志無しを示す。
(こっそり…とはいかなくなったな…。
もう、とっとと目的の奴がいるか確認し、いたら楽器を取り返そう。)
心中さっさと済ましてしまおうと考えていることなど、この時のライナには知る由もなかったのであった。