ライファン[LIFE FANTASY]〜抜忍人生第弍録〜   作:モノイクロ

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24のお話

 

 

 

 

 

「よーしお前ら、次の仕事はここから北東方面に少し上がった場所に村がある。

 その村に潜って掴んだ情報だと、2日後にそこで商売している商人の1人が大都市・ロマネルクに卸しやら仕入れやらで馬車を3台分走らせるらしい。

 その馬車の物を頂くということでいいな?」

 

 

クワール街・街外れの南方。

その森の木々が切り倒され、開けた場所で男達が集まっていた。

人数にして20名。

誰も彼もがガラが悪く、真面目な人間などはいないことが見てとれた。

 

 

中央で指揮を取っている、無精髭で紫色のバンダナを巻いた中年男の名はデミゴ。

この強盗団・ラピテリオのリーダーである。

 

グレゴは元々、スリや窃盗などで得た物を金に換え、クワールの夜の街で欲望を発散するロクでなし。

そんなある日、数人のグループを作り、それぞれで泥棒業を行った。

いつもの倍々の稼ぎを上げ、味を占めた彼は人数を集め始める。

最初こそスリや空き巣などしかしてこなかったが成功するにつれ、デミゴの気は大きくなり、集めた人物の中にはスリという技術がない人間もいた為、今では強盗という強行手段に出てる。

 

ただただ、犯罪行為で金を稼ぐゴロツキの集まり。

それが強盗団・ラピテリオである。

 

 

 

襲う対象と日時を決め、グループに確認の意思を再度取る。

おー!という数十人規模の声が森を騒がす。

 

 

 

(はあ…大丈夫なのかねぇ…?)

そんなメンバーの中に白色の天然パーマをした青年、クワイト。

ライナのバイオリンを盗んでいった張本人がいた。

彼は2日後の強盗計画を不安そうに聞いていた。

 

 

彼がこのラピテリオのメンバーに入ったのは2か月前という割りと最近である。

 

入団した目的は、至極簡単、金目的。

元々は連れの何人かとギルド作業者として働いていたのだがチマチマと日銭を稼ぐ毎日に嫌気が指してきていた。

 

この街には犯罪集団やマフィアの存在ことなどは色々な人達から聞かされており、このラピテリオもその内のひとつ。

盗みなどの悪事を働いた方が手っ取り早く儲かるし犯罪集団に入れば後ろ盾にもなると浅はかに考え始めた、クワイト。

ラピテリオは入りやすいグループということもあり、連れの2人と一緒にメンバーの加入を願い出て、無事にグループのメンバーになった。

 

加入した当初は正解だと彼は思った。

ラピテリオの人間達が盗みや強盗行為などを行い、7日間に1回、捌いた盗品の金をデミゴが割り振るといった取り決めだった。

 

クワイトは最初に割り振られた金を受け取った時、大喜びであった。

ギルド作業者で働いていた時とは比べ物にならない大金を受け取ったからである。

その金を受け取った時からか、彼は夜の街に遊びに行くようになった。

 

 

そうやってラピテリオの仕事をしているうちに連れだった1人を見なくなった。

最初はメンバーを抜けたかと軽く考えていたクワイトだったがもう1人の連れが教えてきた。

 

街道を通る馬車の積み荷を頂くという計画にその連れは加わっていたのだが、自警団などを雇っていたその馬車は襲ってきたラピテリオの強盗団を退治した。

1人、2人は捕まえられ、別の街の牢にぶち込まれたらしいが後のメンバーは正当な防衛で殺されたのである。

 

クワイトは、少し背筋が震えたが下手をこけばそういうこともあるかと思い、強引に納得した。

だが、もう1人の連れは怖くなり、次の仕事が終わったらラピテリオから抜けるとクワイトに言い、彼も引き留めはしなかった。

 

しかし、後日…その連れも帰らぬ人となってしまった。

盗みに入ったのがマフィアと関連する場所であり、バレてしまった彼は、報復を受けてしまったからである…。

 

この情報を聞いたクワイトも流石にこの日は頭を抱えた。

次は自分の番じゃないかと思い、震えた。

 

しかし、金は欲しい…

作業者としてチマチマ稼ぐ、惨めな時に戻りたくない…。

 

だけど、死にたくもない…。

 

結局、そんな堂々巡りを日に日に繰り返し、今も尚、彼はラピテリオに居続けている。

 

 

 

 

「おら! さっさと歩けや! クソガキ!」

クワイトが不安そうにしていると大きな怒鳴り声が後ろから聞こえてきた。

 

「デミゴさーん! 遅れてサーセン。」

振り返るとそこにはいつも女漁りをしているチャラ男とよく一緒にいるオラついた乱暴男がやってきた。

彼ら2人は、ラピテリオには長い古株らしく、何回か遅刻しているのを見たことがあるとクワイトは思った。

 

「あっ!?」

しかし、そのことよりもその2人が連れてきた男女の方がクワイトにとっては驚いた。

両方とも顔に覚えがあるからである。

 

オラつき男に背中を蹴られ、前に出た男は恐らく自分の財布をスった男。

そして、チャラ男に後ろから両肩を掴まれ、怯えている女性はこの前、空き巣に行った時に見たとクワイトは思い出す。

 

(くっそ、あの野郎…!

 あいつからはスられた金、取り戻したかったんだが…。)

 

黒四円(こくしまる)を見た、クワイトはそう思ったが取り戻す事は出来ないと半ば諦めた。

彼の手持ちは今ここで全額、今から毟り取られてしまい、半殺し…酷ければ、殺される。

 

(はぁ…。

 あの女はこの前のバイオリンを取り返しにでも来たのか?

 どこで知ったのか知らねーが、バカが…。)

 

そして、ライナの方も見て、今からここにいる連中の慰めものにされると考え、怯えているライナを呆れたように、しかし、少し気の毒にも思うクワイト。

 

 

 

そんな状況を傍目から見ている彼の考えとは別にラピテリオのリーダー・デミゴが話し始める。

 

「もう、集会は終わってんだよ。

 お前ら2人は、今回の仕事(ヤマ)かまないんだな?」

「いやいや、そう目くじら立てないでくださいよー。

 ほらほら! いい子連れてきましたしー。」

「相変わらず女捕まえてきたのか。

 確かに上玉だな。」

「そうでしょー!

 みんなで味見して、その後、娼館に売っちゃいましょう!」

「うぅ…。」

 

ライナは、下に俯き、焦っていた…。

彼女は戦うと言っていたが自分の今の戦力はここにいる数名を精々足止めできる程度の実力。

捕えられ、大勢の中に連れてこられてはもう、どうしようもない…。

 

(でも、せめて…クロまる君だけはなんとか逃がしてあげなきゃ…!)

しかし、ライナが一番に考えていること。

それは黒四円を逃がそうとしていることだった。

 

自分があの時、大声をあげて、この2人に見つかり、捕えられてしまった。

 

そもそも、彼は自分の大事なものを取り返す。

そんな、彼自身、無関係な…ライナに関する事だけの事柄で今彼は、自らの命が危険に晒されているのだ。

 

(私のせいでクロまる君が死んじゃうなんて、絶対ダメ!!!)

そう思うと彼女の中から勇気が出てき、決死の覚悟で何か行動を起こそうとしたのだが…。

 

 

「ライナ、あいつじゃないか?」

「へ?」

「あん?」

黒四円は、クワイトを指差しライナに訪ねた。

何気ない日常会話のような話し方にライナは面食らい、クワイトは指を差され、訝しむ。

 

 

「あの男がお前の楽器を盗った奴じゃないか?

 白髪で年若いし、俺が宿屋で同室になった奴でもあるんだが?」

「えっえっ?」

普通に話す黒四円に戸惑うライナ。

 

「おい、何のことだ?」

その会話を聞き、デミゴが質問をしてくる。

 

「ああ、そこにいる白髪の少年。

 恐らくだがそいつがこの子の楽器を盗んだんだ。」

「ああ、あのバイオリン。

 へぇー、その女から盗ったのかクワイト?」

「あ•ああ…。」

 

「そうかそうか。

 使い古されてるがまあ、そこそこの値段になるだろう。」

「その口ぶりだと、あんたが預かったのか?」

「ああ、そうだが?」

「そうか。

 じゃあ、それをこの娘に返してやってくれ。」

 

黒四円がそう言い、しばらくの沈黙…。

そして、周りから下卑た笑い声が聞こえ、グレゴも笑う。

 

「はっはっはっ! この状況でよくそんな事が言えたもんだ!

 良いぜ、金を出すんなら、バイオリンは返してやるよ。」

「…。」

黒四円は、黙ってグレゴの話を聞く。

 

要求した金額は無理難題。

皆んなで大笑いした後にライナを犯し、それを見せつけた後に黒四円を殺す。

陽ノ本にも似たような野盗が居たことを思い出してしまう。

 

「ほら、どうだ? 払えんのかい?」

周りもニヤニヤと笑い、黒四円がどう答えるか興味深々だった。

 

「はぁ〜………。

 ウェスト語で話してるつもりなんだがな…。」

「あっ?」

「ク•クロまる君?」

 

大きな溜め息を吐いた黒四円。

 

周りもその反応が面白くなかったのか、笑い声が消え、グレゴが威圧するように声を出す。

 

ライナは心配そうに彼を見る。

 

「俺は売ってくれと頼んでるんじゃない。

 返せと言っている。

 盗まれた物を返してもらうのに金を払えとはどういう理屈だ?」

「…。」

「阿呆な事、言ってないでとっとと…。」

「おいゴラァ!!!」

 

怒声を上げたのはオラつき男。

黒四円の背後に付き、逃げないようにしていたが、言い草に我慢の限界をむかえ、自前の武器であろう、両刃型のロングソードを彼の背に突きつける。

 

「あーらら…キレちまった…。」

「イチイチ、うるせーんだよ…! 金払うかどうか聞いてやってんのによ〜…!

 ダイイチそのスカした態度がよー…!」

 

チャラ男はやれやれと思いながら首を振る。

オラつき男は剣を片手で大きく上に向かって振りかぶる。

黒四円の右肩付近にその刃を喰らわせようとする。

 

「クロまる君!!!危ない!!!」

「クッソ腹立つんだよーーー!!!」

ライナは叫ぶがオラついた男は剣を振り下ろされた。

 

「…。」

しかし、黒四円はオラつき男から見て、半身になるように左側に避けた。

そして、精巧で無駄の無い見切りを行いながらも左手を固め、力を込めて、その男の顔面口辺りに思いっきりねじ込む。

 

「ぶっへぇっっ!!!???」

「っ!」

地面に叩きつけるように殴り倒し、その際にオラつき男の体が少しバウンドする。

 

「人が喋っている時に横からべらべらと…お前の方がやかましい。

 そこで少し黙っていてくれ。」

「はえ?」

近くにいたチャラ男が間の抜けた声を出し、ライナも目を見開いて驚いていた。

一瞬である。

チャラ男や他のラピテリオの仲間が想定していた逆の出来事が一瞬で起こった。

 

全員は倒され、気絶しているオラつき男を見た。

ピクピクと体を痙攣させ、口を開けている時に拳打が当てられたからか上下の前歯が無くなり、顎が外れ、うわ唇付近が思いっきり凹んでいる。

最早、先程までいた人間と同じでは無いほどの変形具合だった。

 

「っ!ひぃ!!!」

チャラ男は仲間のその姿を見て怯え、黒四円の近くを離れたく、ライナの側から離れ、多数の仲間の方へと逃げる。

 

ラピテリオの強盗達は自身の武器を手に取り、殺気の目を込めて黒四円を睨んだ。

中には冷や汗をかき、たじろいでいる者もいるがすぐにでも飛びかかってきそうな者ばかりである。

 

 

「話が途切れたから、もう一度言わせてもらう。

 さっさとこの娘の楽器を返せ。」

「っざけやがって…! おい、クワイトぉ!

 確かアイツに金盗られたって言ってたよな!?

 一番にお前の得物(えもの)を突き立ててやれぇ!!!」

「っ!?

 ッッッ! クッソが!!!」

デミゴが叫び、クワイトはショートソードを引き抜いて黒四円の前に立つ。

 

「腰が引けてるぞ? やめとけ。」

「っ! うるせえぇーーー!!!」

そのまま向かっていく。

 

気が動転しているからか、攻め方も何もなく叫びながらの勢いだけの刺突。

黒四円は、その姿を哀れに思い、手心を加えて気を失わせようとする。

 

 

「っ!? ライナ!!!」

「えっ?」

突然、黒四円はライナの名を叫んだ。

刺そうとするクワイトの攻撃を躱し、横に投げる。

 

その動作を2秒近くで済まし、ライナを抱えた。

 

大きな大きな黒い鋼。

全長3m近くの大型手裏剣がデミゴの居た位置の後ろ側から飛んでき、黒四円達の元に突き刺さったのであった。

 

 

 

 

 

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